自立と自律の違いとは?両者を意識した人材育成のポイントも解説

「自立」と「自律」は似た言葉ですが、人材育成において異なる意味を持ちます。自立は他に頼らない独立性、自律は自分をコントロールする力です。両者の違いとともに、現代のビジネスで求められる自律型人材の育成方法について、詳しく解説します。

自立と自律の基本的な違い

「自立」と「自律」は日常でよく使われる言葉ですが、両者は意味合いが異なり、とりわけ人材育成の観点では、明確に区別することが大事です。どちらも個人の成長と組織の発展に欠かせない要素ですが、以下のように異なる定義や使われ方をしています。

自立とは「他に頼らない状態」

自立とは、他者の支援や指示に依存せず、自分の力で物事を進められる状態を指します。経済的・精神的な独立性を含む概念であり、自分の責任において判断し、行動できることを意味します。

またビジネスシーンにおける自立とは、上司の細かい指示を待たずに業務を遂行し、問題が発生した際にも、自分なりの解決策を見つけられる状態を指すのが一般的です。自立した人材は組織への依存度が低く、変化する環境にも柔軟に対応できる傾向があります。

自律とは「自分を律する力」

自律とは、外部からの強制ではなく、自分自身の意志で行動をコントロールする能力を指します。目標に向かって継続的に取り組む力や、感情に流されず冷静な判断を下す力が含まれます。

さらに、ビジネスシーンにおける自律とは、一般的に「品質にこだわる」「チームワークを重視する」といった行動を、指示・監視されなくても自主的に実践できる状態です。自律した人材は内発的動機によって行動し、長期的な成果を生み出せるのが強みです。

自立と自律が必要とされる場面

現代のビジネス環境では、自立と自律の両方が求められる場面が増えています。両者が具体的にどういった場面で発揮されるのか、それぞれ確認しておきましょう。

「自立」が求められる場面

ビジネスシーンで「自立」が重視されるのは、独力で判断・行動することが必要な場面です。例えば、新しい部署へ異動したときや初めてのプロジェクトを任されたときなどは、周囲のサポートが限定されるため、自分で情報を収集し、意思決定を行う能力が問われます。

また在宅勤務やフリーランスなど、物理的・組織的な距離がある働き方では、誰かの指示を待つのではなく、自分のペースで計画的に業務を進める力が不可欠です。こうした場面では、自己責任の意識とともに、他者に頼らずきちんと行動できることが成果に直結します。

「自律」が求められる場面

「自律」が特に求められるのは、自由度が高く、裁量の大きい立場で仕事をする場合です。例えば、マネジメント職やプロジェクトリーダーなどは、目標達成に向けて自らの行動を律しつつ、他者を導くことも求められます。

さらに、複数のプロジェクトをマネジメントし、成果につなげるためには自己規範にもとづく判断・実行力が必要です。自分で課題を設定し、業務の優先順位を決めて行動するなど、内発的な動機により発揮すべき状況では、高い自律力が試されます。

ビジネスシーンで重視される自律型人材とは?

現代のビジネスシーンでは、多くの企業が自律型人材を求めています。市場環境や働き方が大きく変化する中で、一人一人が自ら考えて行動し、安定的に成果を生み出せる人材が重視されています。企業が育成すべき、自律型人材の特徴を整理しておきましょう。

みずから行動し成果を生み出す人材

自律型人材とは、与えられた仕事をこなすだけでなく、自分で課題や目標を設定し、主体的に行動できる人を指します。例えば、チームや上司から具体的な指示がなくても、自分で仕事のゴールを見定め、必要なアクションプランを立案・実行できる人材です。

このようなタイプの人材は、自発的に知識を収集し、他部署と連携して成果を最大化させるなど、全体的な視点を持って行動できる傾向があります。変化の激しいビジネス環境においても、状況を的確に捉え、自分の役割やチームの目標に照らして柔軟に対応できます。

自律型人材の特徴

自律型人材には、自己管理能力の高さと行動力、高い学習意欲が共通して見られます。日々の業務において、優先順位をつけてタスクを進め、必要に応じて調整もできる柔軟さがあるため、環境の変化にも強く対応できるのも特徴です。

また他者からの評価よりも、自分の目標達成や成長を重視する傾向があるため、外的なモチベーションに左右されにくい点も特徴です。こういった強みが、持続可能な成長と安定した成果につながります。

自律型人材を育成するポイント

自律型人材を育成するには、以下のように目的意識の醸成や成長機会の提供など、戦略的な育成プランが求められます。それぞれポイントをみていきましょう。

目的意識の醸成と目標の明確化

自律型人材育成の第一歩は、社員に明確な目的意識を持たせることです。「なぜこの仕事をするのか」「自分の業務が会社にどんな価値をもたらすのか」を理解してもらい、仕事に対する当事者意識を高めましょう。

会社のビジョンや戦略も分かりやすく説明し、個人の業務が全体目標にどう関連するかを明示する必要があります。また、個人レベルでも短期・中期・長期の目標を設定し、達成に向けたロードマップを作成しましょう。目標設定の際には、本人の意思を尊重し、上司との対話を通じて合意の形成を図ることも大切です。

挑戦できる機会の提供

社員の自律性を高めるには、安全な範囲において、リスクを取れる挑戦の機会の提供が欠かせません。新しいプロジェクトへの参加や権限の委譲、他部署との連携業務など、通常業務を超えた経験を積ませることが大切です。

失敗を許容する文化を醸成し、挑戦した結果の失敗よりも、挑戦しないことのリスクを重視する組織風土が求められます。メンター制度や先輩社員による支援体制も整備し、挑戦を後押しする環境をつくりましょう。

適切なフィードバック

建設的なフィードバックも、自律型人材を育成する重要なプロセスです。上司や同僚との振り返りによって、行動や成果について内省する機会を設け、自分の目指すべき成長像や課題の修正を促しましょう。

さらに、定期的な1on1ミーティングを実施することで、本人がみずからの強みや、改善点に気付ける仕組みを取り入れるのも効果的です。評価制度も納得感があり、成長を実感できる内容へと見直す必要があります。

キャリアの自律を促す制度設計

自律型人材を育てるには、キャリアに関しても、本人が主導権を持てる制度の整備が必要です。例えば、社内公募制度や自己申告制度・スキルアップ支援など、できる限り社員が自らのキャリアを主体的に考え、選択できる環境を用意しましょう。

自身の成長を自分の責任で設計できる状態ならば、業務に対する姿勢や行動もより自律的になります。自分で描いたキャリアビジョンに基づき、日々の業務に取り組むことで、目の前の仕事への納得感や意欲も高まり、組織への貢献度も自然と向上するでしょう。

自律型人材の育成に注力しよう

変化が激しく予測困難な現代においては、受け身の人材ではなく、自ら考え行動する「自律型人材」の重要性が一層高まっています。自立と自律の違いを理解し、それぞれの特性を生かした育成を進めることで、社員個人の成長だけでなく、組織全体の競争力も向上します。

理念の共有や挑戦機会の提供・制度設計などを通じて、社員の内発的動機づけを促し、自律した人材が活躍できる環境を目指しましょう。

著者情報

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