企業のサイトM&Aはどう進める?手法や基本の流れ・注意点を解説

複数のサイトを運営している企業でその一部を手放したい、承継に当たって運営サイトを整理したいという企業は多いのではないでしょうか。企業がサイトM&AでWebサイトなどを売却する方法を、基礎知識や流れ・注意点を網羅して解説します。

企業が実施するサイトM&Aとは

事業として運営しているWebサイトやSNSアカウントなどは、「サイトM&A」で手放せます。まずはサイトM&Aとは何なのか、形式や一般的な方法とともに定義を整理しましょう。

企業がWebサイトを売買すること

「サイトM&A」とはWebサイトなどを対象としたM&Aで、「サイト売買」と同義です。2000年代に、新たなM&Aの手法として始まりました。

サイトM&Aでは、企業や個人が運営しているメディアやECサイト・SNSアカウントなど幅広いWebサービスを、企業や個人が買い取ります。企業が実施する場合、売り手なら自社のWebサイトやSNSアカウントなど(以下「Webサイト」または「サイト」)を売却すること、買い手なら通常は他企業のサイトを買い取ることを指します。

形式は事業譲渡が一般的

企業間のサイトM&Aでは、一般的に事業譲渡の形式を取ります。事業譲渡とは、企業同士で事業の一部または全部を売買するM&Aスキームです。あくまで事業の一部または全部の売買であり、売り手企業の経営権には影響しません。まれに株式譲渡の形を取ることもありますが、多くは事業譲渡のスキームが用いられます。

事業譲渡によるサイトM&Aの流れは、通常の事業譲渡とほぼ同じです。ただ、売買の対象となる資産にサイトM&A特有のものが含まれます。サイトM&A特有の資産とは、主に次の通りです。

  • サイトのコンテンツ
  • ドメイン・サーバーの権利契約
  • アカウント情報など

サイトM&A専門のサービスを使うのが無難

サイトM&Aは個人でも企業でも、サイトM&Aを専門に扱うサービスを利用して実施するとスムーズです。サイトM&Aに利用できるサービスはさまざまで、マッチングサイトやサイトM&Aを得意とするM&A仲介会社などが挙げられます。

サイトM&Aサービスには、仲介方式や自由出品方式など複数のパターンがあり、それぞれ細かい流れが変わる点には注意が必要です。利用するサービスの形式を調べ、自社に合うタイプのものを選びましょう。

企業がサイトM&Aでサイトを売却する効果

サイトM&Aを検討しているなら、「事業ポートフォリオの見直しによってサイトを売却し、資金を得られる」というメリットは把握しているはずです。では具体的に、サイトM&Aによるサイト売却でどのような効果を得られるのでしょうか。売却価格の相場など一歩踏み込んだ情報にも触れながら、効果を解説します。

まとまった資金調達が可能

一定以上の収益を出しているサイトであれば、サイトM&Aによる売却(譲渡)でまとまった資金を得られます。もちろん毎月の収益は減りますが、一度に多額の資金を手に入れられるメリットは大きいはずです。

売却価格の相場は月間営業利益の12〜24ヶ月分、または年間売上の0.5〜2倍程度が目安ですが、サイトの収益性や将来性、SEO評価、ブランド価値などが高ければ、相場を大きく超える価格で売却できる可能性もあります。

承継前の事業整理などでサイトM&Aを考えている場合、承継後の事業計画によっては、新たなビジネスを展開するための有力な資金源となり得ます。

リソースをコアな事業に集中させられる

売却対象となるのは、コア事業ではなかったり、企業の現在の戦略と方向性が異なっていたりするサイトであることが多いです。そのようなサイトの運営にリソースを割くよりも、主力事業に集中する方が、企業全体の成長にとってより効果的な判断となる場合があります。

不要なサイトをサイトM&Aで売却することで、そのサイトの運営に割いていたリソースをほかの事業やサイト運営に回せます。コアな事業にリソースを集中させられれば、企業としての発展が見込めるでしょう。サイトM&Aは事業整理に効果的です。

サイトM&Aでサイトを売る流れ

サイトを売却するのが初めてだと、どう進めてよいか迷うかもしれません。事業譲渡での売却として、サイトM&A専門サービスを使った場合のフローを紹介します。あらかじめ流れを把握して、売却の準備を進めましょう。

サイトM&A専門サービスへの登録・審査

サイトの売買に当たっては、サイトM&A専門サービスを使うと効率的で円滑です。まずは自社に適したサービスを選定し、登録・契約します。売却予定サイトの年間収益が1000万円超など規模が大きい場合、M&A仲介会社を使うのが無難です。

登録したら、自社の売りたいWebサイトをサイトM&A専門サービスに審査してもらいます。その後、サービスにより必要に応じて、仲介契約や秘密保持契約を結ぶ流れです。

サイト買収希望者との交渉

サイトM&Aは使うサービスの種類を問わず、気になる買収希望企業が見つかったら、交渉に入るのが基本です。交渉内容には、売却価格のほか、譲渡対象とする資産の内容も含まれます。買い手は対象サイトについて懸念点があれば、交渉で売り手に質問して解消を図るので、売却するサイトの情報をしっかりまとめて交渉に臨みましょう。

M&A仲介会社を通す場合は、面談日程の調整も依頼できます。交渉日程の調整をしている時間がない・手厚いサポートを受けたいという場合、費用は高い傾向にありますが、M&A仲介会社に依頼するのがよいかもしれません。

買収調査・事業譲渡契約の締結

事業譲渡ではサイトM&Aに限らず、買い手は買収する事業・資産を監査する「買収調査(デューデリジェンス)」を実施します。これは主に、買収後のリスクを調べるためです。

サイトM&Aの場合は、Googleアナリティクスやサーチコンソールなど分析ツールの閲覧許可を売り手から得て、サイトのデータと事前に提供された情報に食い違いがないか、また開示されていない事業上のリスクがないかなどを多角的にチェックします。

売り手には、買い手からの質問に対して、ポジティブな情報だけでなくネガティブな情報も含めて誠実に開示する姿勢が求められます。

買収調査(デューデリジェンス)で大きな問題がなければ、事業譲渡契約を締結してサイトM&Aが成立する流れです。

企業がサイトM&Aでサイトを売るときの注意点

サイトM&Aでのサイト売却には、いくつか注意したいポイントがあります。特に初めてサイトM&Aを実施する企業が見落としがちな点を、二つピックアップしました。

譲渡益に対して税金がかかる

事業譲渡の場合、サイトM&Aで得た譲渡益には税金がかかります。売り手が支払うべき主な税金は、以下の通りです。

  • 法人税:(事業の売却価格)-(譲渡資産の簿価)=「譲渡益」に法人税率をかけた額
  • 消費税:消費税課税資産の10%(売り手が預かって税務署に納める)

サイトM&Aにおける消費税課税資産は、特許権・著作権などの無体財産権です。譲渡益が大きいほど、税金も高くなることに注意しましょう。

参考:No.6145 資産の譲渡の具体例|国税庁

コンテンツの権利の所在を明らかにする必要がある

企業のWebサイトには、文章や画像・イラスト・動画などさまざまな要素があるはずです。これらをすべて自社で制作していたのなら、著作権も売却時に買い手へ譲渡すれば問題ありません。ただ、ライターやイラストレーター・デザイナーなど外部委託の人材に制作を依頼していた場合、業務委託契約の内容によっては著作権が自社に移っていない可能性があります。

もし制作者に著作権が残っていた場合、売却後に買い手がコンテンツを改変すると著作権侵害にあたる可能性があります。これは深刻なトラブルに発展し、売り手が買い手から契約不適合責任を問われ、損害賠償を請求されるリスクもあります。

売却前に権利の所在を必ずチェックし、可能な限り売却までに自社に著作権を譲渡してもらうよう調整しましょう。

円滑なサイトM&Aでまとまった資金を調達

サイトM&Aは2000年代初頭から広まり始め、現在でも活発に行われている取引です。始まった当初と比べて、サイトM&A専門のサービスやサイトM&Aを得意とする仲介会社も増えました。承継に当たって運営サイトの一部を手放してまとまった資金を得たい、主力事業に注力したいという場合、サイトM&Aは有力な選択肢となります。

サイトM&Aは、企業ごと買い取る株式譲渡ではなく、事業譲渡として実施されるケースがほとんどです。事業譲渡の形で行われるサイトM&Aの基本フローと注意点を把握して、円滑に資金を調達しましょう。

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