再入社が企業成長の鍵? 労働力不足時代に注目される理由と成功のポイント
少子高齢化による労働力不足や採用市場の変化を背景に、一度退職した社員を再び雇用する「再入社」が注目されています。本記事では、再入社が増加している背景やそのメリット、成功事例を紹介し、企業が再入社を有効活用するためのポイントについて詳しく解説します。
再入社が注目されている背景
深刻化する労働力不足や働き方の多様化を背景に、企業が優秀な人材を確保するための新たな手段として「再入社」が注目されています。
かつての職場に戻ることは、個人にとっても新たなキャリアの選択肢となりつつあります。なぜ今、再入社が増加しているのか、その背景を探ってみましょう。
少子高齢化による労働力不足
日本では少子高齢化が進行し労働人口が減少しており、多くの企業が人材確保に苦慮しています。特に経験豊富な即戦力人材の確保が難しく、新卒採用や中途採用だけでは組織の成長を維持することが困難になっています。
このような状況の中、過去に自社で働いた経験のある元社員を再び雇用する「再入社」が、人材戦略として有効な選択肢と考えられるようになりました。
働き方の選択肢が多様化している
テレワーク、副業・兼業の普及、フリーランスの増加など、働き方の選択肢が広がる中で、社員が一度退職しても以前の企業に戻るというキャリア選択が一般化しつつあります。
特に、転職先での経験を活かして再び同じ企業で活躍したいと考える人も増えており、企業側も柔軟な採用方針を取り入れるケースが増加しています。
採用難易度が上がっている
近年、優秀な人材の獲得競争が激化しており、特に専門スキルを持つ人材やリーダーシップを発揮できる人材の確保が難しくなっています。
加えて、新規採用には高いコストがかかるだけでなく、採用後のミスマッチによる早期退職のリスクも伴います。
こうした課題を解決する方法として、過去に勤務したことがあり、業務内容や企業文化を理解している元社員の再入社を積極的に受け入れる動きが強まっているのです。
再入社採用のメリット
企業にとって、再入社は単なる採用手段ではなく、大きな経営メリットをもたらします。
戦力の確保や採用リスクの軽減、コスト削減など、再入社がもたらす利点を詳しく解説します。
即戦力を採用できる
再入社する社員は、企業の業務内容や文化をすでに理解しているため、新規採用者と比較してスムーズに業務へ適応できる即戦力となります。
通常、新入社員や中途採用者には、企業文化の理解や業務の習得に一定の研修期間が必要ですが、再入社者の場合、このプロセスが大幅に短縮されます。
新規採用の社員に比べて研修期間が短く、業務の引き継ぎもスムーズに行えるため、企業側にとっては非常に効率的な採用手法です。
採用時のミスマッチが防げる
新規採用の場合、実際に働いてみるまで企業との相性が分かりませんが、再入社の場合、過去の経験から職場環境や業務内容を十分に理解した上で復職するため、採用のミスマッチを防ぎやすくなります。
これにより、再入社後の定着率が高まる傾向にあります。
採用・育成コストを削減できる
新規採用には求人広告費や面接・選考コスト、研修費などがかかりますが、再入社の場合、採用プロセスが簡素化され、育成にかかるコストも削減できます。
例えば、他社に転職した後に「やはり前職の企業文化の方が合っていた」「以前の職場での経験を活かして、より高いパフォーマンスを発揮できる」と考え、再入社を希望するケースがあります。
企業側も元社員のスキルや適性を把握しているため、新規採用に比べて確実な人材確保が可能です。このように、企業と社員双方にとってメリットのある雇用形態と言えます。
再入社の成功事例
実際に再入社制度を取り入れ、効果を上げている企業の事例を紹介します。三菱重工やみずほフィナンシャルグループなど、どのような仕組みが再入社の成功につながっているのかを見ていきます。
三菱重工業
三菱重工業株式会社は、退職した社員の再入社を積極的に受け入れる「ウェルカムバック(アルムナイ)採用」を実施しています。
この制度は、一度退職した社員が、新たな経験やスキルを身に付けた上で再び同社で活躍することを歓迎するものです。
対象者は、三菱重工業で1年以上勤務し、自己都合で退職した人であり、退職時期や理由を問わず登録可能です。会社への貢献意欲と意欲があれば、多様なバックグラウンドを持つ人材に門戸が開かれています。
導入して間もなく、ウェルカムバック採用サイトの登録者数は数百名に上ったといいます。これは、同社の企業文化や仕事への魅力を再認識した元社員が多いことを示しています。
みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループは、「カムバック アルムナイ採用」を導入し、退職者の再入社を積極的に受け入れています。
2020年には「みずほアルムナイネットワーク」を設立し、専用SNSを通じて産業調査レポートやアルムナイのインタビュー記事を提供しました。現役社員との交流イベントも開催し、新たな関係構築の機会を提供しています。
退職者からは「企業への愛着を持ち続けている」「ネットワークをビジネスに活かしたい」といった声が多く、企業と元社員のつながりを強化する取り組みとして成功を収めているのです。
再入社を成功させるためのポイント
再入社が企業と社員双方にとって有益なものとなるためには、適切な制度設計が必要です。退職者との関係維持や役職・待遇の明確化など、再入社を円滑に進めるためのポイントを解説します。
退職者に良い印象を残すための仕組みを構築
再入社を成功させるためには、退職時のフォローが非常に重要です。円満退職を促し、定期的な交流イベントや情報共有を行うことで、元社員との良好な関係を維持し、再入社の可能性を大きく高めることができます。
再入社を成功させるためには、退職時の丁寧な対応が不可欠となります。退職者が会社に対して良い印象を持ち続けることで、再入社の意欲が高まります。また、退職者向けのネットワーク(アルムナイ制度)を設け、定期的な交流イベントや情報発信を実施することで、元社員との継続的なつながりを維持しやすくなります。
このような仕組みを構築することで、元社員が「またこの会社で働きたい」と積極的に思える魅力的な環境を整えることが重要です。
以前と役職・待遇が違う場合は説明する
再入社する社員にとって、役職や待遇の変化は大きな関心事です。以前と異なる条件で雇用する場合は、その理由を明確かつ丁寧に伝えることが不可欠です。
さらに、再入社者がどのようなキャリアパスを歩めるのかを具体的に示し、長期的な成長の機会があることを伝えることで、よりスムーズな復職が可能となるでしょう。
企業側の意向だけでなく、再入社する社員の希望やキャリアビジョンを尊重しながら、双方が納得できるような調整を行うことが、再入社を成功に導く重要なポイントとなります。
再入社は企業と社員双方にとって新たなチャンス
再入社は、企業にとっては慢性的な人材不足を解消する有効な手段であり、社員にとっても新たなキャリアの可能性を広げる選択肢となります。
特に、即戦力の確保、採用リスクの軽減、コスト削減といったメリットを考慮すると、再入社制度の活用は今後ますます重要になるでしょう。しかし、再入社を成功させるためには、企業側が適切な制度を整備し、退職者との良好な関係を維持することが不可欠です。
本記事で紹介したポイントを参考にしながら、企業と個人の双方にとってメリットのある再入社の仕組みを構築し、より柔軟で持続可能な雇用環境を実現していくことが重要です。