心理的安全性とは?測定・評価方法と高める施策を解説
「会議で誰も発言しない」「ミスの報告が遅れて問題が大きくなる」「優秀な人材が次々と辞めていく」このような組織の停滞感に悩んでいませんか?これらの問題の根本原因は、職場の「心理的安全性」の欠如にあるかもしれません。本記事では、心理的安全性の基本概念から、現状を測定する具体的な方法、そして段階的に心理的安全性を高めていく実践的な施策まで、体系的に解説します。
心理的安全性とは何か?
組織の生産性向上と人材定着を実現する鍵として、心理的安全性という概念が注目されています。ここでは、心理的安全性の基本的な定義から、その重要性について解説します。
心理的安全性の定義と基本概念
心理的安全性とは、チームメンバーが互いにリスクを取ることに対して安心感を持ち、自分の意見や疑問、懸念、失敗を恐れることなく発言できる環境や状態のことです。
例えば、会議で新入社員が「この方法には問題があるのではないでしょうか」と発言できるような雰囲気が、心理的安全性が高い典型的な職場といえます。
失敗を報告しても責められるのではなく、改善策を一緒に考えてもらえる雰囲気が心理的安全性の高い職場の特徴といえるでしょう。
Googleから学ぶ心理的安全性の重要性
Google社が実施した「プロジェクト・アリストテレス」は、心理的安全性の重要性を科学的に証明した画期的な研究です。この研究では、180のチームを対象に、成功するチームの条件を徹底的に分析しました。
その結果、チームの成功を左右する最も重要な要素が心理的安全性であることが判明したのです。心理的安全性の高いチームのメンバーは離職率が低く、他のメンバーが発案したアイデアをうまく活用でき、収益性が高いという結果が報告されています。
さらに「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が2倍多いことも明らかになりました。
この研究結果は、世界中の企業に大きな影響を与え、多くの組織が心理的安全性の向上に取り組むきっかけとなっています。
参考:Google re:Work - ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る
ぬるま湯組織との違い
心理的安全性を「ぬるま湯組織」と混同してしまうケースも少なくありません。しかし、この2つには明確な違いがあります。
ぬるま湯組織では、対立を避けるために本音を言わず、現状維持を優先します。責任の所在が曖昧で、成長や改善への意欲が低いのが特徴です。
一方、心理的安全性の高い組織では、建設的な対立や議論が推奨されます。高い目標に向かって挑戦し、失敗から学ぶ文化があるのです。
ただし、ここで重要なのは、心理的安全性は「何を言っても許される」無秩序な状態とは違うということです。あくまで組織の目標達成やより良い成果を出すという共通の目的があるからこそ、建設的な意見や健全な対立が歓迎されます。他者への敬意を欠いた発言や、無責任な批判が許されるわけではありません。むしろ、心理的安全性とは、組織の成長と個人の成長を両立させるための土台となる環境なのです。
心理的安全性を測定する7つの質問と評価方法
心理的安全性の向上に取り組む前に、現状を正確に把握することが不可欠です。ハーバード大学のエドモンドソン教授が開発した7つの質問は、世界中の企業で活用されている標準的な測定ツールです。
これらの質問を活用した測定方法と、結果の分析・評価方法について、実務での活用を前提に詳しく解説します。定期的な測定により、施策の効果検証も可能になります。
エドモンドソン教授の7つの質問項目
エドモンドソン教授が開発した7つの質問は、心理的安全性を測定する世界標準として広く活用されています。これらの質問に対して、7段階評価(1:全く当てはまらない〜7:非常に当てはまる)で回答してもらうことで、チームの心理的安全性レベルを数値化できるのです。
測定項目は以下の7つです。
- チームでミスをすると、責められることが多い
- チームのメンバーは、困難な問題も提起できる
- チームのメンバーは、他者と異なることを理由に拒絶することがある
- チームでは、リスクを取っても安全である
- チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
- チームのメンバーは、意図的に自分の努力を無駄にするような行動はしない
- チームのメンバーと仕事をするとき、自分独自のスキルや才能が評価され、活用されている
これらの質問は、心理的安全性の異なる側面を測定するよう設計されています。
組織の規模や業界を問わず適用可能な汎用性の高さも、この測定方法の大きな特徴といえるでしょう。
参考:Google re:Work - ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る
測定結果の分析と評価基準の理解
測定結果の分析では、まず全体の平均点を算出します。平均点が5.0以上であれば心理的安全性は高いレベルにあり、3.5〜4.9は中程度、3.5未満は改善が必要なレベルと判断できるのです。
ただし、数値だけでなく個別の項目にも注目することが重要です。
測定は継続的に行いましょう。四半期ごとや半期ごとの測定により、施策の効果を検証し、継続的な改善につなげることができます。測定結果を社員にフィードバックすることで、心理的安全性向上への意識も高まるでしょう。
心理的安全性を高めるための施策
心理的安全性を高めるには、組織環境と人事・文化の両面から体系的にアプローチする必要があります。単発的な施策ではなく、複数の施策を組み合わせて実施することで、相乗効果が生まれるのです。
オフィス環境の改善から、評価制度の見直し、組織文化の醸成まで、心理的安全性向上に効果的な施策を実務的な観点から解説していきます。
心理的安全性を促進するオフィス環境づくり
物理的な環境は、コミュニケーションの質と心理的安全性に大きく影響します。オープンスペースと個室のバランスを取り、用途に応じて使い分けられる環境を整えることで、多様なコミュニケーションが促進されるのです。
オフィス環境の改善は、社員に対する組織のメッセージでもあります。「対話を重視している」「創造性を大切にしている」という姿勢を環境で示すことで、心理的安全性の向上につながるのです。
投資対効果の観点からも、オフィス環境の改善は比較的取り組みやすい施策といえるでしょう。
公平で透明性の高い評価制度の設計
評価基準を明確にし、全社員に公開することで、不公平感を解消し、心理的安全性を高めることができます。例えば360度評価は、上司だけでなく同僚や部下からの評価も取り入れることで、多面的で公正な評価が実現します。
成果だけでなく、プロセスや挑戦も評価対象とすることが重要です。新しい取り組みへの挑戦、失敗からの学び、他者への支援なども評価項目に含めることで、心理的安全性を支える行動が促進されます。
サンクスカードとピアボーナスによる称賛文化
感謝や称賛を可視化する仕組みを導入することで、ポジティブな雰囲気が醸成され、心理的安全性が向上します。サンクスカードで日々の小さな貢献も認め合い、ピアボーナスで同僚同士が報酬を送り合える仕組みをつくることで、相互承認の文化が根付くのです。
公開の場での称賛も効果的です。月例会議で「今月のMVP」を発表したり、社内SNSで感謝のメッセージを共有したりすることで、称賛文化が組織全体に広がります。管理職が率先して部下や同僚を称賛することで、称賛することが当たり前の文化として定着するでしょう。
失敗を許容する学習文化の構築
行動の結果が期待通りでなくても、そこから得られた知見を重視する姿勢を示すことが重要です。管理職自身が失敗談を共有し、失敗から学んだ経験を語ることで、失敗を恐れない姿勢を組織全体に浸透させることができるでしょう。
学習文化の構築には、失敗を分析し、改善につなげる仕組みも必要です。失敗の原因を個人ではなくシステムやプロセスの問題として捉え、組織的な改善につなげることで、建設的な学習サイクルが確立されるのです。
心理的安全性を高められるプラットフォーム「TUNAG」
心理的安全性を高めるための施策を効果的に実行するには、適切なツールの活用が欠かせません。組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」は、心理的安全性の向上に必要な機能を網羅的に提供し、組織の課題解決を支援します。
TUNAGでは、サンクスカードやピアボーナスの仕組みを簡単に導入でき、日々の感謝や称賛を可視化できます。
社内SNS機能により、部門を越えたコミュニケーションが活性化し、情報の透明化も実現できるでしょう。定期的なパルスサーベイ機能により、心理的安全性のレベルを継続的に測定することも可能です。
データに基づいた改善活動を継続的に行うことで、心理的安全性を高めていくことが可能です。組織の状況に応じてカスタマイズできる柔軟性も、TUNAGの大きな特徴です。
段階的に機能を追加していくことで、無理なく心理的安全性の高い組織文化を醸成できるでしょう。心理的安全性の向上は一朝一夕には実現しませんが、適切なツールとノウハウがあれば、着実に前進することができるのです。