臨店の意味とは?裁量臨店との違い、効率化する方法を考える

臨店は、企業本部から支店や店舗への指導のために訪問することを意味し、特にフランチャイズ事業で重要な役割を担っています。 この記事では、臨店の意味、裁量臨店との違い、および臨店を効率化する方法について詳しく解説しています。

臨店の意味とは

臨店は、企業本部から支店への指導のために店舗を訪問することをおおまかには意味します。SV(スーパーバイザー)が店舗を巡回し、指導・管理します。フランチャイズ事業では重要な役割を担っており、店舗状態の確認と本部からの意思伝達が主な目的です。加盟店の要望や困っていることなどを本部に伝えるためのものでもあります。

裁量臨店・臨店検査との違い

業界を問わず使われる臨店とは違い、裁量臨店は金融業界の用語の一つです。金融機関の本部に設置されている監査部門が、各支店の融資内容に問題がないかをチェックするするための検査のことを「裁量臨店」と呼びます。

本部の監査部門から検査役が支店を訪れて、融資に対する与信判断の内容に問題がないかを審査します。裁量臨店が行われる際、支店には1週間程度の準備期間が設けられます。また、銀行などの金融機関において、金融庁・日本銀行などが検査・指導するために訪問することがあり、この場合「臨店検査」と呼ばれるのが一般的です。

臨店時に着目する4つの観点

臨店を行う際は、店舗の売上を上げるためにPDCAを回す必要があります。ここでは、店舗運営を成果へと導くために、実際の臨店時に着目する4つの観点を確認しましょう。

1.エリア全体・店舗ごとの目的や目標があるか

臨店で店舗巡回をする際、目的や目標を明確にする必要があります。ただ漠然と店舗チェックを行うだけでは、現状の課題の解決にはつながりません。なぜ臨店を実施するのか、どのような結果が望ましいのかを明確にしましょう。

たとえば、飲食店やスーパーなどで店舗売上アップを目的に臨店を行うとします。最終的に現状の何%アップを目指すのか目標を掲げることが大切です。

2.目的や目標に対する具体的な戦略があるか

臨店で設定する目的や目標を達成するために、具体的な戦略を立てる必要があります。誰が何をいつまでになど、より具体的な内容を計画に落とし込まなければなりません。

この部分を詰めておかないと、実際に行動に落とし込むのが難しくなります。臨店を実施するSVやエリアマネージャーだけでなく、店舗スタッフを筆頭に誰が見ても理解できるようにしておきましょう。

3.目的や目標の数字検証を行っているか

戦略を立てるだけでは数値は達成しないため、その数値を検証する必要があります。もちろん、検証対象となる数字は現実的なものであることが前提です。

臨店を実施する際に「売上を30%伸ばす」と目標を立てたとしましょう。計画を立てるだけなら簡単ですが、それが現実的に可能かどうかも検証しなければなりません。数字検証を行うことで、次に何をどうすべきなのかが把握できるようになります。

数値検証は、大きな視点から小さな視点に分けるのが原則です。飲食店で前年比から売上が下がった場合、以下のような流れで行います。

  1. 売上=客数×客単価→客単価に変化はなく、客数が減っている
  2. 客数=既存客+新規客→「競合店舗の参入」などの外部環境の変化が少なく、新規客が減少していると想定
  3. 新規客が減少している理由を網羅的に挙げみる
  4. 3で出た理由を一つずつ分析し、改善策と施策の優先度を検討する

ただ売上が減ったらから闇雲に策を打つのではなく、その原因を検証することが大切です。市場は常に変化するため、定期的に数値検証を行いましょう。

▼参考
店長が行う数値検証の流れとは? | 株式会社販路企画
店長が行う数値検証のやり方の大原則とは何か? | 株式会社販路企画

4.課題を把握し改善提案を実施しているか

臨店で店舗状況を確認し、改善すべき課題を探ります。たとえば、なぜ本部が設定した売上目標に未到達だったのかを検証する必要があります。

その際にただ課題を指摘するだけでなく、改善提案を行うことが大切です。また、店舗側が本部からの改善提案を実施しているのかについても確認します。これまで実施できていなかった施策については、なぜ実施できなかったかを分析し、改善に向けて指導を続けていくと良いでしょう。

臨店の3つの目的

フランチャイズ事業を行う飲食店やコンビニなど、エリアごとにSVなどが店舗巡回をする臨店が行われています。その目的は以下の3つが挙げられます。

1.本部からの指示を店舗に伝える

フランチャイズ事業における臨店の役割の一つが、本部側の指示を店舗に伝えることです。SVによる臨店が主な形態だと決まり事が多く、店舗ごとの自由度は低くなっています。一つのブランドとして、ある程度の統一感を出すことが狙いです。

たとえば、販売戦略や接客マニュアルなどが挙げられます。本部での決定事項をスムーズに伝えることが臨店の目的です。つまり、臨店は本部と店舗をつなげるコミュニケーションとしての役割も果たしています。

2.経営コンサルティングとしての機能

臨店で店舗を巡回するSVやエリアマネージャーは、店舗の運営状況も確認します。事業として売上を上げることが目的であり、それを達成するための経営コンサルティングとしての役割も担っています。

スタッフの接客態度や身だしなみ、安全性や衛生状況まで細かくチェックします。その場で改善できることから、長期で取り組むことも出てくるでしょう。臨店で浮き彫りになった課題に対して改善提案を行い、目標を達成できるまでが臨店を行う意義です。

3.店舗の問題点や要望を本部に伝える

臨店によって把握できた問題点を本部に伝えることも目的の一つです。もちろん、本部に伝える内容は店舗の問題点だけでなく、店舗からの要望や提案を伝える役割も担います。SVやエリアマネージャーから報告を受けた本部は、検証や分析を行います。臨店を行うことで、課題の早期発見・解決につながるでしょう。

関連記事:店舗運営のQSCとは?QSCAとの違い、向上施策3選を解説 | 社内ポータル・SNSのTUNAG

臨店を効率化する3つのアイデア

臨店を実施するのはSVやエリアマネージャーですが、担当するのは複数店舗であることがほとんどです。一つの店舗に十分な時間を取れないという課題を抱えている場合もあるでしょう。ここでは、臨店を効率的に行うための3つのポイントを解説します。

1. 日常的に店舗とのコミュニケーションを取る

店舗の現状把握や課題を見つけるためには、コミュニケーションは不可欠です。しかし実際には、複数の店舗を担当していることがほとんどであり、臨店時に十分な指導・管理ができないといった問題も少なくないでしょう。

臨店の時間を十分に取れない場合は、社内SNSや店鋪運営アプリなどのツール導入も検討してみてください。社内SNSや店舗運営アプリには日報やチャットなどの機能が搭載されています。また、写真などを添付できるサービスもあるため、店舗巡回をしなくてもリアルタイムでコミュニケーションが取れたり、店舗の概況を把握でき、問題の解決につながるでしょう。

2.チェックする項目を決めておく

SVやエリアマネージャーは、臨店時に店舗の運営状況を把握するのが基本です。しかし、すべてを臨店時にチェックしていては、それだけで業務が終わってしまいかねません。事前に何をチェックするのか項目を決めておきましょう。

このことを可能にするためにも、担当店舗の進捗状況を確認できるシステムを構築する必要があります。店舗ごとで何が未実施なのかを把握できるようにしましょう。

3.Webサービスを活用する

臨店を効率的に行うための施策に、Webサービスを活用した臨店が挙げられます。具体的には、クラウドカメラや店舗管理システムなどの導入で店舗の様子を映像や画像で確認することです。パソコンやスマホからアクセスできるため、直接店舗に訪問する必要がありません。

遠隔地からネット経由で店舗の様子を確認できることで、移動時間の削減につながります。より多くの店舗に寄り添うことができ、課題の早期解決が期待できるでしょう。また、店舗運営の成功事例を多店舗のスタッフに共有することも可能です。実際に動画を見てもらうことで、イメージをより具体的に伝えられることもメリットです。

参考:リモートでも店舗管理はできるのか? 小売り・外食産業がコロナ禍を乗り越えるためのマネジメントの秘訣 - ログミーBiz

業界別の臨店内容

さまざまな業界で実施されている臨店ですが、業界ごとに内容が異なります。ここでは3つの業界に絞って、それぞれでどのような臨店が行われているのかを解説します。

1.飲食店の臨店

飲食店の臨店の際にチェックされる項目は以下のとおりです。

  • 店頭にある看板の内容
  • 店内に入った瞬間の雰囲気や店員の掛け声
  • 店員の人数
  • 店舗に訪れる客層
  • メニューが提供されるまでにかかる時間
  • 店員の客席への案内や会計時の対応

基本的にピーク時間帯を狙って臨店することが多く、上記のチェック項目を中心に確認しながら課題を見つけます。たとえば、メニューが提供されるまでに時間がかかれば客足が遠のく可能性があります。どのような工程で調理を行っているのかを確認し、改善提案を出しながら売上アップにつなげていきます。

参考:【臨店調査のコツ:飲食店の場合】流行っている・流行っていないはどこを見れば良いですか?(株式会社 武内コンサルティング)

2.スーパーマーケットの臨店

スーパーマーケットの臨店で課題となりつつあるのが、SVやエリアマネージャーの生産性低下です。人手不足や物理的な限界により店舗を巡回しきれず、状況を十分に把握できないなどの悩みを抱える企業も少なくないでしょう。

その課題を解決するために、現場DXとして遠隔で店舗をマネジメントする企業もあるようです。各店舗にクラウドカメラを設置し、Web臨店という形で店舗の様子を確認します。店舗に訪問しなくても、課題に対する改善提案を行えます。

3.銀行の臨店

銀行では、金融庁などが金融機関の指導・検査を行う臨店検査が行われます。令和2年6月26日に金融商品取引業者等検査マニュアルが廃止されるなど、目立って臨店検査の実施頻度が低下しているのが現状です。第一種金融商品取引業者に対する検査が中心になっているとはいえ、臨店検査は原則として無予告で実施されます。

いつどのタイミングで臨店検査が行われるか不明であるため、しっかりとした内部監査が大切です。金融庁の「金融商品取引業者等向けの総合的監督指針」にも内部監査に関する記述があり重要視しています。臨店検査を問題なくクリアするために、内部監査で常に法令順守状況を点検する必要があります。また、外部専門家の助言を受けながら対応することも大切です。

▼参考
基本指針・マニュアル等:証券取引等監視委員会
金融庁・財務局の検査対応に関して | 行政書士トーラス総合法務事務所トーラス・フィナンシャルコンサルティング株式会社
内部監査 | 不動産法務サポートオフィス行政書士事務所

まとめ

当記事では、臨店の概要や目的、効率化する方法について解説しました。臨店を実施するSV(スーパーバイザー)やエリアマネージャーが複数店舗のチェックを担当している場合もあるため、如何に効率的に、質を落とさずに店舗の状態を確認できるかが重要になってきます。

日常的に店舗からの報告書や日報を共有してもらい、店舗の状態を継続的に把握しておくことで、事前にヒアリングできることと臨店時にチェックすべきことの棲み分けが可能です。また、店舗で起きたヒヤリハット事項やお客様の声も同時に共有すれば、他の店舗へのナレッジ展開にもつながります。ぜひ店舗とコミュニケーションを密にとるなど、臨店を効率化する方法を検討してみてはいかがでしょうか?

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