玉突き人事とは?現場が混乱する理由と回避するための具体策を解説
玉突き人事は、一人の異動が連鎖的に複数の異動を引き起こすため、現場の混乱や従業員の不満を招きがちです。計画性のない異動はチームの士気を下げ、生産性低下や離職率の上昇にもつながります。本記事では、玉突き人事と通常の人事異動の違いを明確にし、なぜ現場で混乱が起こるのか、その具体的な理由と、経営層・人事担当者が取り組むべき効果的な防止策を徹底解説します。
玉突き人事とは何か
属人化が進み、業務がブラックボックス化していたり、特定の従業員に業務が依存している状況では、その従業員が離職または異動した場合に、業務の引き継ぎがスムーズに行われず、周囲の業務にも影響を及ぼす可能性があります。
このように、1人の人事異動が連鎖的に複数の部署や担当者の配置転換を引き起こす事態は、「玉突き人事」と呼ばれます。
玉突き人事を防止するためにも、まずは玉突き人事の定義や他の人事異動との違いについて理解を深めましょう。
玉突き人事の具体的な事例
玉突き人事の具体例としては、以下のようなケースがあります。
- 営業部長の急な退職で、総務部長が後任となり、その穴埋めに課長が昇進。
- 海外拠点設立に伴い部長職が異動、その影響で複数部署に異動が波及。
- 主要プロジェクト担当者が退職し、別部署から人材を補充、連鎖異動が発生。
このように、「誰かの人事異動によって別の人物が人事異動しなければならない状況」が玉突き人事と呼ばれるものです。
玉突き人事と他の人事異動との違い
玉突き人事は、通常の人事異動や計画的なジョブローテーションとはその性質が大きく異なります。
一般的な人事異動は、従業員のキャリア開発や組織全体の生産性向上、あるいは組織活性化を目的として、中長期的な視点から戦略的に行われます。
個々の従業員の適性やキャリア志向を踏まえた上で実施されるため、従業員本人にとっても納得感が高いことが多いです。
一方、玉突き人事は緊急に欠員を埋めることが最優先となるため、企業側の都合を優先した短期的で場当たり的な対応となりがちです。
玉突き人事は目的の明確さや計画性の有無、従業員のキャリアへの配慮といった点で、他の人事異動とは明確に区別されます。
玉突き人事で発生する影響
玉突き人事は現場に混乱や不満を引き起こすリスクがあります。ここでは玉突き人事がもたらす具体的な弊害について詳しく解説します。
従業員のモチベーション低下や混乱につながる
玉突き人事では、本人が異動の目的や理由を十分に理解できないまま配置転換されることが少なくありません。
本人にとっては突然の異動であり、「なぜ自分が異動しなければならないのか」という不安や疑問が生じます。
会社側から明確な説明や十分なコミュニケーションがない場合、不満や戸惑いは一層強まり、従業員のモチベーションは大きく低下してしまうでしょう。
また、一方的で説明不足な人事異動は、周囲の従業員にも「次は自分が異動させられるかもしれない」という不安や不信感を広げ、結果としてチームの士気や組織全体のエンゲージメントを損ない、生産性低下や業務停滞といった深刻な問題につながる恐れがあります。
離職リスクの増加と採用・教育コストの膨張
計画性に乏しい人事異動に巻き込まれ続ければ、「この会社での自分の将来は不透明だ」と考える従業員が増え、結果として離職率の増加につながるリスクが高まります。
特に、離職による人材不足を補うために新規採用を急ぐ場合、採用コストや教育・研修にかかる費用が増加します。
また、育成面でも弊害が出ます。即戦力として機能するまでには時間と労力が必要であり、中長期的な視点で見ると企業にとって大きな経済的・人的負担となるでしょう。
玉突き人事は短期的な問題解決には役立つかもしれませんが、結果的には企業の負担を増大させることになるのです。
人間関係のミスマッチが起きやすくなる
玉突き人事によって突発的な異動が起こると、職場の人間関係にも悪影響が及びます。
新しい部署に異動した従業員は、短期間で新たな人間関係や信頼関係を構築しなければならず、その負担は非常に大きいものです。
迎え入れる側の従業員も、事前の準備や引き継ぎが不足している場合、新しく配置された従業員との円滑なコミュニケーションが困難となり、チームワークや業務遂行に支障を来します。
加えて、適性やスキルを十分に考慮しないまま異動させられた場合、本人に合わないチーム文化や役割といったミスマッチが生じやすくなるのも問題です。
こうした状況は、職場内のストレス増大や雰囲気悪化を招くだけでなく、組織全体の生産性にも影響を及ぼす可能性があります。
玉突き人事を防ぐための対策
玉突き人事の弊害を回避するためには、事前の対策が欠かせません。以下では、具体策について詳しく解説します。
計画的な人事戦略の重要性
玉突き人事を防ぐためにまず求められるのは、中長期的な視点から組織の人員計画を立てることです。玉突き人事が発生する背景には、そもそも平常時の人材戦略が十分でないという問題があります。
日頃から、自社の経営方針や将来的な事業展開に沿って「いつ」「どの部署に」「どれだけの人員が必要か」を見据えた人材計画を策定し、各部門と経営層が連携して実施することが重要です。
また、重要ポストに関しては後継者候補を予め複数育成しておき、突然の退職や異動に対応できる体制を整える「サクセッションプラン(後継者育成計画)」を準備することも効果的です。
こうした事前の人材戦略によって、緊急時でも柔軟に対応でき、玉突き人事の頻度を大幅に削減することが可能になります。
従業員のキャリアプランの把握と適切な配置
次に、従業員一人一人が描くキャリアプランや希望をしっかり把握した上で、それに基づく適切な人員配置を心掛けることが必要です。
玉突き人事が従業員に不満やモチベーション低下をもたらす主な原因は、本人のキャリア志向や希望を考慮しないまま、一方的に異動が行われるためです。
これを防ぐには、平常時から上司との1on1面談やキャリア面談の機会を定期的に設け、従業員の希望や適性を深く理解しておくことが欠かせません。
こうした対話を通じて従業員と会社側がキャリアビジョンを共有できれば、仮に突発的な異動が発生した場合でも、従業員の納得感や受容度が高まります。
現場の状況や従業員のエンゲージメントを可視化する
玉突き人事を防ぐためには、現場の課題や従業員のエンゲージメントをリアルタイムで把握する仕組みが欠かせません。
経営層が気付きにくい現場の不満やストレスは、放置すると離職や業務効率の低下を招きます。そこで活用したいのが、組織改善プラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」です。
TUNAGは、エンゲージメントサーベイや社内SNSなどの豊富な機能を通じて、従業員の声や職場の課題を効率よく可視化できます。
現場のリアルな声を経営層に素早く届け、問題が深刻化する前に迅速な対応を可能にします。
玉突き人事を未然に防ぎ、従業員が安心して働ける環境をつくるために、ぜひTUNAGの導入をご検討ください。
玉突き人事を適切に管理するために
玉突き人事を適切に管理するためには、経営層の人事戦略と現場の実態や従業員の希望とのズレを埋める仕組みが重要です。
トップダウン型で一方的な異動を進めれば、従業員の不満やモチベーション低下を引き起こします。
玉突き人事の弊害を防ぐためには、中長期的な人員計画を策定し、日頃から従業員のキャリアプランや職場のエンゲージメントを可視化しておくことが欠かせません。
現場との対話を深め、納得感ある人事施策を進めていきましょう。