行動変容とは?ステージ別の効果的なアプローチや研修のポイント

従業員の行動変容は、組織全体のパフォーマンス向上や、変化の激しいビジネス環境への適応を可能にします。企業が成長し続けるためには、従業員に対して積極的に行動変容を推進していくことが重要です。行動変容の意味や促進のポイントを解説します。

行動変容とは

もともと医療分野で生まれた概念である行動変容は、ビジネスや教育など幅広い分野で応用されるようになっています。行動変容とは何か、まずは言葉の意味から確認していきましょう。

行動や習慣が変化・定着する一連の流れ

行動変容とは、人の行動や習慣が変化し、それが定着していく一連の流れを指す言葉です。個人や組織の成長、社会課題の解決に貢献する重要な概念として、幅広い分野で活用されています。

ビジネスにおける行動変容は、従業員や組織の行動をより望ましい方向へ変化させることです。研修や教育を通じて従業員の行動に変化を促し、組織全体のパフォーマンス向上を目指します。

社内研修で行動変容を促す場合は、研修内容を理解するだけでなく、研修後の行動変容を定着させるための仕組みづくりが成功の鍵となります。

多くの人が行動や習慣を変えられない理由

行動変容を妨げる要因の一つに、現状維持バイアスが挙げられます。現状維持バイアスとは、変化を避けて現状を維持しようとする心理的な傾向です。人は現状に慣れてしまうと、新しい行動を始めることへの抵抗感が強くなります。

また、同調バイアスも行動変容の阻害要因の一つです。同調バイアスとは、個人が周囲の意見や行動に合わせようとする心理的な傾向を意味します。組織の一員として承認や安心感を得たいという欲求から、周囲と異なる意見や行動を避けてしまうのです。

行動変容を促進する際は、誰にでも起こりうるこれらの心理的な傾向を理解し、適切な対策を講じることが重要です。具体的には、多様な意見を尊重する心理的安全性の確保が求められます。

行動変容の5ステージと効果的なアプローチ

行動変容を理解する上で重要なのが、行動変容ステージモデルです。このモデルでは、人は「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」という5つのステージを経て、行動が変化すると考えられています。

それぞれのステージに合わせたアプローチをすることで、より効果的に行動変容を促すことが可能です。各ステージの特徴と適切なアプローチを見ていきましょう。

ステージ1:無関心期

行動変容における無関心期とは、行動を変える必要性を感じておらず、変化への関心が低い状態のことです。この時期は、問題点を認識していない、または問題だと捉えていないため、行動を変える意思もありません。行動変容のステージの中で、最も変化を起こすのが難しい時期だといえます。

無関心期では、まず本人が「気づく」きっかけを創出するアプローチが効果的です。現状の行動が将来どのようなリスクにつながるのかを具体的に伝えたり、行動変容のメリットを提示したりすることで、行動変容に対する関心を引き出しやすくなります。

ステージ2:関心期

行動変容の関心期とは、行動を変える必要性を認識し始めたものの、まだ具体的な行動に移す準備ができていない状態のことです。行動を変えることへの不安や、これまで続けてきた行動を変化させることへの抵抗感を感じています。

関心期での効果的なアプローチの一つが「動機付け」です。行動変容によって得られるより具体的なメリットを提示し、行動を起こす意欲を高めます。

また、関心期では行動変容に対する不安や抵抗感を取り除くアプローチも必要です。どのように始めればよいのか、どのようなサポート体制があるのかを提示し、行動を変えることへの不安を和らげます。

ステージ3:準備期

具体的な行動計画を立て、実行に移す準備をしている状態が準備期です。この時期は行動変容への意欲が高く、実行に向けて具体的な方法を模索しています。

準備期のアプローチは、自信をつけ、具体的な行動計画の立案を促すことが重要です。過去の成功体験を振り返り、行動できるという自己効力感を高める必要があります。どのような方法で行動するか、いつから始めるかなど、本人に選択肢を提示して自己決定を促すことも大切です。

ステージ4:実行期

行動変容の実行期は、新しい行動を実際に開始し、実践している段階です。この段階では、小さな成功を認め、継続をサポートすることが重要になります。

実行期のアプローチとしては、成果の可視化やフィードバック、モチベーションを維持するための工夫などが有効です。新しい行動に対するストレスを軽減するために、行動の難易度を下げるためのサポート体制を整えるのもよいでしょう。

ステージ5:維持期

行動変容の維持期とは、目標とする行動を一定期間継続できている状態を指します。新しい行動が習慣化し日常生活の一部として定着しており、また変化を維持できる自信も高まっているため、行動が持続しやすい状態です。

行動変容の維持期では、成功体験を積み重ねてモチベーションを維持するような働きかけが効果的です。行動変容前のステージに戻る可能性を考慮し、逆戻りしないための対策も講じる必要があります。

社内研修で行動変容を促すためのポイント

従業員の行動変容を促すためには、社内研修を実施するのがおすすめです。行動変容研修を成功させるためのポイントを解説します。

研修対象者の現状を把握する

従業員における現状の行動や意識レベルを把握すれば、研修で達成すべき具体的な目標を設定することが可能です。例えば、行動変容ステージモデルでどのステージにいるかを把握し、次のステージに進むための目標を設定します。

また、現状把握を行っておけば、研修内容の最適化も図れます。例えば、従業員の自律度が低い場合は、自律性を高めるための研修が必要になるでしょう。

現状把握の方法には、ヒアリング調査・アンケート調査・行動チェックリスト・360度サーベイなどがあります。個別の面談を通じて、従業員の状況や課題を深く理解するのも効果的です。

実践でアウトプットする機会を設ける

行動変容を促す研修において、アウトプットは非常に重要です。インプットした知識やスキルを実際に活用することで、理解が深まり定着しやすくなります。

アウトプットを促す具体的な方法としては、個人発表・グループ発表・ロールプレイング・ナレッジシェアなどが挙げられます。ロールプレイングは実行期における実践的な練習として、ナレッジシェアは維持期における知識の定着を促す手段として有効です。

フィードバックの場を定期的に設ける

研修後のフォローアップとして、定期的な振り返りやフィードバックを行うことで、受講者の行動変容を促進し研修効果を最大化できます。

ポジティブなフィードバックは受講者の自己効力感を高め、行動変容へのモチベーションを維持するのに役立つでしょう。また、フィードバックは研修の効果測定にもつながり、今後の研修内容の改善にも貢献します。

行動変容を進めていく上で注意すべきなのが、以前のステージに戻ってしまう逆戻りです。特に実行期や維持期に起こりやすく、自己効力感の低下やモチベーションの低下を招くことがありますが、効果的なフィードバックは逆戻りの防止にも役立ちます。

従業員の行動変容を促す働きかけを

従業員の行動変容を支援することは、本人のスキルアップや成長実感につながると同時に、組織全体の生産性向上やパフォーマンス向上といった、企業と従業員の双方にとってのメリットをもたらします。

行動変容を促すためには、まず従業員の現状を把握し、それぞれのステージに合わせたアプローチを取ることが重要です。従業員が主体的に行動し、より良い成果を出せるよう、適切な環境づくりと継続的なサポートを行いましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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