自己啓発支援制度とは?OJTとの違いから導入方法・失敗しないポイントまで解説

自己啓発支援制度は、社員の自律的な成長を促す重要な人材育成施策です。しかし「具体的にどう制度を設計すればよいのか」「自社に合った運用方法は何か」と悩む人事担当者も多いのではないでしょうか。本記事では、自己啓発支援の定義からOJT・Off-JTとの違い、具体的な支援方法、失敗しないためのポイント、そして先進企業の導入事例までを解説します。

自己啓発支援の定義とOJT・Off-JTとの違い

自己啓発支援を正しく理解するには、まず「自己啓発」という言葉の意味を押さえる必要があります。ここでは、ビジネスの文脈における自己啓発と、OJT・Off-JTとの違いを整理していきましょう。

ビジネスにおける「自己啓発」が指す意味

「啓発」とは、気づいていなかったことを教え導き、より高い認識や理解に導くという意味の言葉です。自分自身に対してこの働きかけを行うのが「自己啓発」ということになります。

ビジネスにおける自己啓発とは、社員が自発的に自身の能力やスキルを高めようとする活動のことです。業務命令で行うものではなく、あくまで本人の意思に基づいて取り組む学習を指します。

自己啓発の具体的な活動としては、資格取得に向けた学習、書籍による独学、外部セミナーへの参加、eラーニングの受講などが挙げられます。

予測困難な現代(VUCA時代)においては、社員一人ひとりが自発的に学習を継続する姿勢が、これまで以上に重要視されています。

企業側が社員の学習意欲を後押しする取り組みが「自己啓発支援」です。費用補助や学習環境の整備を通じて、社員の成長をバックアップする制度全般を指します。

OJT・Off-JTと自己啓発の違いとは

人材育成の手法には、主にOJT、Off-JT、そして自己啓発があります。それぞれ主体や実施方法が異なるため、違いを押さえておきましょう。

以下の表で、三つの違いを整理します。

項目

OJT

Off-JT

自己啓発

主体

会社(上司・先輩)

会社(研修担当)

社員本人

場所

職場内

職場外(研修会場など)

本人の任意

内容

実務を通じた指導

集合研修・外部研修

書籍・資格・eラーニングなど

目的

実務スキルの習得

体系的知識の習得

自律的な能力開発

OJTとOff-JTはどちらも会社主導で行われます。一方、自己啓発は社員本人の意思によって進められるのが大きな特徴です。

会社主導の育成だけでは限界があります。自己啓発を支援することで、社員の主体性を引き出し、組織全体の成長へとつなげられるでしょう。

企業による自己啓発支援の方法

自己啓発支援には、さまざまな方法があります。自社の目的や社員のニーズに合わせて、最適な手段を選ぶことが大切です。ここでは代表的な四つの方法を紹介します。

資格取得補助制度

資格取得補助制度は、社員が業務に関連する資格を取得する際の費用を会社が負担する仕組みです。受験料や教材費、講座受講料などが対象となります。

例えば、経理職であれば日商簿記やFASS検定、営業職であれば販売士やビジネス実務法務検定、IT職であれば情報処理技術者試験などが挙げられるでしょう。合格時に報奨金を支給する企業も多く見られます。

資格取得は、社員にとっては専門性の証明やキャリアの選択肢拡大につながり、会社にとっては有資格者の確保によって受注要件を満たせる、対外的な信頼性が高まるといったメリットがあります。

定期的な勉強会・セミナーの開催

社内で定期的に勉強会やセミナーを開催する方法もあります。社員同士が学び合う文化を醸成できる点が、大きな魅力といえるでしょう。

勉強会のテーマは、業務に直結するものから教養・リベラルアーツまで幅広く設定できます。外部講師を招くケースもあれば、社員自身が講師を務めるケースもあります。

継続的に開催するには、運営体制の整備とフォロー体制が欠かせません。参加率や満足度を定期的に測定し、改善を重ねていくことが、勉強会を継続的に成功させるポイントです。

書籍購入費補助

書籍購入費補助は、社員が学習目的で購入する書籍代を会社が補助する制度です。比較的低コストで導入しやすいため、多くの企業が取り入れています。

運用方法は企業によって異なります。代表的な運用方法は以下の通りです。

  • 月額上限方式:毎月一定額まで自由に申請できる形式
  • 申請承認方式:都度、上司の承認を得て購入する形式
  • 社内図書館方式:購入した書籍を共有資産として蔵書化する形式

読んだ書籍の内容を月1回の読書会で発表する、社内SNSにレビューを投稿してポイント付与する、といった共有の仕組みを設けると、学びが個人にとどまらず組織全体に広がります。

読書会やレビュー投稿など、アウトプットの機会をつくるとよいでしょう。

eラーニング・オンライン研修プラットフォーム

eラーニングやオンライン研修プラットフォームの導入も、近年注目されている方法です。場所や時間の制約を受けずに学習できる点が特徴といえます。

多くのプラットフォームでは、ビジネススキル、語学、ITスキル、マネジメントなど幅広いコンテンツが提供されています。社員は自分の関心や必要性に応じて受講内容を選べる仕組みです。

学習履歴がデータとして蓄積されるため、効果測定もしやすくなります。人事担当者にとっては、社員の学習傾向を把握する貴重な情報源となるでしょう。

自己啓発支援制度で失敗しないためのポイント

自己啓発支援制度は、導入すれば自動的に成果が出るわけではありません。設計と運用の段階で押さえるべきポイントがあります。ここでは失敗を避けるための四つの視点を解説します。

制度の要件・対象者を明確にする

最初に行うべきは、制度の目的と対象者を明確にすることです。曖昧なまま運用を始めると、利用率が伸びなかったり、不公平感が生まれたりします。

具体的に決めておくべき項目は、次の五つです。

  • 補助対象:どの学習内容を支援するか
  • 支給額:上限金額と支給タイミング
  • 対象者:全社員か特定階層か
  • 申請手順:必要書類と提出フロー
  • 承認プロセス:誰がどの基準で承認するか

制度の内容は、社員が迷わず利用できるよう分かりやすい資料にまとめて周知しましょう。FAQ集の用意も有効です。

選択肢を増やしすぎない

支援メニューを充実させることは、一見よいことに思えます。しかし、選択肢が多すぎると社員がかえって迷ってしまい、利用率が下がる傾向があるのです。

大切なのは「選択と集中」の考え方といえます。自社の事業戦略や人材育成方針に沿って、本当に必要な支援メニューに絞り込みましょう。

例えば、DX推進を重視する企業であれば、ITスキル系のeラーニングと関連資格取得補助に集中する、といった具合です。メニューを絞ることで、社員の学習テーマも自然と会社の方向性と一致しやすくなります。

上司・管理職の巻き込みが自律学習を加速させる

自己啓発支援制度の成否を左右するのが、上司・管理職の関わり方です。管理職が制度を理解し、積極的に推奨する姿勢を示すかどうかで、利用率は大きく変わります。

1on1ミーティングやキャリア面談の場で、部下の学習状況を確認する習慣をつくるとよいでしょう。学んだ内容を実務にどう生かすかを、一緒に考える姿勢が重要です。

管理職自身が学び続ける姿を見せることも、部下の学習意欲を引き出す効果的な方法です。管理職を制度の「推奨者」として位置づけ、自らの学習体験を部下に共有してもらう仕組みをつくることで、自己啓発支援制度は組織に定着していきます。

KPIを設定して効果測定する

制度を導入したら、定期的に効果測定を行う必要があります。そのために事前にKPIを設定しておくことが重要です。

測定すべき指標は以下のようなものが考えられます。

  • 利用率:制度を活用している社員の割合
  • 継続率:学習を継続している社員の比率
  • 資格取得数:年間の新規資格取得件数
  • 学習時間:社員1人当たりの平均学習時間
  • 満足度:制度利用者のアンケート評価

数値データを基に、制度の改善を繰り返していきましょう。フォローアップの仕組みをつくることで、社員の学習意欲を持続させられます。

自己啓発支援制度を導入している企業事例

自己啓発支援を積極的に行っている企業の事例を知ることで、自社に取り入れるヒントが見つかります。ここでは3社の取り組みを紹介します。

株式会社ファミリーマート

株式会社ファミリーマートでは、2019年度に人財開発部を創設し、独自の教育体系を構築しています。社員の自律的なキャリア形成を支援する取り組みが特徴です。

具体的には、階層年代別の教育プログラムや次世代リーダー育成プログラムなどの全社研修を展開しています。加えて、部署別・職種別研修を整備し、OJTとOff-JTを効果的に組み合わせた計画的な人財育成を進めているのです。

自己啓発支援の観点で注目したいのが、学習意欲の高い社員向けのリスキリング支援制度です。会社が受講費用の一部を負担することで、自発的な学習を後押ししています。

さらに2024年度からは、キャリアカウンセリング室を設置しました。国家資格を持つキャリアコンサルタントが個別相談に応じることで、研修だけでは補いきれないキャリア自律の支援を実現しています。主体性と思考力を持つ「自律型人財」の育成を目指す、体系的な取り組みといえるでしょう。

人財育成の取り組み|サステナビリティ|ファミリーマート

カルビー株式会社

カルビー株式会社は、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)経営を掲げています。多様な人財が自分らしく強みを生かして活躍できる「全員活躍」を目指し、2010年にはDE&I推進の専任部門を組織しました。

自己啓発支援の観点で特徴的なのが、カフェテリアプラン補助制度です。育児・介護・自己啓発のメニューから選択でき、従業員の自助努力や自律を促進することを目的としています。一人一人のライフステージや関心に応じた学びを後押しする仕組みです。

また、選抜型の女性リーダー育成プログラムや食品企業合同の女性社員研修など、キャリア形成を支援する多様な研修機会も整備しています。各研修プログラムでは、アンコンシャス・バイアスや心理的安全性を学ぶ機会を設け、対話を通じて相互理解を深める工夫も凝らしているのです。

カフェテリアプラン方式で社員の自律的な学びを支える同社の取り組みは、社員の年齢層やライフステージが多様で、画一的な支援メニューでは対応しきれない企業にとって参考になるでしょう。

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の推進|サステナビリティ|カルビー

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループでは、社員一人一人の「自律的キャリア形成」を後押しする仕組みを整備しています。MUFGグループ全体で、主体的にキャリアを選択できる「キャリアチャレンジ制度」を展開しているのが特徴です。

自己啓発支援の観点で注目したいのが、Challenge Leave制度です。起業、留学、資格取得、公的活動といった自己の成長に資する活動に挑戦する社員に対し、一定期間の休業を認めています。学びのために長期的に時間を確保できる、柔軟な制度といえるでしょう。

加えて、福利厚生制度の一つとして自己啓発費用補助を設けており、社員の自発的な学習を経済面からもサポートしています。グループ横断の公募制度「Job Challenge」には2024年度に約2,200人が応募し、そのうち約1,200人が希望部署への異動や社内副業を実現しました。

メガバンクとしての規模を生かし、休業・費用補助・公募異動を組み合わせた多層的な支援体制を構築している点は、大規模組織で自己啓発支援を進める際の好例となります。

エンゲージメント向上|三菱UFJフィナンシャル・グループ

自己啓発支援制度の整備で組織力を高める

自己啓発支援制度は、社員の自律的成長と組織力強化を同時に実現する重要な施策です。変化の激しい時代において、社員が自ら学び続ける力を持つことは、企業の競争力維持に直結します。

制度を成功させるには、明確な目的設定、支援メニューの絞り込み、管理職の巻き込み、KPIによる効果測定が不可欠といえるでしょう。単に費用を補助するだけでなく、社員の学びが組織の成長につながる仕組みづくりが求められます。

自己啓発支援を含む人材育成施策の効果を最大化するには、社員エンゲージメントを高める土台づくりも重要です。そのためにも、TUNAGの活用を検討されてはいかがでしょうか。

本記事で述べた「申請・承認プロセスの明確化」や「学びを組織に広げる仕組みづくり」といった課題に対し、TUNAGは具体的な解決策を提供します。自己啓発支援制度の申請・承認フローをクラウド上でデジタル化でき、学んだ内容を社員同士で共有する場を設けることも可能です。

また、社員一人一人の活動を可視化することで、制度の利用状況を把握しやすくなります。組織全体で学び合う文化を醸成し、自己啓発支援の効果を最大化したい企業にとって、有効な選択肢となるでしょう。

TUNAG(ツナグ) | 組織を良くする組織改善クラウドサービス

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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