法定外福利厚生とは?代表例や導入のメリット・運用のポイントなどを解説
法定外福利厚生は、企業が従業員の満足度や働きやすさを高めるために独自に導入する福利厚生制度です。本記事では、法定外福利厚生の概要や法定福利厚生との違い、具体的な導入例、メリット、運用時のポイントなどを詳しく解説します。自社に合った制度設計の参考にしてください。
法定外福利厚生とは何か?
法定外福利厚生は、労働基準法や社会保険法などで定められた最低限の保障に加えて、企業が従業員の働きやすさや生活の質向上を目的として、任意で実施する制度全般を指します。
法定福利厚生との違い
法定福利厚生と法定外福利厚生の最大の違いは、実施義務の有無にあります。法定福利厚生は労働基準法や各種社会保険法によって、企業に義務付けられており、全ての企業が順守しなければならない最低限の保障制度です。
一方、法定外福利厚生は企業の任意による制度であり、実施の有無やどういった内容にするかは、企業の判断に委ねられています。また、法定福利厚生は制度内容や給付水準が法律で定められているため画一的ですが、法定外福利厚生は企業の創意工夫により、多様な形態を取れるのが特徴です。
法定福利厚生の具体例
法定福利厚生には、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の、社会保険四制度が含まれます。健康保険は医療費の一部負担や傷病手当金の支給を行い、厚生年金保険は老齢・障害・遺族年金を提供するものです。
また、雇用保険は失業時の生活保障や職業訓練の支援を担い、労災保険は業務上の災害に対する補償をする制度です。これらに加えて、子ども・子育て拠出金の負担も法定福利厚生に含まれ、企業は従業員の給与に応じて、保険料を負担する義務があります。
さらに、労働基準法に基づく年次有給休暇の付与や、時間外労働に対する割増賃金の支払いなども、法定福利厚生の範疇です。
法定外福利厚生の例
法定外福利厚生は、上記の法定福利厚生以外の、全ての福利厚生制度が該当します。
多くの企業が従業員の多様なニーズに応えるため、住宅や健康・教育・働き方支援など、多岐にわたる領域で導入しています。
以下に、代表的な法定外福利厚生の例を見ていきましょう。
住宅・生活支援
住宅関連の福利厚生は従業員の生活基盤を支える重要な制度として、多くの企業で導入されています。住宅手当や家賃補助は、月額数万円から十数万円の範囲で支給され、特に都市部の企業では生活費負担軽減の効果が高く評価されています。
社宅や寮の提供は新入社員や転勤者にとって有効で、家具付きの物件や食事付きの寮など、生活に必要な設備を包括的に提供するケースも少なくありません。
さらに通勤に関しては、交通費の全額支給に加え、マイカー通勤者への駐車場代補助やガソリン代支援、自転車通勤促進のための購入費補助なども実施されています。
健康・医療支援
健康診断の追加項目や人間ドックの費用補助など、従業員の健康を積極的にサポートする制度も、法定外福利厚生に含まれます。また、メンタルヘルス対策としてカウンセリングサービスを提供したり、ストレスチェックを強化したりする企業も少なくありません。
インフルエンザ予防接種やフィットネスクラブの利用補助といった、日常的な健康維持の支援も有効です。医療や健康に関する福利厚生は、業務効率や集中力の維持にもつながるため、経営的な観点からも投資価値が高い分野です。
家族・ライフイベント支援
結婚祝金や出産祝い金、育児休業の延長・子育て支援手当など、家族やライフイベントに関連する支援も多様化しています。
特に近年は、育児や介護と仕事の両立を支援するため、短時間勤務制度や在宅勤務制度を充実させる企業が目立ちます。また、子どもの入学祝いや家族参加型イベントの開催など、従業員の家族も対象とした福利厚生を提供するところも珍しくありません。
教育・キャリア支援
従業員のスキルアップやキャリア形成を支援するため、資格取得支援や外部研修費用の補助、社内研修の充実なども、福利厚生の一環です。語学学習支援やeラーニングの導入、自己啓発費用の補助なども代表的な例です。
また、社内研修制度やキャリアコンサルティングの提供なども考えられます。企業が従業員の成長に投資する姿勢を示すことで、ロイヤリティの向上にもつながるでしょう。
働き方・余暇支援
フレックスタイム制やテレワーク制度・時短勤務制度など、柔軟な働き方を実現する取り組みも、法定外福利厚生の一部です。また、リフレッシュ休暇やバースデー休暇をはじめ、レクリエーション補助やスポーツ観戦チケットの提供など、余暇の充実を図る制度も広く導入されています。
さらに余暇の支援では、福利厚生サービス会社と提携し、旅行や映画、飲食店などの割引サービスを提供する企業もあります。
従業員が仕事と私生活を両立できる環境を整えることは、持続的な働き方を支える上で不可欠な要素です。
法定外福利厚生を導入するメリット
法定外福利厚生を導入すれば、従業員満足度の向上につながり、離職率の低下と人材定着率の改善に寄与します。
優秀な人材の確保・維持は企業の持続的成長に不可欠であり、充実した福利厚生制度は、採用活動における大きな競争優位性となるでしょう。
多くの業界で、人材採用市場が売り手有利となっている近年、求職者は給与だけではなく働く環境や福利厚生の充実度を重視する傾向が強まっています。
法定外福利厚生の内容をうまくアピールできれば、他社との強力な差別化要因となるでしょう。
法定外福利厚生を導入する際のポイント
法定外福利厚生制度の成功には、戦略的な設計と運用が不可欠です。導入の際には、制度の方向性やコスト・運用体制・社内での公平性など、多面的な視点から検討を重ねる必要があります。以下の点を意識しつつ、自社に合った福利厚生を導入しましょう。
全体方針と従業員ニーズのすり合わせ
福利厚生は、企業の理念や人材戦略と合致している必要があります。方向性が不明確なまま制度を追加しても、十分な効果は得られません。
制度が利用されず、形骸化してしまう可能性もあるので、従業員のニーズに合ったものにする必要があります。
まずは、経営層の意図や組織の成長段階を踏まえて、どのような人材に定着してほしいのか、何を支援すべきかといった方針を明確にしましょう。
その上で、社員アンケートや面談を通じて従業員ニーズを把握し、具体的な制度設計に反映させるプロセスが重要です。
費用対効果と運用負担のバランスを考える
法定外福利厚生を導入する際には、制度が生む効果と必要なコスト、運用の手間とのバランスを慎重に検討する必要があります。さまざまな福利厚生を導入しようとすると、初期費用や継続的な管理負担が膨らむ可能性があるので注意しましょう。
形だけ制度を整えても、実際に社員に使われなければ投資は無駄になってしまいます。導入前には、対象人数や利用頻度、効果を可視化する方法などを考慮し、費用に見合った成果が得られるか慎重に見極めることが大切です。
公平性と柔軟性の両立
法定外福利厚生を導入する際には、社員間の公平性を保ちながら、個別のニーズにも対応できる柔軟性を持たせることも重要です。
福利厚生は全ての従業員に開かれたものであるべきですが、年齢や家族構成・勤務形態などによって、必要とされる支援内容は異なります。
例えば、独身者には住宅補助が重要であり、子育て中の従業員には保育支援が求められるといった違いが生じます。
こういった多様性に対応するには、選択型福利厚生制度(カフェテリアプラン)のような仕組みを活用し、それぞれが必要とする支援を選べるようにするとよいでしょう。
法定外福利厚生を充実させる
法定外福利厚生は、従業員の多様なニーズに応え、企業の魅力や競争力を高める有効な手段です。単なるコストとして捉えるのではなく、従業員の満足度や定着率向上、企業イメージの向上など、長期的な視点での投資と位置付けることが重要です。
自社の方針や従業員の声を反映しながら、持続可能で魅力的な福利厚生制度を構築し、働きやすい職場環境づくりに注力しましょう。