事業承継税制とは、非上場会社の株式や一定の事業用資産を後継者へ引き継ぐ際に生じる贈与税・相続税について、一定の要件のもとで納税を猶予する制度です。承継時に税金がなくなるわけではなく、後継者の死亡など所定の事由が生じた場合に、猶予されている税額の納付が免除されます。
制度を利用できるかは、自社株式の評価額だけでは決まりません。後継者の役員歴や代表就任時期、承継後の議決権、株式を保有し続ける方針、将来のM&Aや組織再編の予定なども確認する必要があります。特例措置には期限があるため、制度の適用要件を満たしていても、準備が遅れると利用できない可能性があります。
本記事では、2026年7月29日時点の公的情報をもとに、制度の仕組みと期限を整理します。メリットだけでなく、適用後の届出や納税猶予が終了するリスクも踏まえ、自社で利用を検討すべきか判断し、ぜひとも税理士や認定経営革新等支援機関へ相談する準備にお役立てください。
事業承継税制は、事業を続ける後継者が非上場株式等や一定の事業用資産を取得した際、贈与税・相続税の納税を猶予する仕組みです。法人版と個人版があり、承継する資産や適用条件が異なります。法人版には、期限のない一般措置と、対象範囲を広げた期間限定の特例措置があります。
制度 | 主な対象 | 制度内の区分 |
|---|---|---|
法人版事業承継税制 | 円滑化法の認定を受けた非上場会社の株式等 | 一般措置・特例措置 |
個人版事業承継税制 | 青色申告に係る事業で使用していた一定の事業用資産 | 期間限定の特例措置 |
納税猶予を受けるには、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定に加え、税務署への申告と担保の提供が必要です。適用後も株式等の保有や届出を続け、所定の要件を満たさなければなりません。
要件を満たさなくなった場合は、猶予税額の全部または一部と利子税を納めることがあります。そのため、承継時の税負担だけでなく、承継後の経営方針や制度を管理できる体制まで含めて検討する制度です。
特例措置には、計画を提出する期限と、株式や事業用資産を承継する期限があります。両者は同じ日ではありません。計画を提出しても、期限内に贈与・相続等を行わなければ特例措置の対象にならないため、承継日から逆算して準備します。
2026年7月29日時点の期限は、次のとおりです。
制度 | 計画の提出期限 | 贈与・相続等の期限 |
|---|---|---|
法人版の特例措置 | 2027年9月30日 | 2027年12月31日 |
個人版事業承継税制 | 2028年9月30日 | 2028年12月31日 |
計画提出から承継期限までの期間は短いため、提出期限を準備開始の目安にしてはいけません。後継者との合意、株価・税額の試算、株主間の調整、代表就任時期の決定を先に進める必要があります。
法人版の特例措置では、会社が特例承継計画を作成し、認定経営革新等支援機関の所見を記載したうえで、都道府県へ提出します。2026年度税制改正後の提出期限は、2027年9月30日です。
特例承継計画には、後継者や承継までの経営見通しなどを記載します。認定経営革新等支援機関への相談期間も必要になるため、期限直前の作成では間に合わない可能性があります。
計画の提出期限は、株式の承継を終える期限ではありません。
なお、一定の場合は株式の贈与・相続等の後に特例承継計画を提出することもできます。ただし、都道府県の認定申請や適用期限との関係があるため、株式を移す前から準備する方が安全です。
法人版の特例措置は、2027年12月31日までに贈与・相続等によって非上場株式等を取得した場合が対象です。特例承継計画の提出期限は延長されましたが、適用期限は延長されていません。
2027年9月30日に計画を提出した場合、適用期限までの期間は約3か月です。株価評価、贈与契約、遺言や株式配分の見直しに時間がかかる企業は、計画提出と承継準備を並行して進めます。
適用期限に間に合わない場合は一般措置を検討できる可能性があります。ただし、対象株式、後継者数、相続税の猶予割合が異なるため、特例措置と同じ条件で利用できるわけではありません。
個人版事業承継税制では、認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けた旨を記載した個人事業承継計画を都道府県へ提出します。計画の提出期限は2028年9月30日、対象となる贈与・相続等の期限は2028年12月31日です。
対象となるのは、青色申告に係る一定の事業で使用していた宅地、建物、減価償却資産などです。事業で使用していた資産がすべて対象になるわけではなく、不動産貸付事業等も除かれます。
法人版と同様に、計画を提出しただけでは納税猶予は始まりません。期限内の資産承継、都道府県の認定、税務申告まで完了する必要があります。
法人版は非上場会社の株式等、個人版は個人名義の事業用資産を引き継ぐ場合に利用を検討します。現在の事業形態だけではなく、後継者が実際に何を取得するのかで対象制度が決まります。
比較項目 | 法人版事業承継税制 | 個人版事業承継税制 |
|---|---|---|
主な対象者 | 非上場会社の後継者 | 個人事業者の後継者 |
承継する資産 | 非上場会社の株式等 | 一定の事業用資産 |
対象となる事業 | 円滑化法の認定を受けた非上場会社 | 青色申告に係る一定の事業 |
制度の区分 | 一般措置・特例措置 | 期間限定の特例措置 |
事前に作成する計画 | 特例措置では特例承継計画 | 個人事業承継計画 |
認定窓口 | 都道府県の担当課 | 都道府県の担当課 |
法人版は、会社が所有する土地や設備を後継者が個別に取得する制度ではありません。後継者が会社の株式等を取得し、経営権を引き継ぐ場合が対象です。
個人版では、土地、建物、機械など、先代事業者が事業に使用していた一定の資産を後継者が取得します。資産の名義や利用状況によって対象になるかが変わるため、事業用資産の一覧を作成して確認します。
法人化や組織再編を予定している場合は、現在の形態だけで制度を決めず、承継時にどの事業形態になっているかも含めて検討してください。
法人版には、期限のない一般措置と、対象株式や納税猶予の範囲を広げた特例措置があります。特例措置は利用できる範囲が広い一方、計画提出と適用期限が設けられています。
比較項目 | 特例措置 | 一般措置 |
|---|---|---|
事前の計画 | 特例承継計画が必要 | 不要 |
適用期限 | 2027年12月31日まで | なし |
対象株式 | 議決権に制限のない全株式 | 議決権に制限のない総株式数の最大3分の2 |
贈与税の猶予割合 | 100% | 100% |
相続税の猶予割合 | 100% | 80% |
後継者数 | 最大3人 | 1人 |
雇用確保要件 | 8割を下回った場合も、所定の報告・確認を経て猶予を継続できる仕組み | 承継後5年間、平均8割の雇用維持が必要 |
事業継続が困難な場合 | 一定の場合に猶予税額を再計算 | 再計算による差額免除なし |
特例措置は、全株式を対象にでき、最大3人の後継者へ承継できる点が一般措置との大きな違いです。ただし、雇用確保要件が完全になくなるわけではありません。雇用が8割を下回った場合は、理由などを記載した報告書を提出し、都道府県知事の確認を受けます。
また、同じ会社の同じ非上場株式等へ一般措置と特例措置を重ねて適用することはできません。承継する株式数と後継者数を整理し、贈与・相続等を行う前に利用する措置を決めます。
法人版事業承継税制では、対象会社、先代経営者等、後継者、承継する株式のすべてに要件があります。贈与と相続、一般措置と特例措置でも条件が異なるため、以下では特例措置を中心に主な要件を整理します。個別の判定では、国税庁の最新チェックシートと都道府県の認定要件を確認してください。
対象となるのは、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けた中小企業者のうち、非上場会社に該当する企業です。
上場会社、中小企業者に該当しない会社、性風俗関連特殊営業を行う会社、一定の資産管理会社は対象になりません。資産管理会社とは、有価証券、自社で使用していない不動産、現金・預金などの保有割合や、これらから得る収入の割合が高い会社を指します。一定の事業実態がある場合は、対象外にならないこともあります。
非上場の中小企業でも、資産構成や収入の内容によっては対象外になる場合があります。
不動産や有価証券を多く保有する会社は、貸借対照表だけで判断せず、資産の利用状況と収入の内訳まで確認してください。
生前贈与では、先代経営者等が過去に会社の代表権を持ち、贈与時には代表権を持っていないことが主な要件です。贈与直前の議決権保有割合についても条件があります。
相続では、被相続人が会社の代表権を持っていたことや、相続開始直前の議決権保有状況が確認されます。生前贈与と異なり、死亡前に代表を退任する手続きはありません。
生前贈与では、株式を渡す時期と先代経営者が代表を退く時期を合わせて検討します。
複数の株主から段階的に株式を移す場合は、各贈与者が制度上の要件を満たすかを個別に確認してください。
特例措置を生前贈与で利用する後継者は、贈与時に18歳以上で会社の代表権を持ち、贈与直前に会社の役員であることが主な要件です。一般措置では、贈与日まで引き続き3年以上役員であることが求められます。
相続の場合は、原則として相続開始直前に役員であり、相続開始日の翌日から5か月を経過する日に代表権を持っている必要があります。特例承継計画への記載や先代経営者の死亡年齢によって、役員要件に例外が設けられる場合があります。
議決権についても、後継者と特別の関係がある者を合わせて総議決権数の50%を超えて保有するなどの条件があります。後継者が2人または3人の場合は、各後継者が一定割合以上の議決権を持たなければなりません。
社内で後継者として扱われていても、登記上の役職や承継後の議決権が条件に合わなければ適用できません。
贈与・相続等の日から逆算し、役員就任日、代表就任予定日、現在と承継後の株式数を確認します。
対象となるのは、中小企業者である非上場会社の株式または出資のうち、議決権に制限のないものです。医療法人の出資は含まれません。
必要な取得株数は、後継者数や承継前の株式保有状況によって異なります。複数の後継者へ株式を分ける場合は、各後継者の議決権割合も確認されます。
株式の配分は、相続人間の公平さだけでなく、後継者が経営権と制度上必要な議決権を確保できるかを踏まえて決めます。
贈与契約や遺産分割を確定する前に、現在と承継後の株主、株数、議決権割合を一覧にしてください。
事業承継税制の主な利点は、株式や事業用資産を引き継ぐ際の資金負担を抑えられることです。法人版特例措置では対象範囲が広く、親族以外や複数の後継者への承継にも対応しています。
非上場株式を取得すると、後継者には株式の評価額に応じた贈与税・相続税が生じる場合があります。しかし、株式を受け取っても納税に使える現金が同時に増えるわけではありません。
制度の要件を満たせば、対象となる株式等にかかる税額の納税が猶予されます。法人版特例措置では、対象税額の100%が納税猶予の対象です。
承継時に多額の現金を直ちに用意する負担を抑えながら、株式と経営権を引き継げます。
ただし、猶予税額が最初から免除されるわけではありません。要件を満たさなくなった場合に備え、将来の納付も含めた資金計画が必要です。
一般措置では、納税猶予の対象となる株式は総株式数の最大3分の2までです。特例措置では、議決権に制限のない全株式を対象にできます。
納税資金を確保するために株式の一部を売却したり、複数の相続人へ細かく分けたりすると、後継者が十分な議決権を持てない場合があります。特例措置によって全株式を対象にできれば、経営権を持つ後継者へ株式を集める計画を立てやすくなります。
税負担だけでなく、承継後の意思決定に必要な議決権を後継者へ確保しやすい点も利点です。
相続人間の財産配分は別に検討する必要があるため、遺留分やほかの相続財産も含めて専門家へ相談してください。
後継者は、先代経営者の子どもなどの親族に限られません。社内の役員や従業員も、代表権、役員歴、議決権などの要件を満たせば対象になり得ます。
法人版の特例措置では、複数の株主から最大3人の後継者への承継が対象です。親族内に候補者がいない企業や、複数人で経営を引き継ぐ企業も検討できます。
親族関係ではなく、承継後に経営を担う体制を基準に後継者を検討できます。
第三者への株式売却やM&Aは、贈与・相続等を前提とする事業承継税制とは仕組みが異なります。役員・従業員への承継と第三者への売却は分けて比較してください。
制度を利用した後も、株式の保有、代表者の地位、担保、届出などを管理し続けます。要件から外れた場合には、猶予税額と利子税の納付が生じる可能性があります。
納税猶予を受けた税額は、免除事由が生じるまで納税義務が残ります。対象株式等の譲渡や贈与、会社や後継者が要件を満たさなくなった場合には、猶予税額の全部または一部と利子税を納めます。
将来も納税が発生しないことを前提に、猶予された資金を使い切らないようにします。
会社の倒産や事業継続が困難になった一定の場合には、猶予税額の免除や再計算が認められることがあります。ただし、経営状況が悪化しただけで自動的に免除されるわけではありません。
申告期限の翌日から原則5年間は、後継者が代表者として経営を続け、対象株式等を保有することが求められます。5年経過後も、納税猶予を続ける間は対象株式等の保有が必要です。
代表者の交代や株式の譲渡によって、猶予税額の納付が必要になる場合があります。第三者へのM&Aや株主構成の変更を予定している企業は、制度利用後の制約を先に確認してください。
売却や組織再編の契約を結ぶ前に、納税猶予への影響を確認する必要があります。
やむを得ない事情や承継後の経過期間によって扱いが異なるため、変更を検討した段階で相談します。
税務申告時には、猶予される税額と利子税に見合う担保を提供します。対象となる非上場株式等のすべてを担保として提供する方法もあります。
適用後の最初の5年間は、原則として毎年、都道府県へ年次報告書、税務署へ継続届出書を提出します。6年目以降は、原則として3年ごとに税務署へ継続届出書を提出します。
継続届出書を期限までに提出しない場合は、猶予税額の全額と利子税を納める必要があります。
税理士へ依頼する場合も、決算情報や株主・代表者の変更を自社から共有する体制を決めておきます。
納税猶予は、申告後5年で自動的に終了する制度ではありません。後継者の死亡などの免除事由が生じるまで、株式保有と届出が長期間続く場合があります。
承継時点では事業継続を予定していても、市場環境や後継者の事情によって、将来M&Aや事業再編を検討する可能性があります。その際には、取引条件だけでなく納税猶予への影響も判断材料になります。
現在の節税効果だけでなく、将来の経営判断へ与える影響を含めて利用を決めます。
承継後の経営方針が固まっていない場合は、一般措置や制度を利用しない方法も含めて比較してください。
事業承継税制が適するかは、自社株評価額だけでは判断できません。後継者、承継時期、株式の保有方針、将来の経営計画、届出を管理する体制を確認します。
以下は、法的な適用可否を判定する表ではなく、専門家へ相談する前に論点を整理するための目安です。
確認項目 | 検討しやすい状況 | 慎重に判断したい状況 |
|---|---|---|
後継者 | 後継者が決まり、本人の承継意思を確認済み | 後継者が未定、または候補者を絞れていない |
承継時期 | 代表就任と株式承継の時期が決まっている | 承継時期が決まっていない |
株式保有 | 後継者が株式を長期間保有する予定 | 承継後に株式の売却や分散を予定 |
経営方針 | 現在の会社形態で事業を続ける予定 | M&A、合併、会社分割などを検討 |
納税資金 | 自社株評価額が高く、資金の準備が課題 | 納税額より制度管理の負担が大きい可能性 |
管理体制 | 税理士と社内担当者が期限を管理できる | 届出を継続する担当者が決まっていない |
事業継続 | 後継者に中長期的な経営意思がある | 廃業や事業縮小を含め方針が未定 |
後継者と承継方針が明確で、株式を保有しながら事業を続ける見通しがある企業は、制度を検討しやすいといえます。
一方、近い将来に株式売却やM&Aを予定している企業は、納税猶予額だけで制度を選ばない方がよいでしょう。代表者の退任や株式譲渡が納税猶予へ影響する可能性があるためです。
自社の状況がどちらにも当てはまらない場合は、後継者と将来方針の整理を先に進めます。制度利用の判断を急ぐのではなく、利用する場合と利用しない場合の税負担、手続き、経営上の制約を比較してください。
事業承継税制は、税務署への申告だけで利用できる制度ではありません。後継者と承継方法の決定から、都道府県の認定、税務申告、担保提供、適用後の届出まで続きます。以下は、法人版特例措置を中心とした基本的な流れです。
後継者と承継時期を決める
↓
自社株式と税額を試算する
↓
特例承継計画を作成・提出する
↓
株式を贈与・相続等で承継する
↓
都道府県知事の認定を受ける
↓
税務申告と担保提供を行う
↓
年次報告と継続届出を続ける
1.後継者と承継時期を決める
誰が経営と株式を引き継ぐのかを決め、代表就任と株式承継の時期を整理します。後継者の年齢、役員就任日、代表権、承継後の議決権も確認してください。
複数の後継者を予定している場合は、各人が取得する株数と経営上の権限を決めます。
2.自社株式と税額を試算する
自社株式の評価額と、贈与・相続等で生じる税額を試算します。制度を利用した場合の猶予税額だけでなく、利用しない場合の納税額や資金調達方法も比較します。
株価は、会社規模、決算内容、株主構成、保有資産などによって変わるため、税理士などへ試算を依頼してください。
3.特例承継計画を作成・提出する
法人版特例措置では、後継者や承継までの経営見通しを記載した特例承継計画を作成します。認定経営革新等支援機関の所見を受け、都道府県へ提出します。
一定の場合は株式取得後の提出も可能ですが、期限や認定申請との関係があるため、承継前から準備することが基本です。一般措置では特例承継計画を提出しません。
4.株式を贈与・相続等で承継する
生前贈与では、贈与契約、先代経営者の代表退任、後継者の代表就任を制度要件に合わせます。
相続は発生時期を選べないため、生前に後継者、遺言、株式配分を整理します。遺産分割を確定する前に、後継者の議決権要件を確認してください。
5.都道府県知事の認定を受ける
株式取得後、会社、先代経営者等、後継者、対象株式が円滑化法の要件を満たすことについて、都道府県知事の認定を申請します。
申請期限と書類は贈与・相続で異なります。窓口は、会社の主たる事務所が所在する都道府県の担当課です。
6.税務申告と担保提供を行う
贈与税・相続税の申告期限までに、申告書、認定書の写し、適用要件を確認する書類などを税務署へ提出します。同時に、猶予税額と利子税に見合う担保を提供します。
申告期限後に制度を選ぶことはできないため、認定申請と税務申告を並行して準備します。
7.年次報告と継続届出を続ける
申告期限の翌日から5年間は、原則として毎年、都道府県へ年次報告書、税務署へ継続届出書を提出します。6年目以降は、原則として3年ごとに税務署へ継続届出書を提出します。
代表者や株主の変更、合併、会社分割、M&Aなども記録し、実行前に制度への影響を確認してください。
相談前に後継者、株式、承継時期などを整理しておくと、適用要件の確認と税額試算を進めやすくなります。すべての書類を自社だけで完成させる必要はありません。まず、現状と予定を共有できる状態にしてください。
整理する項目 | 確認する内容 | 主な資料 |
|---|---|---|
後継者 | 氏名、年齢、役職、役員就任日、代表就任予定日、承継意思 | 登記事項証明書、役員名簿 |
株式 | 株主、保有株数、議決権、株式の種類、承継後の配分 | 株主名簿、定款 |
会社 | 中小企業者への該当、資産構成、従業員数、事業内容 | 決算書、法人税申告書 |
株価・税額 | 自社株評価額、贈与税・相続税の概算額、納税資金 | 決算書、保有資産明細 |
承継方法 | 生前贈与、相続、売買のどれを想定するか | 贈与計画、遺言書 |
承継時期 | 計画提出、代表交代、株式移転の予定 | 承継スケジュール |
将来計画 | 株式売却、M&A、合併、会社分割などの予定 | 中期経営計画、資本政策 |
管理体制 | 認定申請、申告、年次報告、継続届出の担当者 | 担当者一覧、期限管理表 |
最初に整理するのは、誰が、いつ、何株を、どの方法で引き継ぐ予定なのかという承継計画の骨格です。
後継者の現在の役職と承継前後の株数を一つの表にまとめると、代表権や議決権の要件を確認しやすくなります。
株価を試算する際は、決算書に加えて、不動産、有価証券、現金・預金などの資産も整理します。資産構成は株価だけでなく、対象会社の判定にも関わる場合があります。
相談先は、税額・税務申告を確認する税理士、特例承継計画の所見を担う認定経営革新等支援機関、円滑化法の認定を行う都道府県の担当課です。国税庁が公開している制度別・税目別のチェックシートも使用してください。
事業承継税制は、承継時の納税を猶予できる一方、株式の保有、担保、届出などを長期間管理する制度です。法人版特例措置を検討する場合は、2027年9月30日の計画提出期限と、2027年12月31日の適用期限から逆算して準備します。
後継者と承継時期が決まり、承継後も株式を保有して事業を続ける企業は、制度を検討しやすいといえます。近い将来にM&A、株式売却、代表者交代、組織再編を予定している場合は、納税猶予が終了する可能性も踏まえ、制度を利用しない方法と比較してください。
早めに判断することで、期限直前に株式配分や代表就任時期を変更する事態を避けやすくなります。制度へ合わせるために承継計画を無理に変えるのではなく、自社が目指す経営体制と税制の条件が合っているかを確認することが大切です。
最初に、後継者、株主構成、自社株式の概算評価額、承継予定時期、将来のM&Aや組織再編の予定を一枚の資料にまとめてください。その資料をもとに、制度を利用する場合と利用しない場合の税負担、手続き、経営上の制約を専門家と比較し、自社に合う承継方法を決めましょう。