クライシスマネジメント(危機管理)とは?リスクマネジメントとの違い、対応プロセスを解説

クライシスマネジメント(危機管理)とは

クライシスマネジメント(Crisis Management)とは、危機(クライシス)の発生を回避したり、危機発生時の被害を最小化したりするために行う経営管理のことです。日本語では「危機管理」と訳されます。

危機的状況が発生して初めて対応に乗り出したのでは、事態収拾に向けた的確な対応ができず、不適切な初期対応から被害を拡大させてしまうことにもなりがちです。クライシスマネジメントでは、平常時(危機発生前)において危機発生リスクを把握し、危機への対応プランを策定して、プランの周知徹底や危機発生を回避するための対策などを実施しておきます。そして、危機発生時にはプランに従って迅速・的確に対処することで、被害最小化を図ります。

クライシスマネジメントとBCP対策の違い

BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)とは、事業停止にいたる恐れのある緊急事態下において事業継続を実現するために平常時からとっておくべき対策と緊急時にとるべき対応をマニュアルの形でまとめたものです。
事業継続を困難にするような緊急事態は一種の危機(クライシス)であり、BCP対策(BCPの策定・運用)は「事業の継続」に焦点を置いたクライシスマネジメントと言えます。

参照:BCP対策とは?策定、業種別まとめ等をわかりやすく解説 | 社内ポータル・SNSのTUNAG

クライシスマネジメントとリスクマネジメントの違い

リスクマネジメントとは、リスクの顕在化を回避したり、リスク顕在化時の被害を最小化したりするために行う経営管理のことです。クライシスマネジメントはリスクマネジメントの一種であり、とくに深刻な影響を及ぼす恐れのあるリスクを対象としたリスクマネジメントと言えます。

なお、クライシスマネジメントとリスクマネジメントの意味については以下のような複数の捉え方があり、いささか混乱している状況です(本稿では1.の意味にとっています)。

  1. クライシスマネジメントとリスクマネジメントはともに「事態発生前の対応」と「事態発生時の対応」の両方を対象とする(クライシスマネジメントは危機に対するリスクマネジメント)
  2. クライシスマネジメントは「発生前・発生後の対応」を対象とし、リスクマネジメントは「発生前の対応」のみを対象とする(リスクマネジメントはクライシスマネジメントの一部)
  3. クライシスマネジメントは「発生時の対応」のみを対象とし、リスクマネジメントは「発生前の対応」のみを対象とする(クライシスマネジメントとリスクマネジメントは別々のプロセス)


参照:What is Crisis Management? | TechTarget

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企業におけるクライシスの種類と例

事業活動におけるクライシスは、大きく分けると外部要因によって発生するタイプと組織内部の要因によって発生するタイプがあります。
企業におけるクライシスの種類と例

外部要因によるクライシスの種類・例

  • 自然災害によるクライシス:地震による拠点の損壊、サプライチェーン崩壊など
  • インフラ障害によるクライシス:停電やネットワーク障害による事業停止など
  • 市場変化によるクライシス:バブル崩壊や金融危機、特定業種の市場動向の変化による経営環境悪化など
  • 取引先に由来するクライシス:取引先の倒産に連鎖した事業停止、資金繰り悪化など
  • 行政に由来するクライシス:規制当局、監督官庁の行政方針変更による競争力低下など
  • サイバー攻撃によるクライシス:サイバー攻撃によるシステムダウンや個人情報流出など

内部要因によるクライシスの種類・例

  • 従業員に由来するクライシス:職務怠慢や単純ミスによる情報流出、従業員の不祥事(バイトテロなど)によるレピュテーション低下など
  • 経営陣・組織文化に由来するクライシス:代表取締役の急死、食品偽装や不正会計の発覚による経営危機など


▼参照
Crisis Management: Definition, How It Works, Types, and Example
企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント 実態調査 2022年版 | デロイトトーマツグループ

クライシスマネジメントの対応プロセス

クライシスマネジメントの対応プロセスは「クライシス発生前(Pre-crisis management)」「クライシス発生時(Crisis management)」「クライシス収束後(Post-crisis management)」の3段階に分けられます。

参照:How Crisis Management Can Change Your Business and Customer Relationships | Hubspot

クライシス発生前の対応プロセス

クライシスに対応するためのプラン(クライシスマネジメントプラン)を策定し、周知・教育を通して組織内に浸透させつつ、プランに従って危機発生を回避するための対策や発生時の被害を事前に低減するための対策を実施します。

プラン策定においては、事業戦略・リスク管理・法務・財務分野の外部アドバイザーやコミュニケーション改善・情報共有システムなどを活用すると、より効果的な対応が可能になります。以降のプロセスについても同じことが言えます。

クライシス発生時の対応プロセス

クライシスマネジメントプランに従って迅速・的確に対処し、組織的に被害最小化を図ります。また、クライシス発生時は内部への情報共有だけではなく、消費者や取引先、株主などの対外的なコミュニケーションも慎重かつ迅速に行う必要があります。もし、情報の隠蔽や実態と異なる発言を行えば、対外的な信頼を失いかねません。この対外的な危機発生に関する対外的なコミュニケーションを「クライシスコミュニケーション」と呼び、クライシス発生時に適切なコミュニケーションを取るためにも、発生前からの事前準備が重要になります。

クライシス収束後の対応プロセス

クライシスマネジメントプランの実行状況や効果を検証し、プランの改定などを通して危機対応体制を改善していきます。

クライシスマネジメントプランの策定方法

クライシスマネジメントプランの策定ステップと、具体的な対策例を解説します。

プラン策定のステップ

対応プランの策定は以下のようなステップで行います。

  1. クライシスマネジメントの担当チームと組織体制(命令系統・権限・責任など)を決定する
  2. 社内の各部門・部署からリスクに関する情報を収集し、発生しうるクライシスをすべて洗い出す
  3. 各々のクライシスの発生しやすさと発生した場合の被害の大きさを推定し、「発生しやすさ×被害の大きさ」でクライシスの重要度を評価する
  4. 重要度をもとに、クライシスマネジメントの対象とするクライシスの範囲を決める
  5. 対象とするクライシスごとに、発生確率を下げる対策、事前に被害の低減を図る対策、発生時に被害最小化を図る対策を検討する
  6. 対策に必要となるリソースやツールを検討し、具体的な対応プランをまとめる

クライシスの発生確率を下げる対策の例

外部要因に由来するクライシスに対しては以下のような対策が考えられます。

  • 施設や設備の耐震化
  • サイバーセキュリティ強化


内部要因に由来するクライシスへの対策には以下のようなものがあります。

  • クライシスマネジメントプランを含めたルール・マニュアルの徹底
  • 作業環境の整備
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • コンプライアンス強化
  • 組織内コミュニケーションの活性化

事前に被害の低減を図る対策の例

発生確率を下げる対策として挙げたものは、被害低減対策としても有効な場合があります。そのほか、以下のような対策が考えられます。

  • 事業拠点を分散させたり、データ保存のバックアップセンターを用意したり、事業を多角化したりすることで、被害が一部にとどまるようにする(リスクの分散)
  • 火災保険、取引信用保険、サイバー保険などに加入し、被害の一部を保険会社に肩代わりしてもらう(リスクの移転)

発生時に被害最小化を図る対策の例

危機発生を早期に認知し迅速な対応を可能にするための組織体制の構築(命令・連絡系統や各担当者の責任・権限の明確化、部署間の連携体制構築など)が重要です。また、危機発生時には迅速なクライシスコミュニケーションが必要になるため、そのための体制づくりやメッセージひな形の用意なども重要な対策です。クライシスコミュニケーションの主な目的は、発生した事態について現在把握できる範囲で正確に説明し、事態に対する企業の姿勢(謝罪の意や事態解決に向けた決意・方針など)を明確に示すことです。

クライシスコミュニケーションは、関係各所の信頼度を損なわないためにも、できる限り早期に行うのが鉄則とされます。クライシスの内容ごと、伝える相手ごとに、クライシスコミュニケーション用メッセージのひな形を作成しておくとよいでしょう。

まとめ

現代の企業は多種多様な危機のリスクにさらされています。クライシスマネジメントによって平常時から危機への対応を図っておくことで、危機発生リスクを下げ、被害を低減することが可能になります。

また、クライシスマネジメントプランの策定・運用(リスク情報収集やプランの周知徹底、リスク軽減対策としてのエンゲージメント向上、危機発生時の部署間連携など)においては、社内コミュニケーション改善ツールや情報共有システムの活用が効果的です。自社に合ったツール・システムを導入し、余裕があれば外部専門家も活用しながら、効果的なクライシスマネジメントを実現していきましょう。

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