一方的なコミュニケーションとは?特徴や招く弊害、改善方法を解説
コミュニケーションは双方からの発信が前提ですが、中には年齢や役職が弊害となり、コミュニケーションが一方的になってしまう管理職やリーダーもいます。こうした言動は、社員の離職要因や職場の雰囲気の悪化につながるため、放置できない問題です。この記事では、一方的なコミュニケーションとは何か、よくあるケースや対策を紹介します。
一方的なコミュニケーションとはどんな言動を指すのか
役職を盾にしたパワハラや業務命令など、一方的なコミュニケーションは組織運営の弊害としてしばしば話題に上がります。
この問題は、どの組織にも起こりうるということです。たとえ管理職にその気がなかったとしても、部下には「一方的なコミュニケーションを取る人だ」と思われてしまうこともあります。
そうならない組織作りのために、まずは「一方的なコミュニケーション」の定義や例を知り、日頃から自身が行っていないか、または従業員が行っていないかをチェックしましょう。
この記事では、コミュニケーションが一方通行になってしまう具体的な状況や心理的背景を掘り下げ、どのような言動が問題になるのかを詳しく解説していきます。
相手の反応を無視した「伝えるだけ」のやりとりが該当する
一方的なコミュニケーションとは、話し手が自分の考えや情報を伝えることだけに集中し、相手の理解度や反応を考慮しないやりとりのことを指します。
相手が納得しているかどうかに関心を払わず、「伝えることが目的」になってしまっている状態です。意図的に行っているケースはあまりなく、指摘した際には「そんなつもりはなかった」となることがほとんどです。
そのため、経営者や管理職は一方的なコミュニケーションを取る従業員がいないかを、チェックする必要があります。
一方的なコミュニケーションの具体例
一方的なコミュニケーションにはいくつか典型的なパターンがあります。主なケースとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 上司が部下に業務の指示を出す際、「とにかくこれをやっておいて」とだけ伝え、作業の目的や進め方、期日を具体的に伝えない
- 会議で上司が一方的に話し続け、参加者の理解度や意見を一切確認しない
- 先輩社員が後輩に業務を引き継ぐ際、詳細な手順や注意点を伝えず「マニュアルを見れば分かるから」と突き放すように伝える
- ミスが発生した時、上司が状況や原因を確認することなく、「なぜこんなことをしたんだ」と一方的に叱責する
いずれのケースも該当者に自覚がないことがほとんどで、立場の弱い部下や後輩が注意するわけにもいかず、放置されることが少なくありません。
空気を読ませる文化や心理的な距離が言動を一方通行にする
一方的なコミュニケーションは、実は当人だけでなく職場環境や企業文化に問題があるケースも多いのです。
よくあるのが「空気を読む」という風潮です。「社内の人間なら分かることをあえて説明しない」という文化は、新入社員や中途採用の社員にとって仕事の弊害になります。
また、質問したいことがある従業員がいたとして、「ここで質問するのは空気が読めない」と思って質問をしなければ、意図を誤解したまま業務を遂行してしまう可能性があるのです。
結果として意見交換が行われず、一方的な指示や伝達のみが繰り返される状況になります。
このような環境下では、部下の自主性や創造性が発揮されず、組織全体の生産性やモチベーションが低下することになります。
なぜ一方的なコミュニケーションが起きてしまうのか
「気づけば自分ばかり話している」「部下が意見を出してくれない」といった問題行動の背景には、組織構造や教育の偏りがあるかもしれません。一方的な伝達が起こる要因を探り、改善の糸口を見つけましょう。
上下関係による萎縮と「聞く力」の欠如が原因となる
一方的なコミュニケーションが頻繁に発生する主な理由の一つに、職場内の強い上下関係や、それによって生じる萎縮が挙げられます。
特に、日本企業の多くで見られる「上司の言うことが絶対」という文化が根付いている環境では、部下が率直に意見を述べたり、疑問を呈したりすることに躊躇してしまう傾向があります。
一方で、上司側が自分の考えを伝えることに集中し、相手の意見や感情を積極的に聞こうとしない「聞く力」の不足も問題です。
このような状況では、部下の意見が表面化せず、結果として上司が部下の本音や現場の課題を把握できないまま、一方的な伝達が続いてしまいます。
表情・視線・態度など非言語の要素が軽視されている
コミュニケーションにおいて、実は言葉以外の非言語的要素(表情や視線、声のトーンや態度)が非常に大きな役割を果たしています。
しかし、コミュニケーションが不足している組織では、こうした非言語的要素が軽視され、言葉による伝達ばかりに意識が集中してしまう傾向があります。
相手の表情や態度を見て、その場で適切なフォローを行うといった配慮が行われないと、受け手側は理解不足や心理的なストレスを感じやすくなります。
非言語的な要素への配慮が欠けると、信頼関係の構築が難しくなり、最終的に意思疎通が困難になるのです。
「伝える技術」だけに偏り、対話の設計が不足している
近年、ビジネススキルとして「伝える技術」が注目され、研修やセミナーでも頻繁に取り上げられています。
しかし、「伝える技術」ばかりに焦点が当たってしまうと、本来コミュニケーションに必要な「双方向の対話」が不足することになりがちです。
コミュニケーションの本質は、情報を一方的に流すことではなく、相手の理解や反応を引き出しながら意見を交わすことにあります。
対話が前提となった設計が不十分だと、相手が本当に内容を理解しているかを確認する場が失われ、結果的に一方的なコミュニケーションが生じる原因となります。
一方通行のコミュニケーションをどう改善できるか
一方的なコミュニケーションの根本にあるのは、コミュニケーションに対する認識がすれ違っていることです。
こうしたコミュニケーションのすれ違いを防ぐには、実は「伝える技術」以上に「聴く姿勢」が重要です。話し手と聞き手が共に心を開いて対話できる環境をつくるために、具体的な改善策を紹介していきます。
相手を尊重しながら伝える「アサーティブさ」を身につける
一方通行のコミュニケーションを改善する方法の一つとして、「アサーティブさ」を身につけることが効果的です。
アサーティブとは、相手を尊重しつつ、自分の意見や感情もはっきりと伝えるコミュニケーションの手法です。
「自分の言いたいことを我慢する」または「相手の気持ちを無視して強く主張する」といった極端な対応を避け、適切な距離感と敬意を持った対話が可能になります。
アサーティブなコミュニケーションを意識的に取り入れることで、伝え手・聞き手双方の理解が深まり、コミュニケーションの質が大幅に向上するでしょう。
「聞く時間」を意識的に設ける1on1で信頼関係を築く
コミュニケーションを改善するためには、定期的な「1on1ミーティング」の実施が効果的です。特に、上司が部下の話を聞く時間を明確に設け、意識的に耳を傾ける姿勢を見せることが重要です。
1on1では、普段は意見を出しづらい部下も心理的安全性が高まり、自分の考えや課題を自然に表現できるようになります。
上司が積極的に聞く姿勢を持つことで、相互の信頼関係が深まり、より活発なコミュニケーションを促進できます。
「話を聞いてもらえている」という安心感が生まれることで、部下のエンゲージメントやモチベーションの向上にも繋がります。
組織全体で対話を促す「TUNAG(ツナグ)」を活用する
一方通行になりがちな社内コミュニケーションを改善するには、組織全体での対話を促進するツール「TUNAG」を活用する方法もあります。
TUNAGは社内SNS型のプラットフォームであり、経営層から現場スタッフまで誰もが自由に意見や情報を共有できる仕組みを提供しています。
日々の業務報告や感謝のメッセージ、また社内の改善提案などを双方向で気軽に発信できるため、一方的な情報発信ではなく、常に双方向の対話が促されます。
結果として、社内コミュニケーションの透明性や活性化につながり、風通しのよい企業文化の醸成を実現できるでしょう。
一方通行のやり取りをなくすことが組織の強さを生む
一方的なコミュニケーションを見直し、双方向の対話を促進することは、組織にとって非常に重要です。
伝える技術だけでなく、相手の話に耳を傾ける姿勢を意識的に取り入れることで、職場の心理的安全性が向上します。
心理的安全性が高まると従業員は積極的に意見を発信するようになり、組織全体で活発な意見交換が行われるようになるでしょう。
結果として、チームの結束力が強化され、新しいアイデアや問題解決の力も向上します。一方通行のやり取りを改善し、全員がのびのびと意見を交わせる、風通しの良い職場環境を作り上げましょう。
そのためには、コミュニケーション研修の実施も効果的ですが、TUNAGのようなツールを活用し、コミュニケーションを取るための環境を用意することから始めてもいいかもしれません。
一方的なコミュニケーションは人為的な要因・環境要因の双方から生まれないようにする仕組みが重要です。