静かな退職とは、会社を辞めずに在籍しながら必要以上のやりがいや昇進を求めず、決められた仕事を淡々とこなす働き方を指します。
近年は若手だけでなく、30代から50代にも静かな退職が広がっており、企業にとって無視できないテーマになっています。一方で、定時で帰ることや仕事と私生活を分けること自体を、静かな退職と決めつけるべきではありません。重要なのは、従業員の意欲低下や不満が背景にないかを見極めることです。
この記事では、静かな退職の意味や企業へのリスク、きっかけの見極め方と対処法を解説します。
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静かな退職とは、実際には退職せず、必要以上の努力や昇進を求めずに決められた仕事をこなす状態を指します。
英語では「Quiet Quitting(クワイエット・クィッティング)」と呼ばれ、2022年ごろから米国を中心に広まった言葉です。
静かな退職を理解するときは、次のような状態を分けて考えることが大切です。
状態 | 考え方 |
|---|---|
静かな退職 | 必要最低限の仕事にとどめ、仕事への熱意や上昇志向が低くなっている |
ワークライフバランスの重視 | 担当業務には責任を持ちながら、私生活とのバランスを取っている |
業務上の問題行動 | 担当業務を放棄する、ルールを守らないなど職務上の問題がある |
特に、残業をしない人や昇進を望まない人を、一律に「静かな退職」と捉えるのは適切ではありません。
静かな退職とは、会社に籍を置いたまま、仕事への心理的な関与を必要最低限に抑えて働く状態を意味します。
実際に退職届を提出するわけではないため、外からは通常どおり働いているように見える場合があります。たとえば、担当業務は問題なく行う一方で、新しい仕事には手を挙げず、昇進やキャリアアップにも関心を示さなくなるケースです。
GallupもQuiet Quittingについて、仕事を辞めることではなく、職務上必要な範囲に労力を限定する考え方として説明しています。ただし、与えられた役割を果たしているのであれば、本人だけを問題視すべきとは限りません。過剰な業務負担や評価への不満から、自分を守るために仕事との距離を調整している可能性もあります。
そのため企業側には、「もっと意欲を持つべき」と考える前に、静かな退職に至った背景を確認する姿勢が求められます。
静かな退職は若手社員だけに見られるものではなく、30代から50代にも広がっています。
マイナビの「正社員の静かな退職に関する調査2026年 (2025年実績)」では、20〜50代正社員の46.7%が静かな退職をしていると回答しました。
年代別の割合は以下のとおりです。
年代 | 静かな退職をしている割合 |
|---|---|
20代 | 50.5% |
30代 | 49.1% |
40代 | 42.3% |
50代 | 46.7% |
すべての年代で4割を超えており、静かな退職を「Z世代特有の価値観」と捉えることはできません。
30代以降では、昇進やキャリアへの期待だけでなく、家庭との両立や今後の働き方について考える機会も増えていきます。また、長く働いても評価や処遇が変わらない状態が続けば、仕事に必要以上のエネルギーを使わなくなる人もいるでしょう。同調査では、静かな退職を続けたい人の割合が全年代で7割を超え、50代では76.7%でした。
一時的な若者の流行ではなく、幅広い世代の働き方に関わるテーマとして捉える必要があります。
静かな退職が広がると、生産性の低下や人材流出につながる可能性があります。
特に注意したいのは、静かな退職をしている本人の担当業務だけではありません。静かな退職そのものを問題と決めつけるのではなく、組織への影響が出ていないかを見ることが大切です。
静かな退職が組織内で広がると、自発的な協力や改善が減り、生産性が低下する可能性があります。
静かな退職の状態でも、従業員が担当業務をきちんと行っていれば、個人の成果が急激に落ちるとは限りません。しかし実際の仕事では、職務記述書に書かれていない協力や情報共有が必要になる場面もあります。
たとえば、困っている同僚を支援する、新しい業務改善を提案するといった行動です。静かな退職によってこうした行動が減れば、チーム内の連携や改善活動が進みにくくなります。Gallupも、仕事へのエンゲージメントが低い状態と生産性の損失には関係があると指摘しています。
また、一部の従業員だけが積極的な仕事を引き受け続けると、業務負担の偏りが生じる点にも注意が必要です。静かな退職への対策では、個人の仕事量だけでなく、チーム全体の協力や情報共有の状態まで確認しましょう。
静かな退職の背景に会社への不満がある場合、その状態を放置すると実際の退職につながる可能性があります。
静かな退職とは、本来は会社を辞めずに働き続ける状態です。そのため、「退職するつもりがないなら問題ない」と判断してしまうケースもあるでしょう。
しかし、評価への不満やキャリアの停滞、人間関係などが原因の場合、その不満が解消されるとは限りません。仕事への期待を失った状態が続けば、より納得できる環境を求めて転職を検討する可能性があります。特に、経験や専門知識を持つ従業員が退職すると、採用や育成のコストだけでなく、社内に蓄積されたノウハウまで失われかねません。
また、成果を出している従業員ほど表面上は問題なく業務をこなしているため、静かな退職の状態に気づきにくい場合があります。本人から退職の申し出があって初めて問題を認識するのではなく、日頃から仕事への納得感やキャリアへの考えを把握することが重要です。
静かな退職のきっかけを見極めるには、数値による把握と日常的な対話を組み合わせることが効果的です。
企業側では、次の2つの方法を組み合わせると状況を捉えやすくなります。
静かな退職の兆候を把握する方法の一つが、エンゲージメントサーベイによる定期的な状態確認です。
静かな退職は、欠勤や業績低下のように分かりやすい変化として現れるとは限りません。そのため、仕事へのやりがいや会社への信頼などを継続的に確認することが重要になります。
一度の調査結果だけで「静かな退職をしている人」を特定することが目的ではありません。部署や年代ごとの傾向、前回からの変化を見ることで、組織課題を早めに把握することが大切です。
厚生労働省も、エンゲージメントサーベイを1on1などと並ぶ「職場活性化制度」の一つとして位置付けています。結果を集めるだけで終わらせず、課題が見えた部署へのヒアリングや改善につなげることで、サーベイを有効活用できます。
静かな退職を見極めるには、1on1などの日常的な対話から従業員の変化を把握することも重要です。
ここでいう観察とは、従業員を監視したり、意欲の有無を決めつけたりすることではありません。以前と比べて発言が減った、キャリアへの関心が薄れたなど、小さな変化に気づくことを意味します。
ただし、これらの行動だけで静かな退職と判断するのは避けましょう。家庭事情や一時的な繁忙、体調など、別の理由がある可能性も考えられます。
厚生労働省は1on1について、上司と部下が定期的に対話し、業務上の悩みや課題について部下の話を聴く場と説明しています。評価するための面談ではなく、本人の考えを理解する時間として運用することが、静かな退職の背景を把握するうえでも重要です。
静かな退職への対処では、従業員の意欲だけを変えようとせず、コミュニケーションや評価制度など職場側の環境を見直すことが重要です。
静かな退職は、本人の価値観だけで起きるとは限りません。本人の価値観を尊重しながら、仕事への納得感を失わせている原因がないかを改善する視点が求められます。
静かな退職への対処では、上司と部下だけでなく、組織全体のコミュニケーションを活性化することが重要です。
仕事への意欲が低下している従業員の中には、自分の仕事が誰の役に立っているのか分からなくなっている人もいます。経営層から会社の方針を発信したり、顧客の声を共有したりすることで、日々の仕事と組織の目的を結び付けやすくなります。また、上司から指示を受けるだけではなく、従業員側から意見を伝えられる場も必要です。
重要なのは、単純に会話の回数を増やすことではありません。自分の意見が受け止められている、仕事の意味を理解できると感じられるコミュニケーションを増やす必要があります。
こうした取り組みを継続的に運用する手段として、社内プラットフォームを活用する方法もあります。
TUNAGでは、サーベイや1on1、社内情報発信、サンクスカードなどを一つのプラットフォーム上で運用できます。
静かな退職への対策だけを目的とするのではなく、日頃から従業員の声を把握し、組織改善を続けられる仕組みを作ることが大切です。
静かな退職の背景に評価への不満がある場合は、評価基準やフィードバックの仕組みを見直す必要があります。
「頑張っても評価が変わらない」と感じれば、必要以上の仕事を引き受けなくなるのは自然な反応とも考えられます。特に、評価の理由が分からない状態や、上司によって評価基準が異なる状態には注意が必要です。
マイナビの2026年調査では、評価目標を会社や上司が決めている企業が33.7%でした。また、評価基準や結果を公表していない企業は27.6%で、オープンに説明している企業の26.8%をわずかに上回っています。
また、すべての従業員が管理職への昇進を望んでいるとは限りません。専門性を高めたい人や、現在の役割を長く続けたい人など、さまざまなキャリア観があります。昇進意欲の有無だけで評価せず、それぞれの役割や貢献を認められる制度にすることで、仕事への納得感を高めやすくなるでしょう。
静かな退職についてよくある質問に回答していきます。
静かな退職のきっかけには、評価への不満、仕事内容とのミスマッチ、キャリアへの諦め、人間関係、過度な業務負担などがあります。
マイナビの調査でも、無関心や損得意識、評価への不満、仕事や環境との不一致など複数の背景が示されています。
静かな退職をしていても、担当業務を適切に行っているのであれば、本人が企業に迷惑をかけているとは一概にいえません。
一方で、自発的な協力や情報共有が組織全体で減ると、一部の従業員への負担集中や生産性低下につながる可能性があります。
静かな退職が組織全体で当たり前になると、新しい挑戦や業務改善、部署を越えた協力が生まれにくくなる可能性があります。
企業側は意欲を強制するのではなく、評価やコミュニケーション、仕事内容などに意欲を失わせる原因がないかを確認することが重要です。