なぜ組織は硬直化するのか?3つの問題点と企業が取るべき具体的施策とは

「新しい施策を提案しても承認プロセスが長い」「部門間の連携がスムーズでない」このような組織の停滞感に悩んでいる人事・経営層は少なくないでしょう。組織の硬直化は、企業の成長に伴って自然に発生する現象です。本記事では、組織硬直化がなぜ起きるのか、そしてどうすれば組織を活性化し、変化に強い柔軟な体制を取り戻せるのかを具体的に解説します。

組織硬直化とは何か

組織の停滞感を感じていても、それが「組織硬直化」なのか判断に迷う方は多いでしょう。単なる一時的な問題なのか、それとも構造的な課題なのか。まずは組織硬直化の本質を正しく理解することで、自社の現状を客観的に診断できるようになります。

組織硬直化の定義と組織の形骸化・機能不全との違い

組織硬直化とは、企業が変化への対応力を失い、意思決定や業務遂行が停滞する状態を指します。企業規模の拡大とともに、承認階層が増え、部門間の壁が高くなることで、この現象は徐々に進行していきます。類似の表現として「組織の形骸化」や「組織の機能不全」という言葉が使われることもありますが、いずれも組織が本来の機能を果たせなくなった状態を示しています。

典型的な症状としては、トップからの指示待ち姿勢が蔓延し、現場の判断余地が極端に狭まることが挙げられます。規則や手続きが目的化してしまい、本来達成すべき成果よりも「ルールに従うこと」が優先される状況に陥るのです。

組織硬直化が問題視される3つの理由

組織硬直化は企業経営において深刻な問題として認識されています。第一に、市場機会の喪失が挙げられます。承認プロセスが複雑化することで、現場で生まれたビジネスアイデアの実行に数ヶ月を要するケースも珍しくありません。この遅れが競合企業に先を越される結果を招きます。

第二の問題は、人材の活力低下です。提案しても却下される経験を重ねた社員は、次第に「言っても無駄」という諦めの感覚を持つようになります。特に高い能力を持つ人材ほど、この環境に失望して組織を離れていきます。残るのは現状維持を望む層が中心となり、組織全体の新陳代謝がさらに停滞する悪循環に陥ります。

第三に、競争優位性の喪失という経営上の致命的な問題があります。顧客ニーズの変化や新技術の台頭に対して迅速に対応できなければ、市場でのポジションを失うリスクが高まります。

組織硬直化がもたらす弊害

組織硬直化の影響は、単なる業績の一時的な悪化にとどまりません。最も深刻なのは、社員の成長機会が奪われることです。挑戦的な業務に関わる機会が減少し、ルーティンワークに終始する環境では、個人のスキル向上も組織の競争力強化も望めません。

さらに問題なのは、優秀な人材ほど早期に離職するという現象です。意欲的な社員が次々と退職し、変化を好まない人材のみが残ることで、硬直化はより一層進行します。この状態が長期化すると、組織は外部環境の変化への適応力が著しく低下してしまうのです。

組織硬直化が起こる根本的な原因

組織硬直化は一夜にして起こるものではなく、日々の業務の中で少しずつ進行していきます。

ここでは、組織硬直化を引き起こす根本的な原因を3つの視点から解説します。

情報の属人化と知識共有の機能不全

組織が成長する過程で、特定の業務や知識が一部の社員に集中する現象が起こります。「この件は○○さんに聞けばわかる」という状態が常態化すると、組織全体の業務遂行力が特定個人に依存してしまうのです。

この問題の本質は、知識やノウハウが組織の資産として蓄積されず、個人の頭の中にのみ存在することにあります。担当者が不在の際に業務が停滞したり、後任への引き継ぎに膨大な時間を要したりする事態が頻発します。

さらに深刻なのは、属人化した業務は改善の対象になりにくいという点です。「担当者がいないと分からない」ため、業務プロセスの見直しや効率化の議論自体が進まなくなります。情報が組織内で円滑に流通しない環境では、変化への対応力が著しく低下するのです。

過度なルールと規則による現場の柔軟性喪失

組織におけるルールや規則は本来、業務を円滑に進めるために必要なものです。しかし、過剰に厳格化されると、現場の柔軟性が失われてしまいます。

これはいわゆる「大企業病」としてよく取り上げられる問題であり、承認プロセスが複雑化しすぎて意思決定ができない状態を招きます。

社員は「動きたくても動けない」と感じ、主体性やモチベーションが低下していきます。

この状態は組織の停滞を招くだけではなく、変化や挑戦を恐れる組織風土を生み出してしまうのです。

評価制度の硬直性がもたらす挑戦回避

年功序列を基本とする評価制度や、減点主義的な人事評価は、社員の挑戦意欲を減退させます。新たな取り組みで失敗すれば評価が下がる一方、現状維持であれば安定的な評価が得られる環境では、誰もリスクを取ろうとしません。

この構造は、特に中堅層以上の社員に強く作用します。一定のポジションを築いた社員ほど、失うものが大きいと感じるため、保守的な行動を選択するようになります。若手社員が革新的なアイデアを提案しても、中間管理職の段階で「リスクが高い」と却下されるケースが繰り返されます。組織全体として、失敗を恐れる風土が根付き、現状維持が最優先される状況に陥るのです。評価制度が変化を阻害する仕組みとして機能してしまうことで、組織の硬直化はさらに進行します。

組織硬直化を解消する具体的な施策

組織硬直化を解消するには、原因に応じた具体的な施策が必要です。ここでは、実践可能な3つのアプローチを紹介します。

各施策は、まず小規模な部門で試行し、効果を検証してから全社展開するなど、段階的に導入することで、組織に無理なく浸透させることができるでしょう。

属人化を起こさない情報共有の仕組みづくり

特定の社員に業務知識が集中する属人化を防ぐには、組織全体で情報を共有する仕組みが不可欠です。業務の進め方やノウハウを可視化し、誰もがアクセスできる状態にすることで、組織の柔軟性が高まります。

実務面では、業務マニュアルのデジタル化や、ナレッジベースの構築が有効です。たとえば、社内Wikiツールを導入し、各業務の手順・判断基準・過去のトラブル対応事例を蓄積することで、担当者以外でも同等の対応が可能になります。

そのためにも担当者が不在でも業務が滞らないよう、手順書や判断基準を文書化し、定期的に更新する体制を整えましょう。オンラインツールを活用すれば、部門を超えた情報共有が可能になり、組織全体の知識レベルが底上げされます。

TUNAGを活用すれば、部門を超えた情報共有やコミュニケーションを円滑に進められます。制度の運用状況を可視化し、社員同士のつながりを強化することで、属人化を防ぐ組織づくりをサポートします。

TUNAG(ツナグ)

現場の声を生かす柔軟なルール運用とマニュアル改定

必要なルールと不要なルールを定期的に精査し、見直すことも重要です。組織にルールや規則が多すぎると、現場が動きづらくなり、社員の主体性が失われます。

マニュアルが古く、長年変更されていない場合は、積極的に更新しましょう。業務の標準化は重要ですが、マニュアル通りにしか動けない組織では、イノベーションは生まれません。

現場の声を取り入れながら、柔軟にルールやマニュアルを整備することで、社員が自主的に行動しやすい環境を整えられます。

挑戦を評価する人事制度への転換

硬直化を解消するには、新たな取り組みを積極的に評価する人事制度が求められます。失敗を許容し、挑戦そのものを評価する環境を整えることで、社員の行動が変わります。

具体的には、成果だけでなくプロセスを評価する仕組みの導入、挑戦的な目標設定を促す評価項目の追加、失敗から学んだ知見を組織で共有する場の設定などが効果的です。

経営層が率先して「挑戦する姿勢」を示し、失敗事例を建設的に振り返る文化を醸成することが重要です。若手社員に裁量権を与え、小規模なプロジェクトから主体的に取り組める機会を提供することで、組織全体の挑戦意欲が高まるでしょう。

変化に強い柔軟な組織をつくるために

組織硬直化は、成長に伴う自然な現象として発生します。しかし、原因を正しく理解し適切な対策を講じることで、変化に強く活力ある組織へと変革することは可能です。

組織硬直化の解消は、経営層から現場社員まで組織全体が協力して取り組むべき課題です。情報共有の仕組みづくり、柔軟なルール運用、挑戦を評価する人事制度を組み合わせることで、変化に強い組織文化を築くことができるでしょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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