テレワークのコミュニケーション課題とは?企業ができる短期・長期の対策を紹介
コロナ禍以降、日本企業でも在宅勤務をはじめとしたテレワークが浸透してきました。一方で、導入後にコミュニケーションの問題や一体感の低下を感じている企業も少なくありません。テレワークで発生し得るコミュニケーションの問題と、対策を解説します。
テレワークでは「コミュニケーション」が大きな課題
総務省が公表した「令和5年度 テレワークセキュリティに係る実態調査結果」では、従業員10人以上の企業3万1,200社を対象に、テレワークの導入状況や課題などを調べています。
調査によると、テレワークを導入している企業が抱える課題として、最も多かったのは「セキュリティの確保」(39.5%)でした。
これに次いで、「テレワークをする社員への指示・指導・評価」(22.8%)、「個々の従業員による業務の進捗管理」(21.6%)、「社内コミュニケーションの不足や情報共有の困難」(18.0%)などが挙がっています。
こうした項目を総合的に見ると、業務管理や情報伝達を含むコミュニケーション関連の課題が依然として大きいことが分かります。
また、「導入しておらず、今後導入する予定もない」「以前は導入していたがやめた」と回答した企業のうち、16.5%が「業務の進行管理が難しいから」、9.9%が「社内のコミュニケーションに支障があるから」と回答しました。
テレワークを安定的に運用するうえで、円滑な情報共有や進捗把握の仕組みづくりが依然として重要な課題といえそうです。
参考:総務省|テレワークにおけるセキュリティ確保「テレワークセキュリティに係る実態調査」【2023年度実態調査結果(2024年1~2月実施)】調査結果報告書 PDF P.9、P.15
テレワークで起こるコミュニケーションの問題【業務に直結する問題】
テレワークで生じるコミュニケーションの問題には、業務に直接影響するものとそうでないものがあります。以下、在宅勤務を中心に、業務に直結する問題を具体的に見ていきましょう。
情報伝達にすれ違いが生じる
テレワークでは、どうしてもテキストのみのコミュニケーションが多くなりがちです。出社していたときと違って、表情や声のトーンなど非言語コミュニケーションが減ります。また、指示や報告を受けたときに不明瞭な部分があっても、テキスト上のコミュニケーションがメインだと対面と比べてリアルタイムの確認がしにくいでしょう。
例えば「Aさんに本日中にメールの返信をもらえるよう催促してください」という指示では、「本日中」が催促の期限なのか、Aさんの返信期限なのか、解釈が分かれる可能性があります。
催促の期限と解釈した場合、取引先のAさんに不必要に短い返信期限を伝えてしまうことになります。
このような行き違いは、テキストのみでのコミュニケーションの特性を理解し、意識的に明確な表現を心がけなければ生じやすくなります。
作業進捗を管理しにくい
テレワークでは、管理職や上司から、部下が実際に勤務している姿が見えません。チームメンバー同士も同様です。出社での勤務に比べて、誰がどこまで作業を進めているのか、何に時間がかかっているのか分かりにくくなります。
テレワークでは実際の働きぶりが見えないため、メンバーが業務上の疑問や困難を抱えていても、管理職が気づいてフォローすることが難しくなります。
何か疑問があっても、コミュニケーション環境がしっかり構築されていなければリアルタイムの相談が難しく、部下は困難を自分の中だけで抱えることになってしまいます。
結果として予定していた進捗を達成できない、成果物の質が落ちるという問題が起こりかねません。「管理しにくい」という上司・管理職側の困難だけでなく、企業としての生産性に直結する問題です。
通信環境の不備がコミュニケーションを阻害する
テレワークにおけるコミュニケーションの課題として、環境要因のものもあります。ビデオ会議や音声会議では、通信環境や光の加減・周囲のノイズなどによって、相手の発言をしっかり聞き取れなかったり、意図が読み取れなかったりするケースが少なくありません。逆に自分の意図が正確に伝わらない場合もあります。
相互に発言そのものや意図をしっかり伝え合えないと、誤解が生まれやすくなる上、業務遂行にも支障が出るでしょう。通信環境をはじめとしたテレワークの環境は、従業員自身で整えるのが難しい部分もあります。テレワーク(特に在宅勤務)を導入・運用していくなら、企業が従業員のテレワーク環境整備をサポートすることが重要です。
テレワークで起こるコミュニケーションの問題【エンゲージメント低下につながる問題】
業務に直接影響しなくても、コミュニケーション不足はエンゲージメント(企業と従業員のつながり)を低下させます。以下、エンゲージメント低下につながる3つの問題を見ていきましょう。
ITリテラシーが低い従業員のストレスが大きい
テレワークでは、チャットツールやビデオ会議ツールなど、ITツールの導入が不可欠です。実際既にテレワークを実施しているなら、ChatworkやSlack、Microsoft Teamsといったコミュニケーションツールを導入しているのではないでしょうか。
コミュニケーションツールの活用には一定のITリテラシーが必要なため、ITツールに不慣れな従業員はコミュニケーションに支障をきたす可能性があります。
その従業員を置き去りにすれば、本人のストレスが増大するだけでなく、チーム内の連携が滞り業務に支障を来たします。
孤独・不安がモチベーション低下を招く
テレワークは対面のコミュニケーション機会が減る働き方です。非対面のコミュニケーションを好む従業員にとっては良い環境かもしれませんが、対面のコミュニケーションを好む従業員は孤独や不安を感じやすくなります。
孤独や不安は、従業員のモチベーションの低下を招く要素です。やる気がなくなれば、エンゲージメントの低下につながります。企業として孤独感・不安をフォローする対策を取らなければ、離職者が増える可能性も考えられるでしょう。
業務外のコミュニケーション機会が失われる
テレワークではどうしても、コミュニケーションが業務連絡に偏りがちです。口頭でコミュニケーションが取れる出社勤務と違って、気軽な相談や雑談がしにくくなります。特に、導入前から相談や雑談の少ない組織では、テレワーク化によってコミュニケーションがさらに減少する傾向があります。
気軽なやりとりが減ると、対人コミュニケーションで息抜きしていた従業員はリフレッシュの機会を失います。悩みや不安を抱え込んでしまうという問題も起こりやすくなります。どちらもエンゲージメントを低下させる要素です。企業が意識的に対策を考えていかなければ、いずれ離職や休職につながる可能性が高くなります。
テレワークのコミュニケーション問題に企業ができる対策【短期】
テレワーク特有のコミュニケーション問題に対し、「避けられない課題」と諦めていませんか?ただ、企業としてできる対策はいくつもあります。まずは短期的に実施できる対策を見ていきましょう。
定期的に1on1を実施する
テレワークでは対面での自然な会話が減るため、意識的に双方向のコミュニケーション機会を設ける必要があります。その一つに1on1面談が挙げられます。月1回などの頻度を決めて双方向の1on1面談を実施し、定期的に従業員が抱えている悩みや不安・孤独感などの課題を把握しましょう。
1on1でなくても、オンライン会議の定期的な実施は、プロジェクト進捗の把握やチームの連帯感維持・孤独感の解消につながります。アイスブレイクを取り入れることで、業務連絡だけでなく相互理解を深める場としてオンライン会議を活用できます。
雑談やオンライン懇親会の時間を設ける
テレワークでは、業務連絡以外のコミュニケーションが減りやすくなります。企業が意識して雑談や業務外のコミュニケーションの機会を用意しなければ、やりとりは業務連絡に偏っていく一方です。業務以外のコミュニケーション機会を提供する方法には、以下のような手段が挙げられます。
- 雑談用のチャットチャンネルを用意する
- 希望者を募ってオンラインでの懇親会や昼食会を定期的に開催する
業務外のコミュニケーションが増えれば人間関係が円滑になり、業務に関する連絡や相談もしやすくなります。
コミュニケーションのルールを設定する
テレワークを実施している企業は、何らかのコミュニケーションツールを活用しているはずです。コミュニケーションツールには、製品ごとに使い方の違いがあります。それぞれのツールを最大限に活用できるよう、コミュニケーションについてのルールを設定しましょう。
ルール設定の例は以下の通りです。
<Chatworkを使っている場合>
- 依頼は必ず「タスク機能」を使ってタスク化する
- グループチャットの「概要」欄を常に最新情報に更新する
- リアクションの意味合いを定義し、使用ルールを統一する
<Slackを使っている場合>
- 同じ話題には「スレッド」で返信する
- DMとオープンチャットを使い分ける基準を明確化しておく
ほかにも、ツールを問わずルール化しておきたい事項もあります。例えばテレワークかつフレックスタイムを導入している場合、相手がチャットのメッセージに返信できる状況か分からないことがあるので、緊急度の高い連絡は電話にするなどです。
また、テレワークでは業務とプライベートの境目が曖昧になりやすい点にも注意が必要です。相手の業務時間外に返信を催促しない、そのためにチームメンバーの勤務時間を共有しておくなどのルール・仕組みもあった方がよいでしょう。
環境を整える備品を提供する
テレワークでは、環境によって意図が読み取れないといった問題が生じます。企業として、できる限り円滑なコミュニケーションに必要な環境・備品を提供しましょう。企業が提供できる環境や備品には、次のようなものがあります。
- 高速のインターネット回線(費用の一部を補助するなど)
- ノイズキャンセリングヘッドホン
- Web会議用カメラ
在宅勤務の従業員の自宅に、必ずしも高速のインターネット回線があるとは限りません。速度が遅い回線だと、Web会議中に画像や音声が途切れる・画面共有ができないといった問題が発生します。高速回線の導入には費用がかかるため、業務利用を前提とするなら企業が費用の一部を負担すべきでしょう。
ノイズキャンセリングヘッドホンは、周囲の音がうるさいときに音声会議やビデオ会議の音を聞き取るのに役立ちます。Web会議用のカメラはPC本体のカメラより解像度が高いものが多く、取り入れることでビデオ会議中に表情を読み取りやすくなるでしょう。顔が暗くならないよう、ライト付きのカメラやリングライトの導入も検討しましょう。
コミュニケーションに関する教育を実施する
出社時の口頭コミュニケーションとテレワークでのコミュニケーションでは、求められるスキルが異なります。
テレワーク特有のコミュニケーション上の注意点について、全従業員を対象に教育・研修を実施しましょう。出社している従業員も、テレワークの従業員とやりとりする必要があるためです。
特にテキスト中心のコミュニケーションでも行き違いが生じないための教育・研修が求められます。ITリテラシーが不足していてツールを使いこなせていない従業員には、ツール操作の研修も必要です。
テレワークにおけるコミュニケーション教育のポイント
従業員にテレワーク向けのコミュニケーション教育をするといっても、どのようなポイントを押さえるべきでしょうか。主にテレワークで多くなるテキストコミュニケーションに重点を置いて、ポイントを四つ紹介します。
文字でも極力感情が伝わるようにする
テレワークでは、全てのやりとりをWeb会議で行うのは現実的ではありません。テキストだけのやりとりが多くなっても円滑なコミュニケーションを維持するには、「文字での感情表現」についての教育を実施するのが効果的です。とはいえ、文章だけで感情まで表現することは容易ではありません。
絵文字機能のあるツールなら、文末に「お辞儀」や「笑顔」を添えるだけでも丁寧さや肯定的な感情が伝わります。
絵文字が使えない場合でも、文末に「。」しか使わなければ人によって冷たく感じますが、フラットな関係性なら「!」を使えば親しみやすさを表すことが可能です。
文章自体の工夫も求められます。指摘するときでも否定的な表現は使わず、「こうするとよい」という方向の表現を意識してもらいましょう。テキストでは非言語情報が伝わらないため、対面では問題のない指摘でも厳しい印象を与えてしまいます。
ローコンテクストなコミュニケーションを心がける
テキストでのコミュニケーションでは、暗黙の了解に頼った表現は誤解を招きやすくなります。極力ローコンテクストなコミュニケーションを意識する必要があります。
「コンテクスト(context)」とは、「文脈」「脈絡」「状況」といった意味を持つ単語です。前提となる背景や文化など暗黙の了解に依存し、行間を読む必要があるコミュニケーションは「ハイコンテクスト」と呼ばれます。
ローコンテクストなコミュニケーションはその逆で、前提知識がなかったり背景を知らなかったりしても理解できる、明快なコミュニケーションです。日本人は元々ハイコンテクストな文化で育っているため、明確な文章表現には意識的なトレーニングが必要です。
相手の発信の意図が不明瞭なときは確認する
メッセージやメールのやりとりで、相手が発信した意図が正確に分からないことも少なくありません。発信する側が分かりやすく書くことはもちろん重要ですが、受け手が不明点を確認せずに行動すると、認識のズレが生じます。
相手から来たメッセージが長く複雑で意図が分かりにくい場合は、「〜という解釈でよいでしょうか」と確認することでミスコミュニケーションを防げます。
確認作業を円滑な業務に不可欠なプロセスと位置づけ、双方が積極的に行うよう教育することが重要です。
できるだけリアルタイムでのレスポンスを意識する
テレワークでは相手の状況が見えないため、メッセージへの返信が遅れると送信者は不安を感じやすくなります。
できる限り速やかに返信することが望ましいですが、即答が難しい場合は「確認して回答します」など、受信確認だけでも返信しましょう。
とはいえ、テレワークで育児や介護などと仕事を両立している従業員もいるでしょう。リアルタイムのレスポンスがどうしても難しいケースはあります。同時に、「緊急でない質問への返信は相手の都合を優先する」という意識を組織全体に浸透させることも重要です。
テレワークのコミュニケーション問題に企業ができる対策【長期】
テレワークにおけるコミュニケーション問題の対策には、ある程度の時間がかかるものもあります。長期的に取り組んでいくべき対策には、何があるのでしょうか。
利用するコミュニケーションツールを見直す
テレワーク導入済みなら、何らかのコミュニケーションツールは導入しているでしょう。しかし、そのツールが自社の課題解決に適しているかは、定期的に見直す必要があります。
具体的な課題を洗い出したうえで、現状のツールで解決できない場合は、課題に適したツールへの切り替えを検討しましょう。
課題別に適したコミュニケーションツールの例は、以下の通りです。
- リアルタイムのやりとりを重視する場合:Slack、Chatwork、LINE WORKSなどのチャットツール(ファイル共有機能付き)
- ハイブリッドワークで互いの在席状況を把握したい場合:ovice、MetaLifeなどのバーチャルオフィスツール
ツールの選定から導入・定着までには一定の時間がかかります。長期的な取り組みとして、必要があれば検討しましょう。
進捗・スケジュール管理の仕組みを整備する
テレワークのコミュニケーション課題は、雑談の少なさや孤独感といった「気持ち」の問題だけではありません。進捗やスケジュール管理の難しさも、テレワークで生じるコミュニケーションの課題です。テレワークでも進捗やスケジュールを可視化するには、報告・連絡・予定共有の仕組みを整備する必要があります。
目的に合わせたツール導入も必要です。チャットツールと併せてグループウェアも導入するなど、必要な仕組みに合わせてツールを選定しましょう。
気軽なコミュニケーションが取れる雰囲気をつくる
チームや企業自体が気軽にコミュニケーションを取りにくい雰囲気だと、テレワークでのコミュニケーションを活性化させるのも難しいでしょう。特に出社勤務のみだったときもコミュニケーションが少なく、相談し合える雰囲気がなかったという場合、土台づくりから始める必要があります。
コミュニケーションのハードルが下がれば、テキストコミュニケーションが中心のテレワークでも、報告や相談といった発信が活発になります。そうなると、行き違いや連携ミスといった問題が減るはずです。
TUNAGでテレワークでもコミュニケーションが取れる環境づくりを
テレワークを導入していてコミュニケーションに問題を抱えている場合、「TUNAG(ツナグ)」のように包括的な組織改善をサポートするのも選択肢の一つです。以下、TUNAGの主な機能を例に、コミュニケーション課題解決のアプローチを紹介します。
手軽に入力できる日報で作業進捗を可視化
TUNAGにはスマホから報告できる「日報」機能があります。スマホから手軽に報告できる仕組みを整えることで、日報の入力が習慣化しやすくなります。
日次での作業内容が可視化されることで、管理職は進捗状況を正確に把握できます。
日報だけでなく週報・月報の報告も、もちろん可能です。分析ダッシュボードでTUNAGの利用状況が一目で分かるため、報告していない従業員に報告を促しやすくなります。
社内チャットでリアルタイムのコミュニケーションを促進
TUNAGは包括的な組織改善クラウドサービスであり、その機能には社内チャットも含まれます。テレワークの従業員同士はもちろん、テレワークと出社勤務の従業員同士でも、リアルタイムのコミュニケーションが可能です。マニュアルや社内掲示板など、従業員がよくチェックする情報もチャットと同じTUNAG内で閲覧できます。
また、グループチャットを作れるのもTUNAGの社内チャットの魅力です。プロジェクト単位・部署単位・相談窓口など、目的によってグループチャットを分ければ、必要な情報に素早くアクセスできます。
サンクスカードで従業員同士のつながりを構築
コミュニケーションを取りやすい雰囲気づくりには、従業員の心理的安全性が必要です。そのためには称賛文化や従業員同士のつながりが求められます。TUNAGの「サンクスカード」は、まさに称賛文化やつながりを育てるのに適した機能です。
サンクスカードで従業員が互いに感謝を伝え合う習慣がつけば、「認められている」という心理的安全性が組織全体に波及するでしょう。サンクスカードの受信者・送信者それぞれに、社内ポイントを付与することも可能です。
TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス
テレワークのコミュニケーション課題を解決して一体感を取り戻す
テレワークを導入してから、コミュニケーションに行き違いや希薄化が生じて、一体感がなくなったと感じている企業もあるでしょう。実際、テレワークは対面のコミュニケーション機会が減ることから、さまざまな問題が生じます。
業務効率に直結する課題も、エンゲージメント低下につながる課題も、いずれも組織の持続的成長を阻害します。短期・長期の取り組みどちらも考慮して、今後の改善に向けた施策を考えましょう。













