アサーションとは?相手を尊重しつつ自分も主張する自己表現法を解説
社内コミュニケーションの活性化方法を調べているなら、アサーションについて理解を深めるのがおすすめです。職場の人間関係の改善につながるなど、さまざまなメリットを得られるでしょう。アサーションに関して知っておきたい基礎知識を解説します。
アサーションとは
そもそもアサーションとは何を意味する言葉なのでしょうか。意味と注目される背景を紹介します。
アサーションの意味
アサーションは、相手の意見を尊重しながら自分の考えも主張するコミュニケーション方法です。主張・断言などの意味を持つ「assertion」に由来します。
アサーションが実践されている職場では、お互いに尊重し合いながら対等な立場でやり取りできるため、心理的安全性が確保された状況で主張を交え合うことが可能です。
アサーションが注目される背景
近年はコミュニケーションの問題を原因としたトラブルが職場で増えています。例えば、さまざまなハラスメントは年齢や性別、立場が違うことにより生じるコミュニケーションのトラブルといえるでしょう。
リモートワークの導入が増えたこともポイントです。オンラインでのやり取りは対面でのやり取りに比べ、お互いに感情や考えを伝えにくいデメリットがあります。
相手との関係性をより重視したコミュニケーションが求められ、アサーションが注目されているのです。
アサーションにおける自己表現の分類
アサーションでは自己表現のタイプを3種類に分けて考えます。今の自分がどのタイプなのかを確認し、アサーティブを目指してトレーニングを進めることが重要です。
アグレッシブ
自分の意見を強く主張するタイプがアグレッシブです。相手の主張を軽視する傾向があるほか、相手を批判したり責めたりするケースもあります。
アグレッシブな自己表現は自分の主張が通りやすい反面、相手を犠牲にしたコミュニケーションともいえるため、相手との関係が悪化しがちです。
アグレッシブな人は、職場で孤立したりハラスメントを行う側になったりする恐れがあります。自分の感情を上手にコントロールできない人は、自己表現がアグレッシブになりやすいでしょう。
ノンアサーティブ
ノンアサーティブとは、自分の意見を相手に合わせるタイプです。最初から自己主張ができないパターンや、相手の主張に合わせて自分の意見を変えるパターンなどがあります。
ノンアサーティブな自己表現は相手を満足させやすい一方で、自己主張できないためにストレスをためやすく、自分のメンタルに悪影響を及ぼしかねません。他人にうまく利用されるリスクもあります。
自己表現がノンアサーティブになる傾向があるのは、自己否定感が強い人や協調性が高すぎる人です。
アサーティブ
自分の意見を主張しつつ相手の権利も尊重できる自己表現のタイプがアサーティブです。アサーショントレーニングではアサーティブを目指します。
アサーティブとアグレッシブは、はっきりと自己主張する点においては同じです。しかし、アグレッシブが自分の勝利のみを追求するのに対し、アサーティブはお互いにWin-Winの状態になることを目指します。
アグレッシブな傾向がある人は相手の意見にも耳を傾け、逆にノンアサーティブな人は自己主張を意識することが、アサーティブに近づくためのコツです。
アサーションを職場に取り入れるメリット
従業員がアサーションを意識してコミュニケーションを取れば、職場環境の改善を図ることが可能です。アサーションへの取り組みで期待できる効果を紹介します。
良好な人間関係の構築・維持
従業員の自己表現タイプがアサーティブに近づくと、お互いを尊重できるため人間関係の改善を図れます。職場の心理的安全性が高まり、意見も出やすくなるでしょう。
離職率の低下を期待できる点もメリットです。職場における良好な人間関係の構築・維持が実現されれば、人間関係の悪化が原因で離職するケースが減ります。
従業員の問題解決力の向上
職場にアサーションを取り入れると、さまざまな考え方や価値観を基にした意見が従業員から出てくるようになります。意見を調整して新たな解決策を生み出せるため、従業員の問題解決力が向上するでしょう。
問題解決力の高い従業員が増えると業務が停滞しにくくなり、生産性の向上にもつながりやすくなります。また、トラブルを克服し続けることで従業員に自信がつき、より積極的な姿勢で仕事に向かえるのもメリットです。
メンタルヘルスの向上
アサーションへの取り組みは、従業員のメンタルヘルス対策にもつながります。職場の人間関係やコミュニケーションを原因とするメンタルヘルス不調者が減るためです。
精神的な負担が軽くなった従業員は、パフォーマンスが向上しやすくなります。また、職場全体の雰囲気が明るくなり、定着率の向上も期待できるでしょう。
ハラスメントの予防
パワハラが発生する大きな理由の1つに、コミュニケーションの問題があります。相手を尊重する意識のない発言が相手を不快にさせ、威圧的な態度を取られたと思われるのです。
指導する側の先輩や上司がアサーティブな表現方法を習得すれば、パワハラが発生しにくい環境をつくれます。また、指導される側の従業員もアサーションを実践することで、相手の意見に納得いかなくても落ち着いて対応できるでしょう。
従業員エンゲージメントの向上
従業員エンゲージメントとは、会社に対して従業員が持つ愛着や貢献意欲のことです。従業員エンゲージメントが高い職場は、業務への意欲が高まり生産性の向上を期待できるため、近年多くの企業がエンゲージメント経営に取り組んでいます。
アサーションの実践は、従業員エンゲージメント向上にも有効です。心理的安全性が高い状況で自己表現できるため、職場での相互理解が深まりチームに一体感が生まれます。
また、ストレスも軽減され働きやすくなることから、職場に対する従業員の満足度や貢献意欲も高まるのです。
研修に盛り込みたいアサーションの習得方法
従業員の自己表現タイプをアサーティブに近づけるためには、研修を通したトレーニングを行うのが効果的です。アサーションの習得に役立つ3つの方法を把握し、自社で実施する研修に取り入れてみましょう。
DESC法
アサーションのプロセスを体系的にまとめたものがDESC法です。次の4つを上から順番に実践することで、アサーティブな自己表現を目指せます。
- Describe(描写):現在の状況や発生している問題、相手の言動をありのままに描く
- Express(表現):自分の感情や考えを主観的に伝える
- Specify(提案):相手に適していると思われる解決策を提案する
- Choose(選択):提案への反応に対して選択したり代替案を示したりする
2番目の「Express(表現)」で自分の気持ちや考えを伝える際は、できるだけアサーティブな表現になるよう意識することが大切です。
ABCDE理論
ABCDE理論は、物事の受け取り方を変えることでアサーティブな自己表現に近づけるトレーニング方法です。まずは、ABCDEそれぞれの意味を把握しましょう。
- Activating event:出来事や現象
- Belief:受け取り方・感じ方・思い込み
- Consequence:結果としての感情や行動
- Dispute:Bへの反論
- Effect:Dによる効果や影響
人の感情や行動(C)は出来事や現象(A)に直接影響を受けるのではなく、受け取り方や感じ方(B)で変わります。思い込み(B)が感情や行動を変えることもあるでしょう。また、Bが非合理的なら反論(D)すれば、より合理的な受け取り方(E)に修正できます。
ABCDE理論をアサーションに取り入れれば、自分の思考のプロセスを客観的に判断できるようになるため、より健全な考え方に変換することが可能です。
ロールプレイ
ロールプレイとは、実際のシーンを想定し、登場人物を設定して役割を演じながらスキルを習得する方法です。例えば、同じ失敗を繰り返す部下とそれを注意する上司を演じることで、上司のアサーショントレーニングにつながります。
ロールプレイのメリットは、現実的に起こりがちな場面での対応力が向上することです。最初に指導なしで役割を演じれば、自分の自己表現タイプの判別にも役立ちます。
ロールプレイではフィードバックを行うことが重要です。評価と改善を繰り返すことで、トレーニングの効果をより高められます。
アサーティブになるためのポイント
アサーションを意識したコミュニケーションのポイントを紹介します。従業員のトレーニングで解説してあげるとよいでしょう。
アサーション権を意識する
アサーション権とは、相手を尊重すれば自己表現してもよいという権利です。誰もがアサーション権を持っていると考えれば、自己主張の際に躊躇しにくくなります。
例えば頼まれごとを断る際に罪悪感を抱いてしまう場合、「相手が嫌な気持ちになるのではないか」と、自分の中で固定化された価値観を優先している可能性があります。
しかし、断る理由があるならまずはそれを主張した上で、相手の反応を見るべきでしょう。誰もが自己表現できるアサーション権を意識すれば、お互いに意見を出し合った後に歩み寄るという形を取りやすくなります。
非言語コミュニケーションを大事にする
人の考え方や感情は、言葉だけでなく表情やしぐさにも表れます。アサーティブなやり取りを意識する際は、非言語コミュニケーションを大事にすることも重要です。
例えば、楽しさやうれしさの感情を表現する場合、声のトーンが低かったりうつむいて話したりすると気持ちが伝わりにくくなります。
表情やしぐさは自分では分かりにくい部分もあるため、トレーニングで周囲に見てもらうとよいでしょう。
TUNAGの導入でアサーションの浸透を加速
アサーティブなコミュニケーションを従業員に意識させれば、組織にさまざまなメリットをもたらします。効果的なトレーニングを実施し、職場にアサーションを取り入れてみましょう。
ただし、アサーションのようなコミュニケーションスタイルを全従業員に浸透させるのは、コストや管理の面から難しいです。アサーションを社内に浸透させる方法としては、TUNAGの導入が効果的です。
従業員が毎日利用する社内ポータルTUNAGを活用すれば、「アサーションとはどのようなものか」を、社内掲示板や経営者のメッセージを通して、社員に伝えることができます。
また、社内チャット機能もあるため、従業員が学んだアサーショントレーニングをテキストで実践する機会も増えるでしょう。