ウェルビーイングの向上がもたらすメリットは?具体的な施策も紹介

近年、ウェルビーイングの考え方が世界的な注目を集めています。従業員のウェルビーイングが向上すると企業はさまざまなメリットを得られるため、具体的な取り組みを進めていきましょう。ウェルビーイング向上による効果や企業がすべき施策を紹介します。

ウェルビーイングの基礎知識

ウェルビーイング(Well-being)とは、「Well(良い)」と「Being(状態)」を組み合わせた言葉です。具体的にどのような意味を持つのか、注目される理由と併せて解説します。

ウェルビーイングとは

ウェルビーイングは、肉体的・精神的・社会的に満たされた状態のことです。心身が健康であるだけでなく、社会的なつながりでも満足している状態を指します。

ウェルビーイングと似た言葉に、ウェルネスやハピネスがあります。それぞれの意味は次の通りです。

ウェルネス(wellness):身体が健康な状態であること

ハピネス(happiness):精神面が幸せであること

つまり、ウェルビーイングにはウェルネスやハピネスが含まれ、より広範囲において満たされた状態を意味します。

ウェルビーイングが注目される理由

かつては国民の幸福度を測るのに、GDP(国内総生産)が用いられていました。経済的に豊かになるほど国民の満足度も上がると考えられていたのです。

しかし、社会が成熟していくにつれ、経済的な豊かさが必ずしも国民の豊かさにつながるとは限らないという考えが浸透していきました。現在は、個々人が実感できる豊かさや幸福感を重視する傾向が高まり、ウェルビーイングが注目されています。

国民の幸福度を測るためのGDPに代わる指標として活用を検討されているのが、GDW(Gross Domestic Well-being、国内総充実)です。GDPが物質的な豊かさを測るのに対し、GDWでは主観指標を重視して個人が実感できる豊かさを測ります。

ウェルビーイングの種類

ウェルビーイングの種類は、主観的ウェルビーイングと客観的ウェルビーイングの2つに分けられます。それぞれを測る指標の例は次の通りです。

  • 主観的ウェルビーイング:個人が主観的に感じる価値(人生への満足感、うれしさや楽しさなど)
  • 客観的ウェルビーイング:誰もが客観的に把握できる価値(平均寿命、生涯賃金、GDP、失業率など)


主観的ウェルビーイングは、一人ひとりが個人の感覚や価値観で感じるものを指します。前述のGDWは、主観的ウェルビーイングを測る指標です。


一方の客観的ウェルビーイングは、統計データなど客観的な数値基準で測れます。ウェルビーイングの充実度を国や県で比較する際によく利用される指標です。

ウェルビーイングの構成要素

世界規模の調査を実施することで知られるギャラップ社は、ウェルビーイングの測定要素として次の5つを挙げています。

  • Career Well-Being:キャリアの総合的な幸福度
  • Social Well-Being:人間関係の幸福度
  • Financial Well-Being:経済的な幸福度
  • Physical Well-Being:心身の健康に関する幸福度
  • Community Well-Being: 地域社会における幸福度


また、アメリカの心理学者マーティン・セリグマン氏が提唱したPERMA理論では、以下の要素を満たすことでウェルビーイングを高められるとしています。

  • P:Positive Emotion(前向きな感情を持つ)
  • E:Engagement(物事に没頭する)
  • R:Relationship(人間関係が良好である)
  • M:Meaning and Purpose(人生に意味や目的を持つ)
  • A:Achievement(何かを達成する)

ウェルビーイングとSDGs

SDGs(Sustainable Development Goals)は、持続可能な社会の実現を目指す世界共通の計画・目標です。17の目標と169のターゲットを設定しています。

SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を(Good Health and Well-Being)」では、Well-Beingが言葉として含まれています。ここでのウェルビーイングは、健康や福祉を意味する言葉です。

SDGsの達成には地球全体のウェルビーイングが必要であるとの考えから、SDGsの達成期限である2030年以降は、持続可能なウェルビーイングを目指す「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」を始める動きも見られます。

ウェルビーイングの現状

世界有数の経済大国である日本は、GDPこそ世界4位を確保していますが、国民の幸福度はそれほど高くないのが実情です。日本におけるウェルビーイングの現状を見ていきましょう。

出典:世界の名目GDP 国別ランキング・推移(IMF) - GLOBAL NOTE

日本は国民の幸福度が低い

「国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)」が公表する2024年版の「世界幸福度報告書」によると、世界幸福度ランキングにおける日本の順位は51位です。

G7各国の順位を見ると、カナダの15位が首位、以下英国20位・アメリカ23位・ドイツ24位・フランス27位・イタリア41位となっています。51位の日本はG7の中で最下位です。

GDPの国別ランキング1位のアメリカも、日本ほど差が開いていないものの、世界幸福度ランキングの上位国ではありません。経済的な豊かさと実際の幸福度が比例するとは限らないことが分かります。

出典:Happiness of the younger, the older, and those in between | The World Happiness Report

政府による主観的ウェルビーイング拡大の施策

日本政府は2021年に「成長戦略実行計画」を発表し、新たな日常に向けた成長戦略の考え方として、「国民がWell-beingを実感できる社会の実現」を提示しています。

また、同年7月には第1回「Well-beingに関する関係省庁連絡会議」を開催し、ウェルビーイングに関する取り組みの推進に向けて省庁間の連携を図っています。

内閣府が実施している「満足度・生活の質に関する調査」も、ウェルビーイング向上に向けた取り組みの1つです。国民生活の満足度を13分野で測定し、得られた結果を政策運営に生かしています。

出典:成長戦略実行計画 P2

出典:Well-beingに関する関係省庁の連携- 内閣府

出典:満足度・生活の質に関する調査 - 内閣府

ウェルビーイング向上のメリット

従業員のウェルビーイングが向上すると、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ウェルビーイング経営が企業にもたらす主な効果を紹介します。

離職率が改善する

従業員のウェルビーイング向上により、仕事に対する満足度やモチベーションが高まります。会社への不満が少ない状態になるため、離職率の改善につながるでしょう。また、会社を辞める人が減ると採用や教育にかかるコストを抑えられます。

離職率の低下は企業のイメージアップにつながることもポイントです。自社の定着率が高いことを前面に出せば、応募者が増加して採用にも好影響を与えます。

業績が上向く

心身ともに健康でプライベートにも満足している従業員は、モチベーションが上がりやすくなります。個々が最大限のパフォーマンスを発揮できるようになるため、企業の業績も上向くでしょう。

ウェルビーイングが向上した従業員が多くなれば、一人ひとりの生産性が向上し、新たな人材を確保せずに済みます。人件費の増加を抑えられ、経営コストの削減にもつながるでしょう。

優秀な人材を確保できる

ウェルビーイング向上のための取り組みを進めていることをアピールすれば、企業イメージがアップします。経営姿勢に共感する応募者が増え、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。

近年は給与や労働環境だけでなく、ワーク・ライフ・バランスを重視して企業を選ぶ応募者が増えています。求人市場では自分らしい働き方ができる企業の価値が向上しているのです。

また、人材を確保しやすくなることで、労働力不足の解消も図れます。少子化により労働人口の減少が加速する中、ブランド力で人材を確保できることは非常に重要なポイントです。

企業がすべきウェルビーイング向上の施策

従業員がいきいきと働ける環境の整備を目指すのがウェルビーイング経営です。企業としてどのような施策を打ち出せばよいのか、ウェルビーイング経営で意識したいポイントを解説します。

労働環境の見直し

ウェルビーイング向上の施策として最も重要なのが、労働環境の見直しです。従業員にとって働きやすい環境になっているかチェックし、問題があれば改善する必要があります。

労働環境の見直しでチェックすべきポイントは、「長時間労働や休日出勤を減らす」「時間や場所を選ばない働き方を選べる」の2点です。

これらはいずれも従業員の満足度に直結する要素であり、早急に見直すべきポイントでもあります。できる範囲で改善に取り組んでみましょう。

多様な雇用形態の導入

個々の事情に合った多様な働き方を実現することも、従業員のウェルビーイング向上に寄与する大切な要素です。テレワーク・フレックスタイム制・短時間正社員制度など、さまざまな雇用形態に対応できる仕組みが求められます。

育児や介護などで働き方が制限されている人の中には、「短時間のみ働きたい」「在宅なら仕事ができる」と考えている人も少なくありません。

そのような人も取り入れられる環境を構築すれば、より多くの雇用を生み出せるほか、ウェルビーイング向上も期待できます。

健康増進に関する取り組み

ウェルビーイング経営においては、従業員の健康診断とストレスチェックの結果を受け、健康増進に関する対策を講じなければなりません。従業員に健康診断とストレスチェックを受けさせることは企業の義務です。

心身の不調を感じながら職場に遠慮して働き続けると、大きなストレスを抱えて最終的に離職してしまう恐れもあります。従業員専用の相談窓口を設置したり、産業医との面談の機会を設けたりするなど、ストレスを抱えている従業員の早期発見にも努めましょう。

コミュニケーションの強化

心身の健康や社会的な満足度に大きな影響を与えるのが人間関係です。ウェルビーイング経営では、社内の人間関係が良好に保たれるような取り組みも進める必要があります。

上司や先輩と部下の信頼関係を構築する方法としては、1on1ミーティングやメンター制度の導入が効果的です。また、サンクスカードや社内イベントもコミュニケーションの活性化に役立つでしょう。

ウェルビーイング向上に貢献する「TUNAG」とは 

エンゲージメント向上プラットフォーム「TUNAG」は、社内コミュニケーションの活性化や称賛文化の醸成でウェルビーイングの向上に役立ちます。TUNAGの強みや活用事例を確認しましょう。

TUNAGの強み

社内コミュニケーションの活性化に効果的な施策は、飲み会やイベントなどの交流だけではありません。都合のよいときに各自がアクションを起こせるSNSも、社内交流の活性化に役立ちます。

TUNAGのタイムライン機能にはコメント機能が内包されており、タイムラインに流れてきた情報に対し、スマホを利用していつでも気軽にコメントを残すことが可能です。

また、TUNAGのサンクスカード機能を活用すれば、企業の称賛文化を醸成できます。お互いを褒めたり労ったりすることで、職場の雰囲気も良くなるでしょう。

お互いの行動や結果に感謝し合えば、個人間の信頼感も高まります。職場の心理的安全性も高まり、協力的で何でも話し合える環境の構築に役立つでしょう。

TUNAGを活用した企業事例

総合造園業を営む株式会社山梅では、情報共有の仕組みに課題を感じていました。日報をリアルタイムに閲覧・コメントできなかったほか、重要な情報も見落としやすくなっていたのです。

情報共有の課題を解消するためにTUNAGを導入した結果、課題に感じていた部分がクリアできた上、エンゲージメントの向上にもつながりました。

単にコミュニケーションが活性化されただけでなく、会社に対する想いを経営層と従業員で共有できるようになったことがポイントです。本社と現場で壁ができやすい企業におすすめの事例といえるでしょう。

出典:リアルタイムのコミュニケーションをアプリで実現。業務日誌や部署間交流で「社員の喜び」をつくる山梅の事例 | TUNAG(ツナグ)

ウェルビーイング向上の取り組みを進めよう

ウェルビーイングとは、心身の健康と併せて社会的にも満たされている状態にあることです。従業員のウェルビーイングを高めれば、企業にさまざまなメリットがもたらされます。

ウェルビーイング経営で進めたい取り組みは、労働環境の改善や健康増進に向けた取り組み、社内コミュニケーションの活性化です。できることから着手し、従業員がいきいきと働ける職場環境の構築を進めましょう。


著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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