組織風土とは?定義や構成要素、改革プロセスについて解説
組織風土は目に見えないものですが、従業員の行動や判断、ひいては企業の業績にまで大きな影響を与えます。しかし、抽象的な概念であるが故に、具体的にどう捉え、どう改善すればよいのか分からないという声も少なくありません。本記事では、組織風土の定義から構成要素、類似概念との違い、そして具体的な改革の進め方まで詳しく解説します。
組織風土とは何か
「組織風土を変革せよ」という経営層からの指示に直面しても、「具体的に何を、どこから着手すれば良いのか」と戸惑うことは少なくありません。組織風土は捉えどころのない抽象的な概念と見なされがちですが、実際には企業経営の根幹を成す極めて重要な要素です。
ここでは、組織風土の本質を理解するために、その定義と構成要素、そして企業経営への影響について詳しく見ていきましょう。
組織風土の定義と基本知識
組織風土を理解するには、まず「風土」という言葉の意味から考えてみましょう。風土とは、ある地域で長い時間をかけて培われてきた気候や環境、そこから生まれる独特の雰囲気や文化のことを指します。
この「風土」の概念を組織に当てはめたのが「組織風土」です。具体的には、企業や組織内で長年培われてきた雰囲気や価値観、行動様式のことを指します。従業員が日々の業務の中で「当たり前」として受け入れている考え方や振る舞い方と言い換えることもできるでしょう。
例えば、会議で若手社員が自由に発言できる雰囲気があるか、失敗を許容する文化があるか、部署間の連携がスムーズか。こうした目に見えない組織の特性が、組織風土として表れます。
組織風土が企業経営に与える影響範囲
組織風土は抽象的な概念ですが、企業経営の実務に具体的な影響を及ぼします。その影響範囲は想像以上に広く、組織のあらゆる側面に関わっているのです。
まず、従業員の働きがいやモチベーションに直結します。風通しの良い組織風土では、従業員が自分の意見を言いやすく、挑戦する意欲が湧きやすくなります。一方、上意下達が強く、失敗が許されない組織風土では、従業員は萎縮し、指示待ちの姿勢になりがちです。
次に、離職率にも大きく影響します。居心地の良い組織風土であれば、従業員は長く働き続けたいと感じるでしょう。逆に、ハラスメントが黙認されるような組織風土では、優秀な人材から離れていってしまいます。
生産性の面でも無視できません。協力的な組織風土では部署間の連携がスムーズで、業務効率が上がります。しかし、縦割り意識が強い組織風土では、情報共有が滞り、無駄な業務が発生しやすくなります。
このように、組織風土は従業員満足度から業績まで、企業経営の根幹に影響を与える重要な要素なのです。
組織風土を構成する3つの要素(ハード・ソフト・メンタル)
組織風土は漠然としたものではなく、大きく3つの要素から構成されています。これらを理解することで、組織風土改革の具体的なアプローチが見えてきます。
第一の要素は「ハード面」です。これは組織の制度や仕組みといった、目に見える構造を指します。人事評価制度、給与体系、昇進の基準、業務プロセス、オフィスレイアウトなどが含まれます。
第二の要素は「ソフト面」です。これは組織内の人間関係やコミュニケーションの質を指します。上司と部下の関係性、同僚同士の協力体制、部署間の連携状況などが該当します。日常的な声かけや感謝の言葉が飛び交う職場かどうかも、ソフト面の特徴として組織風土に表れます。
第三の要素は「メンタル面」です。これは従業員が共有している価値観や信念、暗黙のルールを指します。「お客様第一」「挑戦を恐れない」「チームワークを大切にする」といった、明文化されていなくとも組織内で共有されている考え方がこれに当たります。
組織風土と類似概念の違い
「組織風土」「組織文化」「企業風土」「社風」などの言葉は似ているようで、実は微妙に異なる意味を持っています。しかし、日常的にはこれらの言葉は混同されがちです。
組織改革を進める上では、これらの概念の違いを理解しておくことが重要です。ここでは、それぞれの違いを明確にし、組織風土という概念をより深く理解していきましょう。
組織文化との違い
組織風土と組織文化は、最も混同されやすい概念です。両者は密接に関連していますが、焦点を当てている側面が異なります。
組織文化は、組織の根底にある価値観や信念、理念といった「考え方の基盤」を指します。企業が大切にしている哲学や、創業者から受け継がれてきた精神性など、より深層的で本質的な要素です。変化しにくく、長期的に継承されていくものといえます。
一方、組織風土は、その組織文化から生まれる「実際の雰囲気や行動パターン」を指します。従業員が日々感じている職場の空気感や、実際にどのような行動が取られているかという、より表層的で可視化しやすい要素です。
つまり、組織文化は組織の深層にある「価値観や信念」であり、組織風土はそこから生まれる「日々の行動や雰囲気」という表層的な現れです。
企業風土との違い
企業風土と組織風土は、ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。しかし、厳密には使われる文脈に違いがあります。
企業風土は、その企業全体を特徴づける雰囲気や価値観を指す際に使われます。「あの会社の企業風土は保守的だ」というように、企業を一つの単位として捉えた表現です。外部から見た企業の特性を語る際に用いられることが多いでしょう。
一方、組織風土は、企業内の特定の組織や部署に焦点を当てることもできる、より柔軟な概念です。「営業部の組織風土」「本社と支社の組織風土の違い」というように、企業内の小さな単位でも使用できます。
社風との違い
社風は、最も日常的に使われる言葉ですが、組織風土とは少し異なるニュアンスを持っています。
社風は、その会社の「雰囲気」や「カラー」といった、より感覚的で印象的な側面を表す言葉です。「アットホームな社風」「体育会系の社風」「自由な社風」というように、その会社の持つ全体的な雰囲気をひと言で表現する際に使われます。
組織風土と比べると、社風はより表面的で、外部の人からも認識しやすい特徴を指すことが多いでしょう。就職活動中の学生が「この会社の社風が自分に合うか」と考える際、服装の自由度や社員の雰囲気、オフィスの様子といった、目に見える要素を重視しています。
組織風土改革の進め方
「組織風土を変革しよう」と決断したものの、具体的に何から手をつけるべきか途方に暮れてしまう企業は多いでしょう。
ここでは、実践的な組織風土改革のアプローチを3つのステップで紹介します。現状の可視化から具体的な施策まで、明日から取り組める内容です。
組織サーベイツールを活用した風土の可視化
組織風土改革の第一歩は、現状を正確に把握することです。しかし、組織風土は目に見えないため、感覚だけで判断すると誤った認識に陥りがちです。経営層が感じている組織の雰囲気と、現場の従業員が感じている実態には、しばしば大きなギャップがあります。
そこで活用したいのが、組織サーベイツールです。
組織サーベイでは、従業員エンゲージメント、心理的安全性、コミュニケーションの質、マネジメントへの満足度など、さまざまな観点から組織の状態を測定します。部署別、年代別、役職別といった切り口で分析することで、組織内のどこに課題があるのかが明確になるでしょう。
組織風土の可視化には、「TERAS(テラス)」のような専門的なサーベイツールの活用が効果的です。TERASは組織課題を多角的に分析し、改善のためのアクションプランまで提示してくれます。定期的に調査を実施することで、施策の効果測定も可能になります。
段階的な改革計画を立てる
現状が可視化できたら、次は具体的な改革計画を立てます。ここで重要なのは、一度に全てを変えようとしないことです。組織風土は長年かけて形成されたものであり、改革には通常1〜3年程度の期間を要します。段階的なアプローチを取りましょう。
まず、サーベイ結果から見えた課題に優先順位を付けます。すべての課題に同時に取り組むのは現実的ではありません。影響範囲が大きく、改善の効果が見えやすいものから着手するのが効果的です。
例えば、「上司との1on1が形骸化している」という課題が見えた場合、まずはマネージャー向けの1on1研修を実施し、実施率や質を高めることから始めます。小さな成功体験を積み重ねることで、従業員の信頼を得られ、次の施策への協力も得やすくなります。
組織風土改革は長期戦です。焦らず、着実に進めることが成功の鍵となります。
会議や組織体制などの慣例を見直す
組織風土を変革するためには、基盤となる制度や慣例の見直しが不可欠です。
例えば、毎週月曜日の定例会議が形骸化していないか確認しましょう。参加者が報告を聞くだけで、実質的な議論や意思決定が行われていない場合、その会議の必要性自体を見直すべきです。無駄な会議を削減することは、従業員の生産性向上と満足度向上に直結します。
また、組織体制の見直しも重要です。部署間の壁を作る「縦割り組織」が問題となっている場合、プロジェクト型の組織体制を部分的に導入することで、部署を越えた連携が促進されやすくなります。
慣例や体制を変更する際は、その背景や理由を従業員に丁寧に説明することが肝要です。変革の目的や期待される効果を具体的に伝え、従業員からの意見も取り入れる姿勢を見せることで、変化への抵抗を和らげることができます。
組織風土改革は持続的成長をもたらす
組織風土改革は、単なる職場環境の改善にとどまりません。それは企業の持続的成長を実現するための、最も重要な経営戦略の一つです。
健全な組織風土が根付いた企業では、従業員一人一人が自発的に考え、行動します。指示待ちではなく、自ら課題を見つけ、解決策を提案する文化が生まれるのです。このような組織では、現場から業務改善のアイデアが自然と上がり、新しい取り組みへの挑戦も活発になります。結果として、変化する市場環境にも柔軟に対応できる体制が整います。
組織風土の可視化や改善施策の実施には、「TUNAG」のようなツールの活用も効果的です。TUNAGでは、従業員エンゲージメントサーベイ「TERAS」による組織診断から、コミュニケーション活性化、制度運用まで、組織風土改革に必要な機能を包括的に提供しています。
組織風土という目に見えない資産に投資することで、企業の持続的成長という確かな成果を手に入れることができるのです。













