リスキリングの意味やメリットを解説。進め方や導入のポイントも
人的資本経営へのシフトや自律的なキャリア形成が注目される中、リスキリングの重要性が高まっています。DX推進において重要なテーマの一つでもあるため、自社でも取り組んでみましょう。リスキリングの意味やメリット、導入のポイントについて解説します。
リスキリングとは?
リスキリングは「reskilling」を語源とする言葉です。直訳すると「スキルの再習得」という意味になります。ビジネスにおけるリスキリングの意味や注目される背景、似た言葉との違いを見ていきましょう。
リスキリングの意味
リスキリングとは、新しい職業に就いたり今の職業で求められるスキルの大幅な変化に対応したりするために、スキルを習得する(させる)ことです。
近年は、デジタル化で誕生する職業や仕事の進め方が大きく変わるであろう職業に就くためのスキル習得を、リスキリングと呼ぶことが多くなっています。
リスキリングが注目される背景
リスキリングが注目されている理由の一つに、国の積極的な支援が挙げられます。
2022年、岸田文雄首相(当時)は所信表明演説で、リスキリングの支援に5年で1兆円を投じると表明しました。岸田内閣の元で始動した「デジタル田園都市国家構想」では、2026年度までに230万人のデジタル推進人材を育成・確保する取り組みを進めています。
また、世の中にDXが浸透しデジタル人材の必要性が高まっていることも、リスキリングが注目される理由の一つです。DXに必要な人材が不足する中、企業は採用を進めるとともに自社内での人材育成にも取り組むことが求められています。
出典:リスキリング支援「5年で1兆円」 岸田首相が所信表明 臨時国会召集 旧統一教会問題「説明責任果たす」 - 日本経済新聞
リスキリングと似た言葉との違い
リスキリングと意味を混同しやすい言葉には、以下のようなものがあります。
- リカレント教育:「働く」と「学ぶ」のサイクルを回し続ける
- アップスキリング:現職でキャリアアップするためにスキルを高める
- 学び直し:個人の関心に基づいて新しいことを学ぶ
リスキリングは企業が主体で実施されることが多いのに対し、リカレント教育は新しいことを学ぶために職を離れるのが前提となっています。アップスキリングと学び直しも、リスキリングとは意味合いが違う言葉です。
企業がリスキリングに取り組むメリット
リスキリングを導入すると、企業にどのような効果をもたらすのでしょうか。企業がリスキリングに取り組む主なメリットを紹介します。
人材不足の解消につながる
経済産業省の「DXレポート」によると、2025年にはIT人材が約43万人不足すると予測されています。2015年の時点で既に約17万人が不足しており、IT人材の供給は減る一方です。
DXを推進しようと思っても、人材を確保できなければDXはスムーズに進まないでしょう。自社の従業員をリスキリングで育成できれば、人材不足の解消を期待できます。採用コストの削減につながることもメリットです。
業務効率化を図れる
リスキリングで従業員がデジタル技術を習得すれば、新たな技術を業務に導入できるため、次のような効率化につながります。
- 業務の自動化
- データの正確な分析
- 業務フローの改善
- データの一元管理
業務効率化により生じた時間を新たな業務に割けるほか、残業が減るため従業員のワーク・ライフ・バランスも実現しやすくなるでしょう。
イノベーション創出を期待できる
企業がリスキリングに取り組むメリットとしては、イノベーション創出につながることも挙げられます。新しい知識やスキルを習得すれば、今までにない視点からのアイデアが生まれやすくなるのです。
イノベーション創出により新たな商品やサービスを開発できれば、市場における競争力が強化され、優位性を保ちやすくなります。時代の変化にも対応できるようになるでしょう。
企業におけるリスキリングの進め方
自社でリスキリングを推進する場合、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。企業におけるリスキリングの進め方を見ていきましょう。
取得すべきスキルを決める
リスキリングは企業の経営戦略と連動して進める必要があります。自社の経営戦略を明確化し、経営戦略に沿った人材戦略を定めることが重要です。
まずは従業員が持つスキルを洗い出しましょう。経営戦略を実現する上で求められるスキルとのギャップを埋める作業が、自社で行うべきリスキリングです。
スキルマップを活用すれば、従業員ごとのスキルや習熟度を詳細まで把握しやすくなります。自社に必要な人物像をより正確にイメージできるようになるでしょう。
プログラムを設計する
リスキリングで習得すべきスキルが決まったら、次に教育プログラムを設計します。社内研修・eラーニング・OJTなど、リスキリングの学習方法はさまざまです。
ただし、専門性の高いスキルを自社のみで習得させるのは困難なことも多いため、外部の研修サービスを活用することも検討しましょう。リスキリング支援サービスを利用すれば、自社の課題に応じたプログラムを設計してもらえます。
リスキリングは働きながら学ぶのが基本です。就業時間外に学習する仕組みにすると、従業員の負担が増し離脱する恐れがあるため、できるだけ就業時間内に学習できる環境を整備しましょう。
実践で生かせる機会を用意する
従業員がリスキリングで知識やスキルを習得できても、実践で生かせる機会がなければ忘れてしまう恐れがあります。教育プログラムを設計したら、実践で活用する機会も提供しましょう。
習得した知識やスキルを実践できる業務が自社にない場合は、予定している業務を実験的に実施する必要があります。業務がないからといってそのまま放置せず、とにかくアウトプットできる機会を設けることが重要です。
知識やスキルを実践で生かした後は、結果に対するフィードバックも実施しましょう。従業員が継続的にスキルを磨き続けられるようになります。
リスキリング導入のポイント
以下に挙げるポイントを押さえてリスキリングを導入すれば、効果をより高めることが可能です。リスキリングを推進する上で意識したいポイントを紹介します。
従業員の理解を得る
リスキリングは最近生まれた言葉であり、従業員の中にはリスキリングを知らない人もいます。また、自分には関係ないとの思いから、新たなスキルの習得に抵抗感を覚える人もいるでしょう。
リスキリングに取り組む際は、従業員にリスキリングの重要性や目的を伝え、理解を得ることが大切です。疑問を持つ人が減れば、社内でスムーズに展開できるようになります。
サポート体制を構築する
リスキリングは中長期的な視野を持って進めていくものです。最初はやる気がある従業員も、学習を進めていくうちにモチベーションが下がっていく恐れがあります。
従業員のモチベーションを維持するためには、サポート体制を構築することが重要です。以下に挙げるような施策を実施し、従業員がリスキリングに取り組みたくなる仕組みをつくりましょう。
- 習得したスキルに応じたインセンティブを用意する
- 同じスキルの習得を目指す従業員を集めて学習させる
- 自分が成長していることを実践を通して体感させる
- メンタリングやコーチングを定期的に実施する
リスキリングでDX人材を育成しよう
リスキリングとは、企業の主導で従業員に新しい知識やスキルを習得させることです。人材不足の解消につながるほか、業務効率化やイノベーション創出といった効果も期待できます。
DXを進める上でも、リスキリングは重要なテーマの一つです。学習の進め方や導入のポイントを理解し、リスキリングでDX人材を育成しましょう。