夜勤は何時から?深夜労働のルールと勤怠管理のポイントを解説
夜勤は深夜労働や深夜業とも呼ばれ、日勤とは異なるルールが定められています。法律上、夜勤は何時から何時までを指すのでしょうか?労働基準法を基に、賃金計算のルールや休日の定め方、勤怠管理のポイントを解説します。
夜勤とは何時から何時までを指す?
病院や介護施設、工場などでは、従業員の勤務時間が深夜に及ぶことがあります。労働基準法で決められている時間帯やルールについて理解を深めましょう。
労働基準法における定義と時間帯
夜勤とは「夜間勤務」の略で、深夜帯に働くことを意味します。一部の業界では、夜勤という言葉が当たり前に使われていますが、実は法律用語ではありません。
夜勤が具体的にどの時間帯を指すのかは、職種やシフト形態によって異なるのが実情です。3交替制の職場においては、深夜からの勤務を「夜勤」、夕方~夜までのシフトを「準夜勤」と呼ぶケースがあります。
労働基準法の第37条には、深夜労働のルールが記載されています。「午後10時~午前5時まで」の労働に対して、企業は割増料金を支払わなければなりません。
本記事では、午後10時~午前5時までの労働を深夜労働とし、賃金や休憩、休日のルールを解説します。
日を跨ぐ勤務の日数の数え方
労働基準法では原則、1日8時間を超える労働は認められていません(法定労働時間)。ここでいう「1日」とは、午前0時〜午後12時までを指します。
「勤務時間が午前0時を跨ぐときは、2勤務として扱うのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。勤務日数の算定には一定のルールがあり、午前0時を跨ぐ勤務は、日付が変わっても1勤務として扱うのが基本です。
2勤務として扱った場合、休憩時間や残業手当などに関して、日勤で働く従業員よりも不利になる可能性があります。
出典:改正労働基準法の施行について(◆昭和63年01月01日基発第1号婦発第1号)
夜勤における休憩・休日のルール
労働基準法は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分の休憩を与え、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと定めています。宿直を除いては、夜勤にも日勤と同じような休憩時間のルールが適用されます。
休日は日勤・夜勤とも、暦日が原則です。暦日とは、暦上の1日で「午前0時~午後12時まで」の24時間を指すのが一般的です。従って、次の勤務まで24時間以上の間隔が空いた場合でも、「夜勤明けの日」を休日にはできない場合があります。
例えば、水曜日の午後11時〜木曜日の午前6時まで働いた従業員に対しては、木曜日ではなく金曜日に休みを与えます。
出典:労働基準法 第4章 第34条・第35条|e-Gov 法令検索
夜勤の賃金計算は複雑
夜勤の賃金計算にはさまざまなルールがあり、日勤で働く従業員よりも複雑です。企業の担当者は、深夜手当と夜勤手当の違いや計算方法を把握しておく必要があります。
深夜手当を支払う必要がある
労働基準法の第37条は、午後10時〜午前5時までの深夜労働に対して、「深夜手当(深夜割増賃金)」を支払うことを義務付けています。
割増率は原則、基礎賃金の25%以上(基礎賃金の1.25倍以上)で、25%を下回る場合は労働基準法に抵触します。
深夜手当は、パートやアルバイトなどの非正規雇用者も対象です。時給制の従業員であれば、深夜手当は「1時間当たりの賃金×割増率(0.25%)×深夜労働時間」で計算します。
夜勤手当がある会社も
深夜手当と夜勤手当は名前が似ていますが、同一のものではありません。深夜手当は、労働基準法で規定されていますが、夜勤手当は会社の独自のものです。
同じような仕事内容であっても、夜勤は日勤よりも心身に負荷がかかります。夜勤手当は従業員に対する労いの一種であり、支給条件や金額は会社が決定します。
深夜手当と夜勤手当の両方を付与する会社では、賃金計算が複雑になるでしょう。夜勤1回当たりの金額を決めているところが多いですが、あらかじめ基本給に含めることも可能です。
残業の場合は時間外手当が発生
労働基準法が定める法定労働時間は、1日8時間、週40時間が原則です。夜勤であっても、法定労働時間を超えた場合は、時間外労働に対する割増賃金(時間外手当)を支払わなければなりません。
割増率は、基礎賃金の25%以上(基礎賃金の1.25倍以上)です。夜勤で、かつ残業をした従業員の場合、深夜手当と時間外手当の両方が生じる時間帯があります。
なお、1カ月の時間外労働時間が60時間を超えた場合は、超えた分に対して、50%以上の割増賃金を支払うルールです。
従業員に夜勤をさせるときの注意点
IT業界をはじめとする一部の業界では、クライアントの都合やプロジェクトの関係で、日勤の従業員を夜勤シフトにしなければならないケースがあります。日勤と夜勤は働く時間が大きく違うため、従業員への配慮は欠かせません。
同意のない勤務時間の変更は不可
従業員を雇い入れる際、会社側は「始業・終業時刻」「所定労働時間」「所定労働時間を超える労働の有無」「休憩時間」「休日」などの労働条件を明示しなければなりません。
「夜勤あり」という前提で労働契約を締結した場合は、対象の従業員に対し、夜勤シフトのスケジュールを伝えるだけで済みます。
一方で、日勤のみの労働契約を締結しており、かつ就業規則でも夜勤の定めがない場合は、企業による一方的な勤務時間の変更は認められません。原則として、従業員に事情を伝え、個別に同意を得る必要があります。
夜勤をさせてはいけない人がいる
深夜帯(午後10時~午前5時)の労働は「深夜業」とも呼ばれます。労働基準法の第61条は、交替制で勤務する満16歳以上の男性を除き、18歳未満の従業員の深夜業を原則的に禁じています。
また、妊産婦からの申し出があった場合は、時間外労働・休日労働・深夜業をさせてはいけない決まりです(労働基準法第65条)。
深夜業で働けないからといって、対象の従業員を解雇したり、正社員からパートタイム労働者に変更したりする行為も禁じられています(男女雇用機会均等法第9条)。
出典:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 第9条|e-Gov 法令検索
出典:労働基準法 第6章 第81条・第65条|e-Gov 法令検索
夜勤は健康被害が出やすい
会社側は、夜勤する従業員の健康に配慮する必要があります。日勤に比べて生活リズムが崩れやすく、睡眠障害の原因になることが少なくありません。
十分な睡眠が取れない日が続いた場合、生活習慣病をはじめとする病気の発症リスクが高まる可能性があります。眠気や疲労により、重大な事故が引き起こされる恐れもあるでしょう。
労働安全衛生規則の第45条(特定業務従事者の健康診断)によると、夜勤の従業員は、半年に1回の健康診断を受ける必要があります。
出典:睡眠と健康 | Hearts | e-ヘルスネット(厚生労働省)
夜勤の勤怠管理をスムーズに行うには
勤務日数の数え方や夜勤明けの休日の取り方、割増賃金の計算など、夜勤は日勤に比べてルールが複雑です。勤怠管理をスムーズに行うためのポイントを紹介します。
夜勤対応のシステム・アプリを活用する
通常のタイムレコーダーは、日付を跨ぐと翌日の勤務扱いになります。夜勤のシフトを組む際も、休憩時間や休日のルールを考慮しなければならず、手作業では相当な時間がかかるでしょう。
夜勤対応のシステムやアプリを活用すれば、割増賃金の計算業務がスムーズにできるのはもちろん、労働基準法を順守した夜勤シフトを簡単に作成できます。
システム導入時は、料金面だけでなく、機能やアフターサービス、給与計算ソフトとの連携のしやすさをチェックしましょう。無料トライアル期間を設けている製品もあります。
シフトの公平性を確保する
夜勤は心身に負担がかかる上、プライベートの予定が立てにくいのがデメリットです。特定の従業員に夜勤が偏ったり、本人の希望が通らなかったりすると、不平・不満が多くなります。
夜勤シフトの作成には、従業員との小まめなコミュニケーションが欠かせません。トラブルを回避するためにも、早い段階で休みの希望を確認し、不公平感のないシフト配分を考えましょう。1on1面談や意見交換の機会を定期的に設けることも重要です。
夜勤に関する法律やルールを確認しよう
労働基準法では、午後10時~午前5時までを深夜労働と見なしています。この時間帯に従業員を勤務させると、25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。企業の担当者は、夜勤に関する法律や社内のルールをしっかりと確認しておきましょう。
夜勤のある会社では、24時間勤務に対応したタイムレコーダーや勤怠管理システムの活用をおすすめします。担当者の業務が効率化されるだけでなく、従業員の健康を守るのにも役立ちます。