作業報告書の書き方のポイントと電子化のメリット・デメリット
作業報告書とは
作業報告書とは、実施した作業の内容や進捗を詳しく記載し、自社や取引先へ伝えるための書類です。作業について詳細に記載された報告書があれば、いつ誰がどのような作業を行なったのか、その場にいなくてもすぐに把握することができます。
参考:手書き文化から脱却!書類作成をデジタル化する方法やメリット、成功事例をご紹介 | ワークフロー総研
準委任契約時には作業報告義務が発生
準委任契約とは業務委託契約の一種であり、法律行為でない業務の委託に際して取り交わす契約です。例えば、パソコンを使った入力業務やコールセンターでの対応業務、ソフトウェアの開発業務、ビルの警備業務などが該当します。
準委任契約を締結している場合、受任者は必ず作業報告書を作成し、委任者へ提出しなければなりません。これは民法第645条「受任者による報告」に定められている受任者の義務です。一方で、準委任契約においては成果物を期限までに納品する義務はなく、あくまで実労働を対価として報酬が支払われる契約とされています。この点、成果物を対価に報酬が支払われる「請負契約」とは異なります。
▼参考:
・民法 | e-Gov法令検索
・準委任契約とは?特徴や運用上の注意点、他の契約との違いを紹介
作業報告書の基本的な項目
作業報告書に記載が必要な基本項目は以下のとおりです。
- 作業者の氏名
- 作業の名称・タイトル
- 作業日時
- 作業内容
- 作業進捗
- 次回の作業予定(継続して作業する場合)
- 補足事項
上記が基本的な項目ですが、作業報告書に指定のフォーマットはありません。業務によってほかに報告が必要な項目があれば追加し、誰が読んでもわかりやすい報告書に仕上げることが大切です。
参考:作業報告書 テンプレート(書き方と例文) - NotePM
作業報告書の目的
作業報告書を作成する目的には以下が挙げられます。
参考:作業報告書とは?無料テンプレートと一歩進んだ管理方法をご紹介 | プロジェクト管理・工数管理「クラウドログ」
従業員の作業内容を把握する
作業報告書の主な目的は、従業員が実施した作業の具体的な内容やかかった時間、進捗状況などを把握することです。作業の詳細を一枚の用紙に簡潔にまとめるため、他の従業員と共有しやすく、引き継ぎがスムーズに進められるメリットもあります。また、作業内容を担当者以外の第三者が確認することで、まだ表面化していないリスクを発見できる可能性があり、今後起こり得るトラブルを未然に防ぐことにつながります。
従業員の成長につなげる
作業報告書を書くことで、作業を行なった従業員がその日の作業内容について自分自身で振り返ることができます。作業を通して感じたよかった点や反省点、改善案など、振り返りによって従業員はさまざまな気づきを得ることができ、その気づきを次回からの作業に活かせられます。従業員が自身の仕事について深く考えるきっかけを与えるために、あらかじめ作業報告書のフォーマットには「問題点」「改善案」などの項目を設けておくとよいでしょう。
作業報告書の書き方の4つのポイント
作業報告書は自分が行った作業について第三者に伝える書類であり、誰にとっても読みやすく、わかりやすいものにしなければなりません。作業報告書を書くときは具体的にどのような点に気をつければよいのか、押さえておきたいポイントをご紹介します。
1. 5W1Hを意識する
5W1Hとは、「When/いつ」「Where/どこで」「Who/誰が」「What/何を」「Why/なぜ」「How/どのように」の頭文字をとったものです。作業報告書を書くときは、5W1Hを意識しながら文章を組み立てることで、必要な情報を抜け漏れなく簡潔にまとめられます。また、5W1Hが明確な作業報告書であれば、読み手に「何を?」「どうやって?」などの疑問を抱かせることはなく、作業について報告すべき情報をスムーズに伝えられます。
2. 結論を先に書く
わかりやすい作業報告書を作るには、結論から書き始めることがポイントです。結論が先に書かれていない文書の場合、その内容を正確に理解するには最初から最後までしっかりと読み込む必要があります。一方で、結論が明確な文書であれば、一度目を通すだけでもその内容を理解することができます。社内や取引先、顧客など、作業報告書の提出先にかかわらず、報告書内でもっとも伝えたい結論を先に提示することが大切です。
3.図や表を取り入れる
作業内容の説明が複雑になりそうな部分、文章だけでは伝わりにくいと感じる部分には図や表を取り入れることで、視覚的にもわかりやすい作業報告書を作成できます。その日の作業内容や進捗について詳しく説明するのはよいことですが、文章だけの説明が長くなると冗長な印象を与えてしまい、読み手が内容を理解するまでに時間がかかってしまいます。必要に応じて図や表を用いるようにすると良いでしょう。
4.記載内容や数値に誤りがないかチェックする
作業報告書を一通り書き終わった後は必ず見直しを行い、表現や数値に誤りがないか確認しましょう。作業報告書は社内の管理者や取引先など第三者が閲覧する書類のため、必要項目の記載漏れや誤字脱字などのミスが目立つと、作業者に対する信用にもかかわってきます。ミスは誰にでも起こり得るものだからこそ、一度も見直しをせずに提出することがないように、記載した内容を細かくチェックする習慣を身につけましょう。
作業報告書を電子化する4つのメリット
近年、急速な技術発展や新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、企業における業務のデジタル化が進んでいます。作業報告書をはじめとした紙資料を電子化することで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
参考:進展するデジタル化、潮流をつかむ(日本)(1)デジタル化進展の背景と今 | 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ
1.写真や動画を添付しやすい
作業報告書を電子化すると、報告内容に写真や動画を簡単に添付できます。文字だけでは伝わりにくい複雑な作業内容も、電子化された作業報告書であれば写真や動画を用いてわかりやすく伝えられます。
また、文字を書く手間や時間が削減できるので、業務効率化にもつながるでしょう。
2. 紛失や劣化の心配が少ない
手書きの作業報告書では経年劣化による文字のにじみや写真の色あせが生じますが、電子化された作業報告書なら何年経っても劣化する心配はありません。また、紙の書類の管理で発生するダメージを防げるメリットがあります。
3. 検索性やアクセス性の向上
電子化された作業報告書をクラウド上にまとめて保存することで、報告書のタイトルやキーワード、日付などから、探している書類を容易に検索できるようになります。紙の作業報告書を保管している場合、その中から目当ての書類を探し出す手間がかかりますが、クラウド上に集約し一括管理していれば、すぐに目当ての書類にアクセスすることができます。
また、書類の電子化により検索性やアクセス性が向上すると、紙ベースで管理するよりも書類を探す時間を短縮できるため、業務効率の向上につながるメリットもあります。
4. リモートワークにも対応しやすい
電子化によって作業報告書がクラウド上で共有できる状態になれば、従業員はスマートフォンやタブレットなどの電子端末を使い、いつでもどこからでも作業報告書の更新・閲覧が可能です。働き方改革や新型コロナウイルスの感染拡大により普及が進んだリモートワークにも対応しやすく、オフィスに出勤していないときも作業報告書をリアルタイムで共有したり、管理者が内容をチェックしたりすることができます。
作業報告書を電子化するデメリット
作業報告書の電子化には多くのメリットがある一方、すでに浸透している従来の管理方法を刷新することは手間のかかる作業でもあります。ここでは、作業報告書を電子化するデメリットをご紹介します。
参考:書類の電子化によるメリットとデメリットとは? | 株式会社無限
1. 業務フローを変える必要がある
作業報告書を電子化する場合、これまで紙ベースで運用していた業務フローを変更する必要があります。新たにITツールやシステムを取り入れる際は、あらかじめ業務にかかわるすべての従業員に周知し、操作方法や手順について説明しなければなりません。
さらに、これまでの業務フローを変えることに対しては、現場の従業員から反発の声が出る可能性もあります。電子化をスムーズに浸透させるためには、自社で電子化を進める理由やその必要性、メリットなどについて、新しいフローを取り入れる前に社員に説明し、理解を得ることが大切です。
2.セキュリティ教育が求められる
作業報告書を電子化する際には、大切な情報を守るためのセキュリティ教育が欠かせません。情報が適正に管理されない場合、情報漏洩やデータの誤送信など、セキュリティ上のリスクを引き起こすおそれがあります。
このようなセキュリティ事故が起きてしまうと、日常業務に大きな支障が生じるだけでなく、企業に対する社会的信用やブランドイメージの低下にもつながります。電子化にあたりITツールやシステムを導入する際は、従業員へのセキュリティ教育もあわせて実施し、ITリテラシーの向上に努める必要があります。
▼参考
・情報セキュリティ事故が与える企業への影響|企業経営と情報資産
・企業が取り組むべき情報セキュリティ対策とは。事例から対策までの流れを解説 | 漏洩チェッカー
まとめ
今回は、作業報告書の概要や書き方のポイント、電子化のメリット・デメリットを解説しました。
作業報告書は、作業内容を社内・社外に共有するという目的だけではなく、作業した従業員の振り返りにも利用することができます。第三者に伝わりやすくするためだけではなく、自身が振り返りやすいように、簡潔かつ、図や表等で視覚的にわかりやすく記載することが重要です。
また、作業報告書を電子化することで、業務効率化や検索性の向上が期待できます。一方で、社外とのやりとりの観点等から、紙のほうが扱いやすいという場合もあるので、自社にあった形での運用を改めて検討してみてはいかがでしょうか。