クレドとは、企業が大切にする価値観や行動基準を明文化し、従業員が日々の業務で判断する際の指針となるものです。
クレドを浸透させることで、従業員は「どのような考え方で行動すべきか」を理解しやすくなり、部署や役割が異なっていても共通の基準をもとに意思決定しやすくなります。
また、企業が大切にする価値観を日常の行動に落とし込むことで、組織として目指す方向性を共有しやすくなります。
一方で、クレドは作成して掲示するだけでは十分に機能しません。従業員が内容を理解し、実際の業務で活用できるようにするには、継続的に触れる機会や実践につなげる仕組みづくりが必要です。
本記事では、クレドを作成しても従業員の行動につながらない、価値観の共有に課題を感じている企業に向けて、クレドの意味や導入の効果、浸透させる方法を解説しています。
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クレドとは、企業が大切にする価値観や考え方を、従業員が日々の業務で判断するための行動指針として明文化したものです。
経営理念やビジョンを掲げるだけでは、現場でどのように行動すべきか迷う場面があります。クレドは、企業の考え方を具体的な行動レベルまで落とし込み、従業員一人ひとりの判断を支える役割を持ちます。
クレドとは、ラテン語で「信条」「志」「約束」を意味する言葉です。企業においては、従業員が日々の業務で判断に迷った際の拠り所となる価値観や行動基準を明文化したものを指します。
クレドの起源は1943年、ジョンソン・エンド・ジョンソンの3代目社長ロバート・ウッド・ジョンソンJr.が作成した「我が信条(OurCredo)」にさかのぼります。
第二次世界大戦の混乱期において、企業が社会的責任を果たすための行動指針として生まれました。
当時としては画期的だった「顧客第一」「従業員への責任」「地域社会への貢献」「株主への責任」という4つの責任の優先順位を明確に示したことで、現代のクレドの原型となったのです。
経営理念やビジョンをより具体的な行動レベルに落とし込んだものがクレドの本質です。例えば「お客様第一」という理念があったとしても、それだけでは現場での判断に迷います。
クレドでは「お客様からのお問い合わせには24時間以内に返答する」というように、誰もが実践できる具体的な行動として表現します。
従業員が現場で迷った時、上司の指示を待たずとも適切な判断ができるよう設計されているのがクレドの特徴なのです。
企業の価値観を表す言葉は複数存在しますが、それぞれに明確な役割があります。
経営理念やMVVが「会社として何を目指すのか」を示すのに対し、クレドは「そのために日々どのように行動するのか」を明確にするものです。
例えば、バリューとして「挑戦を大切にする」と掲げている場合、クレドでは「新しいアイデアはまず試し、改善を重ねる」といった具体的な行動に落とし込めます。
企業の方向性と従業員の日々の判断をつなげるためには、MVVとクレドを連動させることが重要です。
MVVとは、ミッション・ビジョン・バリューの3つから企業の存在意義や目指す方向性、大切にする価値観を整理する考え方です。MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の意味や違いについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
現代の企業が直面する課題は複雑化しています。リモートワークの普及により、物理的な距離が生まれ、組織の一体感を保つことが困難になりました。世代間の価値観の違いも顕著になり、共通の行動基準を持つことの重要性が増しているのです。
また、スピード経営が求められる中、現場での即座の判断が必要な場面が増えています。すべての判断を上層部に委ねていては、ビジネスチャンスを逃してしまいます。
クレドがあることで、従業員一人ひとりが判断に迷った際の助けとなり、自信を持って行動しやすくなります。
さらに企業の社会的責任が問われる時代において、従業員の行動一つひとつが企業ブランドに直結します。
クレドは全従業員が企業の代表として社会からの信頼に応えるための指針となり、結果として企業ブランドを守る防波堤の役割も果たすのです。
クレドを組織に根付かせるには、一度共有して終わりではなく、経営層の考えやクレドに沿った行動事例を継続的に発信することが大切です。
その手段の一つが社内報です。
社内報を活用することで、経営方針や従業員の取り組みを定期的に共有でき、クレドを日々の業務で意識する機会を増やせます。社内報の目的や作成方法、活用事例については、以下の記事で詳しく解説しています。
クレドを活用することで、従業員の判断基準がそろいやすくなり、組織として一貫した行動につなげられます。
クレド導入による主な効果は、以下の5つです。
クレドは、企業の価値観を示すだけでなく、従業員が日々の業務で実践できる判断基準として活用することで効果を発揮します。ここでは、クレド導入によって期待できる具体的な変化を解説します。
クレドを活用すると、従業員は「自分の仕事が会社の価値観とどのようにつながっているか」を理解しやすくなります。
仕事の目的や自身の役割を認識できることで、会社への貢献実感が生まれ、働き続ける意欲の向上につながります。また、採用時に企業の価値観を明確に伝えることで、入社後のミスマッチ防止にも役立ちます。
クレドは、従業員が判断に迷った際の基準となり、主体的な行動を促します。
マニュアルのように細かな手順を示すのではなく、「なぜその行動を取るのか」という考え方を共有できるため、想定外の状況でも自ら考えて対応しやすくなります。
また、管理職にとっても共通の指導基準ができるため、一貫したマネジメントにつながります。
クレドを組織全体で共有することで、部署や役割が異なる従業員同士でも共通の価値観を持ちやすくなります。
「あの行動はクレドに沿っている」という共通認識が生まれることで、従業員同士の理解や信頼関係が深まります。その結果、組織への帰属意識が高まり、同じ方向を目指して行動できる環境づくりにつながります。
クレドは、顧客対応における判断基準としても活用できます。
例えば、「顧客第一」という価値観を具体的な行動指針として定めることで、従業員は状況に応じてどのような対応をすべきか判断しやすくなります。
対応方針が組織全体で共有されることで、担当者によるばらつきを抑え、安定した顧客体験の提供につながります。
クレドを日常的に活用することで、企業が大切にする価値観が行動として積み重なり、組織文化として定着していきます。
例えば、クレドに沿った行動を称賛したり、日々の業務で実践例を共有したりすることで、「どのような行動が評価されるのか」が組織内に広がります。
結果として、従業員一人ひとりが企業らしい行動を意識しやすい環境をつくることができます。
クレド作成は、組織全体を巻き込んだプロジェクトです。
実効性のあるクレドを作成するには、以下の7つのステップで進めます。
クレドは経営層だけで作成するのではなく、現場の声を反映しながら作ることで、従業員が納得して活用できる行動指針になります。
クレド作成の第一歩は、社内の多様な声を反映できるプロジェクトチームの結成です。重要なのは、多様性のあるメンバー構成にすることです。
チーム結成後、まずは経営層とクレドの目的と方向性を明確に共有します。企業の将来ビジョンや経営戦略とクレドが連動するよう、基本的な方針をここで固めます。これは、プロジェクトが迷走しないための羅針盤となります。
次に、全従業員を対象にヒアリングを行い、現場に根付いた価値観や大切にしている想いを集めます。
ヒアリングで集まった多くの意見やエピソードから、共通するキーワードや価値観を丁寧に分類・整理し、クレドの「骨子」を抽出していきます。この段階で、組織が本当に大切にしている価値観の核が見えてきます。
骨子を基に、クレドを具体的な文章にしていきます。このステップでは、以下の点に注意しましょう。
完成した草案は、すぐに決定稿とせず、必ず全社に共有してフィードバックを募ります。
クレドは一度作ったら終わりではありません。時代や事業環境の変化に対応するため、定期的に見直しの機会を設けましょう。見直しの際も、従業員の意見を取り入れながら更新していくことで、クレドは形骸化することなく、常に組織の指針として機能し続ける「生きたクレド」となります。
クレドを作成した後は、従業員が日々の業務で意識し、実際の行動につなげられる状態をつくることが重要です。
クレドを活用するための代表的な方法は、以下の3つです。
クレドは掲げるだけではなく、従業員が日常的に触れ、実践例を共有できる環境を整えることで、組織の行動基準として機能します。
クレドを日常的に意識させる最も効果的な方法の一つが、クレドカードの配布です。名刺サイズのカードにクレドを印刷し、全従業員に配布します。
常に携帯できるサイズにすることで、いつでも確認できる環境を作ります。迷った時にカードを見返す習慣が、クレドの実践につながるのです。デザインにもこだわり、誇りを持って携帯したくなるような仕上がりにすることも大切です。
朝礼での唱和も効果的な浸透策です。毎朝全員でクレドを読み上げることで、一日の始まりに価値観を共有できます。ただし、機械的な唱和にならないよう、日替わりでクレドの実践例を共有するなど、工夫が必要です。
クレドカードに関しては以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
ラインナップミーティングは、クレドについて対話形式で理解を深める取り組みです。定期的に実施することで、クレドが単なるお題目ではなく、実践的な指針として機能するようになります。
具体的には、週次や月次のミーティングで、クレドの項目を一つずつ取り上げて議論します。「このクレドを実践した具体例は?」「もっと良い実践方法はないか?」といった問いかけで、参加者全員が考える機会を作ります。
重要なのは、会社からの一方的な押し付けにしないことです。従業員自身が考え、発言し、共有することで、クレドが自分事化されていきます。小グループでのディスカッションを取り入れることで、全員が発言しやすい環境を作りましょう。
クレドの形骸化を防ぐには、定期的な評価と改善の仕組みが不可欠です。人事評価にクレドの実践度を組み込むことで、日常的な意識付けができます。
人事評価との連動では、具体的な行動指標を設定することが重要です。
例えば「顧客対応におけるクレド実践度」を5段階で評価し、具体的な行動例を評価シートに記載します。四半期ごとの1on1面談でクレドに基づいた行動を振り返り、上司と部下で認識を共有します。
昇進・昇格の判断基準にもクレドの体現度を組み込むことで、組織全体への浸透が加速します。
また、クレドの実践優良事例を表彰する制度も効果的です。
月間MVPや年間表彰など、クレドを体現した従業員を称えることで、モチベーション向上につながります。表彰された事例は社内報やイントラネットで共有し、良い実践例として水平展開していきます。
クレドを効果的に活用している企業の事例から、組織に根付かせるためのポイントを確認しましょう。
クレドは作成するだけではなく、従業員が具体的な行動として実践できる環境を整えることが大切です。以下では、クレドを判断基準として活用している企業の事例を紹介します。
リッツカールトンの「ゴールドスタンダード」は、クレドの成功事例として世界的に有名です。従業員一人ひとりが、お客様に感動を与えるサービスを提供できる仕組みが確立されています。
以下がリッツ・カールトンの掲げているクレドです。リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。
私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。
リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。
また、この「ゴールドスタンダード」の最終項には「従業員との約束」という形で人材育成を重視しています。
従業員もまた大切な資産として考える企業理念があることで、従業員も会社に対する信頼が生まれ、働きがいやモチベーション向上につながるのではないでしょうか。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレドは、1982年のタイレノール事件で真価を発揮しました。製品に毒物が混入された際、同社は迷うことなく全製品を回収しました。
顧客への責任を最優先に掲げるクレドに従い、巨額の損失を伴っても製品回収を実施したのです。結果として、この誠実な対応が評価され、ブランド価値はむしろ向上しました。
クレドが単なる理念ではなく、危機的状況での判断基準として機能した好例です。平時からクレドを徹底していたからこそ、緊急時にも迷いなく行動できたのです。
国内企業でも、クレドを効果的に活用している企業は多数あります。中でも楽天の「楽天主義」は、グローバル展開しながらも組織の一体感を保つ役割を果たしています。
楽天では、「成功のコンセプト」として以下の5項目を掲げています。
◾️常に改善、常に前進
人間には2つのタイプしかいない。
【GET THINGS DONE】様々な手段をこらして何が何でも物事を達成する人間。
【BEST EFFORT BASIS】現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間。
一人一人が物事を達成する強い意思をもつことが重要。
◾️Professionalismの徹底
楽天はプロ意識を持ったビジネス集団である。
勝つために人の100倍考え、自己管理の下に成長していこうとする姿勢が必要。
◾️仮説→実行→検証→仕組化
仕事を進める上では具体的なアクション・プランを立てることが大切。
◾️顧客満足の最大化
楽天はあくまでも「サービス会社」である。
傲慢にならず、常に誇りを持って「顧客満足を高める」ことを念頭に置く。
◾️スピード!!スピード!!スピード!!
重要なのは他社が1年かかることを1ヶ月でやり遂げるスピード。
勝負はこの2~3年で分かれる。
(引用:楽天主義|楽天グループ株式会社)
企業理念の抽象的な文言から、更に理解しやすいように5つの見出しに加え各項目で2行程度の解説も記されています。
クレドにより、よりプロフェッショナル集団として、顧客満足の最大化への実現を目指している事が伺えます。
クレドを作成しても、従業員が日々の業務で意識し、具体的な行動につなげられなければ十分に活用できません。
そのためには、クレドに関する情報を継続的に発信したり、従業員同士で実践例を共有したりできる仕組みを整えることが大切です。ITツールを活用することで、クレドに沿った行動や考え方を日常的に共有し、従業員が価値観を意識する機会を増やせます。
こうしたクレドの活用を支援する方法の一つが、組織改善クラウドサービス「TUNAG(ツナグ)」です。TUNAGは、社内コミュニケーションを通じて、企業の価値観を従業員の日々の行動につなげる仕組みづくりを支援します。
TUNAGでは、社長メッセージや経営陣コラムなどを発信することができます。テキストだけでなく動画や音声も活用できるため、経営層の想いやクレドに込められた考えを、距離のある拠点や部署にまでダイレクトに伝えることが可能です。
経営層の考えを継続的に共有することで、従業員はクレドが作られた背景や意図を理解しやすくなります。
サンクスメッセージ機能を使えば、クレドに沿った行動や貢献に対して、従業員同士が気軽に感謝や称賛を送り合える環境をつくれます。
例えば、メッセージ送信時にクレドの行動指針を選べるようにしておくと、どの行動がクレドに即しているのかを意識しやすくなります。可視化されることで、従業員はクレドをより実践的に理解できるようになります。
クレドの活用状況は感覚だけで判断せず、従業員の反応や利用状況をもとに改善することが大切です。
TUNAGでは、社長メッセージの閲覧率やサンクスメッセージの利用率、クレドに関するアンケート回答率などを可視化できます。
これにより、どの情報が届いているのか、どの取り組みが活用されているのかを把握し、次の施策につなげられます。
TUNAGはPCだけでなくスマートフォンアプリにも対応しているため、社用PCを持たない現場スタッフやアルバイト・パート社員も、いつでもどこでもクレドに関する情報にアクセスし、情報発信や交流が可能です。
SNSのように直感的なUI/UXによって、従業員は抵抗なく利用でき、自然と日々の業務にクレドを取り入れられます。
クレドは、作成して掲げるだけではなく、従業員が日々の判断や行動で活用できる状態にすることで価値を発揮します。
そのためには、クレドの内容を伝えるだけでなく、具体的な行動例を共有したり、従業員同士で実践を称えたりする仕組みが必要です。
クレドが組織内で共通の判断基準として機能すると、従業員は「何を大切にして仕事をするべきか」を理解しやすくなり、上司の指示を待つだけではなく、自ら考えて行動できる場面が増えていきます。
自社の価値観を日々の仕事に反映できる仕組みを整えることで、従業員一人ひとりが同じ方向を向きながら、より良い判断と行動を積み重ねられる組織づくりにつながります。