X理論・Y理論をマネジメントで生かす!特徴と使い分けを事例で紹介

X理論・Y理論は、ダグラス・マクレガーによって提唱されたモチベーション理論です。企業では、従業員への動機付けやマネジメント手法を決定する際に用いられます。理論の特徴や活用場面、X理論・Y理論を組み合わせた「Z理論」について解説します。

X理論・Y理論とは何か

企業運営では、X理論・Y理論をベースにしたマネジメント手法が取り入れられています。これらは、働く人のモチベーションに関する両極端の考え方を示したもので、「マズローの欲求段階説」がベースです。具体例を挙げながら、X理論・Y理論の概要を説明します。

マクレガーが提唱した対立的な理論

X理論・Y理論は、アメリカの心理・経営学者ダグラス・マクレガー(1906~1964)が提唱した理論です。1960年に発表した著書『人間の側面(The Human Side of Enterprise)』の中で、人間の性質や働く動機(モチベーション)に関する二つの見解を示しています。

  • X理論:人間は本来怠け者であり、外部の指示がなければ仕事に取り組まない
  • Y理論:人間は自己実現や成長機会を求めて、主体的に仕事に取り組む

マクレガーは、管理者の基本的な信念やマネジメントスタイルが企業運営に大きな影響を与えると考えました。半世紀以上前に提唱された理論ですが、従業員の潜在的な能力やモチベーションを引き出すための指針として、人材育成や人事管理などの場面で活用されています。

ベースはマズローの欲求段階説

X理論・Y理論は、「マズローの欲求段階説」がベースです。説によると、人間の欲求は5段階に分類され、一つの欲求が満たされるごとに、ワンランク上の欲求が生まれます。

  • 1段階:生理的欲求(生命を維持するために必要な欲求)
  • 2段階:安全欲求(安全で安心できる生活を維持したい欲求)
  • 3段階:社会的欲求(集団に所属したいという欲求)
  • 4段階:承認欲求(価値ある存在と認められたい欲求)
  • 5段階:自己実現欲求(能力を発揮して理想を実現したい欲求)

以下のように、X理論は「低次欲求」の行動モデル、Y理論は「高次欲求」の行動モデルに対応します。

  • X理論:人は生理的欲求や安全欲求を求めて働く
  • Y理論:人は社会的欲求・承認欲求・自己実現欲求を求めて働く

X理論の特徴

X理論は、マズローの欲求段階説における低次欲求と対応します。基本となる考え方やX理論のマネジメントが有効な場面を見ていきましょう。

「人は怠け者である」が基本

X理論は、「人は元来怠け者である」という考え方が基本です。「人間の本性は悪であり、努力・修養で善に至る」という中国の性悪説に似た考え方といえます。

X理論から導き出されるマネジメント手法は、「アメとムチ」です。命令と罰則によって強制的に管理し、目標を達成できた際には褒美を与えます。

生理的欲求や安全欲求など、低次元の欲求が満たされてない発展途上国では、X理論のマネジメントが通用しやすい傾向があります。法律で罰則を設け、国を統治するのもX理論に基づいたやり方といえるでしょう。

X理論のマネジメントが有効な場面

X理論とY理論は、職務や業務内容によって使い分けるのが望ましいとされています。X理論のマネジメントが有効な場面は、以下の通りです。

  • 機密情報を扱う業務
  • 危険を伴う業務
  • 厳格な基準がある業務
  • 定型化されている事務作業
  • 新人への指導

正確性が重視される業務や不注意が命取りになる業務、厳格な基準が設けられている業務は、X理論のマネジメントが適しているといわれます。具体的には、工場のラインや高所での工事、危険物の取り扱いなどが該当します。

右も左も分からない新人に対しては、的確な指示・命令が欠かせません。最初のうちはミスや抜け漏れが多いため、X理論で管理した方が効率的です。

Y理論の特徴

Y理論は、マズローの欲求段階説における高次欲求と対応します。Y理論のマネジメントが有効なのはどのような場面なのでしょうか?基本の考え方や活用方法について理解を深めましょう。

「人は自ら進んで働く」が基本

Y理論は、「人は自ら進んで働く」という考え方が基本です。「人には元々善の性質がある」という中国の性善説と類似しています。

マズローの欲求段階説では、社会的欲求・承認欲求・自己実現欲求の行動モデルに当てはまるため、X理論のようなアメとムチのマネジメントは通用しません。

グリム童話「北風と太陽」に例えれば、Y理論は太陽です。彼らは自己実現のために自ら進んで行動するため、働き手の自主性を尊重する必要があります。

低次の欲求が満たされた現代社会においては、X理論よりもY理論に基づくマネジメントが効果的とする意見もあるようです。

Y理論のマネジメントが有効な場面

Y理論のマネジメントが有効なのは、創造性や自発性が必要とされる場面です。

  • 商品・サービスを開発する業務
  • 最先端技術を研究する業務
  • 想像力や創造力の発揮が求められる業務
  • 顧客とのコミュニケーションを必要とする業務
  • スタートアップ企業やベンチャー企業

企業内においては、従業員のエンゲージメント向上にも役立ちます。「エンゲージメント(engagement)」は、誓約・約束・婚約などを意味する言葉ですが、従業員エンゲージメントというと、企業と従業員、または従業員同士の信頼関係を意味します。

Y理論に基づくアプローチは、従業員の創造性や自主性を引き出すだけでなく、企業への貢献意欲を高めることにもつながるのです。

エンゲージメント向上には「TUNAG」がおすすめ

多くの企業では、「優秀な人材が定着しない」「経営ビジョンが浸透しない」などの課題を抱えていますが、エンゲージメント向上に向けた取り組みこそが、組織課題の根本的な解決につながります。

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X理論・Y理論の改良版「Z理論」とは?

「Z理論」は、X理論・Y理論の改良版といわれています。それぞれの良い部分が合わさっているのが特徴で、日本独自の経営手法が参考にされています。Z理論のベースとなる考え方を理解しましょう。

X理論・Y理論は完全ではない

Z理論は、「X理論・Y理論は不完全である」という考え方から生まれています。そもそも、人間の欲求は常に変化するものです。X理論とY理論のいずれにも当てはまらないケースもあれば、両者の中間に当たるケースもあるでしょう。

また、企業活動や仕事の内容は、さまざまな要素によって成り立っています。実際のところ、X理論だけ、またはY理論だけでうまくいかないことも多く、両者の使い分けが求められます。

マクレガーも自身の理論が万能ではないことを認め、両者の融合を目指しましたが、志半ばでこの世を去りました。

Z理論は「仲間意識」がキーワード

Z理論は、アメリカの経済学者であるウィリアム・オオウチが提唱しました。1970~1980年代における日本企業とアメリカ企業の比較から生まれたもので、X理論・Y理論を一歩進めた理論として知られています。

Z理論は、共通の価値観や組織文化によって、個人のモチベーションは自然に向上するという考え方です。Z理論の組織には、平等で親密な「仲間意識(クラン)」があり、個人は自分の欲求よりも組織全体の目的を優先します。

Z理論が生まれた経緯は日米の違い

日本は戦後、目覚ましい発展を遂げました。日系3世のオオウチは、日本企業とアメリカ企業の経営手法を比較し、日本が経済的成長を遂げた理由を見いだそうとします。

「日本型経営はX理論とY理論の良い部分を合わせたもの」という仮説を立てて調査を進めたところ、日本的経営手法を備えたアメリカ企業は、世界的な優良企業として評価されていることが分かりました。

オオウチは、日本特有の経営システムとして、終身雇用や遅い昇進、非明示的な評価などを挙げています。日本型経営企業を「J型」、アメリカ型経営企業を「A型」、両者の長所を併せ持つ企業を「Z型」と名付けました。

X理・Y理論・Z理論を組織づくりに生かす

X理論・Y理論は、半世紀以上も前に提唱された理論でありながら、現代でもマネジメントに生かされています。外部からの指示や管理が必要な場面と、従業員の自主性を重んじるべき場面を見極めながら、両者をうまく使い分ける必要があるでしょう。

Z理論においては、組織の一体感が鍵となります。価値観の共有やエンゲージメントの強化、社内コミュニケーションに課題を抱えている企業は、TUNAGのようなツールを導入するのも有効です。

マネジメント層は、従業員の欲求レベルや業務内容に応じて、X理論・Y理論・Z理論を柔軟に活用しましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
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