若手社員の早期離職が続き、対策に悩んでいる企業は少なくありません。しかし、給与を大幅に引き上げたり、新しい役職を増やしたりするのには限界があります。そこで注目されているのが「感情報酬」という考え方です。本記事では、感情報酬の意味や効果を整理した上で、職場に定着させるための具体的な取り組みを解説します。
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感情報酬とは、仕事を通じて得られる前向きな感情を報酬として捉える考え方です。
例えば、次のような感情が当てはまります。
給与や役職は、働く上で重要な報酬です。ただし、それだけでは仕事への意欲を保てないこともあります。
「自分の仕事にはどんな意味があるのか」「自分は組織に必要とされているのか」といった実感も、働き続けるには重要だからです。
顧客から「ありがとう」と言われたときや、上司から自分なりの工夫を評価されたときに感じる手応えも、感情報酬の一つといえるでしょう。
感情報酬とは、給与や役職とは異なる「働く手応え」を報酬として捉える考え方です。
まずは、感情報酬の基本的な意味と、「第3の報酬」と呼ばれる理由を確認していきましょう。

感情報酬とは、仕事を通じて得られる前向きな感情を報酬として捉える考え方です。
例えば、次のような感情が当てはまります。
給与や役職は、働く上で重要な報酬です。ただし、それだけでは仕事への意欲を保てないこともあります。
「自分の仕事にはどんな意味があるのか」「自分は組織に必要とされているのか」といった実感も、働き続けるには重要だからです。
顧客から「ありがとう」と言われたときや、上司から自分なりの工夫を評価されたときに感じる手応えも、感情報酬の一つといえるでしょう。
感情報酬は「第3の報酬」とも呼ばれます。第1・第2の報酬との違いを表で整理しましょう。
報酬の種類 | 内容 | 具体例 |
第1の報酬 | 金銭報酬 | 給与・賞与・残業代 |
第2の報酬 | 地位報酬 | 昇進・役職・社内での立場 |
第3の報酬 | 感情報酬 | 称賛・共感・成長実感・貢献実感 |
従来は、第1と第2の報酬で十分と考えられてきました。しかし近年は、プライベートを重視する価値観が広がっています。
もちろん、給与や昇進の重要性がなくなったわけではありません。
一方で、仕事に求めるものは多様化しています。収入や昇進だけでなく、働き方や人間関係、仕事そのものの意味を重視する人も増えています。
Job総研の「2025年 理想の就活実態調査」では、「もう一度就活する際優先するなら仕事かプライベートか」という質問には「仕事よりプライベートを優先する」と回答した割合が20代で57.7%でした。
こうした価値観の変化もあり、金銭や地位だけではカバーできない部分を補う「第3の報酬」が注目されています。
では、感情報酬は具体的に何で構成されるのでしょうか。一般的には「称賛」「敬意」「共感」の三つが軸とされます。
要素 | ポイント | 職場での例 |
称賛 | 成果だけでなく工夫や過程も認める | 「資料のまとめ方が分かりやすかった」と伝える |
敬意 | 相手の考えや存在を尊重する | 部下の提案を途中で遮らず最後まで聞く |
共感 | 相手の状況や感情を受け止める | 「大変だったね」と声をかける |
重要なのは、単に成果を褒めるだけではないことです。
売上や成績などの結果に対する報酬は、給与や賞与、昇進などでも与えられます。感情報酬では、それだけでは拾いきれない努力や工夫、存在そのものへの承認も重要になります。
感情報酬は、社員の気分を良くするためだけの取り組みではありません。
日常的に承認や感謝を受け取れる職場をつくることは、エンゲージメントや人材定着にもつながります。
ここでは、主な効果を四つ見ていきましょう。
エンゲージメントとは、従業員が組織に抱く愛着や貢献意欲などを指す言葉です。
感情報酬が得られる職場では、社員同士の称賛や感謝、対話が生まれやすくなります。
その結果、「このメンバーと一緒に働きたい」「自分の仕事がこの会社の役に立っている」「もっと職場を良くしていきたい」といった気持ちにつながる可能性があります。
給与や役職だけではない「ここで働き続けたい理由」をつくれることが、感情報酬の大きな特徴です。
離職理由を考える上で、人間関係は無視できません。
厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」では、転職入職者が前職を辞めた個人的理由について、「職場の人間関係が好ましくなかった」が男女ともに高い割合を占めています。
日頃から相手を尊重し、努力や貢献を認め合う関係をつくることは、職場の人間関係を改善する一つの方法です。
仕事への前向きな姿勢は、本人だけで完結するものではありません。
社員同士が互いの働きや貢献を認め合うようになると、協力や相談もしやすくなります。
こうした関係性は、心理的安全性にもつながります。例えば、ウエディング事業などを展開する株式会社BPでは、退職者から「連帯感を感じられない」という声が上がっていました。上司は育成に追われ、部下の頑張りを褒める余裕がなかったといいます。
そこで同社は、スマホで送れるサンクスカードを導入し、日々の頑張りを承認し合う仕組みをつくりました。その結果、アルバイトの定着率は30%改善しています。
アルバイト定着率が30%改善、3ヶ月で300名採用:BPが「友達に紹介したくなるバイト先」を作るまで | TUNAG(ツナグ)
感情報酬は、挑戦しやすい組織づくりにも役立ちます。
新しい仕事に取り組むときには、失敗する可能性があります。失敗した瞬間だけを見て評価される職場では、社員はリスクを避けるようになりやすいでしょう。
一方、挑戦の過程や工夫も認めてもらえる環境であれば、新しい行動を起こしやすくなります。
例えば、ラーメン店などを運営する株式会社銀の葡萄では、「アルバイトも輝く組織」を目指しました。感謝を伝え合う仕組みをつくり、仕事を任せる風土を育てています。
その結果、アルバイトからの改善提案や挑戦が増えました。アルバイトリーダーの人数は5倍に増えています。承認が挑戦を呼び、その挑戦がまた承認されるという循環が、組織の成長を支えているのです。
感情報酬を「上司がもっと部下を褒めればよい」と個人の心がけだけに任せてしまうと、部署や管理職によって大きな差が生まれます。
重要なのは、称賛や承認が自然に生まれる仕組みをつくることです。
ここでは、企業が取り組みやすい五つの方法を紹介します。

まず取り組みたいのが、「なぜこの仕事をするのか」を社員に伝えることです。
会社の理念や目標だけを伝えても、自分の日々の業務とのつながりが見えなければ、仕事の意味は実感しにくいでしょう。
例えば、次の流れで整理します。
一度説明して終わりにするのではなく、日々の業務と結び付けながら繰り返し伝えることが大切です。
社員が誰かに貢献していても、それが本人に伝わらなければ感情報酬にはなりにくいでしょう。
そのため、感謝や称賛を可視化できる場を用意することも有効です。
代表的な方法には、次のようなものがあります。
特に、直接伝えるのが苦手な社員でも参加しやすい仕組みにすると、感謝や承認が広がりやすくなります。
ただし、称賛が一部の社員に集中すると、不公平感につながるおそれがあります。
利用状況や対象者の偏りを確認しながら、制度を改善していきましょう。
感情報酬を職場に広げる上で、管理職の役割は重要です。
部下の働き方を日常的に見ている上司だからこそ、その場で具体的なフィードバックを届けられます。
特に意識したいのが、結果だけではなく「過程」まで見ることです。
例えば、「売上目標を達成してすごい」だけではなく、「事前に顧客の課題を整理して提案内容を変えた点がよかった」と伝えます。
単に「いつもありがとう」「頑張っているね」といった形ばかりの言葉を掛けるだけでは、かえって相手に冷めた印象を与えてしまいかねません。
管理職研修などを通じて、フィードバックの考え方や具体的な方法を共有することも重要です。
感情報酬は、周囲から与えられるものだけではありません。
「自分で考えて仕事を進め、成果につなげられた」という経験も、大きな手応えになります。
例えば、上司が目的と期待する成果を明確にした上で、具体的な進め方は本人に任せます。
自分で工夫した方法によって仕事がうまくいけば、達成感や成長実感を得やすくなるでしょう。
ただし、裁量を与えることと放任は異なります。
「何を任せるのか」「どこまで自分で判断してよいのか」を明確にした上で裁量を渡すことが重要です。
感情報酬を導入するときに最も注意したいのが、給与や待遇の代わりとして使わないことです。
「感謝を伝えているから給与は上げなくてもよい」「やりがいのある仕事だから待遇が低くても問題ない」といった運用では、むしろ社員の不満を高めかねません。
感情報酬は、金銭報酬や地位報酬を置き換えるものではなく、それだけでは補えない部分を支えるものです。
給与水準や評価制度、労働環境などを適切に整えたうえで、承認や成長実感、仕事の意味といった感情報酬を加えていく必要があります。
金銭・地位・感情の3つを切り離して考えるのではなく、バランスよく設計することが重要です。
感情報酬は、給与や昇進の代わりになるものではありません。
金銭や地位だけでは届けにくい「自分の仕事が役に立っている」「自分は必要とされている」といった実感を、日常のコミュニケーションや制度によって生み出す考え方です。
そのためには、個々の管理職や社員の心がけだけに頼るのではなく、称賛や貢献が継続的に見える仕組みをつくる必要があります。
一方で、人事部門だけでサンクスカードや社内報、表彰制度などを継続的に運営するのは簡単ではありません。
こうした組織づくりを支援するサービスの一つが、「TUNAG(ツナグ)」です。
TUNAGでは、サンクスカードや社内報、社内制度などを一つのアプリ上で運用できます。チャットや掲示板など日常的に利用する機能と組み合わせることで、称賛や感謝に触れる機会をつくりやすい点が特徴です。
さらに、管理画面では各取り組みの利用状況を確認できます。施策の利用量やツールの定着状況などを可視化できるため、「制度をつくったものの使われていない」といった課題も把握しやすくなります。
まずは、自社で社員が離職する理由や、働くなかで感じている不満を整理してみましょう。
その上で、「貢献が伝わっていない」「上司との対話が少ない」「仕事の意味を実感しにくい」といった課題が見つかれば、感情報酬の仕組みを取り入れる余地があります。
感謝や承認を一時的な施策で終わらせず、日常の仕組みに落とし込むことが、人材の定着と組織づくりにつながります。