無期雇用とは?正社員との違いや無期転換ルールの運用について解説

無期雇用は、契約期間の定めがない安定した雇用形態です。労働契約法の改正により無期転換ルールが導入され、有期契約労働者の雇用安定化が図られる一方で、企業には適切な制度理解と運用が求められています。この記事では、無期雇用の基本的な概念から正社員との違い、無期転換ルールの具体的な運用方法まで、人事担当者が押さえるべきポイントを実務的な観点から解説します。

無期雇用とは

無期雇用は労働契約に期間の制限がない雇用形態ですが、正社員と必ずしも同じ処遇になるわけではありません。

無期契約社員や無期雇用派遣など多様な形態があり、それぞれ業務範囲や昇進制度に違いがあります。ここでは、無期雇用の基本的な定義と、無期雇用労働者と正社員の具体的な違いについて、実務で押さえるべきポイントを整理します。

働く期間に定めのない労働契約

無期雇用とは、労働契約の期間に定めがない雇用形態です。契約満了による雇止めがなく、従業員が安定して働ける環境を提供します。

代表的な形態として無期契約社員や無期雇用派遣があり、これらは有期契約で一定期間勤務した後、労働者の申し込みによって無期雇用へ転換できる制度として運用されています。

一方の有期雇用は、契約期間があらかじめ定められており、満了時には契約更新の有無が雇用継続を左右します。無期雇用は安定性が高く長期的なキャリア形成に適している一方、企業側には人件費の固定化や配置転換の柔軟性低下といった課題が伴います。

無期雇用労働者と正社員の違い

無期雇用と正社員は、いずれも契約期間の定めがなく、更新の必要がない点は共通しています。ただし、無期雇用には無期契約社員や無期雇用派遣なども含まれ、必ずしも正社員と同等の処遇が保障されるわけではありません。

正社員は昇給・賞与・退職金・福利厚生・昇進機会が整備されるのが一般的で、幅広い業務や転勤を担うこともあります。一方で無期契約社員は、職務内容や勤務地が限定され、昇進や待遇が固定的なケースも多いのが特徴です。

無期雇用の企業側のメリット・デメリット

無期雇用は、労働者にとって安定した働き方を実現できる一方、企業にとっても人材の長期確保や定着促進といった利点があります。しかしその反面、人件費の固定化や人員配置の柔軟性が損なわれるといった課題も伴う雇用形態です。

ここでは、企業が無期雇用を導入・活用する際に知っておくべきメリットとデメリットについて整理します。

企業側のメリット

無期雇用を導入することで、企業は人材を長期的に確保でき、契約満了による離職リスクを抑えられるため、業務の安定化や定着率向上につながります。

また、長期間同じ従業員が働くことで職場特有のノウハウやスキルが蓄積され、生産性や品質の向上が期待できます。

有期雇用に比べて採用や研修を繰り返す必要が少なくなり、採用コストや教育にかかる負担を軽減できる点も大きなメリットです。特に、専門性の高い業務や重要なポジションでは、無期雇用による人材の安定確保が企業経営に大きく寄与します。

企業側のデメリット・注意点

無期雇用を導入する際は、労働条件があいまいになりやすい点に注意が必要です。例えば、昇給・昇進の有無や職務内容の範囲などが明確でないまま無期契約になると、労働者との認識のズレからトラブルに発展する恐れがあります。

また、無期雇用に転換されると契約満了による雇止めができなくなり、解雇や人員整理が非常に困難になるほか、業績悪化や事業縮小時の柔軟な対応が難しくなるリスクもあります。人事部門としては、就業規則の整備や労働条件の明文化、評価制度の構築など、事前の制度設計を綿密に行うことが不可欠です。

また、無期転換後の処遇や配置転換のルールを明確にし、労使双方が納得できる運用体制を整えることが求められるでしょう。

無期転換ルールとは

無期転換ルールは、有期労働契約を繰り返し更新して働く人の雇用を安定させるために設けられた仕組みです。一定の条件を満たすと無期雇用へ移行できます。無期転換申込権の発生条件や例外規定を見ていきましょう。

出典:無期転換ルールについて|厚生労働省

有期雇用から無期雇用に転換できるルール

無期転換ルールは、同一の使用者との間で労働契約が複数回更新され、通算契約期間が5年を超えた有期雇用労働者が、契約満了日の前に「無期契約への転換」を申し込んだ場合、無期契約に転換される制度です。使用者はその申し込みを拒否できません。

雇止めの不安を抱えた有期雇用者の雇用安定を目的としており、労働契約法第18条に基づいています。

転換後の労働条件は、原則として転換前と同一とされ、変更する場合は労働者の同意を得るなど適切な手続きが必要です。

無期転換申込権の発生条件

無期転換ルールの適用には、以下の条件全てが満たされる必要があります。

  • 有期労働契約の更新が1回以上あること
  • 通算契約期間が5年を超えていること
  • 現時点で同じ使用者との契約であること

なお、契約がない期間(クーリング期間)が6カ月以上ある場合、以前の契約期間は通算から除外され、再度カウントがリセットされます。

出典:無期転換ルールQ&A

無期転換ルールの例外

無期転換ルールには、以下のような例外が設けられています。

  • 高度な専門知識を持つ有期雇用労働者や、定年後に継続雇用される高齢者は、事業主がその特性に応じた適切な雇用管理を実施する場合に、申込権が一定期間発生しない
  • 大学や研究開発法人の研究者・教員などは、通常の5年ではなく10年経過後に無期転換申込権が発生する

特例を適用するには、対象となる労働者の特性に応じた雇用管理方策を盛り込んだ計画を策定し、本社や本店の所在地を管轄する都道府県労働局長に認定申請を行う必要があります。

企業における無期転換ルールのポイント

企業において無期転換ルールを適切に運用することは、労働者の雇用安定を確保するだけでなく、将来的な人員計画や労務管理にも直結します。制度の理解不足や対応の遅れはトラブルにつながりかねないため、実務上のポイントを押さえておくことが重要です。

自社の対応の基本方針を決める

無期転換ルールに対応する上で最初に重要となるのは、自社の基本方針を明確に定めることです。選択肢としては次の3パターンが考えられます。

  • 希望者全員を無期雇用に転換する
  • 原則として雇止めなどで無期転換を避ける
  • 正社員登用制度などを通じて一部を選別して対応する

どの方針を採用するかによって、その後の就業規則や雇用契約書の整備、人員計画や人件費管理の方向性が大きく変わります。企業は各方針のメリットとデメリットを考慮し、制度設計の基盤を固めることが大切です。

有期雇用労働者の雇用継続を適切に判断する

無期転換ルールを踏まえた雇用管理では、対象となる有期契約労働者が通算5年を超える前に、その後の雇用をどうするか判断できる体制を整えることが重要です。

更新を重ねた結果、無期転換申込権が発生するタイミングを把握し、就業規則や雇用契約の整備を進める必要があります。

また、無期転換を回避する目的で直前に雇止めを行ったり、突然契約の上限年数を設けたりすることは違法と判断される恐れがあります。

特に、労働者に雇用が続くとの合理的期待がある場合には、実質的に解雇とみなされる可能性が高く、慎重に対応しなければなりません。

無期転換ルールに関する事項を雇入れ時に明示する

有期雇用労働者を新たに採用する際や契約を更新する際には、企業は「無期転換申込機会」と「無期転換後の労働条件」を明示する義務があります。無期転換ルールを確実に周知し、労使間の認識の齟齬を防ぐための措置です。

明示にあたっては、単に無期転換の制度があると記すだけでなく、労働者がいつ申込権を取得できるのか、その際の労働条件はどう変わるのかを具体的に示す必要があります。特に、転換後の待遇が有期契約時と異なる場合は、その変更内容を詳細に明記しなければならず、企業には制度設計の徹底が求められます。

無期雇用について理解を深めよう

無期雇用とは、契約期間に定めのない雇用形態です。労働者の安定に寄与しますが、正社員と必ずしも同待遇ではなく、職務や昇進に制限がある場合もあります。

有期契約が通算5年を超えると労働者に無期転換申込権が発生し、企業は拒否できません。無期転換ルール運用では、基本方針の明確化や労働条件の適切な明示、人員計画の見直しが重要であり、違法な雇止め回避にも留意が必要です。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
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