技術伝承・ノウハウ共有におけるシステム活用の方法

少子高齢化と職人の引退により、ものづくりの技能・技術の伝承が困難になっていることが大きな問題です。 しかし、技術のマニュアル化が難しく、伝承方法が見つからないことも、企業にとっての大きな課題ではないでしょうか。 この記事では、これらの課題を克服するためのシステム活用の方法について解説します。

技術伝承における課題

現在、日本では、技術・技能の伝承に関する課題が深刻化しています。少子高齢化に加え、高度成長期を支えていた職人の引退も相まり、ものづくりの技能・技術を伝承する相手がいないといったことが大きな原因とされています。 このような課題は企業においても同様であり、前述した原因に加え、目先の業務に追われて時間がないといったことや、技術のマニュアル化が難しく技術・技能伝承の適切な方法が分からないといったことも、企業における技術・技能の伝承がうまく進まない原因として挙げられます。 企業競争力の源でもある技能・技術を継承していくことができなければ、企業の存続も危うくなるだけでなく、日本の企業が持つ固有の技能・技術といった資産も衰退し、悪循環に陥ってしまう可能性があります。 一方で、うまく技能を引き継ぎ技術力や競争力を保持している企業もあります。 以下、中小企業庁の「技能・技術承継に関するアンケート調査(2011年12月)」資料をもとに、中小企業における技術・技能承継の取組実施状況と、技術承継がうまく行っている会社とそうでない会社の特徴を比較していきます。

技術・技能承継の取組実施度

以下のデータは、従業員300人以下の企業を対象に、企業の技能・技術承継に関する取組実施度を示したものとなります。 技術伝承うまくいっている会社とそうでないか会社の違い 参照:中小企業庁委託「技能・技術承継に関するアンケート調査(2011年12月)」 を基に弊社作成

技術承継がうまく行っている会社とうまく行っていない会社

技術承継がうまく行っている会社とうまく行っていない会社では、どのような違いがあるのでしょうか。 上記のアンケート調査をもとに、技術・技能承継がうまくいっている中小企業とうまくいっていない中小企業を比較すると「熟練技術・技能の標準化・マニュアル化」を実施する企業の割合が、前者ではおよそ60%ですが、後者ではおよそ30%となっていることが分かりました。 その他、「OJTによる人材育成」や「Off-JTによる人材育成」についても、前者と後者では取組実施度に差が生じており、いずれも後者の取組実施度を前者が上回る結果となっています。このような調査結果を踏まえた上で、技術・技能を今後も末永く承継していくためには、技術・技能人材の育成に加え、熟練技術・技能の見える化や資格・認定制度等による技術・技能の評価といった社内制度を整えることが不可欠であると言えます。 技術承継がうまく行っている会社では、これらの項目にバランスよく取り組み、技術・技能承継の課題を克服してきたことが分かります。

技術伝承に向けた取り組み

これまで培ってきた熟練技能が失われないようにするため、企業は技術伝承に向けたどのような取り組みを行っているのでしょうか。 2020年11月に発行された日本政策金融公庫論集によると、最近 5 年間に行った技能承継のための取り組みについて企業へ尋ねたところ、全体では「定年の延長・再雇用」と回答した企業が83.3%と最多の結果となりました。このデータは「2007年問題」と同様に熟練技能をもつ社員の雇用を継続していくことで、その熟練技能が失われないようにした企業が多いと考えられます。 次いで「処遇の改善」と回答した企業がで73.2%となっており、定年の延長などの「人事施策」に関する取り組みを実施した企業が多いことが分かります。 そのほか「熟練技能の標準化・マニュアル化」が57.2%、「機械やIT技術での代替」が43.6%、生産工程の「標準化・機械化」に取り組んだ企業も半数程度に上ることが分かっています。 参照:日本政策金融公庫「中小製造業における技能承継問題の実態とその解決策」

技術伝承・ノウハウ共有におけるシステム活用

企業において、ベテラン社員の持つノウハウを、いかに他の社員へ共有していくことができるかが企業にとって重要な課題となります。社内のこのような知識や技術伝承において、仕組みを整えておくことはもちろん大切ですが、システムを活用することでスムーズに技術伝承を進めることができます。 参照:2025年の崖とは?わかりやすくレポートを要約&対策を解説 | TUNAG(ツナグ)

手軽かつ、双方向の情報共有を

企業における技術伝承において、システムを活用することで双方向のコミュニケーションを、仕組みとして実現することができます。たとえば情報共有の手段としてプライベートのチャットツールを用いた場合、時系列で流れていくため情報の抜け漏れが起こりがちです。 ノウハウ共有に適したシステムを活用すると、情報を分類して一覧化できるため、社員は知りたい情報にアクセスしやすく、ノウハウの浸透度合いも改善します。

資料化する負担を軽減する

企業における技術伝承では、OJTとマニュアルの両方を活用することで、効果的に技術伝承を進めることができます。ただ、日々の業務に加えて、マニュアルの作成をするのは、担当者の負担になりやすく、マニュアルの資料だけだと、読む側に伝わりづらい部分もあります。 そこで、動画マニュアルの作成がお勧めです。動画編集が可能なソフトでは、文字起こし機能があるものもあり、映像とともに、口頭で話した内容をテキスト化することもできます。動画の情報量は、文字の5,000倍という研究もあり、マニュアルを作成する側、受け取る側、双方にとってメリットがあります。最初から、完璧なクオリティの動画を作ろうと思わず、受け取る側の理解度を上げることを目標に作成してみてはいかがでしょうか。

技術を受け継ぐのは、機械か人か

機械で作業を代替し、自動化する

技術伝承において、うまくいっている企業では、ベテラン社員のもつ熟練技能を機械やITで代替し、自動化しているケースが多く見受けられます。社員間で承継する技能の種類を減らすことにより、ベテラン社員に依存する体制を脱却し、社員全体の若返りを実現可能にしています。また熟練技能を標準化することで、若手社員でも作業ができるようになっています。

相手に「伝わっているか」を大切に

技術伝承の際は、当たり前のようですが、人と人を繋ぐ仕組みが必要でしょう。このような仕組みもシステムを活用することでスムーズに行うことができます。たとえばシステムの機能である個人やグループでやりとりができるチャット機能を使用することで、部署や拠点が異なるメンバーとコミュニケーションを取ることが可能となります。 そのほか、システムを用いて社内の情報共有ツールを一元化することで、会社からの情報を一斉に従業員のスマートフォンへ配信するといったこともできます。共通の目標や話題が浸透することで、会社と従業員、従業員間を繋ぐきっかけができるでしょう。

技術伝承の事例4選

ここでは、日本の企業において技能・技術継承が成功している取り組み事例をいくつかご紹介します。 参照:中小製造業における技能承継問題の実態とその解決策 - 日本政策金融公庫

1.日本電鍍工業の事例

貴金属のめっきを行う日本電鍍工業の事例では、若手でも技能を習得しやすい仕組みづくりを行い、技術伝承に成功しています。従業員者数66名で、埼玉県にある同社では、これまで熟練工の経験や勘により、高度な加工技術を支えてきました。これらの技能を継承するための取り組みとして、データベースの作成とマニュアル化、システム化を実施。これにより経験の少ない若手社員でも同様のクオリティを保ち技術を承継することに成功しています。 熟練技術者による高度な加工技術を承継するための取り組みとして、データベースの作成に加え、マニュアル化やシステム化、充実したOJT・Off-JTで人材育成を行いました。これにより経験の少ない若手社員でも同様のクオリティを維持し技術を承継することに成功しています。

2.しのはらプレスサービスの事例

プレス機の保守・改造を行うしのはらプレスサービスの事例では、技術伝承の取り組みとして、「技能」を「技術」に代え、誰もが身につけられるようにする仕組みづくりを構築しています。従業者数200人で、千葉県にある同社では、メンテナンス作業を標準化するため、先人のノウハウが詰まった「作業標準書」を作成。作業標準書は常に更新され、有用なマニュアルとして機能しています。これにより、若手社員であっても早期に戦力として活躍することができ、現場が新たな技能や技術をつくりだすことで、企業の競争力強化にも繋がっています。

3.ヤマハミュージックマニュファクチュアリングの事例

つぎに、ピアノや管楽器といった楽器音響機器を製造している静岡県にある株式会社ヤマハミュージックマニュファクチュアリングの取り組み事例をご紹介します。 同社では、1,059名(2022年5月時点)いる従業員数の大半が製造現場で働いていることから、社内の情報が社員へ伝わりづらく、従来から行っていたアナログ的な情報共有のあり方についても課題を抱えていました。 このような課題を解消するために、施設内にデジタルサイネージを設置後、スマホアプリで情報共有ができる「TUNAG(ツナグ)」も導入し、会社からのお知らせなどを表示。一人ひとりに情報を平等に伝えることで、情報格差の解消につなげることができました。そのほか社内の仲間や自社製品を知れる制度等も運用することで社内のコミュニケーションの活性化にも成功しています。 詳細:「社内コミュニケーションを活性化し、日本のものづくりを続けていきたい」ヤマハ楽器製造現場のTUNAG(ツナグ)活用 | TUNAG(ツナグ)

4.ウインナー美容室の事例

最後に、愛知県内に4店舗の美容室を展開する株式会社ウインナーの事例をご紹介します。同社では、以前情報共有のためにプライベートのチャットツールを活用していましたが、情報が流れてしまい社内で情報共有がうまくいかないことが課題として挙げられていました。 そこで、情報共有の仕組みを実現できるスマホアプリ「TUNAG(ツナグ)」を導入し、動画や写真で日々の最新情報や教育マニュアルの共有、店舗を超えた何気ないコミュニケーションまですべて一本化しました。若手社員の情報収集量が格段に上がり、サービスの向上に寄与しています。 詳細:店舗が離れていても情報はタイムリーに共有、意見を出し合える環境を大切にする – ウインナー美容室のTUNAG(ツナグ)活用事例    参考:ナレッジマネジメントの成功事例4社、よくある失敗3パターンについて解説 | TUNAG(ツナグ)

まとめ

今回は、技術伝承における課題や取組み、技術伝承・ノウハウ共有におけるシステム活用の方法について解説しました。近年では企業の技能・技術に対する周知が不足していることにより、企業においても承継がうまくいっていないケースが増えてきています。企業の技能・技術承継をうまくいかせるためには、若手人材の確保だけでなくベテランの役割を体制として整えるといった取り組みを行っていくことが重要です。 弊社では、社内SNSアプリの「TUNAG(ツナグ)」を通して、社内コミュニケーションの活性化、情報共有の仕組み化を支援しています。製造、店舗型ビジネス等の事例も豊富ですので、課題感をお持ちの担当者の方は、ご相談ください。
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