パルスサーベイを導入したものの、集まったデータをどう活用すればよいのか分からない。スコアを報告するだけで、職場には何の変化も起きていない。このような状態が続けば、パルスサーベイに意味がないと感じるのも無理はありません。しかし、パルスサーベイそのものに効果がないわけではありません。十分な成果が出ない場合、調査の目的や質問内容、実施頻度、結果の活用方法といった運用設計に原因があります。
本記事では、パルスサーベイが形骸化する五つの原因を解説します。調査を意味のあるものに変え、離職防止や職場環境の改善につなげる方法も紹介します。
パルスサーベイが機能していない企業には、いくつかの共通点があります。まずは、自社の運用に当てはまるものがないか確認しましょう。
パルスサーベイの意味がない状態になる原因として多いのが、調査を実施すること自体が目的になっているケースです。
導入当初は、組織の状態を把握し、離職防止や職場環境の改善につなげる目的があったはずです。しかし運用を続けるうちに、「期限までに配信する」「回答率を上げる」「集計レポートを作る」といった作業が中心になります。
その結果、データは蓄積されても、具体的な施策には結びつきません。従業員から見れば、何度回答しても職場が変わらないため、「答えても意味がない調査」になってしまいます。
毎回同じ設問を並べていることも、パルスサーベイが形骸化する原因になります。
パルスサーベイは、短い間隔で繰り返し実施する調査です。設問が毎回まったく同じだと、従業員は内容を十分に読まないまま、前回と同じ選択肢を選ぶようになります。
惰性による回答が増えると、スコアは安定しているように見えます。しかし実際には、従業員の状態を反映していません。
パルスサーベイの実施頻度が高すぎると、従業員の負担になります。
毎週のように多くの設問への回答を求められれば、本来の業務を中断しなければなりません。調査の目的や結果の活用方法が伝わっていなければ、負担感はさらに強まります。
負担感が高まると、回答率が低下します。設問をよく読まずに回答する人も増えます。回答者が一部に偏れば、調査結果の信頼性も下がります。
大切なのは、頻度を高くすることではありません。組織の変化を捉え、改善行動を起こせる間隔で実施することです。
次のような状況では、率直な回答を期待できません。
特に、上司との関係や評価への不満、退職意向などの設問では、従業員が不利益を恐れて無難な選択肢を選びます。その結果、実際よりも良いスコアが出て、組織の問題を見逃してしまいます。
パルスサーベイで確認できるのは、スコアの変化までです。数値だけで原因を決めつける運用になっていると、実態と合わない施策を打つことになります。
例えば、「上司から十分な支援を受けている」という設問のスコアが低下したとします。しかし数値だけでは、対話の回数が少ないのか、業務上の指示が不明確なのか、評価への不満があるのかまでは分かりません。
定量データだけで結論を出さず、従業員との対話から得られる定性情報を組み合わせましょう。
形骸化の原因を把握したら、調査の目的、設問、回答負担と頻度、匿名性の順に見直します。ここでは、次回の調査から取り入れられる改善方法を紹介します。
最初に取り組むべきなのは、パルスサーベイを通じて解決したい組織課題を明確にすることです。
厚生労働省の支援マニュアルも、アンケートの実施準備の第一歩として、何のために調査を行うのかを担当者のなかで明確にするよう求めています。
自社が抱えている課題から逆算し、調査の目的を設定します。例えば、次のような目的が考えられます。
目的が明確になれば、必要な設問や分析方法、調査後に取るべき行動も決めやすくなります。
目的を決めたら、その目的に直接関係する設問だけを選びます。
一般的なテンプレートに含まれているという理由だけで質問を増やしても、自社の課題解決には役立ちません。「参考になりそうだから聞いておく」と設問を追加すると、結果を活用できない項目が増えてしまいます。
設問は、従業員が意味を理解できる表現にすることも大切です。
例えば、「組織から十分な支援を受けている」という抽象的な表現よりも、「仕事で困ったときに、上司や同僚へ相談できる」とした方が、回答者が具体的な場面を想像しやすくなります。誰が読んでも同じ意味に受け取れる設問を用意しましょう。
毎回すべての設問を変える必要はありません。継続して推移を追う固定設問と、そのときの関心に応じて入れ替える変動設問に分けます。
固定設問は、目的に直結する数問に絞ります。変動設問では、直近の制度変更や繁忙期の状況など、いま確認したい内容を尋ねます。
入れ替えを前提にすれば、設問を増やしたいという要望が出ても、総量を増やさずに対応できます。
設問数と実施頻度は、切り離さずにセットで決めます。
参考になるのが、厚生労働省の委託調査です。短いスパンで実施するアンケート調査を行っている企業は74社でした。そのうち43.2%が、設問数を10問以下としています。
一方、実施頻度は分散しています。1年に1回が29.7%、1か月に1回以上が25.7%、四半期ごとが14.9%でした。短いスパンの調査を実施する企業自体も全体の3.1%にとどまり、標準的な運用は確立していません。間隔の決め方は、各社の判断に委ねられているのが実態です。
出典:「令和6年度働く人のワークエンゲージメントの向上に向けた支援事業」企業アンケート調査報告書
頻度は、高くすること自体が目的ではありません。次の調査までに改善行動を起こせる間隔かどうかで判断します。回答率が回を追うごとに下がる、未回答者への催促が必要になるといった兆候が出たら、設問数か頻度が過大になっているサインです。
率直な回答を得るには、回答が個人に結びつかない仕組みと、その説明の両方が必要です。
厚生労働省の支援マニュアルは、調査を案内する際に伝える内容を示しています。結果の共有は匿名で行うこと、または個人の回答が直属の上司に開示されないことです。あわせて、働く環境をよくするために率直に回答してほしいというメッセージを添えるよう求めています。
少人数の部署では、属性別の集計によって回答者を推測されます。一定数に満たない組織は結果を表示しない設定にするなど、集計単位にも配慮しましょう。
パルスサーベイの成果は、回答を集めた後の行動によって決まります。結果を分析し、背景を確認したうえで改善策を実行し、その内容を従業員へ伝える必要があります。
ここでは、四つのステップと、それを継続するための体制づくりを解説します。
パルスサーベイの強みは、同じ項目を継続的に測定し、変化を捉えられる点にあります。他社の平均値や一時点の絶対値だけでなく、自社のスコアの推移を確認しましょう。
厚生労働省の委託調査でも、アンケート結果の活用方法として最も多いのは経年変化の追跡でした。55.8%の企業が挙げています。
出典:「令和6年度働く人のワークエンゲージメントの向上に向けた支援事業」企業アンケート調査報告書
このとき、「部署」「階層」「年齢」「職種」「勤続年数」などのグループに分類します。課題のある組織や従業員層を把握しやすくなります。
分析の切り口を毎回大きく変えると、過去との比較が難しくなります。基本となる分析軸を決め、継続して推移を追いましょう。
なお、スコアの上下に一喜一憂する必要はありません。同省の支援マニュアルも、取組の効果が数値に現れるまでに時間がかかることを指摘しています。組織変更や繁忙期といった別の要因が影響する点にも触れています。
スコアが低下した原因は、数値だけでは分かりません。1on1やチームミーティングなどの対話を通じて、背景を確認します。
「最近、仕事を進めるうえで困っていることはないか」「業務量や役割に変化はあったか」など、日常の業務状況から自然に話を聞きましょう。
匿名で実施している場合は、誰がどう回答したかを推測しないことが前提です。個人の回答ではなく、部署全体の傾向を出発点として対話します。
調査と対話によって課題が明らかになったら、具体的な対策を決めます。
すべての課題を一度に解決する必要はありません。離職につながる可能性が高いもの、影響を受ける従業員が多いもの、短期間で改善できるものから優先順位をつけます。
例えば、複数の部署で業務負荷が高まっている場合は、全社的な業務プロセスや人員配置を見直します。一方、特定部署で上司との対話に関するスコアが低い場合は、その部署の管理職への支援を優先します。
大規模な制度変更だけが改善策ではありません。会議の時間を短くする、業務の割り振りを見直す、1on1の頻度を変更するなど、小さな改善から始めることも有効です。
パルスサーベイを継続するうえで重要なのが、調査結果とその後の対応を従業員へ共有することです。
人事や経営層が裏側で施策を検討していても、その内容が伝わらなければ、従業員には変化が見えません。フィードバックでは、次の三点を伝えましょう。
社内ポータルや社内報、全社会議、朝礼など、既存の情報共有手段を活用すれば、運用負担を抑えられます。
パルスサーベイを継続的な組織改善につなげるには、特定の担当者の意欲だけに依存しない体制が必要です。
調査の配信、集計、分析、対策の立案、現場での実行を一人で担当すれば、運用は止まりやすくなります。体制づくりでは、次の点を押さえましょう。
人事部門だけでは、組織課題を解決できません。経営層が改善の必要性を示し、管理職が現場で行動する仕組みが必要です。
調査、分析、施策の実行、情報共有を別々のツールで行うと、管理の手間が増えます。運用の流れと役割を業務として定着させ、定型作業を減らせば、担当者が交代しても調査と改善を継続できます。
パルスサーベイが「意味ない」といわれる主な原因は、調査そのものではなく、目的や設問、頻度、結果の活用方法にあります。
調査を実施してスコアを集計するだけでは、職場は変わりません。解決したい組織課題を明確にし、目的に合った設問を設定します。さらに、結果の分析、対話による原因の確認、改善策の実行、従業員へのフィードバックまで行う必要があります。
大切なのは、「調査する」「変化を発見する」「原因を確認する」「対策を実行する」「結果を共有する」という流れです。これを継続できれば、パルスサーベイは組織の変化を早期に捉える手段になります。
一方で、パルスサーベイが得意とするのは、短い間隔で状態の変化を追うことです。組織単位の課題を特定し、優先順位を決めて施策に落とし込む場面では、設計の異なる調査が向いています。半年に1回や年1回の頻度で、組織の状態を多角的に測る組織サーベイです。
エンゲージメントサーベイ「TERAS」は、この組織サーベイにあたります。個人のモチベーションではなく、組織単位のエンゲージメントスコアを診断します。エンゲージメントに影響する八つのカテゴリーで結果を解析するため、どの領域に課題があるかを特定できます。
回答者の負担も抑えられています。実施は半年に1回、回答時間は5分程度です。ログインの手続きは不要で、スマートフォンからも回答できます。回答は完全匿名のため、忖度のない回答を引き出せます。
本記事で述べたとおり、調査は実施するだけでは組織を変えません。TERASは、1,400社以上の組織改善を支援してきた実績をもとに、診断結果に応じた改善施策の提案まで行っています。
パルスサーベイで日々の変化を捉え、組織サーベイで課題の構造を把握する。この組み合わせが、調査を施策へつなげる近道です。従業員の声を具体的な行動へ変え、その結果を伝えることが、回答され続ける調査とより良い組織づくりにつながります。
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