アサーティブとは?意味や具体例、職場での実践方法を解説

職場での円滑なコミュニケーションは、従業員の定着率や生産性の向上に大きく寄与します。しかし、意見の伝え方に悩む人は少なくありません。相手に配慮しつつ、自分の意見もしっかりと伝えるスキルとして注目されるのが「アサーティブコミュニケーション」です。

本記事では、アサーティブの基本概念、実践的な手法、職場での活用方法を詳しく解説し、より良い職場環境を築くためのポイントを紹介します。

アサーティブとは何か

アサーティブとは、相手を尊重しながらも自分の意見を適切に伝えるコミュニケーションスタイルです。職場では、対立を避けつつ意見を明確にすることが求められます。ここでは、アサーティブコミュニケーションの定義や他のスタイルとの違い、注目される背景について解説します。

アサーティブコミュニケーションの定義

アサーティブコミュニケーションとは、自分の意見や感情を率直に伝えながらも、相手を尊重するバランスの取れたコミュニケーションスタイルです。

これは、受動的(パッシブ)な態度でもなく、攻撃的(アグレッシブ)な態度でもない、中間的なアプローチとして知られています。以下の表では、攻撃的・受動的(非主張的)・アサーティブの三つのコミュニケーションスタイルの特徴を比較し、それぞれの違いを明確に示しています。

コミュニケーションの種類

特徴

具体的な行動・発言例

攻撃的(アグレッシブ)

自分の意見を押し通し、相手の立場や感情を考慮しない

「こんな簡単なことも分からないの?」と強い口調で指摘する

非主張的(パッシブ)

自分の意見を控えめにし、相手に合わせることで衝突を避ける

「特に意見はありません…」と遠慮して発言を控える

アサーティブ

自分の意見を率直に伝えながら、相手の立場も尊重する

「私はこの案が良いと思いますが、皆さんの考えも聞かせてください」

職場では、意見を言えずにストレスを抱えるケースや、逆に主張が強すぎて対人関係が悪化するケースが見られます。アサーティブコミュニケーションは、「自分の考えを明確にしつつ、相手の立場も尊重する」という原則に基づき、対話を円滑に進めるためのコミュニケーション手法です。

アサーティブが注目される背景

近年、アサーティブコミュニケーションが注目される背景には、職場環境の変化や多様な価値観の共存が挙げられます。単なる自己主張ではなく、相手を尊重しながら意見を伝えるスキルが求められる時代になっています。

例えば、リモートワークの普及やグローバルなチーム編成が進む中で、異なる文化や価値観を持つ人々が協力する機会が増えています。

またパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントが社会問題となる中、攻撃的な言動を避けながらも、受け身になりすぎずに意見を伝えることが求められています。

アサーティブな伝え方を実践すれば、対立を生まずに率直な意見を述べられるため、職場の心理的安全性が向上します。その結果、従業員が安心して発言できる環境が生まれ、創造的なアイデアが生まれやすくなるのです。

アサーティブコミュニケーションのメリット

アサーティブコミュニケーションを身に付けることで、職場の人間関係を良好に保ちながら、ストレスを減らし、業務効率を向上させることができます。ここでは、その具体的なメリットについて詳しく解説します。

人間関係の円滑化

職場での対話がうまくいかないと、ストレスがたまり、仕事の進行にも悪影響を与えます。アサーティブコミュニケーションを実践することで、相手を尊重しながら自己主張することが可能になり、誤解や対立を避けつつ信頼関係を築くことができます。

例えば、意見の違いが生じたときに、「私はこう考えますが、あなたの意見も教えてください」と冷静に伝えることで、相手も安心して対話に応じやすくなります。

また、適切なコミュニケーションを心掛けることで、職場内の信頼感が向上し、「報連相」(報告・連絡・相談)がスムーズになるという効果もあります。その結果、チームの結束力が高まり、より働きやすい環境が実現されるでしょう。

生産性の向上

業務の生産性を高めるには、スムーズな意思疎通が不可欠です。アサーティブなコミュニケーションを取り入れることで、誤解や情報の行き違いを減らし、業務の効率を向上させることができます。

会議の場で「このプロジェクトについて、私はこの方法が最適だと考えますが、他に良いアイデアがあれば教えてください」と伝えれば、建設的な議論が生まれやすくなります。

このように、一方的に主張するのではなく、相手の意見も尊重しながら意思決定を進めることが、生産性向上につながります。

さらに、アサーティブな姿勢が社内に定着すると、率直なフィードバックを行いやすくなり、業務改善のサイクルが生まれます。その結果、職場全体のパフォーマンスが向上し、より効果的な働き方が実現されるでしょう。

ストレスの軽減とメンタルヘルスの向上

「言いたいことがあっても伝えられない」「言葉を飲み込んでしまう」といった状況が続くと、知らず知らずのうちにストレスが蓄積してしまいます。特に、受動的(非主張的)な態度をとることが多い人は、自分の意見を抑え込むことで精神的な負担を感じやすい傾向があります。

アサーティブコミュニケーションを実践することで、適切に自己表現ができるようになり、ストレスが減ります。

職場全体でアサーティブな文化が根付くと、心理的安全性が向上し、メンタルヘルスの改善にもつながります。自分の意見を言いやすい環境では、チーム内のストレスも軽減され、より前向きに業務へ取り組めるでしょう。

アサーティブコミュニケーションの実践方法

アサーティブコミュニケーションは、理論だけでなく、実際の場面で使える具体的な手法を学ぶことで、日常業務にも自然と取り入れられるようになります。ここでは、DESC法、アイメッセージ、非言語コミュニケーションといった実践的な手法を詳しく解説します。

DESC法の活用

DESC法は、相手に配慮しながらも明確に自分の意見を伝えるためのフレームワークです。以下の四つのステップで構成されます。

名称

概要

例文

Describe(状況の説明)

現状の状況や問題点を具体的に説明し、相手に理解してもらう。

①現在、他の案件の締め切りも重なっており、この作業に十分な時間を確保するのが難しいです。

Express(自分の気持ちを伝える)

状況に対する自分の気持ちや懸念を伝え、共感を得る。

②このままだと品質を維持できないのではと不安に感じています。

Specify(具体的な提案をする)

解決策や代替案を具体的に提示し、前向きな対応を促す。

③そこで、納期をもう1日延ばす、または作業を分担できると助かります。

Consequences(結果を伝える)

提案を採用することで得られる結果や採用しないことによる結果を伝える。

④その結果、より高い品質で納品できると考えています。

この①~④の手順で伝える方法がDESCです。

この方法を使えば、感情的にならずに冷静に意見を伝えられるため、職場での交渉や問題解決の場面で特に有効です。

アイメッセージの使用

アイメッセージ(I-message)は、「私は~と感じる」という形で自分の気持ちを表現する手法です。「あなたは〜すべきだ」というユーメッセージでは相手が防衛的になりやすいため、対立を避けるために有効です。

以下、同僚が会議で話を遮ってしまったケースでこの二つの伝え方の違いを見ていきましょう。

ユーメッセージ:「あなたはいつも人の話を遮るから困る。」

アイメッセージ:「私は、自分の意見を最後まで伝えられないと少し残念に感じます。」

このように伝えることで、相手を責めることなく、自分の気持ちを素直に伝えられるため、対話がスムーズになります。

非言語コミュニケーションの意識

言葉だけでなく、表情、声のトーン、姿勢などの非言語コミュニケーションもアサーティブな対話には重要な要素です。

伝え方によって、同じ言葉でも相手の受け取り方が大きく変わるため、以下のポイントを意識すると、より効果的なコミュニケーションが可能になります。

アイコンタクト

相手の目を適度に見ることで、関心を持っていることを示し、信頼感を与えます。ただし、睨むような強い視線は逆効果なので、リラックスした状態でアイコンタクトを取りましょう。

声のトーンとスピード

落ち着いたトーンで、ゆっくりと話すことで冷静で説得力のある印象を与えられます。逆に、早口や高圧的なトーンでは、相手が委縮してしまう可能性があるため注意が必要です。

姿勢とジェスチャー

リラックスして相手に向き合うような姿勢やうなずきなどのジェスチャーを取り入れることで、相手に安心感を与え、前向きな対話を促進できます。逆に、腕を組む、体をそらすといった動作は、防御的・否定的な印象を与えかねません。

アサーティブコミュニケーションを実践し、組織の成長につなげる

アサーティブコミュニケーションを職場に取り入れることは、従業員一人一人の働きやすさを向上させるだけでなく、組織全体の成長にも大きく貢献します。

適切な自己表現と相手への配慮を両立させることで、職場の信頼関係が深まり、チームの協力体制が強化されます。その結果、意見交換が活発になり、問題解決のスピードが向上し、業務の生産性も高まるでしょう。

しかし、こうした文化を根付かせるには、継続的な実践と適切な仕組みづくりが不可欠です。そこでおすすめなのが、組織エンゲージメントを高めるプラットフォーム「TUNAG」です。

TUNAGを活用すれば、アサーティブコミュニケーションを組織に定着させるための具体的な施策をスムーズに運用できます。例えば、サンクスカードや社内SNS機能を活用し、日々のポジティブな対話を促進したり、業務報告や成果共有を通じて、オープンな対話の機会を増やすといったことが可能です。

アサーティブコミュニケーションが根付いた職場は、従業員の満足度向上と組織の持続的成長につながります。TUNAGを活用し、よりオープンで生産性の高い組織を目指しましょう。

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著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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