企業が福利厚生を充実させるメリットとは?実際の事例や施策とともに解説
福利厚生は単に制度を導入するだけでなく、従業員が実際に利用し、働きやすさを実感できる仕組みにすることが重要です。本記事では、福利厚生充実の必要性から具体的な施策事例、制度を活用してもらうための工夫まで、人事担当者が知っておくべき知識を詳しく解説します。
企業が福利厚生を充実させるべき理由
福利厚生の充実は、企業にとって単なるコストではなく、重要な経営戦略の一つです。その理由を詳しく見ていきましょう。
福利厚生は離職率の低下につながる
従業員が「この会社で働き続けたい」と感じる要因として、給与だけでなく働く環境や待遇面での配慮が重要な役割を果たします。福利厚生はまさに、従業員が働きたいと思える動機に直結する施策です。
福利厚生の充実により従業員のロイヤルティが向上すれば、長期的な雇用関係が築かれ、企業は安定した人材基盤を確保できます。
特に専門性の高い職種や経験豊富な人材については、その効果はより顕著に現れます。
採用活動における強力なアピール材料になる
優秀な人材の獲得競争が激化する中、福利厚生の充実は企業の魅力を高める重要な要素となっています。
求職者は給与水準だけでなく、ワークライフバランスや働きやすさを重視する傾向が強まっており、福利厚生制度の内容が企業選択の決定要因となることも少なくありません。
採用市場において他社との差別化を図るためには、独自性のある福利厚生制度や、従業員のニーズに合った制度の提供が効果的です。
特に若手人材や子育て世代の社員にとって魅力的な制度を整備することで、多様な人材の確保が可能になります。
また、充実した福利厚生制度は企業のブランドイメージ向上にも寄与します。従業員を大切にする企業として認知されることで、求人への応募数増加や質の高い候補者の獲得につながります。
従業員の満足度と生産性を向上させる仕組み
福利厚生の充実は従業員のモチベーション向上を通じて、組織全体の生産性向上をもたらします。働きやすい環境が整備されることで、従業員は業務に集中しやすくなり、創造性や積極性も高まります。
ストレス軽減も重要な効果の一つです。通勤や食事、健康管理などの日常的な課題に対する支援があることで、従業員は仕事に専念できる環境が整います。
加えてチームワークの向上も期待できるでしょう。同じ福利厚生制度を利用する従業員同士の連帯感が生まれ、組織全体の一体感向上につながります。
従業員の健康を維持できる
従業員の健康維持は企業にとって重要な投資です。健康な従業員は生産性が高く、欠勤率も低いため、組織全体の業績向上に貢献します。
健康関連の福利厚生には、定期健康診断の充実、人間ドック受診補助、フィットネス施設の利用補助、メンタルヘルス相談窓口の設置などがあります。
これらの制度により、疾患の早期発見や予防が可能になり、長期的な医療費削減効果も期待できるでしょう。
特に近年重視されているのがメンタルヘルス対策です。ストレス社会において、従業員の心の健康をサポートする制度は、離職防止や生産性向上に大きな効果をもたらします。
社員に喜ばれる福利厚生の施策
従業員のニーズに合った福利厚生制度を導入することで、満足度と利用率の向上が期待できます。ここからは、他企業で実践されている効果の高い福利厚生の具体的な施策を紹介します。
食事・健康支援系(社食、サラダ支給など)
食事関連の福利厚生は日常的に利用される制度であり、従業員の満足度が高い分野です。社員食堂の設置により、栄養バランスの取れた食事を手頃な価格で提供できるほか、昼食代の負担軽減にもつながります。
社員食堂の設置が困難な企業では、食事券や弁当補助、軽食の提供などの代替手段があります。最近では健康志向の高まりを受けて、サラダやフルーツの配布、オーガニック食材の提供なども注目されています。
飲み物の無料提供も手軽に導入できる制度です。コーヒーや茶類だけでなく、健康飲料や栄養ドリンクの提供により、従業員の健康促進と満足度向上を同時に実現できます。
住宅・通勤・リモートワーク支援制度
住宅関連の支援は従業員の生活費負担軽減に大きな効果があります。家賃補助や住宅ローン金利優遇、社宅の提供などにより、従業員の可処分所得向上に直接貢献できます。
通勤支援については、交通費の全額支給、通勤用自転車の貸与、シャトルバスの運行などがあります。通勤時間の短縮や負担軽減により、従業員のワークライフバランス改善が期待できます。
リモートワーク支援制度の重要性も高まっています。在宅勤務環境整備の補助、通信費の支給、必要機器の貸与などにより、多様な働き方を支援できます。これらの制度は特に子育て世代や介護を抱える従業員にとって価値の高い支援となり得るでしょう。
教育・自己啓発支援制度
従業員のスキルアップ支援は、個人の成長と企業の競争力向上を同時に実現する重要な制度です。資格取得支援、外部研修参加費補助、書籍購入補助などにより、従業員の学習意欲を促進できます。
社内研修制度の充実も効果的です。専門スキルの向上だけでなく、リーダーシップ研修やコミュニケーション研修などにより、組織全体のレベルアップが図れます。
最近では語学学習支援やプログラミング学習支援など、デジタル時代に対応したスキル習得支援も重要になっています。これらの制度により、従業員の市場価値向上と企業の競争力強化を両立できます。
育児支援・休暇制度
育児支援制度は働き方の多様化に対応する重要な制度です。育児休業の拡充、時短勤務制度、ベビーシッター利用補助、企業内託児所の設置などにより、子育てと仕事の両立を支援できます。
特別休暇制度の充実も従業員満足度向上に効果的です。リフレッシュ休暇、記念日休暇、ボランティア休暇、介護休暇などにより、従業員の多様なライフスタイルに対応できます。
これらの制度は女性活躍推進にも重要な役割を果たします。性別に関わらず安心して働き続けられる環境を整備することで、優秀な人材の確保と定着が可能になります。
ユニークな福利厚生の施策事例
独創的な福利厚生制度を導入することで、企業の個性を打ち出し、従業員の関心を高めることができます。
株式会社カヤックの「サイコロ給」制度
株式会社カヤックでは、毎月社員がサイコロを振り、その出た目の数(1~6)に応じて月給に上乗せされる「サイコロ給」制度を導入しています。この制度は給与に楽しさやゲーム性を取り入れた、画期的な取り組みとして注目されています。
サイコロを振る瞬間の盛り上がりや、結果に対する同僚との会話など、職場の雰囲気づくりにも貢献しています。
株式会社ジークレストの「推しメン休暇」
株式会社ジークレストでは、従業員が自分の「推し」の誕生日などに休暇を取得できる「推しメン休暇」制度を導入しています。
この制度は現代の多様な価値観やライフスタイルを認める姿勢を示すものとして話題になりました。
推しメン休暇は従業員の個人的な興味や関心を会社が理解し、支援する姿勢を表しています。
これにより従業員は自分らしさを大切にしながら働けると感じ、会社への愛着と満足度が向上します。
「推しメン」の記念日が休暇になる「推しメン休暇」制度などをはじめとした福利厚生制度 「STYLEプラス」を導入しました | ジークレストコーポレートサイト
株式会社サニーサイドアップの「目指せA身体(エーカラダ)制度」
株式会社サニーサイドアップでは、健康診断でA判定を取得した社員に報奨金を支給する「目指せA身体(エーカラダ)制度」を導入しています。この制度は従業員の健康管理を金銭的インセンティブで促進する取り組みです。
健康維持への意識向上だけでなく、医療費削減や生産性向上など、企業にとってもメリットの大きい制度となっています。従業員の健康への投資が長期的な企業価値向上につながることを示す好例です。
32の制度 | 企業情報 | PR会社 | 株式会社サニーサイドアップ | SUNNY SIDE UP Inc.
株式会社サイバーエージェントの「macalon(マカロン)パッケージ」
株式会社サイバーエージェントでは、女性社員の活躍を支援するため、妊活休暇や卵子凍結補助などを含む「macalon(マカロン)パッケージ」を導入しています。これは女性のライフプランに寄り添った画期的な制度として注目されています。
この制度により、女性社員は将来への不安を軽減し、キャリアと私生活の両立について長期的な視点で計画を立てることができます。企業としても優秀な女性人材の確保と定着に大きな効果を上げています。
株式会社トライバルメディアハウスの「Art Museum制度」
株式会社トライバルメディアハウスでは、社員の感性を高めるため、美術館の入館料を会社が負担する「Art Museum制度」を導入しています。この制度はクリエイティブな業務に携わる従業員の創造性向上を支援するものです。
文化的な体験を通じて従業員の視野を広げ、新たなアイデアや発想力の向上を期待しています。また、教養を高める機会の提供により、従業員の人間的成長も支援しています。
文化と制度 | 採用情報 | 株式会社トライバルメディアハウス
福利厚生制度を活用してもらうための工夫
優れた制度を導入しても、従業員に利用されなければ意味がありません。制度の活用促進には戦略的なアプローチが必要です。活用してもらえない制度があるとすれば、その原因と対策について具体的に紹介します。
制度が使われない原因
福利厚生制度の利用率が低い原因として、制度の存在を知らない、利用方法が分からない、利用しにくい雰囲気がある、ニーズに合っていないなどが挙げられます。
制度設計の段階で従業員のニーズを十分に把握していない場合、実際の利用に結びつかないことがあります。また、申請手続きが複雑だったり、上司の承認が必要だったりすると、利用をためらう従業員も多くなります。
職場の雰囲気や文化も利用率に大きく影響します。「制度を利用すると周囲に迷惑をかける」「真面目に働いていないと思われる」といった懸念があると、制度があっても利用されません。
従業員アンケートでニーズを正確に把握する
効果的な福利厚生制度の設計には、従業員の実際のニーズを正確に把握することが重要です。定期的なアンケート調査により、現在の制度に対する満足度、新たに求める制度、利用しない理由などを収集できます。
アンケートでは年代、性別、家族構成、職種などの属性別にニーズを分析することで、より細やかな制度設計が可能になります。また、自由記述欄を設けることで、想定していなかった要望や課題を発見できることもあります。
調査結果は従業員にフィードバックし、制度改善への取り組み姿勢を示すことも重要です。従業員の声が制度に反映されていることを実感してもらうことで、今後の調査への協力も得やすくなります。
福利厚生の充実におすすめのTUNAG
TUNAG(ツナグ)は、企業の福利厚生制度をより効果的に機能させるための「ベネフィット管理機能」を提供しています。
従来のような紙ベースや部署ごとの管理に依存せず、制度の案内、利用申請、承認、フィードバックまでをすべてクラウド上で完結。従業員にとっては分かりやすく、管理側にとっては運用負荷を軽減できる仕組みです。
さらに、アンケート機能を通じてニーズを集めれば、従業員に本当に求められる福利厚生制度の設計と改善が可能になります。
制度をただ並べるのではなく、「活用される福利厚生」に進化させたい企業にとって、TUNAGベネフィットは最適なソリューションです。
福利厚生制度は活用されてこそ意味がある
福利厚生は形だけで終わらせず、従業員が使いたいと思える仕組みに変えることで、エンゲージメントや業績の向上につながります。
制度の導入自体が目的化してしまい、従業員の実感や活用意欲がない状態では、効果は期待できません。重要なのは、従業員の実際のニーズに基づいた制度設計と、利用しやすい環境の整備です。
現行制度の棚卸しを行い、使われていない制度は廃止または再設計し、従業員が働きやすいと実感できる仕組みを導入することが重要です。
経営陣にもその重要性を説明し、福利厚生への適切な投資と長期的な視点での取り組みを進めることが、持続的な組織力向上につながります。
福利厚生の充実は単なるコストではなく、人材確保、定着率向上、生産性向上、企業イメージ向上など、多面的な効果をもたらす重要な経営戦略です。
従業員が真に価値を感じる制度の構築により、組織全体の成長と発展を実現していきましょう。