コンプライアンスとは?事業主が押さえるべき基本知識と、強化のポイント

コンプライアンスは、法令や倫理規範を守ることを指す概念で、企業が社会的信頼を得るために必要です。違反すれば法的に制裁を受ける恐れや、ブランド価値の低下を招く可能性もあります。事業主が押さえるべきポイントを解説するので、参考にしてみてください。

コンプライアンスとは?基本概念や重要性

コンプライアンスは企業が法令や規則を順守し、社会的な倫理基準を守ることを指す言葉です。近年、社会や取引先からの信頼を得る上で、重要性がますます高まっています。まずは、コンプライアンスの基本的な概念と重要性について、基本的なところを知っておきましょう。

コンプライアンスの定義

コンプライアンスとは、一般的に、社会的ルールや規範を守ることを指します。法律の順守にとどまらず、企業が社会的責任を果たすための行動規範を包括した概念です。公正な取引の実現や環境の保護、地域社会への貢献といった広範な取り組みも含まれます。

顧客や取引先との良好な関係を維持するのに加えて、社員との信頼関係を築き、持続可能な経営を実現するためにも、コンプライアンスの順守が欠かせません。

内部統制やコーポレートガバナンスとの違い

内部統制は企業活動を適切に管理する仕組みであり、コーポレートガバナンスは経営を透明かつ公正にするための体制を指します。

一方で、コンプライアンスはこれらを支える基盤ともいえる概念であり、内部統制やガバナンスを高めるにはコンプライアンスの順守が欠かせません。逆に、内部統制の不備がコンプライアンス違反につながるケースもあるので、それぞれ密接に関係しています。

事業主はいずれも重視する必要があり、それぞれを独立した要素として管理するのではなく、相互に補完し合う形で取り組むことが重要です。

コンプライアンスが重視される理由

コンプライアンスが重視される理由には、多くの企業による不祥事の発覚が挙げられます。不祥事により、顧客の信頼を失った企業は少なくないのが実態で、近年は不祥事が、SNSですぐに社会に拡散される傾向にあります。

情報の拡散による社会的信用の喪失は、企業にとって倒産を含む大きな損失につながるでしょう。そこで法令をきちんと順守するのみならず、ステークホルダーと良好な関係を築くことを重視する企業が増えています。経営戦略の中核として、コンプライアンスの順守を掲げる企業も目立つようになりました。

コンプライアンスの構成要素

コンプライアンスは一般的に、以下の3つの要素で構成されています。それぞれの要素について、概要を押さえておきましょう。

法令

コンプライアンスの基本は、法令を順守することです。例えば、労働基準法や個人情報保護法、公正取引に関する法律など、企業活動には多岐にわたる法律が関わっています。法令を守らない場合、罰金や行政指導といった直接的なペナルティに加え、社会的信用を失うリスクも伴います。 

企業は法令を正確に理解し、日々の業務で確実に反映する体制の構築が必要です。また、法改正に迅速に対応するための情報収集と、内部体制の整備も欠かせません。

企業規則(社内規程)

企業独自のルールである社内規程は、法令の順守を補完するものです。例えば、就業規則や就業ハンドブックなどには、社員が守るべき具体的な行動指針を盛り込みます。これらの規程は、社員の日常業務を明確化し、不明確な状況での判断を助ける役割も果たします。

社内規程を適切に設計し、定期的に見直すことで、実際の業務に即した内容を保つことが可能です。新入社員への説明や定期的な研修を通じて、全社員に周知徹底する必要があります。

企業倫理(倫理的規範)

法令や社内規程を守るだけでなく、社会全体の期待や倫理的な振る舞いも、コンプライアンスの要素です。例えば、環境保護への取り組みや地域社会への貢献といった活動は、法的な義務ではありませんが、企業の信頼性を高める行動です。

倫理的な基盤がある企業は、顧客や取引先からの評価も高くなり、競争力を維持しやすい傾向にあります。倫理的な規範を企業文化に根付かせるためには、経営層のリーダーシップが不可欠であり、経営者自身が行動で示すことが大事です。

コンプライアンスに違反するリスク

コンプライアンスに違反すると、企業は大きなリスクを抱えることになります。法的な制裁だけではなく、顧客離れやブランド価値の喪失など、経営全体に深刻な影響を及ぼしてしまいます。有名企業の違反事例を通じて、リスクの大きさを知っておきましょう。

コンプライアンスの違反事例

近年は食品偽装問題やデータ漏えい事件など、企業が多額の損害賠償を支払い、顧客からの信頼を失った事例が多くあります。さらに自社製品の性能データを改ざんしたり、不適切な保険商品を販売したりなど、業界・職種を問わず多くの企業がコンプライアンスに違反し、罰則を受けているのが実態です。

また、社員の知識不足や配慮不足により、コンプライアンス上の問題となるケースも珍しくありません。SNSでの社員の不適切な投稿により、所属企業のイメージが悪くなってしまった例もあります。

こうした問題は一時的な損失だけでなく、事業にも長期的な影響を与えるため、社員にコンプライアンスの重要性を理解してもらい、徹底順守を求めることが大事です。加えて、問題が起こり得るリスクを事前に察知・回避する仕組みも求められます。

コンプライアンス順守のための方策

コンプライアンスを順守するには、適切な仕組みづくりや社員教育が不可欠です。以下のポイントを意識して、経営層はもちろん社員一人一人が、日々の業務の中で、具体的な行動に落とし込める仕組みをつくりましょう。

明確な規範・ルールを作成する

コンプライアンス順守の第一歩は、具体的で明確な規範やルールを策定することです。社員全員が何を守るべきかを正しく理解し、行動の基準を共有できるようにしておきましょう。

規範やルールには、業界特有の法律や社内規程・倫理規範などが含まれるため、それぞれの企業に合った内容を明文化することが重要です。具体的な手順や事例を示すことで社員の理解を深め、現場で実践できるものにしましょう。

定期的に研修を実施する

規範やルールを策定するのに加えて、定期的にコンプライアンス研修を実施し、社員の意識を向上させることも重要です。研修では具体的な事例を取り上げることで、抽象的なルールを日常業務に結び付け、実践的な知識として身に付けてもらいましょう。

また、研修を通じて法改正や業界の動向も社員に共有し、最新の情報を取り入れた行動が取れるようにすることも大切です。オンライン研修やeラーニングを活用すれば、全社員が時間や場所を問わずに学べる環境を提供できるのがおすすめです。

相談用の窓口を設置する

社員がコンプライアンス上の問題に直面した際、気軽に相談できる窓口を設置することも重要です。匿名での相談が可能なルールにすれば、社員が周りに配慮したり問題を見逃したりせず、報告しやすい環境を整えられます。

また、窓口を利用した社員へのフォローアップも図ることで、社員からの信頼を得ることも大切です。社員が安心して相談できる環境は、社内のコンプライアンス違反を未然に防ぐ効果が高く、組織全体のリスク管理能力の向上につながります。

ツールやシステムを活用する

コンプライアンスの順守を徹底するには、適切なツールやシステムの活用も推奨されます。例えば、法令の改正情報を自動で通知するシステムを導入すれば、現場も最新の法規制に迅速に対応できるでしょう。内部統制を強化するための監査ツールや、社員の行動を管理・分析するシステムなども有効です。

コンプライアンスの重要性を理解しよう

コンプライアンスは、企業が信頼を得て持続的に成長するための基盤であり、事業運営において欠かせない要素です。法令の順守はもちろん、職場の規則や倫理的な行動基準を守ることで、社員や取引先・顧客と良好な関係を構築できます。

逆に、コンプライアンス違反は多額の損害や信用の失墜につながるため、予防と対策を徹底しなければいけません。経営層と社員が一体となり、定期的に研修を実施したり、リスク管理をサポートするツールを活用したりすることで、コンプライアンスを順守できる体制をつくり上げましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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