社内向け業務マニュアルの作成手順を解説。作成のポイントやNG要素も紹介
業務マニュアルは、組織の業務品質を担保し、効率的な業務遂行を実現するための重要なツールです。しかし、せっかく作成したマニュアルが活用されないケースも少なくありません。本記事では、実際に活用される、わかりやすい業務マニュアルの作成方法について、具体的な手順と重要なポイントを解説していきます。
業務マニュアルを作成する目的
組織が成長するにつれて、業務は複雑化し、加えて従業員が増えることにより、サービスや品質の管理、業務の効率化が難しくなってきます。
そのため、統一された業務プロセスを確立することが重要になるのです。できの良いマニュアルは、この課題を解決するために必要不可欠なツールと言えるでしょう。
適切な業務マニュアルを作成するためにも、そもそもなぜ業務マニュアルを作成するのか、目的を整理するところから解説します。
品質の担保と業務水準の確保
業務マニュアルを基準として業務の実施状況を確認することで、サービスの品質にバラツキが生じるのを防ぐことができます。
具体的には、マニュアルに基づいて定期的な業務品質の監査を実施し、改善点を特定することで、継続的な品質向上を図ることが可能です。
また、顧客対応業務においては、応対品質の標準化を図るため、よくある問い合わせとその対応手順をフローチャート化し、誰でも同じ品質のサービスを提供できる体制を整えることもできます。
このように、マニュアルがあることで従業員の経験年数や個人の能力に関わらず、一定水準以上のサービスを提供することが可能となるのです。
業務を属人化させないため
特定の従業員に業務が集中することは、組織にとって大きなリスクとなります。一例を挙げると、ベテラン従業員が突然の病気で長期休暇を取得した際に、業務が停滞してしまうケースがあります。そこで、日々の業務内容を詳細に文書化し、判断基準や例外的な対応までカバーした包括的なマニュアルを作成することが重要です。
ベテラン社員の暗黙知を可視化し、フローチャートや意思決定ツリーの形でマニュアルに落とし込むことで、経験の浅い従業員でも適切な判断ができる体制を構築することができます。
加えて、業務の引き継ぎ時には、マニュアルを基にしたチェックリストを活用することで、漏れのない業務移管を実現可能です。このように、詳細なマニュアル化により、組織の持続可能性を高めることができます。
教育コストを下げるため
新入社員の教育や配置転換時の引き継ぎには、多大な時間とコストがかかります。この課題に対し、マニュアルを整備することで、教育期間の短縮と教育品質の向上を同時に実現することが可能になるでしょう。
具体的な取り組みとしては、マニュアルを基にしたeラーニング教材の開発や、実務での OJT チェックリストの作成などが挙げられます。
また、マニュアルを活用した自己学習と実務での確認を組み合わせることで、教育担当者の負担を軽減しながら、効果的な技能伝達を実現している企業も少なくありません。このように、マニュアルは教育の効率化と品質向上に大きく貢献するのです。
わかりやすい業務マニュアルの条件
効果的な業務マニュアルを作成するためには、いくつかの重要な条件を満たす必要があります。これらの要件を意識することで、実際に活用される実用的なマニュアルを作成することができます。
業務の目的と主旨が記載されている
業務マニュアルには、単なる作業手順だけでなく、その業務が組織においてどのような意味を持つのかを明確に示す必要があります。
具体的には、各業務プロセスについて「なぜこの作業が必要か」「どのような価値を生み出すのか」といった目的を明確に記載する必要があります。
例えば営業部門の商談の進め方マニュアルに「この段階で信頼関係を構築する」といった目的を明記することで、単なる形式的な営業活動を防ぎ、効果的な顧客開拓を実現することができます。
このように、目的や意義を明確にすることで、従業員は自身の業務の重要性を理解し、より主体的に業務に取り組むことができるのです。
全体像がわかりやすい
業務の全体像を把握することは、個々の作業の意味を理解し、適切な判断を行うために不可欠です。そのため、マニュアルの冒頭では業務フローの全体像を視覚的に示し、各作業が全体のどの部分に位置するのかを明確にする必要があります。
ポイントとしては、業務プロセスをフローチャートや図解で表現し、それぞれの工程の関連性や依存関係を示すことが効果的です。
例えばカスタマーサポートにおいて、問い合わせから解決までの一連の流れを時系列で図示することで、対応の抜け漏れを防ぎ、適切なエスカレーションタイミングの判断をすることができるようになります。このように、全体像の可視化により、業務の文脈理解と適切な判断を促進することが可能になるのです。
誰が読んでも理解できる
効果的なマニュアルは、業務経験や専門知識の有無に関わらず、誰が読んでも理解できる内容でなければなりません。そのためには、専門用語の使用を必要最小限に抑え、使用する場合は必ず解説を加えることが重要です。
具体的には、一般的なオフィスワーカーでも理解できる表現を心がけ、業界特有の略語や専門用語には注釈をつけるといった工夫が効果的です。
また、手順の説明には実際の画面キャプチャやイラストを用い、「こうなったらこうする」といった具体的な事例を交えることで、直感的な理解を促進することができます。
わかりやすさを重視した表現方法を採用することで、幅広い読者層に対応したマニュアルを作成することが可能となります。
アップデートがしやすい
業務プロセスは常に進化し、改善されていくものです。そのため、マニュアルは容易に更新できる形式で作成し、定期的なメンテナンスを行える体制を整えることが重要です。
具体的には、クラウドベースのドキュメント管理システムを活用し、更新箇所を色分けしたり、改訂日と担当者を明記したりすることで、変更点を誰もが把握できるようにできます。
更新のしやすさを考慮したマニュアル設計により、業務の進化に柔軟に対応することができるのです。
業務マニュアルの失敗例
業務マニュアルの作成における、よくある失敗パターンを理解することは、効果的なマニュアル作成の第一歩となります。失敗例を紹介しますので、作成時には注意してみてください。
文章ばかりで図解やチャートがない
文章のみで構成されたマニュアルは、読み手の理解を妨げ、実際の業務での活用を困難にしてしまいます。複雑な業務プロセスを文章だけで説明しようとすると、かえって混乱を招くケースがあるためです。
例えば、製造業で組み立て作業の手順を文章のみで記載したマニュアルを使用しても作業者の理解度が低く、品質にバラツキが生じることがあります。
そこで、各工程をフローチャートで示し、重要なポイントを写真や図解で補足することで、作業の標準化と品質向上が可能になるでしょう。
視覚的な要素を効果的に活用することで、マニュアルの実用性を高めることができるのです。
順を追った説明になっていない
業務手順の説明が論理的な順序で整理されていないマニュアルは、現場での混乱を招く原因となります。
実際の企業では、手順の前後関係が不明確なマニュアルにより、重要なステップの抜け落ちや、作業の手戻りが発生するケースが報告されています。
一例を挙げると、ある小売店では接客マニュアルの手順が整理されていなかったため、来店客への対応にムラが生じ、顧客満足度の低下につながっていました。
その後、接客プロセスを「来店→ニーズヒアリング→提案→クロージング」と時系列で整理し、各段階で必要な行動を明確化することで、一貫性のある接客サービスを実現することができたとのことです。
このように、業務の流れを論理的に整理することで、効率的な業務遂行が可能となります。
片手間に作成している
マニュアル作成を軽視し、十分な時間と労力をかけずに作成すると、実用性の低い形だけのマニュアルになってしまいます。
現場での取り組みでは、担当者が日常業務の合間にマニュアルを作成するため、重要な情報の抜け落ちや、説明不足が生じるケースが少なくありません。その結果、マニュアルが活用されなくなってしまったり、結局現場の人間が最初から指導せねばならず、マニュアル本来の役割を失ってしまう懸念があります。
マニュアルの作成は、その後の全体効率を良くし、作成に使った時間以上の恩恵をもたらします。そのため、マニュアル担当者の時間をきちんと確保することが重要です。
スケジュールを決めて作成していない
マニュアル作成の期限や更新サイクルを明確に定めていないと、作成作業が後回しにされ、情報が古くなってしてしまうリスクがあります。
マニュアルを作っている間に業務プロセスが変更されていった結果、業務プロセスの変更がマニュアルに反映されず、現場との乖離が生じるケースが多く見られます。
マニュアルの初回作成はもちろん、更新に関してもスケジュールを決めておきましょう。
例えば四半期ごとのマニュアル見直しサイクルを確立し、更新責任者を明確化することで、常に最新の業務プロセスを反映したマニュアル管理が実現できます。
このように、計画的なマニュアル作成と更新の仕組みづくりが重要となるのです。
わかりやすい業務マニュアルを作るポイント
効果的な業務マニュアルを作成するためには、実践的なアプローチと具体的な工夫が必要です。ここでは、実際に活用される業務マニュアルを作成するための重要なポイントについて解説していきます。
チェックリストで内容漏れを防ぐ
業務マニュアルの作成過程で重要な情報の抜け落ちを防ぐには、体系的なチェックリストの活用が効果的です。
実際に作成すると、ベテラン社員の暗黙知や例外的な対応手順が漏れてしまうケースが多く見られます。そこで、マニュアルに盛り込むべき項目を事前にリスト化し、現場の担当者と確認しながら内容を整理していくことが重要です。
例えばサービス業においては、接客の基本動作から緊急時の対応まで、想定されるシーンごとにチェックリストを作成し、マニュアルの完成度を高めていくという方法が効果的です。
チェックリストを活用することで、確実性の高いマニュアル作成が可能となるのです。
マニュアルの内容に適したツールを選ぶ
業務の特性や対象読者に応じて、最適なマニュアルの形式やツールを選択することが重要です。現場での取り組みでは、一律のフォーマットにこだわるあまり、情報が伝わりにくくなってしまうケースが見られます。
具体的には、製造ラインの作業手順であれば写真や動画を多用し、システム操作マニュアルであれば画面キャプチャとステップバイステップの説明を組み合わせるなど、内容に応じた表現方法を選択することが効果的です。
マニュアルの目的と読者のニーズに合わせたツール選択が、効果的な情報伝達につながります。
マニュアル作成ツールを使う
専用のマニュアル作成ツールを活用することで、効率的かつ効果的なマニュアル作成が可能となります。
具体的には、テンプレート機能やフローチャート作成機能、バージョン管理機能などを備えたツールを使用することで、統一感のあるマニュアルを効率的に作成することができます。
複数の担当者による同時編集や、写真や図解を容易に組み込めるツールを活用することで、視覚的でわかりやすいマニュアルの作成が可能です。
このように、適切なツールの選択により、マニュアル作成の効率化と品質向上を同時に達成することができるのです。
わかりやすい業務マニュアルで仕事が効率化する
効果的な業務マニュアルの整備は新入社員の教育期間の短縮や、業務の属人化防止、ミスの削減など、組織全体の生産性向上と業務品質の向上に大きく貢献します。
またマニュアルのデジタル化と検索機能の強化により、必要な情報へのアクセス時間が大幅に短縮され、業務効率の向上につながっているケースも少なくありません。
そこで、TUNAGという組織課題を解決できるオールインワンプラットフォームの機能の1つである、「マニュアル機能」で、わかりやすいマニュアルをどこでも手軽に見れるようにすることもおすすめです。
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詳細はこちら→TUNAG機能一覧
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