物流業界のドライバー不足の原因と対策、離職改善に取り組む事例を解説


物流業界の2024年問題に備える9つの社内施策

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働き方改革の一環として、2024年4月より働き方改革関連法が改正され、自動車運転者の時間外労働に上限が設定されることになりました。これにより、ドライバーの労働時間が減少し、給与減少による離職や会社全体の稼働時間の減少などの問題、いわゆる2024年問題が起きると予想されています。

法施行が迫る中、ドライバーの定着率改善や業務効率化などの社内の取り組みや、荷待ち時間の削減等のサプライチェーン全体の現状を、見直そうとしている企業様も多いのではないのでしょうか。

この記事では、物流業界のドライバーが不足する原因と対策について、解説していきます。

物流業界を取り巻く人手不足の現状

厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況」によると、令和4年6月の全職業の有効求人倍率が1.09倍に対し、物流など貨物自動車運転車の有効求人倍率は2.01となっています。このことから、物流業界は人手不足ということができ、ドライバーが不足している状況です。

そして、物流・運送業界における「2024年問題」は、働き方改革によってドライバーの労働時間に上限が課されることで起きる問題です。ドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限され、各々の走行距離が短くなってしまうのです。これにより、長距離でモノが運べなくなると懸念されているのが2024年問題となります。そんな物流業界を取り巻く人手不足の原因と改善策、離職改善に取り組んでいる事例についてご紹介します。

参考:一般職業紹介状況(職業安定業務統計) 一般職業紹介状況 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

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物流業界でドライバーが不足する3つの要因

数ある職種の中でも、物流業界のドライバー不足が懸念されています。賃金面や業務時間、ドライバーの高齢化などの理由を含め、物流業界でドライバーが不足する3つの要因を解説します。

1.賃金・業務時間などの労働条件に課題がある

物流業界のドライバー不足が深刻化する要因の一つは、賃金・業務時間などの労働条件にあるといえます。令和3年度の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、トラックドライバーの賃金は全産業平均よりも約5~12%ほど少ない数値となっています。全産業平均が489万円に対し、大型トラック運転者は463万円、中小型トラック運転者は431万円で、全体平均より5~12%ほど低くなっています。

また、業務時間の長さもドライバー不足の要因となります。令和3年度の厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によれば、大型トラック運転者は年間労働時間が2,544時間 、中小型トラック運転者は2,484時間となっています。これは全産業平均の2,112時間と比べて、17%〜20%ほど長くなっています。

パーソル総合研究所が公表している「働く10,000人の就業・成長定点調査2023」によると、「仕事を選ぶ上で重視することは何ですか?」という質問に対して、製造・物流の職種の41.3%の方が「希望する収入を得られる」ことを、同職種の30.8%の方が「仕事とプライベートのバランスがとれる」ことをあげています。賃金や業務時間は、簡単には調整できないものの、働く人の仕事を選ぶ際の重要項目の一つが労働条件であると言えそうです。

内閣府の「令和4年版高齢社会白書」などでも公表されているように、生産年齢人口(15歳〜64歳の人口)の減少している日本社会において採用市場の競争が激化する中で、仕事選びの重要指標である労働条件に会社がある業界・会社の労働力が不足することが想定されます。

▼参考
賃金構造基本統計調査 結果の概要|厚生労働省
勤務条件を選ぶ上で重視することは何ですか? - 働く10,000人の就業・成長定点調査 - パーソル総合研究所

2. 宅配需要が増加している

宅配需要の増加の増加も、ドライバー不足の要因です。国土交通省の「令和3年度 宅配便(トラック)取扱個数」によると、取扱個数(千個)が4,882,061となっています。前年度の4,784,940よりも増えており、それだけ宅配需要が増加していることがわかります。

今では数々のフリマアプリやネット通販サイトが存在するため、ネットで商品を購入する方々がとても増えています。宅配需要が増加したことでドライバーの負担が増え、ドライバー不足を引き起こしていることも要因の一つでしょう。

参考:報道発表資料:令和3年度 宅配便取扱実績について - 国土交通省

3. 減点方式のネガティブな評価体制になりやすい

減点方式の評価体制になりやすいことも、ドライバー不足の要因です。事故やトラブルなく荷物を無事に届けることができれば満点ですが、途中でトラブルや事故があれば会社や上司から叱られます。その一方で、ドライバーは一人で作業することも多く、社用端末も付与されていないので、お客様からお褒めの言葉をいただいたり、業績を上げるなどのポジティブな情報が共有されづらい状況に陥りがちです。

結果として、ネガティブなニュースばかりが取り上げる減点方式の評価体制となり、モチベーションを維持しづらくなります。

物流業界のドライバー不足を解決する社内向けの取り組み6選

物流業界のドライバー不足を解消するには、有効な対策を取る必要があります。そこで、人手不足解消に向けて6つの解決策を解説します。

1. 給与や福利厚生などの待遇を改善する

物流業界のドライバー不足を解消するには、まずはドライバーの待遇を改善する必要があります。

待遇と一括りで表現しましたが、改善の取り組みは給与アップだけではありません。具体的には、以下ような取り組みが考えられます。

  • 無事故運転や好事例共有の数に応じたインセンティブの付与
  • 退職金の整備
  • 福利厚生の充実化(出張マッサージなど)
  • 勤続年数に応じた表彰や記念品の贈呈
  • 有給休暇取得の推奨や完全週休2日制度の導入

会社の状況によって課題は様々であり、改善施策の難易度も異なるため、自社にあった取り組みを実施していくことが必要になるでしょう。そのためにも、社員へ待遇に関するヒアリングやアンケートを行い、課題を明確にすることが重要です。

2. ドライバー業務の効率化を図る

ドライバー業務の効率化に取り組みこともドライバー不足の解消に有効です。先ほど厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」で解説したように、物流業界は他の業種に比べて労働時間が長い傾向です。この状態が続くと、時間外労働に上限設定に対応できずに、延いては会社の利益減少や隠れ残業を発生させる要因にもなってしまいます。

そのため、各種申請のペーパーレス化やスマホを通じた事故発生や渋滞等の重要情報のタイムリーな共有などを実施し、少しでも長い時間をコア業務に使えるための施策が必要になるでしょう。

3. 採用基準を広げて採用増加を目指す

採用人数を増やすことも、ドライバー不足の解消に有効です。荷物需要が増加したことで、ドライバー1人あたり負担が増えています。そのため、採用人数を増やし人員を確保することで、ドライバー1人あたりの負担を減らせられます。

具体的な取り組みとして、採用基準を広げる施策が考えられます。例えば、女性ドライバーの採用や未経験採用を増やす、リファラル(紹介)採用を推進することで、応募数の増加につながるでしょう。また、採用基準を広げる際は、より働きやすい環境を整えるために、社内教育のコンテンツを充実させたり、時短勤務制度や育休制度などの柔軟な働き方ができるよう、ドライバーに優しい環境を作ることが大切です。

4. キャリアパスを明示する

キャリアパスを明示することも、ドライバー不足の解消に有効です。ドライバーのキャリアは、ドライバー⇨運行管理者⇨所長といったステップとなるケースがあるものの、その他の将来像が見えにくい側面があったり、評価基準が定めにくい側面があるなど、キャリアパスが不明瞭ゆえに、採用難や離職につながっているとの見方もあります。

そこで、取得すべき資格、役職に合わせた優遇策、ロールモデルになる先輩ドライバーの姿を具体的に明確化させます。キャリアアップのイメージが明確になれば、やがて自分自身がどうなれるかがわかり、将来設計をしやすくなるでしょう。

5. 気軽にコミュニケーションが取れる体制を構築する

社内交流を活性化させることも、ドライバー不足の解消に有効です。社内交流が盛んだと、ナレッジ共有など会話しやすい雰囲気が生まれます。一人で動くことが多いドライバーだからこそ、同じような悩みや相談を打ち明けられるような、コミュニケーションの仕組みを作ることで、雰囲気が良く明るい職場がつくられ、定着率の改善につながるでしょう。

6. 従業員の頑張りを評価・称賛する仕組みを作る

従業員の頑張りを共有する体制を整え、評価する仕組みを作ることも、定着率改善につながると考えられます。

株式会社スタメンが小売・飲食、物流・運送、介護・医療など、さまざまな現場で働くノンデスクワーカーの働き方について調査した「ノンデスクワーカーの働き方実態調査2024」によると、回答者の50.6%が「褒めたれたり感謝を伝えられたとき」に『これからもこの職場で働きたい』という気持ちになると答えました。

出典:ノンデスクワーカーの働き方実態調査2024 | TUNAG(ツナグ)

物流業界は、「無事故が当たり前、何かあれば減点評価」になりやすく、一人で黙々と業務に取り組むことも多いため、お客様に褒めて頂いたり、配達で業績を上げたりといったポジティブなニュースが共有されづらい状況に陥りがちです。

無事故表彰やドライバーコンテストなどの表彰制度を作る、お客様の声を共有する掲示板を設けるなど、従業員の頑張りを可視化し、評価制度に組み込むことで、前向きに業務に取り組めるようになり、高いパフォーマンスが発揮できるでしょう。

荷主と協力して、物流業界のドライバー不足の問題に対応する

物流業界のドライバー不足への解決策では、荷主への働きかけも非常に重要です。そこで、荷主への働きかけで有効な対策を解説します。

パース予約システムなどで長時間の荷待ちを減らす

荷主への働きかけとして、長時間の荷待ちを減らすことが挙げられます。国土交通省のデータでは、荷主による違反原因行為の割合の約半数は荷待ちです。

国土交通省が公表した「貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部を改正する省令」では、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の自動車に乗車し、荷主の都合により30分以上の荷待が発生したときは「集貨地点等、集貨地点等への到着・出発日時、荷積み・荷卸しの開始・終了日時」などを乗務記録の記載と1年間の保存するよう定めており、省令からも荷主への働きかけが行われています。

また、荷待ちが発生する要因の一つに物流センターでのトラックの混雑が挙げられます。トラックが混雑する時間帯は、積載物の積み下ろし機器である「パース」が使用できずに、荷待ちが発生するケースもあります。パース予約システムの活用により、物流センターや倉庫到着前にパースの空き状況の確認・予約が可能となり、荷待ち時間が削減されます。

加えて、客観的な荷待ちのデータを記録するために、ICT機器(デジタルタコグラフや位置情報取得機器など)用いるのも一つの手段です。

依頼になかった付帯業務をなくす

依頼になかった付帯業務をなくすことも、荷主への働きかけの解決策です。依頼になかったことを後出しでお願いする荷主もいるため、断るようにしましょう。

また、付帯業務の削減に向けた動きとして、バラ積みからパレット輸送への変更及びパレットの標準化を国土交通省が推進しています。パレット輸送とは、パレットと呼ばれる荷役台を使用した輸送方法を指し、大量の荷物をスムーズに輸送できるなどのメリットがあります。国内の輸送は35%がバラ積みによる輸送となっており、またパレット輸送においてもサイズ違いによる輸送が発生するなど、これらがドライバーの付帯業務増加につながっているという見方もあります。

国土交通省の資料によると、パレット利用により、国内全体で年間3億円の時間削減につながるとも考えられており、パレット利用の推進が附帯業務削減の一つの手段になるといえそうです。

参考:標準化・共有化を通じた流通・物流の合理化・高度化について | 国土交通省

著しく低い運賃・料金での運送を断る

著しく低い運賃・料金での運送を断ることも、荷主への働きかけの解決策です。相場とは大きくかけ離れた低賃金で請け負えば、赤字になってしまいます。そうなれば、ドライバーに支払う賃金も安くなり、結果的に離職率を高めてしまうでしょう。そのため、著しく低い金額では安易に請け負わないようにしてください。

物流業界で離職率改善に取り組む3つの事例

物流業界では、離職率改善に向けて取り組んでいる会社も少なくありません。ここでは、そんな離職率改善に向け取り組む3つの事例を解説します。

1. 株式会社ナルキュウ

株式会社ナルキュウは、「小さな一流企業を目指して、社会に貢献できる人づくり(NALQマン)・会社づくり」を社是とし、茨城、神奈川、静岡、愛知、三重、岡山の6拠点で、自動車部品を中心とした輸送業務を行なっています。同社ではドライバーが定着しない・辞めるドライバーが多いことが課題となっており、ドライバーが離職する要因の究明に取り組みました。これにより、採用応募数自体が少ないことと、離職する人が多いということが判明し、ドライバーが辞めない制度作りに取り組みました。

具体的には、離職率改善に向けて、事故のペナルティ制度の見直し・現場もマネジメントもわかる管理職の育成・無事故手当金の手渡しの3つの取り組み実施をしています。これらの取り組みにより、ドライバーの不満の減少や、キャリアパスの明確化、コミュニケーションの活性化につながったといいます。

参考:【運送・物流業界編】2024年問題も見据えた「攻め」と「守り」の離職防止策セミナーレポート - SmartHR Mag.

2. 株式会社ダイセーセントレックス

株式会社ダイセーセントレックスは、「変化を恐れず、妥協を許さず、『最高』の物流を実現する」をビジョンとして掲げ、私たちの生活に欠かせない食品や日用品の輸配送を行う物流会社で、全国10拠点でビジネスを展開されています。

外で一人で働くドライバー職のクルーが多い同社では、日常的にお互いに会話する機会が少なく、顔を合わせることも限られてしまうことから、コミュニケーション不足や離職率の高さに課題を抱えていました。そんな中、社内報やドライバー職いのミーティングで伝わり切らない情報を、ダイレクトに深く届けることを目的に社内コミュニケーションツールのTUNAG(ツナグ)を導入しました。TUNAG(ツナグ)であれば、スマートフォンからも利用可能で、荷待ち時間やちょっとした休憩時間に会社のこと、仲間のことを知ることができます。

TUNAG(ツナグ)は各部署からの連絡や会社からのお知らせを発信するだけではなく、リーダーインタビュー・クルーインタビューといった仲間のことを知り、会話のきっかけおなるようなコンテンツを実施しています。これらの取り組みによって、従業員間の相互理解が促進され、コミュニケーションがしやすくなったとのことです。拠点のセンター長からも「ミーティングで顔を合わせた時にも初めましての雰囲気ではなくて、コミュニケーションのハードルが下がっている気がする」という声をいただき、離職率10%改善につながった一つの要因になっているといいます。

参考:物流業界ならではのコミュニケーションや離職率の課題を改善 - 株式会社ダイセーセントレックスのTUNAG活用事例 | 社内ポータル・SNSのTUNAG(ツナグ)

3. トランコムDS株式会社

トランコムDS株式会社は、「人をつくる、地域の笑顔をつくる。」というミッションのもと、運送・物流業界で個人宅配業務を行っている企業です。

同社では、物流業界全体が人手不足なこと、会社としても人手不足であることが課題となっていました。「人は採用できるけども、人が定着せず、とにかく人が離脱をしていく」というのが業界の当たり前になってしまっていたといいます。

従業員の離職率が高い理由を、「無事に配達を終えて、帰ってきて一日を終えるのが100点で、何かトラブルがあったり事故を起こしてしまうと、そこから減点していく」という運送業界が減点方式の評価で、従業員の良い部分が見えづらくなっていることにあると考え、従業員が写真を投稿できたり、お客様から褒められた事例を共有できるなど、色々なことを表現可能な社内コミュニケーションツールのTUNAG(ツナグ)の導入を決定しました。

TUNAG(ツナグ)では、社長からのトップメッセージを現場の従業員にダイレクトに届けるなど、会社の様子をがTUNAG(ツナグ)を見ればわかるような運用に取り組みました。これにより、従業員の方から「従業員のことを考えてくれている経営ですね」や「やりがいを感じています」という声が届いたり、3割ほどあった離職率が1割を下回るほどの改善が見られたとのことです。

参考:運送業界の当たり前を変え、『離職率10%未満』を実現した取り組みとは - 「経営と現場の距離が縮まった」 | 社内ポータル・SNSのTUNAG(ツナグ)

まとめ | 物流業界のドライバー不足を解決するためには

物流業界の人手不足の原因や解決策、物流業界における2024年問題、離職率改善に取り組む事例について解説しました。物流業界は深刻な人手不足であるため、その解消に向けて対策を講じる必要があります。

職場環境の改善や賃金の見直し、社内コミュニケーション施策など、組織課題によって最適な取り組みは異なります。また、自社の改善施策だけではなく、荷主と協力して業務効率化・業務時間削減に向けた取り組みも実施していくことも重要です。自社の従業員が会社のどこに不安や懸念を抱えているかをヒアリングして、優先順位をつけて施策に取り組むことが求められるでしょう。

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