組織文化とは?定義や種類、うまく機能させる方法について解説

「離職率が高い」「部署間の連携がうまくいかない」といった組織課題の根本には、組織文化の問題が潜んでいることがあります。組織文化は目に見えないものですが、企業の業績や従業員の働きがいに大きな影響を与える重要な要素です。本記事では、組織文化の基本的な意味から具体的な形成方法まで、実務に役立つ情報を解説します。

組織文化とは何か

同じような給与水準、同じような福利厚生でも、「働きやすい会社」と「すぐに人が辞める会社」に分かれるのはなぜでしょうか。

その違いを生んでいるのが「組織文化」です。制度や仕組みは真似できても、文化は簡単にコピーできません。だからこそ、組織文化は持続的な競争優位の源泉となるのです。まずは組織文化の定義と基本的な概念を整理していきましょう。

組織文化の基本的な意味

組織文化とは、組織の構成員が共有する価値観、信念、行動規範、思考様式の総体を指します。経営理念やビジョンに基づいて形成され、従業員の日々の行動や意思決定に影響を与えるものです。

例えば、「顧客第一主義」を掲げる企業では、クレーム対応において現場の判断で柔軟に対応することが当たり前とされます。一方、「効率重視」の文化を持つ企業では、マニュアル通りの対応が優先されるでしょう。このように、組織文化は従業員の意思決定や行動の判断基準として機能します。

組織文化は明文化されていないことも多く、新入社員が「この会社ではこうするものだ」と自然に学んでいく過程で受け継がれていきます。

そのため、意図的に形成しなければ、例えば「失敗を報告しにくい雰囲気」や「部署間で協力しない慣習」といった、生産性や離職率に悪影響を与える文化が定着してしまう可能性もあるのです。

組織文化を形成する要素

組織文化は、複数の要素が絡み合って形成されています。主な構成要素として、経営理念やビジョン、創業者や経営陣の価値観、過去の成功体験や失敗体験、業界特性や事業環境、人事制度や評価基準などが挙げられます。

特に重要なのは、経営陣の言動と実際の評価制度の一貫性です。例えば、「チャレンジを奨励する」と掲げながら失敗を厳しく叱責する、「ワークライフバランス重視」と言いながら長時間労働者を評価する、「顧客第一」を謳いながら売上数字だけで評価するといった不一致があると、従業員は本音と建前を見抜き、保守的な行動を選択するようになります。言葉と行動、制度が一致していることが、健全な組織文化の形成には不可欠でしょう。

また、採用方針も組織文化の形成に大きく影響します。例えば、面接で自社のバリューに関する質問を必ず行う、価値観の共有度を採用基準に含める、入社後3ヶ月で文化へのフィット度を評価するといった施策により、自社の価値観に合う人材を採用し続けることで、文化はより強固になっていきます。

組織文化と組織風土・社風の違い

組織文化と似た言葉に「組織風土」や「社風」がありますが、これらには微妙な違いがあります。

意味・定義

具体例

特徴

組織文化

価値観・信念・行動規範など、組織の根本にある考え方

イノベーションを重視する/顧客第一 など

組織の核。長期間で形成され変化しづらい

組織風土

組織文化が表れた雰囲気・環境

自由に意見を言いやすい/失敗を許容する空気 など

組織の雰囲気。文化の影響によって形成される

社風

外部から見た企業の雰囲気・印象

活気がある会社/穏やかな会社 など

組織風土とほぼ同義。外部視点で語られることが多い

社風は組織風土とほぼ同義で使われることが多く、外部から見た企業の雰囲気や特徴を指す場合に用いられます。組織文化を変革したい場合は、まず根本的な価値観から見直す必要があるでしょう。

組織文化の4つのタイプ

組織文化は、競合価値観フレームワークという理論モデルで4つのタイプに分類されます。

タイプ

特徴・定義

向いている組織

ファミリー文化

協調性・人間関係・従業員の成長を重視する文化

従業員満足度を重視したい組織、人材育成に強みを出したい組織

アドホクラシー文化

革新性・創造性を重視し、リスクを取って挑戦する文化

新規事業・スタートアップ・変化の激しい業界

マーケット文化

成果・競争・目標達成を重視し、市場シェア拡大を優先する文化

競争力強化が必要な組織、営業力を求める企業

ヒエラルキー文化

規則・安定性・効率性を重視し、品質管理を徹底する文化

大規模組織、品質管理や統制が重要な企業

自社がどのタイプに当てはまるかを把握することで、強みと課題が見えてきます。また、事業戦略に合わせて目指すべき文化のタイプを選択することも重要でしょう。

組織文化が企業に与える影響やメリットと注意点

組織文化は企業の業績や従業員のモチベーションに大きな影響を与えます。適切に形成された文化は競争力の源泉となりますが、一方で負の側面もあります。ここでは、組織文化がもたらすメリットとデメリットを解説します。

組織文化が与えるメリット

組織文化が適切に機能すると、従業員が自主的に動きやすくなります。例えば、「顧客第一」の文化が浸透している企業では、営業担当者が上司の承認を待たずに顧客要望への対応策を即座に提案できる、クレーム対応で現場判断により柔軟な解決策を提示できるといった状況が生まれます。

また、共通の価値観やコミュニケーション方法を持てることも大きなメリットです。例えば、「スピード重視」という価値観が共有されていれば、営業部門が「急ぎで対応してほしい」と依頼した際に、製造部門も同じ優先度で動ける、会議で「スピード優先で」と言えば詳細な説明なしに方針が伝わるといった効率化が実現します。

組織文化のデメリット(逆機能)

組織文化が長期間にわたり固定化されすぎると、変化への対応力が低下する可能性があります。「今までこうやってきた」という慣習が強すぎて、例えばデジタル化の提案に対して「紙の方が確実」と反対される、新しい営業手法の導入が「従来のやり方で十分」と拒否されるといったケースがあります。

このように、本来プラスに働くはずの文化がマイナスに作用することを「逆機能」と呼びます。

また、組織文化が排他的に機能することもあります。例えば、「体育会系の文化」が強い企業で静かに仕事をしたい社員が居づらくなる、「長時間働くのが当たり前」という文化で時短勤務者が評価されない、「ボトムアップ重視」の文化で指示を求める新人が「主体性がない」と批判されるといった状況が生まれると、多様性が損なわれてしまいます。

多様な視点や発想が失われることで、新規事業の創出や既存事業の改善案が出にくくなり、結果として競争力の低下を招きます。

組織文化を形成・変革する具体的な方法

組織文化は計画的なアプローチで醸成・変革することができます。ここでは、実務で活用できる5つの具体的な方法を紹介します。これらの施策を組み合わせることで、より効果的な文化形成が可能になるでしょう。

従業員アンケートと組織サーベイで現状を可視化する

組織文化を変革する第一歩は、現状を正確に把握することです。従業員アンケートや組織サーベイを実施し、現在の組織文化がどのような状態にあるのかを可視化しましょう。

アンケートでは、「経営理念を日常業務で意識しているか(5段階評価)」「上司に率直に意見を言えるか」「他部署との連携はスムーズか」「失敗を報告しやすい雰囲気があるか」といった具体的な質問項目を設定し、価値観の共有度や職場環境を測定します。

定量的なデータ(スコア)で全体傾向を把握し、定性的なコメント(自由記述)で数字の背景にある具体的な課題を把握することで、「エンゲージメントスコアは高いが、実は特定部署で問題がある」といった実態が明らかになります。

重要なのは、結果を経営陣だけでなく全従業員に共有することです。全社集会での報告、部署別の詳細データの開示、改善アクションプランの策定への従業員参加といった形で透明性を確保することで、「経営陣だけでなく自分たちも変革の主体だ」という当事者意識が生まれるでしょう。

ビジョン・ミッション・バリューを明文化し全社に浸透させる

目指すべき組織文化を形成するには、ビジョン・ミッション・バリューを明文化し、さらにそれを従業員が日々の業務で実践できる具体的な行動指針に落とし込むことが不可欠です。

例えば、「顧客第一」というバリューであれば、営業部門は「顧客の声に24時間以内に返信する」、製造部門は「納期遵守率98%以上を維持する」、人事部門は「社内問い合わせに即日回答する」といったように、各部門で具体的な行動指標に落とし込みます。

浸透させるためには、経営陣が月1回の全社集会、週1回の朝礼、四半期ごとの研修といった複数のチャネルで、具体的なエピソードを交えながらバリューについて語り続けることが大切です。オフィスへの掲示だけでなく、経営陣自身の言葉で繰り返し伝えることで、従業員の記憶と行動に定着していきます。

1on1面談とワークショップで深い対話の場をつくる

組織文化の浸透には、対話の場が欠かせません。1on1面談を定期的に実施し、上司と部下が価値観について語り合う機会を設けましょう。

業務の進捗確認だけでなく、「今月のこの判断は、私たちの『顧客第一』というバリューにどう沿っていたか」「『チャレンジ』のバリューを体現するために、来月はどんな新しい取り組みをしたいか」といった具体的な問いかけを繰り返すことで、価値観が従業員の思考パターンとして内面化されていきます。

また、四半期に1回、各部署から2〜3名ずつ参加する部署横断ワークショップも効果的です。営業・製造・管理部門など異なる立場の従業員10〜15名が集まり、「自社の理想の文化とは何か」「各部署でどんな行動を増やすべきか」を3時間程度議論し、具体的なアクションプランを作成することで、組織全体での共通認識が生まれます。

リーダーが率先して価値観を体現し行動で示す

組織文化の形成において、リーダーの役割は極めて重要です。どれほど立派な理念を掲げても、経営陣やマネージャーの行動が伴わなければ、従業員は「本音と建前が違う」と感じ、理念を真剣に受け止めず、結果として文化は形成されません。

リーダーは日々の意思決定や行動を通じて、価値観を体現する必要があります。例えば、「挑戦を奨励する」と掲げるなら、リーダー自身が新規プロジェクトの提案を積極的に行う、失敗した部下に「次はどう改善する?」と建設的に対話する、自らの失敗事例を全社会議で共有する、といった具体的な行動で姿勢を示すべきです。

バリュー評価を導入し行動指標を評価制度に組み込む

組織文化を定着させるには、評価制度との連動が不可欠です。いくら価値観を語っても、実際の昇進や報酬が業績だけで決まるのであれば、従業員は「結局、数字だけが大事なのか」と受け止め、文化は形骸化してしまいます。バリュー評価を人事評価に組み込み、価値観に沿った行動を正当に評価する仕組みを作りましょう。

具体的には、成果評価とは別にバリュー評価の項目を設け、各バリューに対する行動指標を定義します。例えば、「チームワーク」であれば「他部署との連携プロジェクト数」、「挑戦」であれば「新規施策の提案・実行数」、「顧客第一」であれば「顧客満足度スコア」や「顧客訪問回数」といった測定可能な指標を設定します。

評価結果は昇進や報酬に反映させることで、「本気で大切にしている価値観」であることを示せます。例えば、総合評価の30〜40%をバリュー評価に配分する、管理職昇進の必須要件にバリュー評価で一定以上のスコアを設定するといった形で制度に組み込むことで、組織文化は本物になっていきます。

TUNAGで組織文化の醸成と浸透を加速する

組織文化の形成には、継続的なコミュニケーションと価値観の共有が欠かせません。TUNAGは、そうした取り組みを効率的に支援するツールです。

TUNAGでは、経営理念やバリューの発信、従業員間の称賛、1on1の記録、組織サーベイの実施など、組織文化の醸成に必要な機能が一元管理できます。

その結果、複数のツールを使い分ける手間が省け、人事担当者は施策の実行と効果測定に集中できます。例えば、「顧客第一」のバリューを体現した同僚に対して「サンクスカード」でメッセージと共にポイントを送り合う仕組みを作ることで、月間100件以上の称賛が可視化され、「どんな行動が評価されるのか」が全従業員に共有され、価値観の浸透が加速します。

また、四半期ごとの組織サーベイ機能により、「バリューの認知度」「行動への反映度」「部署別の浸透度」を数値で継続測定できます。例えば「製造部門のスコアが低い」というデータが出れば、その部門向けのワークショップを追加実施するといった、根拠に基づいた改善アクションにより、効果的な組織文化の形成が実現できます。

組織文化の変革には継続的な取り組みが必要です。TUNAGは、施策の実行から効果測定までを一元管理し、人事担当者の業務負担を軽減しながら、確実な文化醸成を支援します。自社の組織文化に課題を感じている方は、まず無料デモで具体的な活用方法をご確認ください。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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