半数以上が「本当の離職理由」を伝えていない! 離職兆候や見抜き方、離職防止策を徹底解説
多くの企業が頭を悩ませる課題のひとつが、優秀な人材の流出です。特に、会社として丁寧に育成し、将来を期待していた従業員の突然の退職は、大きな痛手となります。
彼らが会社を去る本当の理由、きちんと分かっていますか? 実は、退職のサインは、日々の行動や態度の中に隠されているのです。本記事では、離職の予兆を早期に発見し、適切な対策を講じるための実践的な方法をご紹介します。
【時間がない方のためのポイントまとめ!】
- 半数以上が会社に本当の離職理由を伝えていない
- 本当の離職理由には待遇以外のものも多く、会社の取り組み次第で防ぐことができる
- 「離職兆候を見抜き、離職を抑止すること」「離職が起こりづらい組織を作ること」の両軸で進めていくことが重要
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従業員の本当の離職理由とは?
従業員が退職を決意する背景には、様々な要因が複雑に絡み合っています。表面的には「キャリアアップを目指したい」「ワークライフバランスを重視したい」といった前向きな理由が語られることも多いでしょう。
しかし、退職経験者4,658名を対象とした2024年のエン・ジャパンの調査によると、半数以上が本当の退職理由を会社に伝えていません。

本当の退職理由を伝えなかった理由の第1位は「話しても理解してもらえないと思ったから」(46%)でした。具体的な理由・エピソードを見てみると、離職を決意する前に会社に不信感を抱いたことが背景となっているものも目立ちます。以下に、一部抜粋してご紹介します。
- 何も変わらないと思っていたし、辞める決心がついていたため伝える意味がないと思った。(20代男性)
- 退職以前の面談で、会社に対する不満を言ったことがあったが聞いてもらえなかったため。(20代女性)
- 有給取得を申請したところ、理由をしつこく聞かれたり、威圧的な態度で迫られた経験があり、退職時も同様の態度を取られることに懸念があった。(30代男性)
参考:「本当の退職理由」調査(2024) | エン・ジャパン(en Japan)
会社に伝えた離職理由とその裏にある本音
それでは、本当の退職理由とは何なのでしょうか?
同調査によると、会社に伝えた離職理由の第1位は「別の職種にチャレンジしたい」、第2位は「人間関係が悪い」、第3位は「家庭の事情」でした。
一方で、「会社に伝えなかった本当の退職理由」としては、1位に「人間関係が悪い」、2位に「給与が低い」、次いで「会社の将来性に不安を感じた」「評価・人事制度への不安」があがっています。
一見すると順調に働いているように見える従業員でも、こうした不満を抱えている可能性があるのです。

ここで注目すべきが、待遇や条件以外の離職理由が目立つということです。
「給与が低い」「残業・休日出勤が多かった」「福利厚生他、待遇が悪い」などの待遇面での離職理由は、会社としてもある程度想定している理由かもしれません。しかし、「人間関係が悪い」「会社の将来性への不安」「評価・人事制度への不満」「成長の実感がなかった」などは、会社としても検知しづらく、対策もしづらい離職理由ではないでしょうか。
こうした離職理由が生まれるような社内状況を放置すると、離職者が止まらないだけでなく組織全体にも以下のような悪影響が及びます。
- 人間関係が悪い:心理的安全性が低下するため情報が適切に共有されず、ミスや遅延が増えたり、生産性低下につながる。
- 会社の将来への不安&成長実感がない:成長したいという気持ちを持つ優秀な人材から離職していき、管理職や幹部社員が育たず事業拡大できないどころか現状維持すら危うくなる。
- 評価・人事制度への不満:離職に至らない従業員もモチベーションが下がり、生産性が低下する。
全てではないが、防げる離職もある
先述したすべての離職を防ぐことは現実的ではありませんが、多くの従業員は入社時から退職を考えているわけではなく、日々の業務環境や人間関係の中で徐々に離職を意識し始めます。つまり、適切な対応により防げる離職は存在します。
特に待遇面での離職は採用時点でのミスマッチの可能性が高い一方で、「人間関係」「会社の将来性」「成長実感」「評価制度」による理由は、適切な施策により状況を改善できる可能性が高いと言えます。
「すでに離職兆候が出ている社員を見抜き、離職を抑止する」「そもそも離職兆候が出ないような組織づくりをする」の両軸で進めていくことが重要です。
離職兆候を見抜くためのポイント
離職は突然起こるものではありません。その前には必ずサインが存在します。ここからは、離職につながる可能性のある行動や態度の変化を、3段階に分けて解説します。
離職兆候は3段階で現れる
離職を考える従業員には、一般的に以下の3段階の兆候が現れます。それぞれの特徴を理解し、適切に対処することで、離職を未然に防ぐことが可能です。
1. 初期段階:「意識の変化」
特徴:仕事に対する取り組み方や態度に微妙な変化が現れます。
- 以前は積極的だった業務に対して関心が薄れる。
- 「この仕事をやる意味が分からない」など、仕事への疑問や将来の不安を漏らすことが増える。
- 成長や自己実現への焦りを感じ始める。
2. 中期段階:「行動の変化」
特徴:具体的な行動として変化が表れます。
- 会議での発言が減少し、プロジェクトへの参加意欲が低下。
- SNSや私用電話など、業務外の活動が増える。
- 業務の進捗が滞り、納期ギリギリの対応が目立つようになる。
3. 最終段階:「決意」
特徴:実際の転職活動が始まる時期です。
- 履歴書の準備や転職サイトの利用、求人への応募を始める。
- デスク周りの私物整理や、有給休暇の取得増加などの兆候が現れる。
- 上司や同僚に対して「話がある」と退職意向をほのめかす。
特に重要なのが初期段階での早期発見です。この時期に適切な対応を取ることで、離職を防げる可能性が最も高くなります。
以下では、段階別の対策について解説します。
初期段階:ネガティブな発言から始まる初期兆候を掴む
離職の初期段階では、従業員の普段の会話に微妙な変化が現れます。たとえば、「この仕事って意味あるんですかね?」「自分の成長につながっているか分からない」といった仕事への疑問や、将来に対する不安が増えることが典型的です。会社の方針や業務内容に対して、以前よりも批判的なコメントが目立つようになる場合もあります。
こうした発言は、現状への不満や将来への不安があることを示しています。管理職はこれらを単なる愚痴として聞き流すのではなく、従業員が抱える潜在的な課題を示す重要なシグナルとして捉えるべきです。
適切なタイミングで1on1ミーティングを実施し、従業員の声に真摯に耳を傾けることで、早期の対処が可能になります。
中期段階:業務への関心が薄れる中期兆候を逃さず察知する
中期段階になると、業務に対する姿勢に明確な変化が表れ始めます。会議での発言が減少し、新しいプロジェクトへの参加に消極的になります。また、以前なら積極的に提案していたアイデアの共有が減少したり、締切間際まで作業を後回しにしたりする傾向が出てきます。業務時間中に私用のスマートフォンを見ている時間が増えたり、長時間の私用電話が増えたりするケースも見られます。
このような行動の変化は、会社や仕事への関心が薄れている証拠であり、早急な対応が必要なサインです。この時点で迅速に対応しないと、離職意向が固まり、挽回の余地が小さくなります。
定期的な業務状況の確認やキャリア相談を通じて、従業員のモチベーションを回復する施策を講じることが求められます。
最終段階:「話がある」と伝えられる最終兆候にどう対応する?
「話がある」という申し出は、多くの場合、既に離職を決意している段階での発言です。この時点では、別の就職先が決まっているケースも少なくありません。
しかし、この段階でも適切な対応により、状況を改善できる可能性があります。上司や人事は以下のポイントを踏まえて対応しましょう。
- まずは相手の話を最後まで聞き、退職の理由を具体的に把握する。
- 退職理由が会社で解決可能な課題であれば、改善策や条件変更を検討する。
- ただし、短絡的な条件引き上げでの慰留は避け、根本的な問題解決に目を向ける。
この段階では、全ての離職を防ぐことは現実的ではありません。しかし、退職者からのフィードバックを基に職場環境や制度の改善を図ることで、他の従業員が同じ理由で離職するリスクを減らすことができます。
離職を早期発見する具体的な手法とは?
3段階に分けて離職兆候を解説しましたが、上司も人事部も一人ひとりの社員の状態をじっくり観察している時間はありません。そこで、離職検知のツールや仕組みを全社的に導入するのが効果的です。
ここでは、3つの具体的な手法をご紹介します。
コンディションチェック
出勤時あるいは週1回程度、「今日の体調や気分はどうですか?」「業務の負担はどうですか?」などの簡単なアンケート調査で、従業員の心身の状態やモチベーションを把握します。
一定期間コンディションが悪い従業員は離職兆候の出ている可能性が高いです。
エンゲージメント診断
「事業に共感しているか」「同僚を信頼しているか」などをアンケート調査で回答してもらい、組織の状態をチェックします。
コンディションチェックが従業員一人ひとりの内面に焦点を当てた調査であるのに比べ、エンゲージメント診断は「従業員の会社に対する信頼や共感、貢献意欲」を測るのに優れており、離職要因の推定にも活用できます。
AIツールの活用
勤怠データ、業務システムの利用状況、社内コミュニケーションツールでの発言内容など、複数のデータソースを統合的に分析できます。
「残業時間の急激な減少」「社内チャットでの発言の質的変化」といった働き方の変化を自動的に検知し、従業員の離職兆候を掴みます。
1on1面談や人事面談
定量的には表現しきれない心境の微妙な変化や具体的な改善提案を聞き取ることができます。
上司との1on1面談だけでは本音を話しづらいという人もいるため、人事担当者との面談を組むのも良いでしょう。ただし、プライバシーへの十分な配慮は必須です。
社員が「この会社で働き続けたい」と思う環境づくり
離職検知と併せて、ボタンの掛け違いによる離職が起きづらい組織づくりを進める必要があります。このセクションでは、そんな組織づくりのポイントを解説します。
心理的安全性を担保する
心理的安全性とは、チーム内で安心して意見を述べたり、失敗を共有したりできる環境のことを指します。
心理的安全性の本質は、「完璧である必要はない」というメッセージを、日々の行動で示すことにあります。例えば新人が緊張した面持ちでプレゼンをしているとき、「もっと自信を持って!」と励ますのではなく、「緊張するのは当然だよね。私も最初の頃は資料を読み上げるだけで精一杯だったよ」と、自身の経験を重ねることで、相手の緊張を解きほぐすことができます。
重要なのは、こうした環境づくりを「イベント」にせず、日常的なコミュニケーションの中に織り込んでいくことです。
チームや部署の会議では、全員が発言できる機会を意図的に設け、どんな意見も否定せずに受け止める姿勢を示します。新しいアイデアや改善提案に対しては、たとえ採用されない場合でも、提案自体を評価し、建設的なフィードバックを返すことが重要です。このような取り組みを通じて、メンバーは自由に意見を述べ、創造的な議論ができる環境が醸成されていきます。
従業員がキャリアビジョンを描ける環境を作る
従業員が自身の将来像を具体的に描けることは、長期的な定着を促す重要な要素です。そのためには、まず明確なキャリアパスを提示することが必要になります。職位や役割ごとに求められるスキルや経験を明示し、それらを獲得するための具体的な道筋を示しましょう。
しかし、単にキャリアパスを図示しただけでは、従業員の不安は解消されません。大切なのは、キャリアの「選択肢」と「実現可能性」を同時に示すことです。
例えば、入社5年目の技術職の社員が管理職を目指すか、専門性を極めるかで悩んでいるとします。このとき必要なのは、単なる将来像の提示ではありません。それぞれのパスで求められるスキル、実際の業務内容、さらには両立する道があるのかまで、具体的に示すことです。
また、キャリア面談では、「あなたはどちらに進みたいですか?」という質問から入るのではなく、「どんな時に最もやりがいを感じますか?」「5年後、どんなスキルを持っていたいですか?」といった、より本質的な対話から始めることが効果的です。
加えて、社内公募制度や部署間異動の機会を設けることで、従業員が主体的にキャリアを選択できる環境を整えることも効果的です。外部研修や資格取得支援など、自己啓発を促進する制度も重要な要素となります。
柔軟な働き方を整える
働き方の柔軟性は、従業員の仕事と生活の調和を支援し、離職防止に大きく寄与します。具体的には、フレックスタイム制やリモートワークの導入、短時間勤務制度の整備などが挙げられます。
しかしながら、制度は整っているのに、利用率が低い企業も少なくありません。使う社員が少なければ制度の維持費のみがかかり結局不満は解消されないため、利用率を上げるために次の三つの障壁を取り除く必要があります。
心理的な障壁
「周りに迷惑をかけるのでは」「評価に影響するのでは」という不安の解消には、管理職自身の行動が鍵を握ります。育児中の部長が「今日は子どもの運動会で15時に抜けます」と堂々と宣言する。一見当たり前の行動ですが、これが部下の背中を押す大きなメッセージとなります。
業務的な障壁
その人が休むことで仕事が止まってしまうような状態では休みにくいでしょう。属人化を防ぎ業務の見える化を進めることは、働き方改革の大前提となります。例えば、重要な業務の手順書作成やクロストレーニングの実施は、チーム全体の柔軟性を高める効果があります。
マネジメントの障壁
リモートワークでは「部下の様子が分からない」という管理職の不安が、制度活用の足かせとなることがあります。ここで重要なのは、「時間」ではなく「成果」に基づくマネジメントへの転換です。週次の目標設定と振り返り、こまめなオンラインチェックインなど、新しいマネジメントスタイルの確立が求められます。
また、制度の利用状況を可視化することも効果的です。「先月のフレックスタイム利用率は部署全体で65%でした」といった情報共有は、利用を促進する力となります。ただし、これは「利用を強制する」ためではなく、「利用できる」ことを示すためのものです。
最も重要なのは、これらの取り組みが「特別なこと」ではなく「当たり前のこと」となることです。そのためには、小さな成功事例を地道に積み重ね、組織文化として定着させていく必要があります。柔軟な働き方は、単なる制度ではなく、「個人の事情も大切にしながら、組織としての成果も追求する」という、新しい働き方の象徴なのです。
日常のコミュニケーションで信頼感を高める
効果的な日常コミュニケーションは、組織の信頼関係構築の基盤となります。
特にリモートワーク環境下では、これまで当たり前だった「廊下での立ち話」や「昼食時の雑談」が失われがちです。しかし、それは必ずしもコミュニケーションの質の低下を意味するわけではありません。
例えば、チャットツールでON/OFF両面のコミュニケーションチャンネルを設けたり、定期的なオンラインティーブレイクを実施したり。むしろデジタルツールを活用することで、より意図的で効果的なコミュニケーションが可能になるのです。
重要なのは、「話しやすい雰囲気」を作ることです。それは決して「明るく楽しく」を強制することではありません。むしろ、「今日は調子が上がらない」と正直に言える環境。そんな本音のコミュニケーションこそが、真の信頼関係を築く基盤となります。
また、業務上の報告だけでなく、従業員の小さな成功体験や努力を認め、称賛する機会を意図的に作ることも重要です。オンライン・オフラインを問わず、気軽に相談できる雰囲気づくりを心がけ、従業員が抱える課題や不安を早期に把握できる環境を整えましょう。
働きがいがあり働きやすい職場を作る具体的な施策
このセクションでは、従業員のエンゲージメントを高めて離職を予防するための具体的な施策と、その実施方法について解説します。適切な初期対応により、多くの離職を防ぐことが可能です。
1on1ミーティングの効果的な進め方
1on1ミーティングは従業員との信頼関係を構築し、本音を引き出すための重要な機会です。効果的な1on1のためには業務の進捗確認に終始するのではなく、キャリアの方向性や将来の希望について深く話し合うことが重要です。
具体的には、以下のポイントを踏まえて行いましょう。
業務進捗以外の話題に焦点を当てる
業務の進捗確認だけでなく、「最近やりがいを感じた瞬間」「現在の仕事で最も困難に感じていること」「将来挑戦したいこと」など、従業員の内面的なモチベーションに焦点を当てます。
聞き方を工夫する
まずはオープンクエスチョンを活用して、従業員が話しやすい雰囲気を作ることが重要です。その上で、「〇〇という話がありましたが、△△についてはどう感じていますか?」など、本質的な回答を引き出す質問を投げかけましょう。
アクションにつなげる
ミーティング内容を記録し、具体的なアクションを次回のミーティングでフォローアップします。この一貫したプロセスが信頼を構築します。
一方的に話をするのではなく、相手の話をじっくりと聞くことが重要です。また、従業員からの質問や提案には、可能な限り具体的なアクションやフィードバックを返すよう心がけます。
社長メッセージの運用ポイント
会社の進む方向やこれからの事業展開について、社長自ら発信することで従業員は会社の将来像を描けるようになります。そうすることで、キャリアイメージを描くことができ、成長意欲につながります。
また、社長が頑張りを労り日々の業務への感謝を伝えることで、従業員は「自分たちのことをちゃんと見てくれているんだ」と感じることができ、モチベーション向上や組織の一体感の醸成につながります。
伝え方としては、以下の2点がポイントです。
全従業員に直接メッセージを届ける
中間管理職からの伝聞などではなく、社長から全従業員に直接届けることが重要です。紙の社内報や社内報アプリ、社内の情報共有ツールで定期的に発信するのがおすすめです。
動画を通して社長自身の言葉で語りかける
動画は社長が顔を出し、自分の言葉で従業員に語りかけることができるため、とても効果的な方法です。
普段あまり社長と接点のない従業員も、動画で顔を見て声を聞くことで、社長の人物像を感じる機会を作ることができます。
サンクスカードだけじゃない! 称賛の取り組み
従業員同士の感謝や称賛の取り組みとして多くの企業が実施している「サンクスカード」。承認欲求を満たし、内発的動機づけとしてモチベーション向上につながる人気の施策です。
しかし、ただサンクスカードをやるだけでは称賛文化は作れません。以下の点に注意しましょう。
段階的に称賛の取り組みを浸透させる
いきなりサンクスカードを始めても、従業員はどんな行動を称賛すれば良いのか分からず、サンクスカードを送ることができません。そこで、下記の3つのステップで称賛の取り組みを浸透させるのがおすすめです。
- 知る:他の従業員や部署について、業務内容や人となりを知る
- 理解・共感する:なぜ称賛をするのか理解し、共感を深める
- 称賛する:称賛すべき行動を見つけて、自ら称賛する

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透明性のある評価制度で信頼を築く
透明性のある評価制度は、従業員の信頼を高め、組織へのコミットメントを強化する鍵です。曖昧な基準や不透明な評価プロセスがあると、不公平感が生まれ、モチベーションが低下します。そのため、評価基準は明確かつ具体的に設定する必要があります。
たとえば、職位ごとのスキル要件や期待される成果を明示し、従業員が何を目指せば良いかを明確にします。
評価の際には、数値目標の達成度だけでなく、行動特性や成長過程も考慮した総合的な判断が不可欠です。そして評価結果はただ伝えるだけではなく、従業員の成長に繋がる具体的なフィードバックを提供することで、次のステップを示しましょう。
社内イベントや研修
社内イベントや研修は、従業員同士の関係性を強化し、組織への帰属意識を高める重要な機会となります。
ただし、形式的な実施では効果は限定的です。部署横断的なプロジェクトチームの編成や、社員主導の勉強会の開催支援、メンター制度の導入など、従業員が主体的に参加できる仕組みづくりが重要です。
また、外部講師を招いた専門性の高い研修や、リーダーシップ開発プログラムなど、従業員の成長欲求に応える施策も効果的です。イベントを設計する際には、以下のポイントを押さえましょう。
実践的な学びの場づくり
- 現場の課題をテーマにしたワークショップ型研修
- 異なる部署のメンバーによる課題解決プロジェクト
- 社外専門家を交えた実践的なスキル研修
自発的な学習コミュニティの支援
- 業務時間内での勉強会開催の推奨
- 学習に必要な環境・ツールの提供
- 知見共有のためのナレッジベース整備
効果測定とフォローアップ
- 研修後の行動変容の確認
- 学んだスキルを実践する機会の創出
- 上司による実践サポート体制の構築
社内イベントや研修を通じて、従業員は新しい知識やスキルを獲得するだけでなく、社内ネットワークを広げることができます。
エンゲージメントサーベイ「TERAS」で組織の課題を可視化し、危険信号を早期発見する
TERAS(テラス)は、組織のエンゲージメントを診断し、課題を可視化するための強力なツールです。エンゲージメントスコアを通じて組織の現状を把握し、離職リスクやパフォーマンス低下といった「危険信号」を早期に発見することで、迅速な対応を可能にします。
従業員満足度や職場環境、キャリア成長の実感など、多角的な質問を含む設計が特徴です。これにより、単なる表面的な満足度ではなく、根本的な課題を浮き彫りにします。
部署ごとのエンゲージメントスコア分析で課題を特定
TERASのもう一つの強みは、部署単位でのスコア分析です。これにより、組織全体のエンゲージメントだけでなく、特定の部署やチームが抱える課題を具体的に特定することができます。
例えば、ある部署で「コミュニケーション」のスコアが低い場合、それはリーダーシップやチーム間連携に問題がある可能性を示唆します。一方で、「成長実感」のスコアが低い場合は、キャリア開発や研修機会の不足が課題として浮かび上がるでしょう。こうしたデータを基に、課題に応じた具体的な施策を講じることが可能です。
危険信号の出ている部署への迅速な対応策
エンゲージメントが低下している部署には、迅速かつ具体的な対応が必要です。TERASは危険信号を早期に発見できるため、以下のような対策をすぐに検討・実行できます:
- 課題に応じた施策の実施:
例えば、コミュニケーション不足には1on1の強化やチームビルディングの実施、成長実感の低下にはキャリア面談やスキル研修の導入が効果的です。 - リーダーへのフィードバック提供:
部署ごとの結果をリーダーに共有し、課題解決のためのサポートを行います。リーダー自身が従業員の声に向き合い、必要な変革を主導することが重要です。 - 継続的なモニタリング:
サーベイを定期的に実施し、施策の効果を確認しながら適宜調整することで、長期的な改善が可能となります。
TERASの導入は、単なる診断にとどまらず、組織のエンゲージメント向上を支援し、従業員が安心して働ける環境づくりを実現します。
「TUNAG」で離職を防ぐ組織づくりと相談しやすい環境の構築
TUNAGは、従業員のつながりを深め、経営層との距離を縮めることで、離職防止に役立つ仕組みを提供します。1on1ミーティング、社長メッセージ、サンクスカード、社内イベントなど、働きがいがある職場や働きやすい職場を作る具体的な施策を網羅的に運用できます。
1on1ミーティングの報告で成長を促進
TUNAGに1on1ミーティングの報告を提出してもらい、社員一人ひとりの面談内容を記録・蓄積。上司や人事部がフォローアップに活用することで、社員の成長を促進します。報告のフォーマットを統一することで1on1ミーティングで話すべきことを全社で統一できるため、上司のマネジメント能力に左右されない全社的な教育の仕組み作りも行えます。
株式会社遊楽では、TUNAGで上司と部下それぞれが1on1ミーティングの報告を上げています。「上司は十分に話を聞いたと感じたが、部下はそう感じていない」などのギャップを検知することに活用しており、より効果的に1on1ミーティングを実施して部下の成長や学習を促進しています。
サンクスカードや表彰制度で従業員の貢献を可視化
TUNAGのサンクスカード機能は、日々の業務で生まれる感謝や貢献を見える化し、チーム内で共有できます。努力が見過ごされずに評価されることで、従業員の承認欲求が満たされ、働きがいを感じやすくなります。
また、「サンクスカードを一番多くもらった人、一番多く送った人」を表彰するという活用方法もおすすめです。優れた取り組みを会社全体で称える仕組みを整備することで、モチベーションが向上し、離職リスクを軽減できます。
社長メッセージの発信で経営層との距離を縮める
経営層からの直接的なメッセージは、従業員の不安を和らげ、組織への信頼感を高める効果があります。TUNAGを通して、テキストや動画で社長が定期的に会社のビジョンや取り組みを発信することで、従業員が経営層の考えを理解しやすくなり、会社の将来への不安が解消され、一体感が生まれます。
また従業員が「会社に見守られている」「社長は自分たちの頑張りを見てくれている」という安心感を抱きやすくなり、離職を防ぐ要因となります。
情報の透明性を高め、業績以外の定量的な評価制度で、社内の信頼関係を強化する
TUNAGはスマホアプリでも利用できるため、PCを貸与されていない人や社用メールアドレスを持たない人も含め、全従業員に一斉に会社からのお知らせを発信できます。人事異動や制度変更、新しいプロジェクトの進捗状況などをタイムリーに共有でき、従業員の不安を軽減できます。さらにサンクスカードやナレッジ共有などの投稿数を評価に組み込む導入企業もいます。会社として推奨する行動をTUNAG上で計測し、それを評価に組み込むことも可能です。
正確で迅速な情報共有は、従業員間の信頼関係を強化し、「必要な情報が得られる環境」で働く安心感を提供します。
社内イベントや研修の予告・開催報告で、学びや交流を促進
TUNAGでは社内イベントや研修を事前に予告して参加者を募集したり、写真や動画、資料付きで開催報告を投稿することができます。
研修後のレポート投稿まで実施すれば、学びをより深めるだけでなく、全社で学びを可視化・共有して社員同士で切磋琢磨し合う仕組みづくりまで実現できます。
離職兆候の早期発見と、日頃からの離職対策を両軸で進めよう
本記事では、従業員の離職を早期に察知し、離職を防止するための具体的な方法を解説しました。
従業員が安心して働き続けられる環境を作ることは、離職を防ぐだけでなく、活躍社員のパフォーマンスをさらに向上させることにもつながります。従業員のサインを見逃さず適切に対処することが、離職防止だけでなく組織の持続的成長を実現するための重要なポイントです。
今日から取り組める具体的な方法を参考に、ぜひ第一歩を踏み出してみてください。