社外取締役とは?社内取締役との違いや役割、選任のポイントを解説
社外取締役とは、会社から独立した立場で経営を監督する取締役のことです。利害関係のない外部の視点から経営陣の意思決定や業務執行を監視し、公正な経営を促す役割を担います。本記事では、社外取締役の設置を検討している企業に役立つ情報を紹介します。
社外取締役とは
取締役とは、会社の経営を実際に動かす役割を担う人のことです。株主から選ばれて取締役会に参加し、会社の方針や重要な決定を行います。
それでは、社外取締役とはどのような人のことなのでしょうか。社内取締役との違いと併せて解説します。
社外から経営を監督する取締役
社外取締役とは、その会社の社員や経営陣ではない「外部の人」が取締役会に入って、経営をチェックしたり意見したりする役割の人です。会社と距離がある立場だからこそ、客観的に判断でき、不正の防止や健全な経営に役立ちます。
社外取締役が増加しているのは、企業の不祥事の防止やガバナンス強化への社会的要請に加え、会社法や証券取引所規則で一定の上場企業への設置が義務化されているためです。さらに、投資家からの信頼確保や企業価値向上への期待、経営環境の複雑化に対応するための外部の知見を活用する必要性も背景にあります。
社外取締役と社内取締役の違い
社内取締役と社外取締役の大きな違いは立場と役割です。
社内取締役は会社の経営陣として組織に属し、経営方針の決定に加えて日々の業務執行や組織運営に直接関与します。
一方、社外取締役は会社の外部から選任される独立した立場の人材であり、経営判断に客観性や透明性をもたらし、不祥事防止やガバナンス強化に貢献します。さらに、他社や異業種で培った知見を生かし、経営戦略やリスク管理の高度化を支える役割も担います。
つまり、社内取締役は「経営を動かす人」、社外取締役は「経営を見守り助言する人」という位置づけです。
社外取締役の設置が義務づけられている会社
会社法では一定の会社に社外取締役の設置を義務づけており、透明性や信頼性の高い経営体制を整えるための重要な仕組みとなっています。社外取締役の設置が義務づけられている会社を見ていきましょう。
上場企業
会社法327条の2では、監査役会設置会社かつ大会社である公開会社に対し、社外取締役の設置を義務づけています。上場会社の社外取締役は、会社法2条15号の要件を満たさなければなりません。
また、各証券取引所の上場規則では、全ての上場会社に対して社外取締役の設置を求めています。今後上場を目指す会社も、社外取締役の設置が必要です。
委員会設置会社
委員会設置会社とは、経営の監督と業務執行を明確に分離する組織形態を採用した会社のことです。会社法では次の2種類が認められています。
監査等委員会設置会社 | 取締役会が経営を行い、取締役で構成される監査等委員会が経営の監督を行う組織形態。監査等委員の過半数は社外取締役でなければならない。 |
指名委員会等設置会社 | 取締役会は経営の監督に専念し、実際の業務執行は執行役が行う組織形態。指名委員会・監査委員会・報酬委員会が設置され、各委員会の過半数は社外取締役で構成されなければならない。 |
また、上記のいずれも、社外取締役は会社法2条15号の要件を満たす必要があります。
ベンチャーキャピタルから出資を受けたい会社
ベンチャーキャピタルから出資を受けたい会社にとって、社外取締役の設置は重要なポイントになります。ベンチャーキャピタルは資金を投じる際、リターンの確保だけでなく、出資先企業のガバナンス体制や成長戦略の信頼性を重視するためです。
社外取締役を置く企業は、外部の独立した立場から経営判断を監督し、不正やリスクを抑制できます。また、IPO経験者や業界に精通した人物を社外取締役に迎えることで、経営戦略の精度を高めることが可能です。
ベンチャーキャピタルからの出資を目指す会社に、社外取締役の設置が義務づけられているわけではありません。しかし、信頼性の高いガバナンスを示すために、社外取締役を積極的に活用する必要があるといえます。
社外取締役の役割
社外取締役は、会社の内部に属さない独立した立場から取締役会に参加し、経営の健全性と透明性を確保する重要な役割を担います。主な役割は以下の3つです。
コーポレートガバナンスの強化
社外取締役は、経営陣や従業員から独立した立場で取締役会に参画し、企業のコーポレートガバナンス強化に大きく寄与します。
- 経営の監視機能:取締役会の意思決定をチェックし、不正や不透明な経営を抑止する
- 透明性・公正性の担保:株主や投資家の利益を守る公正な経営判断を後押しする
- 外部知見の導入:他社や異業種の経験を取り入れ、経営戦略やリスク対応の質を高める
- 信頼性の向上:社会や市場から健全な経営を評価され、資本市場での信頼確保につながる
また、コーポレートガバナンス・コードで求められる役割を果たすことで、企業のコンプライアンス体制を強化します。
客観的な立場からの経営助言
社外取締役は、客観的な視点から経営の質を高めるアドバイザーです。内部の利害やしがらみに左右されない第三者の視点から経営を監督・助言することで、不正や不透明な意思決定を防ぎ、企業統治の健全性を高めます。
また、外部で培った専門的知識や幅広い経験を生かして、企業が見落としがちなリスクや新たな成長機会を指摘し、戦略的な意思決定の質を向上させます。
株主とのコミュニケーション
社外取締役は、経営陣と株主の橋渡し役として、企業と投資家との建設的な対話を促進する重要な存在です。独立した立場から株主の意見や懸念を把握し、取締役会に届けることで経営に株主の声を反映させます。
また、株主と経営陣の利害が対立する場面においても中立的な立場から意見を調整し、建設的な対話を推進することで、持続的な企業価値の向上と長期的な成長を支える役割を果たします。
社外取締役を選任するポイント
社外取締役を設置する際は、ふさわしい人材かどうかを見極める必要があります。選任手続きを適正に行うことも重要です。
社外取締役にふさわしい人物を選出する
社外取締役には、会社や経営陣との利害関係が薄く、独立した立場から経営を監督・助言できる人物であることが求められます。会計・法務・経営戦略・業界知識などの専門的な知見や実務経験を持ち、取締役会で実効性ある提言ができるかどうかも重要です。
また、異業種での経験や国際的な視野を持つ人材は、多様な経営課題への対応力を高め、企業に新しい発想をもたらします。株主や投資家をはじめとするステークホルダーと信頼関係を構築できる人物であればなお良いでしょう。
社外取締役の選任手続きを適正に行う
社外取締役を選任する際は、会社法に基づく正式な手続きを踏む必要があります。流れは以下の通りです。
- 株主総会への付議(社外取締役を含む取締役の選任は株主総会の決議事項)
- 株主総会での決議(出席株主の議決権の過半数による普通決議で選任)
- 就任承諾と登記(取締役の変更登記を2週間以内に行う)
社外取締役を設置して経営の強化を図ろう
社外取締役は、経営陣や従業員と独立した立場から取締役会に参加し、経営判断の監督や助言を行う存在です。利害関係に左右されない客観的な視点で不正やリスクを防ぎ、透明性の高い経営を実現します。
他社や異業種での経験や専門知識を生かして戦略面でも貢献し、株主や投資家からの信頼向上にもつながります。ガバナンスを強化し持続的な成長を図るなら、社外取締役を設置しましょう。