店長会議とは?目的や話し合う内容、実施のポイントを解説
本部と各店舗が同じ方向を向いて店舗運営を行えるよう、月に1〜2回程度の頻度で、同じ会社内の店長や系列店の店長が一同に集まり業績や改善点を共有する店長会議。
店長会議はやり方次第で店長のモチベーションを高め、店舗の運営レベルを上げられる効果を発揮します。ひいては利益創出・企業理念の体現に繋がるはずです。
この記事では、飲食店の店長会議で議題にあげるべき内容や、会議のパフォーマンスを上げるためのコツや注意点を解説していきます。
店長会議とは
店長会議とは、系列店の店長が一同に集まっておこなわれる会議のことです。会議の頻度は会社によって様々ですが、月に1~2回ほどの頻度でおこなっている会社が多いでしょう。普段は別店舗で働いている店長達が集まる機会はそう多くはないので、貴重な機会だといえます。
会議には店長だけではなく、SVや業態責任者などの幹部社員も参加します。会社の規模によっては、社長も同席するところもあるようです。また、複数の業態を運営している会社の場合は、数カ月に一度の頻度で全業態の店長を集めて会議をおこなうところもあります。
店長会議の目的
店長会議は、店舗の営業で忙しく過ごしている店長達が、時間の都合をつけて集まる場です。よって、全員が共通の目的意識を持って開催することが大切になります。この章では、どんな会社でも共通する店長会議の目的について解説します。
大きな目的は「利益創出」「企業理念の体現」
店長会議の大きな目的は「利益創出」「企業理念の体現」の2つです。
店舗の運営を任されている店長は、自店の利益を生み出すことが職務だといえます。各店の店長が自店の利益を生み出すことで、会社全体の利益に繋がるのです。情報共有・意思決定・意見交換は、そのためにおこないます。
また、企業理念は「その会社の存在理由」といえるものです。店舗運営・事業運営は会社の理念を体現するための手段であるとも考えられ、「企業理念の体現」という大きな目的があるからこそ、各店舗が向かうべき方向性を揃えることが重要です。
この2つの大目的のために、店長会議では以下に示す【情報共有】【意思決定】【意見交換】の3つの目的を意識することが必要です。
1. 店舗を超えた情報共有の促進
店長会議の目的の1つは、店舗を超えた情報共有です。会社や業態に関わる様々な情報を共有し、全店舗が共通の認識を持つことを目的とします。
- 各店舗の先月度の売上
- 各店舗の目標数値
- 各店舗の問題点や取り組み
- イベントや新メニューなどの概要
上記のように、共有すべき情報は多岐に渡ります。各店長が会社や業態の現状の認識をするため、他店の情報から気付きを得るために、情報共有は店長会議の主要な目的だといえます。
2. 意思決定
店長会議は、さまざまな意思決定をすることを目的としておこないます。意思決定とは「起こす行動を決めること」です。会議をする前と後で、行動が1つも変わらないのであれば、店長会議をする意味がないといってもいいでしょう。
店長会議での意思決定は、各店長ごと・業態全体として・幹部社員ごとなど、さまざまな規模でおこなわれます。また、各々が意思決定した内容を全体で共有することも、前述した情報共有に含まれます。
3. 意見交換
店長会議は、店長間・もしくは店長と幹部社員との間で意見交換することを目的としておこないます。ここでの意見交換とは、店舗運営にまつわる様々なことに関して、会議の参加者が自身の意見を発表すること・他者の意見を聞き入れることを意味します。
例えば、業態全体として「お客様との接点が少ない」という問題を抱えているとしたら、それを解決する方法(「お客様アンケートの実施」など)を意見交換します。または、特定店舗が抱えている問題に関して意見を交換したり、成果を上げている店舗の取り組みを共有して、各々が感じたことをシェアしたりするのも有効です。
店長会議の議題・話し合う内容5選
この章では、店長会議の議題・話し合う内容の代表的なものを紹介します。各項目のポイントを解説するので、参考にしてください。
1. 前回の振り返り
毎回の店長会議は、前回の振り返りから始めることが大切です。振り返りをしないと、前回の会議で決めた行動目標が「決めっぱなし」の状態になってしまいます。
前回の会議の内容を確認することで、共有した情報が店舗社員やアルバイトにまで落とし込めたか・数値目標は達成できたか・行動目標は達成できたかなどを振り返る機会になります。
前回の振り返りは、PDCAサイクルの「C」の部分です。今回の会議を有意義なものにするためにも、必ず前回の振り返りから店長会議を始めましょう。
2. 共有事項の確認
共有事項の確認は、会議の前半で短時間で済ませることをおすすめします。スケジュール関係の共有、新メニューの共有、業績の共有など、幹部側から話すだけで完了するものは手短かに済ませることが大切です。
ドキュメント等にまとめたり、ツールなどを活用して必要事項の共有を事前に行っておくことで、議論の時間に時間を使うことができるでしょう。
3. KPIの設定や確認
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語に訳すと「重要業績評価指標」となります。大きな目的や目標の達成に向けての「途中通過点となる具体的な指標」となるものです。
KPIは、結果だけではなくプロセスを含めた指標を設定する・計測できるよう設定する必要があります。例えば人員充足率を目標として掲げるのであれば、「新規採用〇人」というKPIが設定できますが、これではやや不十分です。その「新規採用〇人」を達成するために、以下のようなKPIを設定します。
- リファラル採用のために、〇月〇日までに既存スタッフ全員に声掛けする
- 〇月〇日までに面接のロープレを〇人に対しておこなう
- 求人媒体への応募が着たら〇時間以内に連絡をする
KPI設定は、このように具体的な行動がわかることや達成基準が明確であることが大切です。
4. 成功事例の共有
系列店の中で特にうまくいっている店舗の店長から、成功事例の共有をしてもらいます。例えば、新メニューの出数がナンバー1だった店舗から、どのように販促をしたのか・お客様の反応はどうだったのかなどを共有してもらいます。
特定店舗の成功事例を全店長間で共有することで、業態全体のレベルアップに繋がるはずです。A店でできたことは、基本的にはB店やC店でもできるはず。できないのだとすれば「どのようにすればできるか」という視点で解決策を話し合い、これから起こす行動を意思決定します。
5. SVや業対長、外部講師などによる講習
毎回の会議でこれをおこなうことは難しいかもしれませんが、時にはSVや業態長、もしくは外部講師を招いて講習を開くのも、店長会議のコンテンツとして有効です。
飲食業は現場で店舗を運営していくことが主となるため、他業種の会社員と比較すると研修などの機会が少なくなりがち。社会人としての深い知見や柔軟な考え方を店長に身に着けてもらうためにも、講習・研修に時間を割くのには重要な意味があります。
例えば「目標設定のやり方」や「数値分析の考え方」など、飲食店の店長として、ゆくゆくは幹部の一員となる人材として、必要な知識をインプットさせてあげましょう。
店長会議を運営する上での3つの注意点
店長会議をより有意義な時間にするための注意点を3つお伝えします。
1. 全員の発言を促す
店長会議の司会・進行役は、全員に発言を促すよう意識してください。店長は、いわば店舗を代表して会議に参加している身です。発言せずに座っているだけだとしたら、参加している意味がありません。
とはいえ、発言回数が少ない店長もやる気がないわけではなく、控え目な性格をしていたり、よく考えて内容をまとめてから発言したいタイプだったりします。そういった店長も発言しやすいよう、討論や意見交換の場面では、少人数のグループにわけておこなうのも有効です。
2. 時間配分を意識する
会議は仕事の一環である以上、所要時間を決めて時間を厳守することが大切です。決めた時間内で情報共有・意思決定・意見交換をおこなえるよう、司会・進行役がしっかり時間管理しなくてはなりません。
また、1時間以上の会議になる場合は、店長達の集中力を維持するために細目に休憩をとる必要があります。人の集中力が持続するのは50分前後、中でも特に高い集中力を発揮できるのは15分ほどだといわれています。会議のパフォーマンスを高めるためにも、休憩を含めた時間配分のコントロールは非常に大切です。
3. 店舗ごとの報告・指導に時間を使わない
店長会議では、店舗ごとの報告・指導には時間を使わないよう注意してください。これは前述した成功事例の共有などではなく、ただの数値報告や、その数値が思わしくない場合の上長からの指導の時間などを指します。
ただの数値報告は、店舗数が多ければ多いほど時間がかかります。店長としては他店の数値報告はどうしても他人ごとになってしまい、ただ数字を読み上げるだけでは無意味な時間が積み重なるだけです。特定店舗の指導に時間を割くと、その店舗の店長の公開処刑のような状態になってしまいます。
数値の報告は主に紙ベースや社内SNSなどでおこない、店舗ごとの指導は臨店や店長との1on1、数店舗のみの小規模の会議でおこないましょう。
店長会議を効果的に実施する方法3選
前章で解説した注意点を踏まえて、店長会議を効果的に実施する方法を3つお伝えします。
1. 事前にアジェンダを準備し、共有しておく
店長会議の時間を効率的に使うため、事前にアジェンダを準備し、共有しておきましょう。アジェンダとは、会議全体の流れや要点をまとめたものです。
事前にアジェンダを共有しておくことで、参加する店長達は会議に対する心の準備・発言の準備ができます。事前に発言の内容をまとめられるので、会議をスムーズに進行できるはずです。
また、アジェンダには各項目ごとの所要時間を記しておくことをおすすめします。そうすることで、司会・進行役だけではなく、参加者全員が時間配分を意識してくれます。
2. 冒頭にアイスブレイクの時間を設ける
「店長会議の議題・話し合う内容」として最初に「前回の振り返り」を設けることをおすすめしましたが、それよりも前にアイスブレイクの時間を設けるとより効果的です。アイスブレイクとは「その場の緊張感や堅い雰囲気を和ませるコミュニケーション方法」を指します。
例えば、「最近自店で起きた自慢話」など、ポジティブな話題を30秒~1分ほどの短時間で参加者全員にスピーチしてもらいます。1人発表する毎に拍手や掛け声などを送り、明るい雰囲気を作ることが大切です。いわゆるお調子ものタイプの店長がいれば、「最近あった面白い話」をしてもらうのもいいでしょう。
店長会議の冒頭に5分ほどアイスブレイクの時間を設けることで、参加者が発言しやすい雰囲気を醸成できるだけではなく、関係が希薄になりがちな店長同士の相互理解の促進やコミュニケーションの活性化につながります。
3. 日頃から店舗の情報を共有しておく
会議の進行をスムーズにするために、日頃から店舗の情報を共有しておくことが大切です。例えばA店が抱えている問題点について会議で話し合うとすると、事前情報があるのとないとでは、解決策が出るまでの時間やその質が変わってくるはずです。
店舗の情報を共有するには、日報のメール共有や、社内SNSなどの情報共有ツールの活用などが有効です。
店長会議は「その後どうするか」が大切
店長会議の目的の1つは意思決定、つまり「起こす行動を決めること」です。行動を決めても、実行しなくては意味がありません。また、行動を起こしても成果に繋がらなければ、新たな解決策を決めて再び行動を起こす必要があります。
よって、店長会議は「その後どうするか」が大切です。店長会議の内容を店舗の運営に活かすためのポイントを2つお伝えします。
明日起こすアクションを決める
店長会議では、必ず明日起こすアクションを決めてください。「今月中に起こすアクション」ではなく、会議の翌日(翌出勤日)に起こすアクションを決めることが大切です。
「今月中に起こすアクション」を決めるのも悪くはありませんが、それしか決めてないと何もしないまま翌月の会議の日を迎えてしまう恐れがあります。店長会議後、最も熱量が高い会議の翌日に起こせるアクションを1つ決めましょう。その1つのアクションが引き金となって、その後1ヵ月の望ましい行動に繋がるはずです。
会議の内容を店舗に落とし込む
会議で共有された事項や決めたアクションプランを、店長1人だけが把握している状態だと意味がありません。店長はお店の代表として会議に出席しているわけなので、会議の内容を店舗に落とし込むことが必要です。
店舗への落とし込み方は、その内容によって適切な手段が変わってきます。お店全体の目標となるものは店舗MTGを開いて共有したり、特定のスタッフに協力を仰ぎたい項目は1on1で伝えたりすると効果的です。
注意点として、目標の共有などの大切な話を、営業中や休憩時間に立ち話で手短に済ませるのはNGです。きちんと時間と場所をとって、情報や想いを共有する場を作りましょう。
まとめ
店長会議は、飲食店が成長していくうえで欠かせないものです。会議によって、店長の意識と行動が変わり、お店全体の意識と行動が変わります。ひいては、それが利益創出・会社理念の体現に繋がっていくはずです。
数値の報告だけが長時間ダラダラと続く店長会議は、店長のモチベーションを削いでしまう要因になり兼ねません。会議によって店長に活力を与えられる、店長が「参加したい」と思える会議を目指していきましょう。