部下のエンゲージメント向上に効果的な1on1の実践ノウハウ。事前準備からかけ言葉、成果測定の方法を紹介

社内コミュニケーション施策のひとつとして1on1を取り入れているものの、形式的な実施となってしまっていませんか?日々の業務に追われ、対話の機会があっても深い関係性を築けないもどかしさを感じている方も多いのではないでしょうか。本記事では、エンゲージメント向上と人材定着へ確実につながる1on1の実践方法をご紹介します。明日からすぐに活かせる具体的なノウハウで、実のある1on1へ変えていきましょう。

【時間がない方のためのポイントまとめ!】

  • 1on1は上司と部下の信頼関係を築き、相互理解を深める貴重な機会
  • 形式的な1on1から抜け出すポイントは「準備と心構え」
  • 上司の適切な言葉かけが、部下の成長や信頼関係につながる
  • 1on1の効果を最大限に引き出すには、定期的な振り返りと評価も重要

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1on1の本当の意義と重要性を理解しよう

「1on1が形式的なものになっている」「時間をかけているのに成果に現れていない」という悩みを持つ方は、まずは1on1の本質について知ることが重要です。

適切な1on1は、職場におけるコミュニケーションの質を高め、部下やチームの成長を支援します。1on1本来の意義や重要性を理解することで、形式的な面談から一歩踏み込んだ対話が実現できます。

なぜ1on1が職場に不可欠なの?

そもそも、1on1は本当に組織や従業員にとって必要なのでしょうか。

もしかしたら「部下1人ひとりに時間を割いてまで、丁寧な1on1をする必要があるのか?」と考えている方もいるかもしれません。しかし、それだけの時間を割くだけの理由が1on1にはあります。

主な理由は2つです。1つ目は、部下の状態を知るために必要という点。目標達成率やモチベーション、日々の仕事で悩んでいることがないかなど、キャッチアップする機会はなかなかありません。

そして2つ目は、部下とのコミュニケーションの貴重な機会になるという点です。組織の規模が拡大するにつれ、上司と部下のコミュニケーション機会は自然と減少する傾向にあります。そうした状況下で1on1は、信頼関係を築き、相互理解を深める貴重な場として機能します。

部下にとっては自身のキャリアについて上司と率直に語り合える機会となり、上司にとってはチームメンバーの想いや課題を把握できる重要な接点となるのです。

評価面談との違い

1on1は、一般的な評価面談とは異なります。

評価面談が過去の実績を振り返り、今後の目標を設定する場だとするなら、1on1は部下の成長に焦点を当てた対話の場といえるでしょう。

また、評価面談の場のように、仕事にフォーカスした話題に終始するのではなく、部下の考えを知ったり、距離を縮めたりするためのコミュニケーションの場として1on1は重要な役割を持ちます。

形だけの1on1から抜け出そう

日程を決めて定期的に実施しているものの、実質的な対話になっていない1on1は思いのほか多いものです。

上司が一方的に話しすぎる、議事録作成に気を取られすぎる、雑談で終始してしまうなど、陥りがちな罠がいくつも存在します。

一方で優れた1on1では、部下が自身のキャリアや目標について深く考え、具体的なアクションプランを見出せるような対話が展開されています。

形式的な実施に留まらず、真の対話を実現するためには、後述する準備と心構えが不可欠なのです。

1on1の前に準備すること

効果的な1on1を実現するには、入念な事前準備が欠かせません。場当たり的な実施では、貴重な対話の機会を無駄にしてしまう恐れがあります。ここでは、準備段階で押さえるべきポイントを詳しく解説していきます。

定期的な日程調整のコツ

多忙な業務の中で定期的な実施を維持するために、予め数ヶ月先まで日程を確定させておきましょう。

加えて、部下の業務サイクルを考慮し、比較的余裕のある時間帯を選ぶことも重要です。月末や四半期末など、業務が立て込む時期は避け、部下が落ち着いて対話に臨める日程を選びましょう。

予定時間は最低でも30分、理想的には1時間を確保することをお勧めします。

部下の最近の状況を把握しよう

1on1に臨む前に、部下の近況を多角的に把握することは極めて重要です。業務の進捗状況はもちろん、チーム内での人間関係、最近の様子や変化にも目を配ります。

特に注目すべきは、普段と異なる言動や態度の変化です。残業時間の急な増加や、コミュニケーションの頻度の変化なども、重要なシグナルとなり得ます。

ただし、先入観を持ちすぎると、部下の本音を引き出せなくなる可能性もあります。状況把握はあくまでも対話の糸口として活用し、実際の1on1では部下の言葉に耳を傾けることを優先しましょう。

最適な場所の確保も重要

1on1の効果を最大限に引き出すには、実施場所の選択も重要な要素となります。

1on1では、普段は話せないような悩みやプライベートの話をすることもあるため、会議室などできるだけプライバシーが守られるような場所で実施するようにしましょう。場所選びを疎かにすると、周りを気にして本音で話すことができずに、無意味な時間となってしまう可能性があります。

また、オンラインでの1on1の場合は、双方がカメラをオンにし、通信環境の良好な場所を確保することが望ましいです。

重要なのは、部下が心理的な安全性を感じられる環境を整えることです。周囲の目を気にせず、本音で語り合える場所を選びましょう。

準備項目はリストで管理がおすすめ

上記のような準備項目を頭の中だけで管理するのではなく、チェックリストとして整理することで、抜け漏れを防ぎ、質の高い対話が実現できます。

ただし、準備に必要以上に時間をかけすぎると、チェックリストを埋めることに終始してしまい、かえって本質的な対話が疎かになる可能性があります。重要なのは、対話の質を高めるための最低限の準備を効率的に行うことです。

効果的な1on1を行うために準備項目を整理したいという方は、弊社で用意している「1on1実施準備チェックリスト」も活用してみてください。

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1on1中の基本的な流れを押さえよう

効果的な1on1を実現するには、部下が話しやすい進行を行うことが重要です。ここでは、1on1の基本的な流れを解説しますので参考にしてください。

アイスブレイクで緊張をほぐす

1on1の序盤では、リラックスした雰囲気づくりが欠かせません。いきなり業務の話題に入るのではなく、まずは気軽な会話から始めることで、部下の心理的な壁を取り除きます。

最近あった印象的な出来事や通勤時の出来事など、どちらにとっても負担のない話題を選ぶのが良いでしょう。また、前回の1on1以降に発生した良いできごとを共有するのも効果的です。

アイスブレイクに時間をかけすぎると本題に入れなくなる恐れもあるため、5分程度を目安に次の話題へと移行することを意識しましょう。

部下の近況や悩みに耳を傾ける

アイスブレイクの後は、部下の現状や課題に焦点を当てます。この際、相手の発言を遮らず、うなずきや相槌を適切に入れながら、話の内容を深掘りしていきます。

業務上の課題だけでなく、チーム内での人間関係や、キャリアに関する不安なども、自然と話題に上がることがあります。

重要なのは、すぐに解決策を提示しようとせず、話を最後まで聞くことです。話を遮って話し出したり、お説教するような真似は避けなければなりません。

まずは部下の気持ちに寄り添い、理解を深めましょう。時には沈黙も大切にしながら、部下が自身の考えを整理する時間を設けることも有効です。

目標の進捗状況を確認する

部下の状況を把握したら、次は設定された目標に対する進捗確認へと移ります。

目標の未達成を責めるのではなく、何が障壁となっているのか、どのようなサポートが必要かを一緒に考えることが重要です。

また、目標が現状に即していない場合は、見直しや修正を検討することも必要でしょう。進捗確認は、部下の成長を支援する機会として捉え、建設的な対話を心がけてください。

特に、部下が自ら課題を見出し、解決策を考えられるような質問を投げかけることが効果的です。

フィードバックを伝える

1on1におけるフィードバックは、部下の成長を促す重要な要素です。

ポイントは、良い点と改善点のバランスを意識することです。特に、普段見落としがちな小さな成果や努力も積極的に評価し、言語化することで、部下のモチベーション向上につながります。

改善点を伝える際は、一方的な指摘ではなく、部下の考えを聞きながら、共に解決策を模索する姿勢が大切です。

また、フィードバックは具体的な状況や行動に焦点を当て、感情的な表現を避けることで、より建設的な対話が可能となります。ただし、深刻な課題がある場合は、別途時間を設けて話し合うことをお勧めします。

次のアクションプランを一緒に考える

対話の最終段階では、具体的な行動計画の策定に移ります。このとき重要なのは、部下の主体性を重視し、上司が一方的に指示を出すのではなく、共に考えるスタンスを保つことです。

設定するアクションプランは、具体的で実現可能なものとし、期限や評価基準も明確にしておきます。また、必要なサポートについても話し合い、上司として何ができるかを伝えることで、部下の安心感につながります。

次回の1on1までに達成できそうな小さな目標から始め、徐々にステップアップしていく方法も効果的です。アクションプランは必ずメモを取り、双方で共有することを忘れずに行いましょう。

複数の質問内容を事前に用意する

どのような質問をするかは、前もって準備する必要があります。ただし、全ての部下に対して同じ質問をするのはNGです。部下の仕事や課題、悩みに応じて適切な質問を選択することが重要になります。

そのため、質問は実際に行う以上のパターンを用意しておくと良いでしょう。

たくさんの質問が思い浮かばないという方のために、1on1で使える質問を100個まとめた資料を用意していますので、ぜひ参考にして1on1に臨みましょう。

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効果的な1on1のための心構えとポイント

1on1を真に価値あるものとするには、適切な心構えと実践的なスキルが必要です。ここでは、上司として押さえておくべき重要なポイントについて解説していきます。

オープンマインドで臨む姿勢

効果的な1on1の基盤となるのは、上司のオープンな姿勢です。自分の考えを押し付けるのではなく、部下の意見や感情を受け止めることで、より深い対話が生まれます。

批判や否定を避け、たとえ意見が対立する場合でも、まずは相手の立場に立って考えることを心がけましょう。また、部下の発言に対して即座に解決策を提示するのではなく、共に考えるスタンスを保つことで、部下の主体性や問題解決能力の向上にもつながります。

特に重要なのは、部下の感情面にも配慮を示し、職場での不安や悩みにも寄り添える関係性を築くことです。

「聴く」と「話す」のバランス

1on1における理想的な発話比率は、上司3割、部下7割といわれています。上司が話しすぎると、せっかくの対話の機会が単なる指示出しの場になってしまう可能性があります。

特に重要なのは、「聴く」姿勢の質を高めることです。相手の言葉を最後まで遮らず、適切なタイミングで相槌を打ちながら、発言の背景にある感情や考えを理解することを心がけましょう。

一方で、上司からの発言も時には必要です。部下の成長に有益な経験談や、キャリアに関するアドバイスなど、状況に応じて適切な情報提供を行うことで、より充実した対話が実現できます。

ただし、自身の経験談に話が集中しすぎないよう注意が必要です。常に部下の成長を第一に考え、対話のバランスを意識しましょう。

部下の成長を第一に考える

1on1の本質は、部下の成長支援にあります。短期的な成果よりも、部下が自ら考え、成長していくプロセスを重視することが重要です。そのためには、すぐに答えを与えるのではなく、適切な質問を投げかけることで、部下自身が解決策を見出せるよう導きましょう。

また、失敗を恐れず新しいことにチャレンジできる環境を整えることも、成長支援には欠かせません。部下の興味や関心に耳を傾け、それに応じた成長機会を提供できないか、常に考える姿勢が求められます。

過度なプレッシャーは逆効果になるため、部下のペースを尊重しながら、着実な成長を支援することを心がけましょう。

対話する時間をしっかり確保する

1on1の時間を有効活用するには、限られた時間の中で対話に十分な時間を確保することです。細かな業務報告は事前にチャットやメールで済ませるなど、1on1でなくても良い内容は別の機会に共有し、1on1でしかできないテーマのために時間をとれる工夫をしましょう。

また、本番で議論が脱線した場合は、適切なタイミングで軌道修正を図ることも必要です。その一報で、時間管理に固執しすぎると、部下からすると事務的に感じられて、距離を感じてしまうこともあります。状況に応じて、予定時間を延長したり、次回に持ち越したりする判断も必要でしょう。

実施後の振り返りを徹底する

1on1の質を高めるには、実施後の振り返りと改善が不可欠です。毎回の1on1後に簡単な振り返りノートをつけ、次回への改善点を書き留めるといった方法がおすすめです。

振り返りのポイントは、対話の内容や部下の反応、時間配分の適切さなどです。特に、部下の発言や表情から読み取れるサインを見逃さないよう注意を払います。

また、逆に部下から上司に対するフィードバックを求めることも効果的です。1on1の進め方や頻度について、率直な意見を聞くことで、より良い対話の場を作ることができます。

1on1で使える!上司の心強い言葉かけ例

効果的な1on1を実現するには、適切な言葉選びが重要です。状況に応じた効果的な言葉かけが、部下の成長や信頼関係の構築につながります。

部下を褒める時の言葉

適切な称賛は、部下のモチベーション向上に直結します。その際、具体的な行動や成果を挙げながら褒めるとより効果的です。単に「よくやった」で終わらせるのではなく、「あの案件で顧客の要望を丁寧にヒアリングし、的確な提案ができていましたね」といった具体的な表現を心がけましょう。

また、努力のプロセスを認める言葉かけも効果的です。目標達成に至らなかった場合でも、その過程での工夫や粘り強さを評価することで、部下は次のチャレンジへの意欲を持つことができます。

もっとも、過度な褒め言葉は逆効果です。真摯な態度で、心からの称賛を伝えることを意識しましょう。

アドバイスをする時の言葉

建設的なアドバイスは、部下の成長を支援する重要な要素です。

例えば、「その考え方は面白いですね。さらに〇〇の観点を加えることで、より良い提案になるかもしれません」といった表現を用いることで、部下の意欲を削がずにアドバイスを伝えることができます。

そして、部下が自ら気づきを得られるような質問形式でのアプローチも効果的です。「もし同じ状況が発生したら、どのような対応が考えられますか?」といった問いかけにより、部下の思考を深めることができます。重要なのは、否定的な表現を避け、前向きな言葉選びを心がけることです。

支援を表明する時の言葉

部下が困難に直面した際、上司からの支援の言葉は大きな励みとなります。

具体的には、「あなたの成長のためにできる限りサポートします」「困ったことがあれば、いつでも相談してください」といった言葉で、上司の支援姿勢を明確に示すことが重要です。

加えて部下が新しいチャレンジをする際は、「失敗を恐れずに挑戦してください。結果はあとで一緒に振り返りましょう」といった言葉で、心理的安全性を提供することも効果的です。

ただし、過度な支援の約束は避け、実現可能な範囲で誠実なサポートを表明することを心がけましょう。

1on1がうまくいっているかチェック!

1on1の効果を最大限に引き出すには、定期的な振り返りと評価が欠かせません。ここでは、1on1の成果を測る具体的な方法について解説します。

部下の反応や変化を見る

1on1の効果は、部下の日々の言動や態度の変化に表れます。チェックポイントとしては、発言の積極性、業務への取り組み姿勢、チーム内でのコミュニケーションの質などが挙げられます。

そして1on1の場での発言内容の変化も重要な指標となります。当初は表面的な会話に終始していた部下が、次第に本音や将来の展望を語るようになれば、それは信頼関係の構築が進んでいる証といえるでしょう。

変化の現れ方には個人差があるため、すぐに変化が現れなくても焦ってはいけません。長期的な視点で観察することが大切です。

チームの雰囲気や成果をチェック

1on1の効果は、個人レベルだけでなく、チーム全体にも波及します。

変化を見るポイントとしては、チームメンバー間の自発的な協力の増加、会議での発言の活性化、問題解決のスピードアップなどがあります。

そして職場の雰囲気も重要な指標です。メンバー同士が気軽に意見を交換できる環境が整い、心理的安全性が高まっているかどうかを観察しましょう。

数値化が難しい要素ですが、日々の業務の中で感じ取れる変化を見逃さないことが重要です。

定期的なアンケートを活用する

1on1の効果を客観的に測定するには、定期的なアンケート調査が有効です。

アンケートでは、1on1の満足度、上司との信頼関係、キャリア展望の明確さなど、複数の観点から評価を行います。

リソースに余裕があれば自由記述欄を設けても良いでしょう。数値では表れない質的な評価も収集できます。

注意点としては、アンケート結果の匿名性を確保し、回答者が安心して本音を書ける環境を整えることが重要です。収集したデータは、1on1の改善サイクルに活かしていきましょう。

効果的な1on1は部下のやる気と生産性を引き出す

1on1は、単なる定例ミーティングではありません。部下の成長を支援し、組織の活力を高める重要な施策です。

重要なのは、形式的な実施に陥らず、真の対話を実現することです。そのためには、本記事で解説した準備や心構え、コミュニケーションスキルの実践が欠かせません。

1on1は、決して完璧を目指す必要はありません。試行錯誤を重ねながら、上司と部下がともに成長していく場として活用していくことが大切です。

部下の可能性を引き出し、組織の未来を創る1on1の実現に向けて、今日からできることから始めていきましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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