キャリアブレイクは労働者にも企業にもプラス?導入のポイントも解説

ダイバーシティが進む中で、幅広い人材を活用する糸口として「キャリアブレイク」という考え方が注目されるようになりました。キャリアブレイクの意味や個人・企業にとってのメリット、制度として取り入れるときのポイントを解説します。

現代で注目される「キャリアブレイク」

働き方の多様化や企業のダイバーシティが進む現代では、仕事の「空白期間」に関する意識も変わってきました。空白期間の呼び方として浸透し始めたのが、「キャリアブレイク」という言葉です。どのような意味を持つのか、「ブランク」との違いを交えて解説します。

キャリアブレイクとは

キャリアブレイク(career break)とは、それまでの仕事から離職・休職などで一時的に離れる期間のことです。キャリアブレイクはヨーロッパでは一般的で、従業員が在籍している状態で長期休暇を与え、一定期間をスキルアップや社会活動に充てられるようにしている企業も少なくありません。

キャリアブレイクを取る目的はさまざまです。目的によって、次の4タイプに分類できます。

  • ライフ型:家族介護や妊娠・出産、病気などに対応するため
  • グッド型:仕事における精神的なストレス・体調不良をケアするため
  • センス型:疲労回復やリフレッシュをし、感性を回復させるため
  • パワー型:ワーキングホリデーや旅行・学校での学び直しなど、さらなる知見やスキルの向上を図るため

ブランクとの違い

日本では、仕事の空白期間を「ブランク(キャリアブランク)」と呼ぶことが多いです。キャリアブレイクがブランクと違う点は、仕事から離れていた理由が前向きであることにあります。

ブランクは「単に無職だった期間」である一方、キャリアブレイクは目的が何であっても、将来を見据えて必要があるために仕事から離れる期間を指します。

重視されるようになった背景

現代の日本でキャリアブレイクという考え方が注目を集める背景には、以下のような状況があります。

  • 人生100年時代の到来で学び直しの必要性が高まっている
  • 技術革新のスピードが上がり、目まぐるしい変化への対応が必要
  • 終身雇用の崩壊により、労働者が自身でキャリア構築を考える必要がある
  • 家庭や趣味などのプライベートと仕事の調和を図る「ワークライフバランス」の考え方が浸透してきている

ヨーロッパでは、キャリアブレイクがワークライフバランスの一環として浸透してきています。日本でも、個人でのスキルアップ・キャリア構築が必要になってきているとともに、「ずっと仕事をしていなければならない」という価値観が薄れつつあるかもしれません。

キャリアブレイクを経験するメリット

キャリアブレイクには、多くのメリットがあることが分かっています。具体的に「前向きな空白期間」は労働者にどのような効果をもたらすのでしょうか。

心身のリフレッシュでストレスが減る

キャリアブレイクのメリットとしてまず挙げられるのが、心身のリフレッシュです。仕事からある程度長期間離れることで、週休のような短期間では心身が休まらない人もリフレッシュしやすくなります。キャリアブレイクの期間は人によって違うものの、数カ月〜1年程度が一般的です。

病気や家庭の問題で業務との両立が難しくなっていた人は、自分の課題解決に専念できてストレスが減るでしょう。特別な事情がなくても、仕事上のストレスから解放されることでコンディションが整います。

仕事から一時的に離れてリフレッシュできれば、新たな気持ちで意欲的に仕事に取り組めるようになるはずです。

キャリアを見つめ直せる

仕事に追われている忙しい日々では、なかなかキャリアについてじっくりと考えられません。一定期間仕事をしない期間を設けると、時間をかけて自分が「将来的にどうなりたいのか」を、得意不得意や性質と合わせて考えられるようになります。

目標が決まったら、スキルアップにチャレンジすることも可能です。自ら目的を定めてスキルアップに励んだ人は、企業にとっても大きな戦力となります。

生来の好奇心や感性が回復する

特に仕事への疲れをきっかけとしたキャリアブレイク(センス型)の場合、何もしない期間が好奇心や感性の回復につながる場合があります。

好奇心は新たなチャレンジを、感性はクリエイティブなアイデアの創出を促す要素です。キャリアブレイク経験者は、企業にとってイノベーションの核となる可能性を秘めています。

キャリアブレイク経験者がいる企業の強み

前向きな理由で仕事を離れたキャリアブレイク経験者は、企業にとって良い影響をもたらします。その影響が企業の強みとなるはずです。

新たな価値観を取り入れられる

キャリアブレイクを経験した人は、目的が何であれ仕事以外の経験を積んでおり、ほかの人にはない価値観や視点を持っている可能性が高いでしょう。新たなアイデアを出せるキャリアブレイク経験者がいれば、組織のイノベーションが進みます。

結果的にほかの従業員にとっても良い刺激となり、組織のモチベーション向上が期待できます。次々と新たなアイデアが生まれ、競争力が急速に高まるケースも少なくありません。

人材の多様性が実現する

日本企業は離職期間がある人を敬遠する傾向があるため、組織が硬直化し、必要な人材を確保できないケースも出てきます。キャリアブレイク制度を導入したりキャリアブレイク経験者を採用したりすることで、多様な背景・経験を持つ人を現場に配置することが可能です。

多様性が実現すれば、組織としての創造性が上がります。また、多様な背景を持つ人材を採用するようになることで、人手不足の解消にもつながるでしょう。

企業がキャリアブレイク制度を導入するポイント

企業に在籍したまま長期的に仕事から離れられれば、企業にとっては離職されるリスクが減る、従業員にとっては戻る場所があるというメリットがあります。キャリアブレイクを制度として取り入れようと思っている企業向けに、導入のポイントを見てみましょう。

デメリットについての対策を事前に考える

キャリアブレイクを制度として導入するとき、代替要員の確保にかかるコストや復帰後の環境不整備、スキルアップによる離職の可能性といったデメリットもあります。

このようなデメリットをあらかじめ想定し、予算の確保や復帰サポートの体制、定期的な面談でエンゲージメントを高めて離職を防止するなどの対策が必要です。

キャリアブレイクの目的を限定しない

キャリアブレイクを単に「スキルアップする期間」と捉えて、家庭や病気の事情やリフレッシュのために仕事を離れたい人を対象外とするのは悪手です。目的によらず、キャリアブレイク中の経験は仕事にプラスになる可能性が高いと考えましょう。

幅広い目的に対してキャリアブレイクを認めることで、組織エンゲージメントの向上も期待できます。エンゲージメントが向上すれば従業員の意欲が上がり、離職率は下がります。

キャリアブレイク経験者の採用で見るべきポイント

多様な人材の確保には、キャリアブレイク制度の導入だけでなく、キャリアブレイク経験者の積極的な採用も効果的です。一定期間仕事を離れていた人の採用では、どのような面に注目すればよいのでしょうか。

離職期間を前向きに捉えているか

新たにキャリアブレイクを経験した人を採用するときは、単なるブランクとの区別がつきにくいはずです。見分け方は、「仕事から離れていた期間をプラスに捉えているかどうか」です。

必要に迫られて離職していた人でも、本人が前向きな離職だと感じていなければキャリアブレイクとはいえません。空白期間中は何をしていたのか聞いたときの反応を見たり、期間中の気持ちを素直に聞いたりして判断しましょう。

期間中の経験が自社のニーズに合うか

キャリアブレイク中の経験はさまざまで、そこから得た価値観やスキルも多様です。その価値観やスキルが自社の求めている人物像に合致していなければ、活躍は望めません。

極端な例を出せば、「英語ができる人材が欲しい」と思っているときにアメリカに行っていた人が応募してきたとしても、日本人街にいてほとんど英語を使っていなかったとしたらミスマッチになります。

キャリアブレイク中の経験や得たスキルなどを深掘りして、自社のニーズと擦り合わせるヒアリングが必要です。

キャリアブレイク経験者は組織の成長を助ける

キャリアブレイクは単に仕事をしていなかった「ブランク」と違って、人生や仕事に必要があって前向きな理由でできた空白期間です。一定期間仕事をせず、時間を家族や自身のケア・スキルアップ・リフレッシュなどに充てます。

キャリアブレイクを経験した人は、新鮮な視点を組織にもたらす貴重な人材です。イノベーション促進の核となり、企業の成長に貢献してくれるはずです。キャリアブレイク制度を導入するときは、仕事を休む目的は限定せず、生じ得るデメリットへの対策を事前に考えましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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