アサーションスキルを活用するメリットは?トレーニング方法も紹介
アサーションとは、相手を尊重しながら自分の考えも主張するコミュニケーション方法です。アサーションスキルを活用すれば、ビジネス上で円滑な人間関係を構築しやすくなるでしょう。アサーションスキルを生かせるシーンや鍛える方法を紹介します。
アサーションスキルとは
状況に応じてアサーションを生かせるスキルがアサーションスキルです。そもそもアサーションとは何か、3種類の自己表現タイプと併せて解説します。
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アサーションスキルの意味
コミュニケーションにおいて、相手と自分の両方を尊重しながら意見を伝えることを「アサーション」といいます。この言葉は、「主張」や「断言」という意味を持つ英語の「assertion」が語源です。
アサーションスキルを発揮したコミュニケーションは、職場の心理的安全性を高めます。心理的安全性とは、自分の意見を無視・批判されずに受け入れてもらえる状況のことです。
心理的安全性が高い職場では、従業員が不安や恐れを感じずに発言できるため、心理的な負担が軽減されます。個々のパフォーマンスが向上し、業務効率化や生産性向上にもつながるでしょう。
アサーションスキルはトレーニングで鍛えることが可能です。従業員がアサーションを意識したコミュニケーションを取れれば、企業にさまざまなメリットがもたらされます。
3種類の自己表現タイプ
アサーションを理解するためには、自己表現の3つのタイプを知っておくことが重要です。それぞれのタイプは以下のように特徴付けられます。
- アグレッシブ
自分の意見や感情を優先し、相手の意見や気持ちを無視してしまうタイプです。この表現方法では、自分の主張は通るかもしれませんが、相手との信頼関係が損なわれる可能性があります。
- ノンアサーティブ
自分の意見や感情を伝えられず、相手に譲歩してしまうタイプです。このタイプでは衝突を避けることができますが、自分の意志が反映されず、ストレスを抱え込む原因となります。
- アサーティブ
相手の意見や感情を尊重しつつ、自分の意見や感情も適切に伝えるタイプです。アサーティブな表現は、双方の意見を調和させるコミュニケーションを可能にし、良好な関係を築くことができます。
アグレッシブとノンアサーティブの中間に位置するのがアサーティブです。アサーションスキルを習得するためには、アサーティブを目指す必要があります。
自分がアグレッシブに該当すると思うなら、相手の話も聞くようにしなければなりません。また、ノンアサーティブな人はできるだけ自己主張する意識を持ちましょう。
アサーションスキルを活用するメリット
各従業員がアサーションスキルを発揮すれば、コミュニケーションの質が高まりさまざまな問題が解消されるでしょう。アサーティブなコミュニケーションがもたらす効果を紹介します。
良好な人間関係を構築できる
相手と自分の双方を尊重したコミュニケーションは、良好な人間関係の構築に直結します。アサーションスキルを使えば、自分の権利や意見を主張しつつ、相手の権利や意見もきちんと尊重できるため、互いに信頼を築くことができるのです。
例えば、仕事が忙しい中で上司から急な業務を頼まれた場合、アサーションスキルが高い人は以下のように返答します。
「空いている時間があればお引き受けしたいのですが、あいにく週末まではスケジュールに余裕がありません。もし可能であれば、納期を延長していただくか、現在私が担当している業務と入れ替えていただけると助かります。」
このように、アサーティブな対応をすることで、相手に配慮しながら自分の状況を正直に伝えることができます。結果として、上司との間に良好な関係が築かれるでしょう。
一方、アグレッシブな人は代替案を示さずに単に仕事を断るかもしれません。また、ノンアサーティブな人は無理をして仕事を引き受けることで、後々自分に負担がかかる可能性があります。アサーティブなスキルを発揮することで、双方の意見を調整し、適切な対応をすることが可能となり、コミュニケーションがスムーズになります。
ハラスメントの予防につながる
自分の考えを主張できない職場環境では、部下が上司の言いなりになる状況が生まれ、これがハラスメントにつながるリスクを高めることがあります。逆に、部下が自分の意見を安心して発信できる環境が整えば、不満や誤解が溜まりにくくなり、職場内のトラブルを未然に防ぐことが可能です。
さらに、アサーションスキルはマネジメントを行う上司にとっても非常に重要なスキルです。このスキルを持つ上司は、部下の意見に耳を傾ける姿勢を持つため、部下との信頼関係が築かれやすくなります。上司が部下を尊重したコミュニケーションを実践できることで、ハラスメントが発生しにくい職場環境を作ることができます。
アサーションスキルの導入は、単に個人の能力向上だけでなく、職場全体の風通しを良くし、健全な職場文化の形成にも大きく貢献します。
従業員エンゲージメントの向上を図れる
アサーティブな人が多い企業では、従業員エンゲージメントも向上しやすくなります。従業員エンゲージメントとは、従業員が自社に対して抱く愛着や貢献意欲のことです。
アサーションが浸透するとコミュニケーションが活性化され、組織やチームに一体感が生まれます。ストレスも軽減されて働きやすくなり、企業に対する満足度や貢献意欲が高まるのです。
従業員エンゲージメントは、組織力を強化する重要な要素として近年注目されています。従業員エンゲージメントが低い企業は、アサーションを積極的に取り入れてみましょう。
アサーションスキルを生かせるシーン
アサーションスキルは、職場のさまざまな場面で活用することができます。特に人事評価や採用面接といった、従業員や応募者との重要なコミュニケーションの場面でその効果を発揮します。それぞれの場面での活用方法とメリットを詳しく見ていきましょう。
人事評価
人事評価では、従業員に納得感を与えられる評価を行うことが非常に重要です。評価を伝える際にアサーションスキルを意識することで、評価担当者と従業員が互いを尊重しながら意見を交換できる環境を作ることができます。
アサーションを活用したコミュニケーションは、従業員が安心して自分の意見を述べることを可能にします。
心理的安全性が低い職場では、従業員は自分の評価に対して不満を抱いていても、それを表現できないことがあります。その結果、評価に対する不満が溜まり、最悪の場合、離職につながるリスクもあります。
一方、評価担当者がアサーションスキルを活用すれば、従業員の意見を正しく受け止め、それを評価制度の改善に反映させることが可能です。このように評価プロセスをブラッシュアップすることで、評価に対する不満を感じる従業員が減少し、職場のエンゲージメントが向上します。
採用面接
採用面接では、企業が応募者を選ぶだけでなく、応募者も企業を選ぶ権利を持っています。そのため、応募者を一方的に評価するのではなく、互いに対等な立場で話を進めることが必要です。アサーションスキルを活用することで、応募者の意見や質問を尊重しながら、企業の魅力を効果的に伝えることができます。
もし面接官が威圧的な態度を取ると、応募者は不快感を覚え、優秀な人材を確保する機会を失う可能性があります。また、面接時に応募者が受けた印象は、入社後のモチベーションや企業に対する信頼感にも影響を与えます。採用面接でアサーションスキルを意識したコミュニケーションを実践することで、応募者との間に信頼関係を築きやすくなり、企業文化への良い第一印象を与えることができます。
アサーションスキルを鍛える方法
アサーションスキルは、意識的なトレーニングを通じて高めることが可能です。以下では、代表的なトレーニング方法を紹介します。これらを活用することで、職場や日常生活でより円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。研修プログラムの検討時にも参考になります。
DESC法の活用
DESC法は、自分の意見や感情を整理し、相手に納得感を持って伝えるための4段階の会話技法です。以下のプロセスを順に実践することで、アサーションスキルを効果的に鍛えることができます。
- Describe(描写)
事実を客観的に伝える。感情や意見を交えず、状況を正確に説明することが重要です。 - Express(表現)
自分の感情や考えを主観的に伝える。「私はこう感じている」「こう考える」という形で、相手に自分の立場を理解してもらいます。 - Specify(提案)
相手が望んでいると思われる解決策や具体的なアクションを提案します。提案は現実的で受け入れやすい内容にすることがポイントです。 - Choose(選択)
提案への相手の反応を受け入れ、柔軟に対応します。相手の意見に耳を傾けながら、適切な対応を選択します。
DESC法を活用することで、自分の意見を押し付けるのではなく、相手との対話を通じて解決策を見出すことができます。これは、アサーティブな自己表現を実現する上で非常に効果的な方法です。
アイメッセージによる自己主張
アイメッセージは、「私」を主語として感情や意見を表現する技法です。主語に「私」を使うことで、相手に対して攻撃的な印象を与えず、共感や親近感を生み出します。
例えば、「あなたが遅刻したから迷惑をかけられた」という表現を、「私は遅刻されると予定が狂って困る」と言い換えることで、非攻撃的に自分の感情を伝えることができます。このような表現を心がけることで、相手が防御的にならず、建設的なコミュニケーションが可能になります。
アイメッセージは簡単に取り入れられるため、日常の会話や職場でのやりとりでもすぐに実践できるスキルです。
ロールプレイングでの実践練習
ロールプレイングは、現実的なシーンを設定し、その場面での対応を練習するトレーニング方法です。例えば、上司との会話や顧客対応など、実際に発生しがちな場面をイメージし、役割を演じながらスキルを磨きます。
練習中はアサーションスキルを意識し、DESC法やアイメッセージを取り入れながら会話を進めます。ロールプレイング後には、フィードバックを行い、良かった点や改善点を明確にします。このプロセスを繰り返すことで、実際の場面でも自然とアサーティブな対応ができるようになります。
ロールプレイングは、座学だけでは身につけにくいアサーションスキルを体感的に学ぶのに最適な方法です。特にチームや職場全体で行うことで、スキルの共有や全体的なコミュニケーション改善にもつながります。
TUNAGでアサーションスキルの向上を図る
従業員のアサーションスキルを高めれば、組織にさまざまなメリットをもたらします。社内コミュニケーションに取り入れ、職場環境の改善を図りましょう。
アサーションを社内に浸透させる方法としては、エンゲージメント向上プラットフォーム「TUNAG」の導入がおすすめです。
TUNAGは、組織内のコミュニケーションを活性化し、従業員同士のつながりを深めるためのオールインワンアプリです。TUNAGを活用することで、アサーションスキルの向上も期待できます。
TUNAGが提供するコミュニケーションの場では、意見交換がしやすく、上司や同僚との対話が自然と増えるため、自分の意見を適切に表現し、相手を尊重する機会が多くなります。
以下、TUNAGの導入がコミュニケーションの改善につながった事例を紹介します。
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例えば、感謝や称賛を送り合える「サンクスカード」機能や、投稿を通じて気づきを共有する仕組みは、相手に配慮しながら自分の感情や考えを伝える練習の場となります。
また、TUNAGのオープンな環境は、心理的安全性を高め、従業員が意見を安心して表明できる土壌を作ります。こうした要素はアサーションスキルを実践的に磨くうえで非常に有効です。
TUNAGを活用すれば、日常業務を通じてアサーションを実践できる環境が整うため、組織全体のコミュニケーションが円滑になり、働きがいのある職場づくりに寄与します。