組織改善の進め方は?事例やフレームワークをもとに組織活性化の施策を紹介
組織改善は、企業の持続的な成長や競争力を高めるための不可欠な取り組みとなっています。
しかし、具体的にどのような手法やフレームワークを用いるのか、どのようなステップで進めるのか、そして社内制度との関連性はどのようなものなのか、多くの経営者やリーダーが抱える疑問です。
この記事では、「組織改善に取り組むうえで知っておくべきこと」をテーマに、組織改善の基本から社内制度の活性化まで、幅広く解説していきます。組織のさらなる発展を目指すすべての方に、ぜひ参考にしていただきたい内容となっています。
組織改善とは
組織改善とは、組織の仕組みや構造、役割、運用方法を見直し、最適化する取り組みのことです。この取り組みは、業績向上や企業の持続的な成長を目指す上での重要なステップとなり、組織改善は従業員の生産性やモチベーションの向上にも寄与すると言われています。
組織改善は、組織が持つ力を最大限に発揮し、事業の成果につなげることを目的としています。
これまで日本の企業は終身雇用が主でしたが、近年の転職市場の活性化により組織内に流動性が生まれています。しかし、せっかく優秀な人材が入社しても、その能力を活かしきれていない組織は少なくありません。
組織改善では組織内で方針を決め、組織力を十分に発揮するために自分たちができることをすべての社員に認識してもらうことで実行に落とし込みます。
組織改善が注目されている背景
終身雇用制度が徐々になくなっていく中で、働き手の価値観にも変化が生じています。人材の流動が活発になるにつれ、新卒、中途など採用のタイミングが多様化し、性別や年齢、国籍もさまざまな社員が一緒に働くようになりました。
組織の構成が変化するに伴って、多くの企業で「昇進ポストが空かない」「給料が上がらない」といった問題が表出しています。そんな中、誰かの手を借りるのではなく、組織の内部の人とたちが問題を自分ごとととらえ解決するという組織改善の考え方が注目され始めたのです。
組織改善と組織開発の違い
組織改善と似た言葉で、"組織開発"があります。
組織改善は「既存のプロセスや構造の最適化」、組織開発は「組織全体の変革や成長を促進するための戦略的取り組み」です。
経済産業省が主催した「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」の中で、組織開発は次のように定義されています。
組織内の明示的/暗黙的な行動規範や価値観等に意識的・計画的に働きかけることで、個々の構成員の組織への信頼・貢献意欲や組織内の関係性を強化し、組織としてのアウトプットの質の向上や必要な人材の確保・リテンションを図るための一連の活動
かみ砕いて言うと、組織開発とは組織をより良くするために、社内で抱えている問題を洗い出し、行動科学の理論を用いて当事者たちで解決策を考え実行するプロセスのことです。1950年代後半にアメリカで提唱された組織開発の考え方は、その後欧米で発展。近年、日本でも注目されるようになりました。英語では「Organization Development」、略して「OD」と呼ぶこともあります。
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組織改善のフレームワーク
組織改善のフレームワークをいくつか紹介します。現在の組織の状況を把握し、よりフィットする手法を選びましょう。
クルト・レヴィンの組織変革の3フェーズ
「社会心理学の父」と称されるクルト・レヴィンは、組織変革のシンプルで効果的な3つのフェーズを提案しました。このフレームワークは、現代の組織変革の現場でも広く採用されています。
- 解凍 - 既存の組織文化や価値観を疑問視し、変革の土壌を整える。
- 変革 - 新しい方法や価値観を導入し、組織の再構築を進める。
- 再凍結 - 新しい方法や価値観を組織文化として確立し、持続可能にする。
このアプローチは、「スクラップ・アンド・ビルド」の考え方とも共鳴するものです。
ジョン・コッターの8ステップ組織変革モデル
ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授で、リーダーシップの権威、ジョン・コッターは、変革を成功させるための8ステップのモデルを提案しています。
- 危機意識を高める - 組織の変革の必要性を認識させる。
- 変革推進チームの構築 - 変革を牽引するコアチームを結成する。
- ビジョンの策定 - 明確な変革の方向性を示す。
- ビジョンの共有 - 全従業員に変革のビジョンを伝え、理解させる。
- 自走の促進 - 従業員の自主的な行動を奨励する。
- 短期的な成果の実現 - 早期の成功体験を通じて、変革の動力を増強する。
- 継続的な変革の推進 - 初期の成功を基に、さらなる改善を進める。
- 変革の定着 - 新しい方法や価値観を組織の核として確立する。
コッターは、これらのステップを順序正しく、一つも欠かさずに実行することの重要性を強調しています。変革をリードするための不可欠なガイドラインと言えるでしょう。
コーチング
コーチングとは、相手の話を聞いたり観察したりすることで、相手の内面にある解決策を引き出すことを言います。
よく似た概念にティーチングがありますが、ティーチングは伝える側が答えを持つという考え方である点でコーチングとは異なります。
コーチングはティーチングに比べ、コミュニケーションが活性化しやすいことから組織改善に向いています。
ワールドカフェ
ワールドカフェとは、カフェのようにリラックスした雰囲気の中で、参加者を4〜5人のグループに分けて自由に対話を行う手法です。一定時間が過ぎたらメンバーをシャッフルし、なるべくたくさんの人と対話を行います。
会議で意見がいいにくい雰囲気であったり、上下関係で分け隔てなくフラットな意見がほしかったり、活発に意見を交わしたかったりする場合にフィットするフレームワークです。
グループを少人数にわければ、参加者が何人になっても実施が可能です。
AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)
AIとは、Appreciative Inquiryの略で、それぞれ「Appreciative=価値が分かる」「Inquiry=探求」を意味します。その名のとおり、探求や質問を投げかけることによって個人や組織の価値を認めていく手法です。
具体的には、質問をとおして自分の強みや情熱を引き出して気づきを得たり、組織の将来あるべき姿を共有してアクションプランを作成したりといった結果に結びつけます。
組織改善DXツールなら『TUNAG』
1)会社やトップからの情報発信
経営陣が考えていること、会社の課題やビジョンなど、トップからのメッセージを発信する例です。代表が日々考えていることや会社の方向性などをコラムとして発信したりするケースが多くありますが、これまで「メール」で配信しても返信が無かったりと、反応が得ることが難しかったのではないでしょうか。 TUNAGでは、「既読数」を把握したり、気軽にコメントやスタンプなどを送るなどのSNSとして使いやすいという利点があり、メッセージの浸透に貢献しています。 拠点が離れていたり普段頻繁にコミュニケーションが取れなくても、TUNAGを通してダイレクトに発信することができます。言葉や結果だけでなく、意図や背景までも含めて伝達できることがメリットです。 ビジョンや理念に触れる回数が増えることで必然的に浸透が進み、意思統一や意識レベルの向上を促します。加えて過去の発信を確認したり、新しく入社された方も閲覧できることで、早期立ち上がりに大きく寄与します。2)コミュニケーションが発生する活用事例「サンクスメッセージ」
日々の行動の中で感謝や称賛を送り合うサンクスメッセージを通して、個人の行動にフォーカスすることでコミュニケーションを生み出しています。 普段面と向かって感謝を伝えられない事や照れてしまう事、改めて感謝を伝えたい事などをピックアップし皆に共有することで当人同士のコミュニケーションだけでなく、多方面でのコミュニケーションのきっかけを生み出しています。3)社内の情報共有が促進される活用事例
個人毎やチーム毎の日々の成功体験やノウハウの共有、課題や困りごとへのアドバイスなどをリアルタイムに共有することが可能です。 上司・部下や部署内での情報共有だけでなく、部署の垣根を超えた情報共有も可能で、横断的な会社の動きを見える化することでより一層の連携や新たな気づきを得るきっかけにつながります。4)プロフィール機能の活用事例
TUNAGには、マイページにプロフィール機能があります。趣味や特技、好きな音楽などのカジュアルなものから、学歴や職歴、受賞歴まで幅広く個人の人となりを把握することができます。(プロフィール項目は会社によって自由に設定できます) プロフィールをきっかけに思わぬ共通点を見つけて会話したり、部署移動後の同僚が一目でわかるので溶け込みやすい効果もあります。またタレントマネジメントなどの人材管理にも活用可能です。 組織改善を検討中の方は、ぜひTUNAGの公式ページ/をご覧ください。組織を活性化するにはどうすればいい?
組織改善の目的は、「組織が持つ力を最大限に発揮し、事業の成果につなげること」です。
組織が力を発揮して事業成果を上げるためには、市場の変化に柔軟に適応していく必要があります。そうした柔軟で強い組織づくりを実現するには、どうしたらよいのでしょうか。
それは、社員のエンゲージメントを高めることです。社員が自分の会社に愛着と信頼を寄せることで、自社のミッション・バリュー・ビジョンを理解し、事業成長に向けて意欲的に取り組むことができるようになります。
その結果、生産性の高い強い組織がつくられていきます
TUNAGなら社内施策を企画・運用から効果検証を素早く行えます
社員のエンゲージメントを高めるためには、社員が「やりがい」を持てるよう促す取り組みをしたり、労働条件の改善を行ったりする方法があります。
また、ITツールを導入するのも1つの手段です。弊社が提供する『TUNAG』は、組織課題に対する解決策を「社内制度」として設計し、プラットフォームで運用します。
企業や組織の課題を抽出し、施策の設計から運用支援までを一貫して行うことで、効果検証を素早く行うことが可能です。
これは、実際によく利用する社内制度をまとめた一覧になります。私たちは、「会社や組織単位で取り組まれている施策」を総称して、「社内制度」と呼んでいます。
金銭的な補助を目的としたものから、コミュニケーションやナレッジ共有を目的としたもの、健康や働きやすさを狙ったものまで、広い範囲で実施されているのがわかると思います。
現在、TUANGで取り扱う社内制度は2,500以上にもなり、その一つひとつを担当がサポートをしています。
組織改善になぜ「社内制度」が重要なのか
まずは、なぜ社内制度を重要視しているのかについてです。大きなポイントは2つです。
1.習慣化をすることができる
2.組織を横断して実施することができる
習慣化をすることができる
習慣化は、エンゲージメントを高める上で重要です。信頼関係構築するプロセスについては以前のコラムにて起点をつくり、そこからのサイクルを継続的に繰り返していくことが必要だと紹介しました。
まさにこの「サイクルを回し続けていくこと」がポイントとなります。その上で「社内制度」という建付が、習慣化をさせる上でうってつけなのです。
一般的に社内SNSの利用は2割程度だと言われています。これは組織における「2:6:2理論」ともリンクするのですが、SNSという特性上では意欲的な層にあたる2割しか自発的には動きません。
これは身近なSNSでも同じこととも言えます。Facebook等でも定期的に投稿しているのは友達の中でも良くて2割位ではないでしょうか。
これが社内制度という建付を用意することで、実施する“理由”を生み出すことができます。我々はこれを「マイルドな強制力」と呼んでいるのですが、自発的に取り組みをさせるための仕掛けが社内制度には含まれています。
・社内制度なので、むしろ「利用しないといけない」という思考になる
・人事や組織開発の担当が促進しやすい
このような効果を社内制度という性質上つくりだすことができるため、習慣化もさせやすくなるのです。
組織を横断して実施することができる
これも大きなポイントです。会社では、事業部や部署単位、チーム単位で組織が動きます。このような中で会社の課題を解決したいと思った場合、組織一つひとつに働きかけるのは現実的ではありません。会社という広い視点かつ、組織を“横断”してできる取り組みは「社内制度」以外には無いのではないでしょうか。
TUNAGでは10名程度の企業から6,000名超える企業まで幅広く活用していただいていますが、組織人数が多くなればなるほどTUNAGの運用難易度が上がります。実際、しっかりと社内制度が機能している状態をつくることに多くの企業は苦戦をし、徐々にその取り組みに挫折し、形骸化してしまっていることが多いです。
そのような実行の難しさはあるものの、組織を横断してできる施策としては、 「社内制度」が最適だといえます。(※だからこそ、この「実行」に、私たちTUNAGの担当ががっつりと関わらせていただいています。)
社内制度を活性化させるための「3つのポイント」
社内制度を活性化させることがTUNAGにとっては重要なミッションであり、エンゲージメント経営を実現するための正攻法になります。しかし、この活性化が非常に難しいのです。
みなさんが働く会社で、採用サイトやリリース、社内のメール等で「新しい制度がスタートします!」と告知されることはよくあると思いますが、その後どうなっているか把握していますか?もし、ここで「あれどうなってるんだろう」と思う制度が1つでもあれば、見直すべきです。
ここでは、弊社担当が社内制度を企画・設計・運用する上で、とても大事にしているポイントを紹介します。たった3つですが、ここを外すと社内制度は全く効果を発揮しません。
1.会社の「今」にあっているか
1つめは、「会社の“今”にあっているか」ということです。社内制度を実施する場合、会社には大なり小なり課題や対処したい問題があります。それらが改善された際に「組織がどんな姿になっているべきなのか、そのビジョンをまずは設定することから始まります。
ここが抜け落ちしていまうと、「なぜやるか?」を説明できず、従業員の理解は進みません。結果、お飾りの社内制度になりがちです。ビジョンが決まればあとは「今」 の状態から逆算をして目標を決めていきます。「今」の状態を見定めるには、上記の通り3つの項目がオススメです。
リアルな現状の組織の動き、そして会社内でのトレンドや共通項、そして他社の事例から状態把握をしていき、実際に実行する社内制度の選定をしていきます。
弊社のコンサルタントはクライアントが実施したい社内制度に対して、これらのポイントでヒアリングを重ねていきます。これらのポイントを抑え、社内制度を通じてなりたいビジョンが明確に見えるような社内制度をご提案し、実行していきます。
逆に、この段階でビジョンが見えなかったり、会社の今の状態に即していないなと感じる場合は、社内制度の実行を反対しています。実行しても失敗する確率が高いからです。
2.利用されやすい制度になっているか
ここでは事例をひとつご紹介します。
ある企業でエンタメ補助という福利厚生の社内制度を運用していました。今のトレンドに敏感になり事業に活かすための自己研鑽を目的とするものでした。課題点は利用率の低さで、社員のほんの数パーセントしか利用していない状況でした。
利用率をあげるという観点で、対象を映画に絞る改善を実行しました。そうすると利用率が4倍に増加して多くの社員が利用する社内制度となりました。このケースの場合、制度企画側の思いとは真逆に社員からすると制度利用を躊躇する明確な理由があったのです。
それは「利用範囲」の問題です。エンターテイメントに関するものなら利用がOKとされていたのは幅広い分野で利用して欲しいという意図がありました。ただその「幅広さ」が利用側からすると「迷い」になっていたのです。
これはエンターテイメントに該当するのか?基準やラインがわからない。わからないから、利用しない方がいいかも……。このようなスパイラルになってしまっていました。制度の利用条件に柔軟性を持たせたことが、逆に作用してしまったケースです。
「利用のイメージを持たせる」、「明確にする」ということは、社内制度設計の鉄則です。企画時点で「みんなが使いやすそう」と、利用者の最大公約数を狙いに行くと失敗してしまいます。そのような幅を持たせることは企画側の妄想なんですよね。
制度の設計段階で利用イメージをしっかり持ち、使う側にどのような体験をしてもらうかが明確になっていなければ、社内制度は利用されません。
3.数値で分析・改善できているか
3つめは、運用改善フェーズで重要なポイントです。
マーケティング業務であれば、広告宣伝に対して数値で分析・改善しないと仕事にはなりません。広告を投じたのであれば、その効果検証を出すことは必須のプロセスです。
このように、多くの企業は広告宣伝にかかる費用には必死に数値分析や改善活動をして、事業成長を目指しているにも関わらず、インナーマーケティングにあたる社内制度になった途端にざっくりとアバウトに運用してしまうことがほとんどです。
社内制度の利用実績や利用者の傾向分析は疎か、「会社に何の制度があるのか」すら把握していないという状況も少なくはありません。
そもそも、その観点で社内制度を設定していないことが問題点ですよね。社内制度自体を企画するだけに留まっている(満足している)か、採用上の差別化ポイント(採用ブランディングの側面)として採用サイトに載せるためだけに企画されているか、どちらかが原因でしょう。だから社内制度が活性化しないのです。
社内制度の地道な見直しで業績向上
今回3つのポイントを紹介しました。どれも目新しいことではなく、基本的なことです。しかし、実行にうつすのは非常に難しく、実際にこの3つのポイントを抑えて運用できている企業はほとんどありません。
やはり、それだけ組織全体を巻き込む「社内制度」だからこその難しさがありますし、影響範囲が大きいからこそ実行する運営者の実行力も重要です。
上手く運用している企業を見ると、人的なリソースをしっかりと投じて運営をしていたり、細々した改善や振り返りなどの作業、地道な集計をしたりしています。まだまだこの分野でのIT化は進んでおらず、むしろアナログな運用管理体制が主流なのが現状だと感じています。
私たちが提供するTUNAGは、そのような実行を支援しておりますが、次回は、そんなアナログな体制を脱却するためにTUNAGが果たしている、ITツールとしての役割のご紹介をしていきたいと思います。
採用活動における組織改善の事例
よく聞く、「採用」が先か、「組織づくり」が先か問題
多くの企業から“採用”についての話を伺います。総じて、『採用が追いついていなく、人員が足りない』という課題です。
特に、成長企業では必ずと言っていいほど話題に出てきていますね。
また、採用競争の激化で採用費が高騰していることで、リファラル制度の仕組みの相談を受けるケースも当たり前になってきました。
確かに、需要と供給のバランスがそのまま採用費の増加に拍車をかけていますので、リファラル採用は採用媒体や人材紹介会社と比較するとコスト面でも利点があります。カルチャーマッチングも高いですし、良い面ばかりなのですが...…。
リファラル採用の成功事例を作るには時間と仕組み作りが必要で、「よし、早速明日から」とは、なかなかなりにくいものです。
採用についての話題が尽きない中で、一方で「離職率もそれなりにあり、一定の層においては定着率が悪い」という声もよくいただいています。
しかしながら、採用にばかり目がいきがちで、定着への施策が遅れていることがほとんどではないかと感じています。
入口でなく、出口から考えてみる
定着への施策の遅れ、という意味では、切り離せないのは“退職”との向き合い方です。
退職理由を人事の方が面談する会社も多くあると思いますが、個人的にはこのような面談は形式的なものになりがちで、退職理由を追求することにはあまり意味がないと思っているんですよね。
「本当に辞めたくて辞める社員」って、実はとても少ないと思うからです。
これだけ情報が飽和している時代、応募者は採用媒体なり口コミサイトなりでそれなりに時間をかけて企業情報をリサーチしていたでしょうし、履歴書を書いたり、職務経歴書を書いたり、面接に足を運んだりと多くの時間を投資しています。
紹介会社を利用した場合であれば、プロのアドバイスを元に検討したことでしょう。
そのようなそれぞれのストーリーがあって、やっと巡り合った会社なんですから。
売り手市場とはいえ、順風満帆に就職活動をしたわけでなく、悩んで考えて様々な想いを持って“選択をした会社”だったはずです。
それにも関わらず、自ら退職を選ぶことを“ミスマッチ”と言って片づけてしまえばそれまでのことなのかもしれません……。しかし、防げたことも往々にしてあるはずです。
これだけ、採用が激化しているマーケットで。そして採用費も高騰している状況下で。
採用という“入口”への関心以上に、退職という“出口”への施策を打つ企業はどれぐらいあるのでしょうか。
せっかく入口の門戸を広げて、採用を強化しても、全体の底上げにならず現状維持がやっとで、退職という出口からどんどん人が出ていき、むしろ全体として低下していることもあるのではないでしょうか。
離職までのストーリーを紐解いてみると、結論、コミュニケーションの課題にたどり着きます。
コミュニケーションが円滑にいかないが故に、人間関係・やりがい低下などの問題を招いています。
待遇や福利厚生が退職理由の上位に挙げられますが、それはある程度事前把握できる内容もあるため、建前的で本質ではないと思っています。
本質的な施策としては、社内に価値のあるコミュニケーションを生み出すしか方法はないと思っています。
当たり前だが、知ることからはじめてみる
では、どのように改善していくか。
当たり前ですが、社員同士がお互いを知ることからはじめてみることが本質的には重要だと思います。
正直『それって重要なことだけど、事業に直結するばかりじゃないし、そもそも自己開示が苦手な人もいるんじゃないか……』なんてことを思ったりしていた過去もありました。
しかし、この仕事を通じて多くの企業の事例を目の当たりにすることで、今はその重要性をとても感じています。
お互いを知るだけで、コミュニケーションコスト問題が解決する
一つの例を紹介します。社内異動がとても多い企業がありました。異動がある度にコミュニケーションコストがかかったり問題が起こったりし、時には退職者が出ることもあったそうです。
そのため、異動者と受入部署へのケアにマネージャーが奔走し、ローテーションを実施していました。
そのループを長らく続けていた層が、一念発起し、取り組んだ施策は、『社員全員のことを知ろう』という施策でした。
自己紹介をはじめとして、拠点間での「普段見えない仕事の様子を見える化する施策」を矢継ぎ早に実施したのです。
すると、今まで顔と名前が一致しなかった他拠点の社員同士がお互いを知り始め、各自の“人となり”も少しずつ見えてくるようになってきたそうです。
「社員同士で知っている情報が多くなり、初対面でもすぐにコミュニケーションがとれるようになった」という事例もありました。
結果として、問題点となっていた異動時のコミュニケーションコストの問題は解消されたとのこと。
さらに、副次的な効果として、拠点間で自然発生的に情報交換や共有が生まれ、事業への直接的な還元もみえたそうです。
“人となり”を知るきっかけを作ること
とはいえ、なかなか普段の業務の中で上記のようなコミュニケーションの場を作っていくことは難しいのも事実です。特に拠点が多ければ多いほどその難易度は上がります。
そのすべてを会社がお膳立てする必要なんてありません。その『きっかけ』になる材料だけ提供していけばいいのです。
朝会で自己紹介コーナーを設けるなどのアナログな施策からスタートしてもいいですし、日々の日報を全体に共有するだけでも効果はあります。
懇親会やシャッフルランチなどの枠組みを社内制度として用意するのもいいですね。
エンゲージメントの観点からすると、「知っている総量」が重要なんです。知っていることが増えれば、自然と『共通項』が見つかってきます。共通項があると、どこか人は安心するんですよね。
出身地が同じとか、同じ大学出身、趣味が一緒など、とにかく共通なものがあると、そこを起点としてコミュニケーションが生まれます。
コミュニケーションが継続的に生まれる状態が続けば、自然と理解や共感が生まれてくるもの。
その「きっかけ」をいかに会社として用意しておくかがポイントなのです。その仕組みさえ作ってしまえば、あとは自走をしていくものです。
実は、このきっかけ作りの場は、少なくなっています。
システム化や効率化などに代表される、生産性を追求する傾向の裏では、従来会社内にあった多くの“きっかけ”が犠牲になっています。
きっかけの場作りは全く目新しいことでもないですし、誰しもが今まで経験したことがあることですよね。
エンゲージメントという言葉を想像すると、近代的で新しい概念のように聞こえてしまいますが、意外と思われるかもしれませんがエンゲージメントを高めるベースは旧来のどこの会社にでもあった『知るきっかけ』にあるんです。
きっかけ作りのプラットフォームとしてTUNAGを使っていただいている企業がほとんどです。そしてそこから多くのコミュニケーションが生まれていて、その集合体がエンゲージメント構築のベースになっています。
組織改善による業績向上を実現するための4ステップ
組織改善を実現するためには、次のようなステップを踏んで着実に実行していきましょう。
STEP1. MVVから組織改善の目的とゴールを設定
組織改善を行ううえでもっとも大切なのは、目的とゴールを設定することです。組織改善はあくまで「手段」です。具体的には、組織の存在理由やありたい姿をMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)で定義し、そこから目的とゴールを議論して設定します。
STEP2. 現状把握のために組織サーベイを実施し課題を抽出
目的とゴールが定まったら、組織が現状どうなっているかを把握します。組織改善を成功させるには、現在起きている問題を正確に認識することが重要です。組織の実情について「なんとなく疲弊している気がする」といった「印象」で捉えるのではなく、正しい「事実」を把握できるよう、社員へのインタビューやアンケートで組織サーベイを実施します。そこで得た情報を整理して、社員同士やグループ内でどんな問題が発生しているかを可視化します。
STEP3. 施策の実行
次に、STEP2で把握した問題を解消するための施策を企画し実行します。このときのポイントは「小さく始める」ことです。まずは範囲を限定して、ワークショップやミーティングを行うとよいでしょう。
適用の範囲を限定しスモールスタートをすることで、「アクションプランの効果が判定しやすい」「成果を上げてフィードバックする過程にスピード感が出せる」などのメリットがあります。
STEP4.効果検証とフィードバック
STEP3で成果が出たら、なぜ成功したか検証とフィードバックを行います。施策を実施したあと必ず検証とフィードバックを行うことで、より適切な打ち手を考え、施策に活かせるようになります。
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堅実な取り組みで組織の活性化を
本記事では、組織改善の基本から社内制度の活性化まで解説しました。
組織改善は、業績向上や企業の成長を目指す上で重要な取り組みです。また、従業員の生産性やモチベーションの向上にもつながるとされています。
組織改善を進める際は、社内制度を重要視しましょう。社内制度は、「習慣化することができる」「組織全体に働きかけることができる」という点で有効的な手段です。しかし、社内制度を活性化させることは組織全体を巻き込んだ取り組みとなるため成果が出るまでに時間がかかります。本記事で紹介したポイントを押さえながら一つひとつステップを踏んで着実に進めていきましょう。