ぶら下がり社員とは?主な特徴や原因、具体的な対処法などを解説
仕事に消極的で、言われたことしかやらない「ぶら下がり社員」は、多くの職場で問題になっています。組織の生産性や雰囲気に悪影響を与える可能性もあるので、経営者や管理者はきちんと対処しなければいけません。ぶら下がり社員の特徴や対処法を解説します。
関連記事:社員のモチベーション向上の成功事例と具体的な取り組み10選を解説!
ぶら下がり社員とは?
最低限の業務しかこなさず、周りの成果に依存的な姿勢を取る社員は「ぶら下がり社員」と呼ばれ、近年とりわけ問題視されています。まずは、言葉の定義や混同しがちな用語との違いについて、押さえておきましょう。
ぶら下がり社員の定義
ぶら下がり社員とは、組織の中で自発的に動く意欲を欠いており、仕事の成果や責任を他者に依存しがちな社員を指します。業務を最低限こなすだけで、成長しようとしない社員であり、変化のない安穏な職場生活を望む傾向にあります。
こうした社員は、必ずしも能力が低いわけではなく、本来は優秀な人材であることも珍しくありません。しかし、仕事への関心を失っており、最低限の仕事しかしない状態に、慣れてしまっているケースが多くあります。職場環境や業務内容への不満などから、キャリアアップを諦めて現状に甘んじている人もいます。
混同しがちな用語との違い
最低限のパフォーマンスしか発揮しない「ぶら下がり社員」と混同しがちな用語に、フリーライダーやローパフォーマーなどがあります。
フリーライダーは他人の努力や成果に便乗し、自らの貢献を最小限に抑えようとする人です。意図的に自分の責任を回避しながら、周囲の成果に依存する傾向があります。一方で、ぶら下がり社員は必ずしも意図的に他者に依存しているわけではなく、最低限の仕事しかこなさないため、結果的に他の社員の成果に依存する形になるのが特徴です。
また、ローパフォーマーは仕事の生産性が低い人を指す言葉です。ぶら下がり社員のように、必ずしも仕事に意欲を持っていないわけではなく、単にスキル不足や経験不足の場合も少なくありません。
ぶら下がり社員がもたらす弊害
ぶら下がり社員は、組織に多くの弊害をもたらします。最低限の仕事はこなすため、職場の役に立っていないわけではありませんが、他の社員の士気の低下や、社員間の業務負担の偏りなどが起こる可能性があります。
特に、チームで仕事を進めるのが基本の職場では、ぶら下がり社員がいることで、全体のパフォーマンスが低下してしまうでしょう。ぶら下がり社員の態度が社内に広まる恐れもあり、新たな挑戦や業務改善が進まなくなる可能性もあります。優秀な社員が離職する原因にもなりかねません。
ぶら下がり社員の主な特徴
ぶら下がり社員には、いくつかの共通する特徴があります。以下のように、成長意欲が欠如していたり、仕事に対する諦観があったりする人が多く、競争や変化にうまく対応できていないケースもあります。よくあるパターンを知っておきましょう。
成長意欲が欠如している
ぶら下がり社員の大きな特徴の一つは、成長意欲の欠如です。新しい知識・スキルを学ぶ意欲が低く、業務の効率化や商品・サービスの品質向上などに、積極的に取り組むことはまずありません。
毎日同じような仕事を繰り返すだけであるため、ビジネスパーソンとして成長しないだけではなく、組織全体が変化にうまく対応できなくなる恐れもあります。他の社員にも悪影響を及ぼすため、早期に対処する必要があります。
仕事に対する諦観や割り切りがある
「どうせ変わらない」「自分が頑張っても無駄」といったように、ぶら下がり社員は仕事・職場に対する諦観や、割り切りの感情を持っている場合も多くあります。
入社した当初はやる気があっても、失敗を多く経験したり、組織の価値観・風土に合わなかったりして、主体性を失っているケースは珍しくありません。結果として最低限の業務しか行わず、全体の士気低下の原因となっている場合もあります。
競争や変化にうまく対応できない
ぶら下がり社員は、競争が激しい職場や変化の激しい環境にうまく対応できず、やる気を失っているケースもあります。周りについていけずに諦めてしまう人もいますが、現状維持を好み、新しい挑戦や変化への対応を避けるタイプも少なくありません。
入社当初は高いパフォーマンスを発揮していたとしても、仕事内容の変化や部署異動、新たなスキルの習得が求められる場面などで対応できなくなり、次第に消極的な態度へと変わっていくケースもあるでしょう。
もともと仕事へのモチベーションが高い社員であっても、ちょっとしたきっかけにより、ぶら下がり社員に変わってしまうこともあります。
ぶら下がり社員を見極めるポイント
ぶら下がり社員を見極めるには、まず日常的にどういった仕事の進め方をしているか、観察するのが基本です。例えば、業務への取り組み方が消極的だったり、周囲との連携を避けたりしている場合、仕事へのモチベーションを失っている場合があります。
それが一時的なものであれば、うまくフォローすることで解消できるケースも多いでしょう。しかし、長く改善が見込めないならば、社内での成長を諦めている可能性があります。
また、明らかに能力があるのに努力を怠っている場合や、フィードバックに対して反応が薄い場合なども要注意です。定期的なコミュニケーションや1on1などを通じて、当該社員が上記のぶら下がり社員の特徴を持っていないか、慎重に確認してみましょう。
ぶら下がり社員が生まれる原因は?
ぶら下がり社員への対策を考えるには、まず原因を正しく理解しなければいけません。ぶら下がり社員が問題となる背景には、さまざまな要因があります。ここで代表的なものを押さえておきましょう。
仕事の代わり映えのなさ
単調な業務の繰り返しや、ルーティンワークが多い職場環境では、社員が仕事に対して意欲を失いやすくなります。とりわけ自分の役割に変化がなく、新しい挑戦が求められない職場では、成長意欲を持ち続けるのが難しくなるでしょう。
もともと定型業務を好む人材も多くいますが、代わり映えのない環境が長く続くことで、社員は自己成長の機会を見出せず、仕事への関心を失う可能性があります。
不明確なキャリアパス
社員が職場での将来像をうまく描けない場合も、ぶら下がり状態を招く傾向にあります。昇進やスキルアップの機会が少なかったり、組織からの明確なキャリアパスの提示がなかったりすると、社員は目標を見失いがちです。
その結果、現状維持に甘んじる社員が増える可能性があります。特に、管理者によるキャリアの方向性に対する指導や助言が欠けている場合、問題が顕著になりがちなので注意しましょう。
旧態依然とした組織体制
柔軟性に欠ける古い組織体制や、トップダウン型の意思決定プロセスも、ぶら下がり社員が生まれる原因の一つです。社員が主体的に意見を出す場がなく、声を上げてもなかなか反映されない環境では、仕事へのモチベーションが下がってしまうでしょう。
ぶら下がり社員が増えるのみならず、優秀な人材の離職・転職を招くケースもあるので、社員が将来に向けてしっかりと努力できる環境を整える必要があります。
ぶら下がり社員への対処法
ぶら下がり社員の存在を放置すると、組織全体の成長を妨げるだけでなく、他の社員のモチベーションにも悪影響を及ぼします。以下のポイントを意識しつつ、組織としてきちんと対処するようにしましょう。
人事評価制度の見直しは必須
公平で透明性のある評価制度の構築は、社員の意欲を高めるとともに、社員一人一人が自らの理想とするキャリアを追い求める環境づくりに寄与します。ぶら下がり社員に対しても、目標達成度や業績を定量的に評価し、その結果を明確にフィードバックすることが大事です。
たとえ成長意欲を失っている社員でも、努力次第で待遇が改善できると分かれば、状況の改善を図る社員が出てくるでしょう。社員自身が役割や貢献度を見直し、積極的に行動を起こすように促す必要があります。
関連資料:【Excel形式】達成率やスコアを算出できる!目標設計・評価シート
研修制度やキャリアアップの機会を増やす
スキルアップや自己成長の機会がないことが、社員のぶら下がり状態を引き起こす原因の一つです。定期的な研修やキャリア相談の場を設け、社員が自身の成長を実感できる環境を整えましょう。個々のスキルや興味に合わせた研修内容を提供することで、社員の意欲を引き出しやすくなります。
さらに、キャリアアップの機会を明確にすることで、社員は自分の将来に対するビジョンを持ちやすくなり、日々の仕事へのモチベーションが向上します。
例えば、役職や専門職への昇進のルートを示すことで、自分の成長に対する具体的な目標を設定でき、より一層の努力を促せるでしょう。研修だけでなく、さまざまな業務を経験させたり、プロジェクトに参加させたりするのも効果的です。
マネジメント層の研修や意識改革も必要
ぶら下がり社員の発生を抑え、一人一人の社員がきちんとパフォーマンスを発揮する体制を構築するには、マネジメント層の意識改革も必要です。
各部門・部署の管理者には、部下の特性や状況を正確に把握し、適切な指導やフィードバックをするスキルが求められます。加えて、部下の成長を促すために、単に指示を出すだけでなく、それぞれの自主性を引き出す工夫も必要でしょう。
そこで、マネジメント層に対しても定期的な研修を実施し、部下を引き上げるリーダーシップの向上を図ることが大事です。コミュニケーション能力や問題解決力を強化する研修も実施することで、管理者がより良い指導者として、部下をきちんと導けるようにする必要があります。
ぶら下がり社員の解消を組織改革の第一歩と考える
ぶら下がり社員は、個人の問題であると同時に、組織全体の課題でもあります。社員のぶら下がり状態を改善するためには、個々の社員が意欲的に働ける環境の整備が必要です。定期的なフィードバックやキャリアアップの機会の提供など、各社員の状況に合わせたサポートを徹底しましょう。
また、マネジメント層の意識改革や研修を通じて、部下を適切に指導・育成できる体制を構築することも重要です。社員が自らの成長を実感し、組織の成長に貢献できる環境の構築を目指しましょう。