グループ報とは、グループ各社で働く社員へ、経営方針や各社の取り組みを届ける社内メディアです。ただし、複数の会社へ同じ情報を配信するだけでは、グループ報として十分とはいえません。
事業内容や組織文化が異なる社員にとって、他社のニュースや抽象的な経営方針は、自分の仕事と結びつきにくいものです。親会社からの発信に偏れば、「自分たちへ伝えたい情報」ではなく、「本社が知らせたい情報」と受け取られる可能性もあります。
グループ報には、各社の違いを残しながら、グループ戦略と現場の仕事をつなぐ編集が求められます。本記事では、グループ報を難しくする理由を明らかにしたうえで、企画設計の方法や企業事例を紹介します。
【記事のポイントまとめ!】
グループ報は、グループ会社に所属する社員へ、経営方針や各社の取り組みなどを届ける社内メディアです。冊子だけでなく、Webサイト、アプリ、動画、メールマガジンなども含まれます。
一般的な社内報との大きな違いは、読者が同じ会社に所属しているとは限らない点です。事業内容や組織文化、職種、勤務場所が異なる社員に対し、グループとして共有すべき情報を届けなければなりません。
比較項目 | 一般的な社内報 | グループ報 |
|---|---|---|
主な読者 | 一つの会社で働く社員 | グループ各社で働く社員 |
主な情報 | 自社の制度、人、部署、業務 | グループ戦略、各社の事業、横断施策 |
読者との関係 | 人や仕事が比較的見えやすい | 他社の仕事や社員が見えにくい |
編集上の課題 | 部署や職種による関心の違い | 親会社への偏り、各社情報の羅列 |
目指す状態 | 自社への理解や情報共有 | グループへの理解と会社間の連携 |
グループ報には「グループの一体感を高める」という目的が掲げられます。しかし、一体感を高めることは、各社の事業や文化の違いをなくし、同じ考え方へそろえることではありません。
各社には、それぞれ異なる顧客、歴史、技術、地域との関係があります。グループ共通の理念や経営方針だけを繰り返すと、個社で働く社員が大切にしてきた価値観との接点が見えにくくなります。
グループ報で目指したいのは、個社への愛着を保ちながら、「なぜ異なる会社が同じグループに所属しているのか」を理解できる状態です。
一体感を誤解したグループ報 | 個社らしさを生かすグループ報 |
|---|---|
共通理念を各社へ繰り返し伝える | 理念が各社の仕事でどう表れているかを伝える |
各社を同じ形式で紹介する | 事業や文化の違いが伝わる切り口を選ぶ |
グループの共通点だけを強調する | 違いから学べることも紹介する |
親会社の言葉で各社を説明する | 各社の社員が自分の言葉で語る |
一体感そのものを成果とする | 相談や情報交換、協業が生まれたかを見る |
例えば、「顧客志向」という共通理念があっても、製造会社と販売会社では、理念が表れる場面は異なります。それぞれの社員がどのような判断をしたのかを並べることで、共通理念と個社の違いを同時に伝えられます。
グループ報の役割は、異なる会社が同じグループにいる意味を、仕事、人、顧客との接点から見つけられるようにすることです。
そのため、各社が個別に運用する社内報を廃止する必要はありません。グループ報では全体戦略や会社を越えたテーマを扱い、個社報では自社の制度や身近な社員を詳しく紹介するなど、役割を分けられます。
グループ報の定義がわかっても、各社の記事を均等に載せれば読まれるわけではありません。読者が情報を自分の仕事と結びつけられない背景には、グループ報特有の「距離」があります。
本記事では、その距離を「経営と現場」「会社同士」「発信側と読者」の3つに分けます。
距離 | 読まれにくい状態 | 編集で埋める方法 |
|---|---|---|
経営と現場 | 経営用語が並び、自分の仕事との関係がわからない | 現場の判断や行動へ置き換える |
会社同士 | 他社の会社概要を読んでも接点が見えない | 共通課題や連携の可能性を示す |
発信側と読者 | 親会社からのお知らせに見える | 各社が企画や発信へ参加する |
中期経営計画やグループ方針は、グループ報で扱うべき重要な情報です。ただし、計画資料の言葉をそのまま掲載しても、社員は自分の仕事で何を変えるべきか判断できません。
例えば、「グループ総合力の強化」という方針を伝える場合は、言葉の解説だけで終わらせず、各社が共同で顧客へ提案した事例や、会社を越えて知識を共有した社員を紹介します。
経営情報を現場へ届ける際は、次の順番へ置き換えると理解しやすくなります。
伝える段階 | 記事に載せる内容 |
|---|---|
グループ戦略 | 何を目指し、なぜ取り組むのか |
グループ共通の課題 | 各社に共通して何が求められるのか |
各社の実践 | どの会社が、どのように行動しているのか |
社員の仕事 | 日常業務でどのような判断や行動ができるのか |
グループ報の役割は、中期経営計画をわかりやすく要約することだけではありません。抽象的な戦略と、各社で起きている具体的な仕事を結びつけることです。
グループ会社の事業概要を順番に掲載しても、読者が自社との関係を見つけられなければ、会社案内の寄せ集めになってしまいます。
各社を紹介するときは、売上や拠点数だけでなく、次の情報まで掘り下げます。
例えば、「A社は物流事業を展開しています」という紹介だけでは、自分との接点は見つかりません。「A社の配送ノウハウをB社の店舗運営へ活用した」と伝えることで、他社の仕事がグループ全体の強みとして見えてきます。
会社同士の距離が大きい場合は、最初から連携を訴えるよりも、地域、顧客、仕事の進め方など、互いの違いへ興味を持てる企画から始める方法もあります。その後、共通課題や共同プロジェクトへ話題を広げると、理解を段階的に深められます。
親会社や持株会社だけで企画を決めると、発信内容も親会社の視点に偏りやすくなります。編集側にその意図がなくても、子会社の社員には「本社から伝えられる情報」と受け取られる可能性があります。
この距離を埋めるには、各社を取材対象として扱うだけでなく、編集へ参加できる状態をつくります。
具体的には、各社から編集委員や広報通信員を選び、次の役割を分担します。
すべての記事を各社へ均等に割り当てる必要はありません。掲載本数をそろえるよりも、グループとして伝える意味があるテーマを、各社の視点から取り上げる方が読者の理解につながります。
3つの距離が見えてきたら、目的、読者、企画、編集体制を一つの流れで決めます。一般的な社内報の作り方をそのまま広げるのではなく、グループ全体で共有する価値があるかを各工程で確認します。
設計の基本的な流れは、次のとおりです。
「グループの一体感を高める」という目的だけでは、掲載する企画や測定方法を決められません。何を知り、どのような行動を取ってほしいのかまで具体化します。
発行目的 | 中心となる読者 | 適した企画 | 確認する指標 |
|---|---|---|---|
戦略の理解 | 管理職・全社員 | 中計解説、経営者対談、現場実践 | 理解度、読了率 |
各社の相互理解 | 全社員 | 会社・仕事・社員紹介 | 他社認知度、閲覧率 |
会社間の連携 | 管理職・実務担当者 | 共同案件、課題別座談会 | 問い合わせ、交流件数 |
理念の共有 | 全社員 | 理念を体現した判断や挑戦 | 共感度、コメント |
各社からの発信 | 編集委員・全社員 | 各社投稿、リレー企画 | 投稿会社数、発信者数 |
すべての企画を全社員向けにする必要はありません。中期経営計画の解説は管理職を中心に、各社の社員紹介は全社員へ届けるなど、企画ごとに中心となる読者を変えられます。
KPIも閲覧数だけに限定しません。グループ会社への理解を目的とするなら、記事を読んだ人数に加えて、他社の事業を説明できる社員が増えたかをアンケートで確認します。
中期経営計画を扱う記事では、計画の項目を順番に説明するだけでなく、その方針が実際の仕事へどう表れているかを見せます。
例えば「新規事業の創出」が重点方針なら、経営者の説明に続けて、新規事業へ挑戦する社員や、複数社で進めているプロジェクトを紹介します。
一つの特集は、次のような順番で構成できます。
経営記事と社員紹介を別々に作るのではなく、戦略を実行している人の物語としてつなぐことがポイントです。読者は、計画資料だけでは見えなかった「自分の仕事との接点」を見つけやすくなります。
他社への関心が薄い段階で、グループシナジーや一体感を繰り返し訴えても、自分ごとにはなりにくいものです。まずは、各社の違いを知り、「少し話を聞いてみたい」と思える接点をつくります。
企画は、読者の理解段階に合わせて変えます。
読者の状態 | 企画の役割 | 企画例 |
|---|---|---|
他社をほとんど知らない | 興味を持つ | 地域、職場、商品、社員の一日 |
事業名は知っている | 仕事を理解する | 顧客課題、技術、仕事の流れ |
共通点が見えている | 課題を共有する | 職種別座談会、失敗・改善事例 |
連携の可能性がある | 行動へつなげる | 共同案件、相談窓口、人材交流 |
例えば、各社の人事担当者が新人研修について語る座談会なら、会社紹介と実務課題の共有を同時に行えます。記事の制作過程で担当者同士が知り合うため、掲載後の関係づくりにもつながります。企画そのものが、会社を越えた対話の場になることでしょう。
各社から情報を集めるだけでは、親会社の編集部が取捨選択する構造は変わりません。グループ報を共同の媒体にするには、企画の入口から各社が参加できる体制が必要です。
編集体制では、次の役割を分けます。
役割 | 主な担当 |
|---|---|
編集方針・年間計画 | 持株会社・親会社の統括編集部 |
各社の情報収集 | 各社の編集委員・広報通信員 |
企画・取材 | 統括編集部と各社担当者 |
事実確認・承認 | 記事に関係する会社・部門 |
翻訳・表現調整 | 海外拠点や専門部門 |
効果確認 | 統括編集部・各社編集委員 |
編集委員へ記事の提出だけを依頼すると、担当者の負担が増え、情報も形式的になりがちです。年間テーマや企画会議を共有し、「何を伝えるための記事か」から一緒に考えます。
公開後は閲覧数やコメントだけでなく、各社から企画が提案されたか、発信する会社が偏っていないかも確認します。参加状況そのものが、発信側と読者の距離を測る手がかりになります。
媒体は、紙かWebかを先に決めるのではなく、情報の更新頻度、社員の閲覧環境、反応を得る必要性から選びます。グループ報では対象会社や拠点が多いため、一つの媒体だけですべての目的を満たそうとしないことも大切です。
媒体 | 向いている情報 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
紙 | 周年特集、経営方針、保存したい企画 | 一覧性や特別感がある | 配送、更新、閲覧状況の把握が難しい |
Web | 各社ニュース、連載、蓄積する記事 | 更新しやすく、検索や分析ができる | 社員が訪れる導線をつくる必要がある |
アプリ | 速報、必読情報、社員参加企画 | スマートフォンや通知を活用できる | 通知が多いと読まれにくくなる |
併用 | 重要特集と日常情報を分ける | 情報の役割に合わせられる | 同じ内容の重複配信を避ける |
例えば、中期経営計画の全体像は紙や動画で深く伝え、各社の取り組みや進捗はWebで継続的に更新できます。現場社員が社用パソコンを持たない場合は、スマートフォンから閲覧できるアプリも候補です。
Webやアプリを利用する場合は、対象者別の配信、既読状況、コメント、スタンプ、記事ごとの閲覧データなどを確認できるかが判断材料になります。単に紙をデジタルへ置き換えるのではなく、各社からの発信と読者の反応が循環する設計にします。
設計方法を理解したら、実際の企業が何を課題とし、どのようにグループ報を位置づけているかを確認します。
ここでは、中期経営計画との接続、媒体全体の戦略設計、紙からWebへの移行という異なる観点から3社を紹介します。
三井倉庫グループは、倉庫、港湾運送、陸上輸送などの物流事業を国内外で展開しています。複数の事業会社が持つ機能を組み合わせ、顧客の物流課題へ対応している企業グループです。
同グループは、2022年5月にグループ理念を刷新し、2023年3月期から2027年3月期までの「中期経営計画2022」を始動しました。計画では、グループ総合力の結集やオペレーションの競争力強化などを成長戦略に掲げています。
グループ報『三井倉苑』では、グループ理念を単独で説明するのではなく、中期経営計画に関係する現場の事例と結びつけて伝えています。この取り組みは、2023年度「経団連推薦社内報審査」の雑誌・新聞型社内報部門で総合賞を受賞しました。
この事例のポイントは、理念や中期経営計画を解説記事だけで終わらせていないことです。具体的な事業や取り組みを通じて、グループが目指す姿と社員の仕事を結びつけて伝えている点が特徴です。
他社が参考にする場合も、中期経営計画の重点項目ごとに実践企業や社員を探し、計画の言葉が日常の仕事へどう表れているかを取材するとよいでしょう。
参考:三井倉庫グループ グループ報『三井倉苑』が、 2023年度「経団連推薦社内報 雑誌・新聞型社内報部門 総合賞」を受賞|三井倉庫グループ
Daigasグループは、国内エネルギー、海外エネルギー、ライフ&ビジネス ソリューション(LBS)の3分野で事業を展開しています。LBS事業には都市開発、情報、材料などが含まれます。
同グループの社内報『がす燈』は1947年に創刊され、2017年にWeb社内報へ移行しました。年間300本以上の記事を発信していた一方で、経営課題との連動やコアターゲットの明確化などに改善余地がありました。
そこで、既存媒体の分析、従業員向けアンケート、約20名へのインタビューを実施。「インターナルブランディングによる従業員エンゲージメントの向上」をKGIに設定し、各インターナルコミュニケーション媒体の目的や対象を再構築するとともに、KGIと連動したKPIを策定しました。
『Webグループ報 がす燈』では、次世代リーダー層である30代をコアターゲットとし、Daigasグループの理念や戦略を「自分ごと」として捉えられるようなコンテンツを追加しています。中期経営計画については、より深い理解を促すため、研修用の動画やスライド資料も制作しました。産業編集センターによると、『Webグループ報 がす燈』に月1回以上アクセスする従業員の割合は、2023年度から約10ポイント増加し、2024年度には45.5%に達したと報告されています。
年間300本以上の記事を発信していたDaigasグループでも、経営課題との連動やコアターゲット、KPIを改めて整理しています。発信量だけでなく、何を目的に、誰に届け、どの指標で成果を見るのかまで設計する重要性がわかる事例です。
参考:戦略的なインコミで従業員エンゲージメントを向上 | 産業編集センター(SHC) - 社内報や広報ツールのクリエイティブ・コンサルティング
メニコンは、コンタクトレンズを中心とするビジョンケア事業に加え、ヘルスケア、ライフケア、動物医療などの事業を展開しています。国内外に複数のグループ会社を持つ企業です。
同社では、全グループを対象に約3,000部の紙社内報を発行し、200カ所以上へ配送していました。送付先や部数のリスト作成、郵送の手配に加え、各拠点では社員の机やロッカーへ配布する作業も発生していました。
社内アプリのTUNAG(ツナグ)導入後は、経営トップの発言や新入社員、新商品、イベントなどの情報を発信しています。さらに、各部署の責任者から指名された「広報通信員」が年3〜4回、テーマに沿った記事を投稿。本部の固定メンバーだけでなく、各部署の社員も発信に参加する仕組みを取り入れています。
紙からWebへ切り替えたことで、配送先リストの作成や郵送手配、各拠点での配布作業などが不要になりました。担当者は、1回の発行あたり1週間分程度の工数を削減できたのではないかとしています。また、TUNAGで告知した自由参加の勉強会にグループ会社の社員が参加するなど、情報発信をきっかけにした新たな参加も生まれています。
この事例で注目したいのは、紙の配送負担を減らすだけでなく、情報の発信者を広げている点です。現在は広報通信員による投稿を通じて発信量を増やしており、今後はさらに多くの従業員を巻き込み、双方向のコミュニケーションができる場へ発展させることを目指しています。
参考:紙の社内報から“社員参加型”のWEB社内報へ。メニコンがTUNAGで実現した、つながりと創造性を育む社内コミュニケーション。 | TUNAG(ツナグ)
グループ報は、親会社の情報を子会社へ伝えたり、各社のニュースを一つに集めたりするだけの媒体ではありません。経営と現場、会社同士、発信側と読者の距離を埋め、グループとしての共通点や連携の可能性を見つけるメディアです。
発行目的を決めたら、中心読者、企画、KPIまでを一列につなげます。中期経営計画は現場の事例へ置き換え、各社を取材対象にするだけでなく、編集や発信へ参加できる体制を整えましょう。
紙、Web、アプリには、それぞれ異なる役割があります。現在の運用負担や社員の閲覧環境を確認し、グループに必要な情報が届き、読者の反応を次の企画へ生かせる組み合わせを選ぶことが大切です。
TUNAG(ツナグ)は、経営メッセージや各社の記事をWeb社内報として配信できるクラウドサービスです。公開範囲の設定、既読確認、コメント・スタンプ、プッシュ通知、閲覧状況の分析などにグループ報運用に必要な機能が標準搭載されています。
グループ会社や拠点が多く、紙の配送負担を減らしたい企業や、各社からの投稿と社員の反応を一つの場に集めたい企業に適しています。サービスの詳細や運用事例は、専用ページをご覧ください。