チーム医療とは?多職種連携、職種別の役割、コミュニケーション促進事例

チーム医療とは、医師や看護師、薬剤師、リハビリスタッフなど、異なる専門職が連携し、一人の患者に対して最適な治療やケアを提供する医療体制です。

複数の職種が協力することで、患者へ質の高いケアが可能になり、治療の早期回復や重症化の予防、生活の質向上につながります。

また、業務の分担により医療従事者の負担が軽減され、効率的な医療提供が実現します。しかし、各職種が連携を深めるには、役割分担の明確化や円滑なコミュニケーションが不可欠であり、教育体制などの強化が求められます。

本記事ではチーム医療の意義や役割、課題について詳しく解説します。

記事監修:小山翔平 医師 整形外科専門医。日本大学医学部医学科卒業(2013年)。日本大学医学部整形外科にて勤務後、2021年より地元の山形県にて、おやま整形外科クリニックを開業。同クリニックの院長を務める。

チーム医療とは

チーム医療とは、ある一人の患者に対して複数の業種の医療従事者が、治療またはケアに当たることを指します。

チーム医療の目的・意義

チーム医療を導入する目的・意義として、①既存疾病の早期発見・回復促進・重症化予防といった医療・生活の質の向上、②医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減、③医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上、などが期待されます。

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チーム医療のメリット

以下では、チーム医療のメリットを解説します。

医療と生活の質の向上

チーム医療は、医療の質と患者の生活の質の向上に大きく貢献します。各職種が専門知識を活かしながら協力することで、患者一人ひとりに合わせた最適なケアプランを提供できるため、治療効果が高まり、再発や入院のリスクも低減されます。

また、リハビリや生活指導などを通じて、患者が自立した生活を送るための支援が可能となり、身体的・精神的な健康維持にもつながります。患者の病状だけでなく、生活背景や心理状態を含めた包括的なケアが実現することで、医療を超えて患者の生活全体をサポートできる点が、チーム医療の大きなメリットです。

安全性の向上

異なる専門職がそれぞれの視点から患者の状態を把握することで、治療過程におけるミスの発生を防ぎやすくなります。薬剤師が処方の確認を行うことによる投薬ミスや副作用のリスクの軽減、看護師が患者の小さな異変を察知して早期に対応することによる症状の悪化の防止が可能です。

また、各職種が情報を共有し合うことで、患者の状態や治療方針に関する正確で一貫性のある対応が実現し、医療事故やエラーのリスクが低下します。こうした多職種の協力体制が、患者にとって安心・安全な医療環境の実現につながっています。

業務負担の軽減

チーム医療は、医療従事者が役割を分担して協力することで、各職種の業務負担を軽減する効果があります。医師や看護師、薬剤師、リハビリスタッフなどがそれぞれの専門知識と技術を活かして分担することで、医師や看護師にかかる業務の一部が他の職種に分散され、負担が減少します。

業務負担が軽減することで、患者はより効果的な治療を受けることが可能です。

チーム医療における各職種の役割

チーム医療において、各職種が果たす役割を整理していきます。このセクションでは、看護師、医師、薬剤師、療法士、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士、臨床工学技士、臨床検査技士、診療放射線技士、医療事務員、介護職員の役割を解説します。

看護師の役割

看護師は、あらゆる医療現場において、診察・治療等に関連する業務から患者の療養生活の支援に至るまで幅広い業務を担い得ることから、いわば「チーム医療のキーパーソン」として患者や医師その他の医療スタッフから寄せられる期待は大きいと考えられます。医療業務の中で、看護師は医師と直接連携を取りながら患者自身への検査・処置を行ったり、病気や怪我の説明したり、ご家族様に対するケアも行います。 その業務を行いつつ、病院やクリニック内では多職種カンファレンスを取りまとめて会議を行ったり、会議で上がった議題を解決すべく自ら施設内を巡回し、患者やスタッフの話を聞き、医療施設の課題に対する処置も行います。

医師の役割

医師はチーム医療のリーダーであり、多職種連携(IPW)の中心となります。医師の医学的な見地や過去の論文などのデータをもとに、安全で安心な医療を提供できるように多職種のスタッフに指示を出します。医師の指示に基づいて医療行為が実行されるため、医師は常に最新の知識を追求し、技術の向上を図らなければなりません。 また、多職種と連携をとるにあたり、看護師や薬剤師など他の職種の人が安心してコミュニケーションをとれるような環境作りも大切であり、医師は「ただ正しい知識を伝えればいい」というだけではなく、「他の職種の方が安心して仕事をできるように、優しく丁寧に指示を出す」ように心がけなければいけません。

薬剤師の役割

医療技術の進展とともに薬物療法が高度化しており、チーム医療において、薬剤の専門家である薬剤師が主体的に薬物療法に参加することが、医療安全の確保の観点から非常に有益であると考えられます。また、近年は後発医薬品の種類が増加するなど、薬剤の幅広い知識が必要とされていますが、病棟において薬剤師が十分に活用されておらず、医師や看護師が注射剤の調製(ミキシング)、副作用のチェックその他薬剤の管理業務を担っている場面も少なくなく、薬剤師はそのような状況で大いに活躍できます。 薬剤師が活躍する場所として薬局やドラッグストアなどを想定される方も多いと思いますが、このように病院内でも薬剤師が活躍しており、医師や看護師と連携を取りながら、薬の調合だけではなく、有効成分が血液内でどれくらいの量になっているかを医師とともにモニタリングしたり、投与した薬剤の副作用をチェックしたり、薬剤の組み合わせに有害事象が生じていないかなどを確認しています。 さらに、その情報を医師や看護師に共有するなどの「お薬に対するハブ」としての役割も果たしており、非常に重要な仕事を担っているのです。

リハビリテーション関係職・療法士の役割

リハビリテーションは、患者の機能を回復するために非常に重要な役割を果たします。他の職種の方と比べても、患者と共有する時間も多く、その分、患者からヒアリングする情報も多い職種です。

作業療法士の役割

作業療法士は、主に手の機能を回復させたり、精神的なケアも行うリハビリテーションスタッフです。脳梗塞で手が動かない患者の手が動くようにトレーニングしたり、手を骨折した患者が手を使いづらい状態でも生活できるように練習したりします。それだけではなく、病気や怪我で精神的に落ち込んでしまっている患者に寄り添い、その心のケアも行ったり、サポートするのも作業療法士の役割です。 そのように患者と共有した時間の中で得られた、身体的・精神的な情報を他の職種のスタッフと共有することで、患者に対するサポートをより手厚く行えるようにしてくれる存在です。

理学療法士の役割

理学療法士は、主に歩行などの基本的な生活動作を改善してくれるリハビリテーションスタッフです。脳出血で動きづらい患者の車いすの練習をしたり、半月板を損傷して歩けない患者の松葉杖の練習をしたりなど、日常生活で必要不可欠な動作の回復を図ります。密接に患者と寄り添うことが多いため信頼関係が生まれやすく、その中で得られた患者の情報も非常に有益です。患者自身のことだけではなく、患者のご家族様のことや患者のご自宅の事情(バリアフリーかどうか)などもヒアリングし、退院後の生活に向けての調整を行います。

言語聴覚士の役割

言語療法士は、会話や食事などに関する治療を行うリハビリテーションスタッフです。加齢に伴い、うまく食事が呑み込めず、肺炎を起こしてしまった患者の呑み込む力を回復させたり、喉の手術などでうまく声を出せない患者の発声のトレーニングを行ったりします。食事や会話などをスムーズに行うことができないと、患者の身体的・精神的なストレスもたまりやすいため、そのケアを行うことは患者自身の活動に非常に重要です。

臨床工学技士の役割

臨床工学技士は、病院内の医療機器を取り扱う大切な仕事です。治療機械や検査機械において、外来・病棟・手術室など、ありとあらゆる場所で使用される医療機器のメンテナンスを行います。医療機器に不具合が生じることは、そのまま患者の生命や健康に大きな影響が出ることから、故障などが生じる前に常にメンテナンスを行い、正常に動作する環境を保つように準備をします。万が一故障が発生した場合も、すぐに駆け付けて修理するなどの対応を行ってくれます。時には、手術に立ち会い、患者のデータを取り、執刀医や麻酔医にその情報を伝えるなど、治療につながる重要な役割を行います。

臨床検査技士の役割

臨床検査技師は、検査を中心に担当してくれるスタッフです。放射線を扱うレントゲン検査や CT検査以外であれば、ほとんどの検査を行うことができます。血液検査・超音波検査・MRI 検査など、幅広く施設内の検査で活躍しています。その情報をレポートにまとめ、医師や看護師など、他の職種が確認しやすいように記載・入力します。その情報をもとに、医師は治療にあたり、看護師はケアにあたりますので、非常に重要な役割になります。

診療放射線技士の役割

放射線技師は、医師以外で唯一放射線を扱うことのできる職種です。主にレントゲン検査や CT検査を担当します。MRI については施設によって臨床検査技師が担当する場合と放射線技師が担当する場合があります。心臓や脳のカテーテル治療に参加したり、整形外科の骨折や背骨の手術に参加したりなど、検査に限らず幅広い活躍を求められています。そのため、医師をはじめとした各職種との連携が非常に重要で、密にコミュニケーションをとりながら診療業務にあたっております。

医療事務員の役割

医療事務員は、受付や会計業務を中心に活動してくれています。患者の窓口として、病院の顔になるスタッフであるため非常に重要です。また、医療クラークとして医師や看護師の診療業務の補助を行ってっくれるケースもあり、カルテ記載や検査・治療オーダーなどで活躍します。そのため、診療行為に忙しい医療従事者にとって、医療事務員も医療クラークも安全で効率的な医療体制を作るためになくてはならない存在です。

介護士の役割

介護士も病院内で活躍しています。厳密には医療と介護で分けられることもありますが、医療の範囲内でも介護士が患者のおむつ交換・入浴介助・食事介助などを行うことで、看護師などの負担が減り、手厚いケアを行うことができます。そのため、特に看護師との連携は重要で、患者ケアのために常に情報共有する必要があります。

チーム医療の具体例

以下、実際に多職種連携が行われるチームの例をいくつか紹介します。

周術期管理チーム

周術期管理チームは、手術に向けて連携を図るチームです。手術前から患者の情報をヒアリングし、安全に手術を迎えられるように準備を行います。

栄養サポートチーム

栄養サポートチームは、患者の栄養状態を確認し、必要な食事内容を検討したり、場合によっては点滴などの水分バランス・栄養バランスについても確認します。

褥瘡管理チーム

いわゆる、床ずれ対策を行うためのチームです。長い入院生活で褥瘡ができやすい患者も多く、その対策を行います。褥瘡には栄養管理も非常に重要であるため、「栄養サポートチーム」との連携も重要です。

救急医療チーム

医療施設内で患者が心肺停止になるなど、急変が生じた際に中心となって活動してくれるチームです。実際に患者が急変したときだけでなく、急変することを想定し、普段から病院スタッフに急変時対応について指導や訓練を行ってくれます。

感染症対策チーム

病院内での感染対策の中心組織となります。病院内で発生してしまった細菌・ウイルス感染などに対しての治療を講じるとともに、予想されうる感染症の対策を指示し、教育してくれます。

チーム医療で大切なこと

ここでは、チーム医療を行う上で大切なことについて解説します。

各職種が専門性を高める

チーム医療において各職種の専門性を向上させることは、患者ケアの質を高め、チーム全体の効果を引き出すために非常に重要です。医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフといった異なる専門職が、各自の知識や技術を磨くことで、それぞれが提供するケアの精度が上がります。

医療の進歩が速い現代では、各職種がそれぞれの専門領域での継続的な学びを怠らないことで、医療チーム全体が高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

コミュニケーションと連携の強化

異なる職種が協力する際には、各自が患者の状況や治療方針について理解し合い、正確でスムーズな情報共有を行うことが重要です。連携体制が整っていると、緊急時や判断が難しい場面でも、異なる視点から意見を出し合うことで、治療の選択肢が広がり、より安全で効果的なケアが提供できます。

また、各職種が対等な関係で意見交換を行うことで、チーム全体の信頼関係が築かれやすくなります。これにより、患者を中心とした包括的なケアが実現し、患者からの信頼も高まります。コミュニケーションと連携の強化は、チーム医療の基盤を支える重要な要素です。

役割の拡張

チーム医療における役割の拡張は、医療従事者が自分の専門分野にとどまらず、他の職種の役割や知識をある程度理解し補完することを意味します。この役割の拡張は、より柔軟で効率的なケアの提供につながり、チーム全体の力を最大限に引き出すために重要です。

役割の拡張には、各職種が自分の専門分野を超えて他職種の基本的な知識や技術を理解するための教育や研修が必要です。教育や研修により、チームの一員として柔軟に対応できるスキルが身につきます。また、役割を拡張することで、チーム全体の業務負担が分散され、医療従事者の負担軽減にもつながります。

チーム医療の課題

ここでは、チーム医療における主な課題について詳しく解説します。

医療従事者の不足

チーム医療における医療従事者不足は、患者ケアの質に直接的な影響を与える大きな課題です。医療従事者が十分に確保できないと、1人あたりの業務負担が増加し、時間的・精神的な余裕が減少します。このような状況では、各職種間での連携や情報共有が難しくなり、ミスやコミュニケーションエラーが発生しやすくなります。

また、過剰な負担を受けた医療従事者が燃え尽き症候群に陥る可能性も高まり、人員の離職率が増加するという悪循環が生じる恐れもあります。特に地方では、専門性の高い医療スタッフの確保が困難であり、チーム医療の導入や維持が難しいケースが多く見られます。少子高齢化が進む中で、この問題はさらに深刻になっていく可能性があるため、チーム医療体制の改善する必要があります。

教育体制が不十分

チーム医療において、各職種が連携するためには、多職種間の連携スキルや理解を深めるための教育体制が不可欠です。しかし、現状では多くの医療機関で、このような教育体制が十分に整っていないことが課題となっています。医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフなど、異なる専門職がそれぞれの役割や知識を理解し合い、スムーズに協力する必要があります。

しかし、忙しい日常業務の中で、こうした教育の時間や資源が確保できないことが多く、各職種が独自の視点に偏りがちになります。今後、効果的なチーム医療を実現するためには、多職種連携に特化した教育プログラムや研修機会の充実が求められます。

役割分担が明確でない

チーム医療において役割分担が明確でないことは、患者ケアの質やチーム全体の効率に悪影響を与える大きな課題です。医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフなどの各職種が、それぞれの専門性を活かしつつ連携することがチーム医療の理想ですが、役割が不明確だと、業務の重複や抜け漏れが発生するリスクが高まります。例えば、誰が情報収集を行うべきか、あるいは患者の家族とのコミュニケーションを担当するのかが曖昧だと、重要な情報が共有されなかったり、対応が遅れることがあります。

また、役割が不明確なままだと、責任の所在も不透明になり、ミスが発生した際に迅速な対応が取れないことが課題です。チーム医療を効果的に行うためには、各職種の役割と責任を明文化し、全員がそれを理解する環境を整えることが重要です。また、役割分担は固定的ではなく、患者の状態や治療内容に応じて柔軟に見直す体制も求められます。

多職種連携・院内コミュニケーションを促す方法

対面会議の多職種カンファレンス

病院内では、直接会議室などでリアルタイムで顔を合わせ多職種カンファレンスを行い、連携を図ることがほとんどです。しかし、その場の情報交換だけでは限界があり、それを補完するシステムがなかなか存在しないのが現状です。電子カルテシステムの掲示板を利用して連携を図るケースもありますが、そのシステムも見づらかったり、書き込みづらかったりなど、情報を共有しづらいことがあります。

非同期的なコミュニケーションでも、相互理解の機会を

院内SNS等のツールで、非同期的なコミュニケーション手段を活用することで、職種間及び個人間の相互理解、円滑な業務の連携に繋がります。ITツールは1つの手段です。会議以外の方法では何ができるか、検討してみるのも良いかもしれません。 関連事例:介護・医療業界の情報共有・社内SNS事例9選 | TUNAG(ツナグ)

院内コミュニケーションの促進でチーム医療の体制を整備しよう

効果的なチーム医療を実現するためには、職種を超えた円滑なコミュニケーションが欠かせません。

医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフなど、部門間で患者の状態や治療方針について迅速かつ正確に情報を共有することで、最適な治療を提供できます。

しかし、患者の情報を迅速かつ正確に伝えるためには、対面でのカンファレンスだけでは限界があります。そこで役立つのが、院内で使用するアプリです。

TUNAGは、院内の情報を迅速かつ正確に伝えるための情報共有アプリです。一般的なSNSのように、自身のスマホのタイムラインに情報が流れてくるため、視覚的にわかりやすく情報が伝わります。

さらに、多くの部門を抱える病院では、チームや部署、拠点ごとに情報を分けて発信できるため、本部から現場まで情報が正確に伝達されます。

TUNAGは、病院の業務生産性を向上させるアプリとして、多くの医療業界のお客様にご活用いただいております。具体的な活用方法や導入後の効果については、以下の記事をご覧ください。


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