リバースメンタリングの効果とは。導入できる前提や進め方も解説

リバースメンタリングの効果とは。導入できる前提や進め方も解説

技術革新や労働者の考え方の変化が著しい現代では、ベテラン従業員が若手から学べることが多くなってきました。企業の生産性を底上げする方法の一つが「リバースメンタリング」です。リバースメンタリングの定義や導入の前提、取り入れるステップを解説します。

現代で注目される「リバースメンタリング」とは

リバースメンタリングは、若手が先輩やベテランの従業員に教える手法として注目されています。教育の一環として検討しているなら、まずはリバースメンタリングの定義と導入できる前提を把握しておきましょう。

若手がベテランに助言する逆転型メンタリング

元々「メンタリング」とは、先輩やベテランの従業員がメンターとしてつき、新入社員や後輩の指導・助言をしたり相談を受けたりすることです。リバースメンタリングは「リバース(Reverse)」の意味通り逆転したメンタリングで、逆メンター制度と呼ばれることもあります。

若手が先輩やベテラン(時には経営層)のメンターとなり、助言する教育手法です。リバースメンタリングによって若手が持つスキルや新しい視点をベテランが取り入れることで、イノベーションが促進します。

リバースメンタリングを導入できる前提

リバースメンタリングは、元々組織にある程度の条件がそろっていないと導入できません。第一に、メンターとなる若手の負担を分散できる余裕があることが前提です。リバースメンタリングには、メンター側の業務負担や心理的負担が大きくなるというデメリットがあります。

もし人手不足で日常業務もギリギリで回している状態で導入すると、若手の負担が激増して過労や離職につながりかねません。立場が上の人に対して助言・指導するという状況自体がストレスになる場合もあります。

二つ目の前提は、互いを尊重できる環境があることです。ベテラン従業員の中には、若手から助言や指導を受けることに抵抗を持つ人も少なくありません。メンター側もメンティー側も「こちらの考えが正しい」という姿勢では、効果が出るどころか人間関係の悪化につながる場合もあります。

導入にはまず、互いの考えや価値観・スキルなどを互いに尊敬する環境づくりが必要です。尊敬し合える文化の醸成には、サンクスカードで感謝を伝え合う「TUNAG」のようなツールを活用するのも一つの手です。

リバースメンタリングを導入する効果

紹介した土台ができていて初めて、リバースメンタリングは効果を発揮します。では具体的にどのような効果があるのでしょうか。企業としてのメリットを四つ紹介します。

知識やスキルを底上げできる

リバースメンタリングでは、若手は得意だがベテランが苦手な分野を補強できます。SNSの活用方法・新しいツールの使い方をはじめとしたデジタルリテラシー、多様性に関する考え方などが一例です。

ベテラン従業員の知識・スキルの幅が広がることで組織全体の知識・スキルが底上げされます。メンター側である若手も、指導や助言を通じて「教える能力」が向上するでしょう。

ベテランが新たな視点を持てる

メンティーとして若手と接すれば、ベテラン従業員は新たな視点や価値観を得られます。ベテラン従業員がそれまでになかった視点を持つことで、現代に合ったアイデアを創出できる人材が増えるのがメリットです。

ジェンダーや国籍のような属性に対する偏見が薄れ、多様な人材を採用しやすくなるメリットもあります。Z世代と呼ばれる若手は約6割が学校でジェンダーの授業を受けているという調査もあり、多様性を受け入れる人が多いことも分かっています。

メンターとしての若手と接して若い世代の悩みや価値観に気付き、ベテラン従業員のマネジメント力が向上するのもリバースメンタリングを導入する効果です。

若手のモチベーション向上につながる

リバースメンタリングは若手が自らの強みを生かせるため、モチベーションアップにつながります。ベテラン社員の成長に寄与したという達成感は、モチベーションが上がる大きな要素となるでしょう。

リバースメンタリングを通じて上下の垣根がない関係を築けるため、若手が働きやすくなる効果もあります。働きやすくなればエンゲージメントが向上し、人材定着にもつながるはずです。

立場を超えた良好なコミュニケーションができる

リバースメンタリングを実施すれば、上下のないフラットなコミュニケーションが多くなります。互いに世代や立場の違うメンター・メンティーと接する機会が増えることで、ほかの従業員に対しても相手の価値観を尊重した接し方ができるようになります。

結果的に良好なコミュニケーションが構築でき、職場の人間関係が円滑になるのは組織にとって大きなメリットです。チームワークが向上し、生産性も向上しやすくなります。

リバースメンタリングを導入するステップ

リバースメンタリングは、若手に「先輩やベテラン従業員のメンターをしてください」と言って急に始められるものではありません。混乱を避けて効果的なリバースメンタリングを実施するには、導入までのステップが重要です。

目的を明確にして周知する

リバースメンタリングに限らず、新たな制度を導入するときは、まず目的の明確化が不可欠です。自社の課題を洗い出し、デジタルスキルの向上・ダイバーシティの推進など、明確な目標を設定することでメンターが指導するべき内容が決まります。

目的が明確になったらその目的とともに、リバースメンタリングを導入することを全社的に周知しましょう。目的が分かれば、混乱を防ぎやすくなります。人事部や総務部などの関係部署には、協力を得るため丁寧な説明が必要です。

運用方法やルールを決定する

リバースメンタリングを導入する目的が決まったら、その目的を達成するための方法を決める必要があります。メンタリングといっても手法はさまざまです。デジタルスキルの向上なら実務上での実践指導中心、ダイバーシティのような価値観のアップデートなら対話中心といったように変わってきます。

メンター・メンティー双方の負担を軽減するためのルールも必要です。円滑に運用するためのルールとしては、メンターは分からない・できないことを見下す発言をしない、メンティーはメンターに対して助言・指導しない、メンターを複数名にするなどが考えられます。

メンターとメンティーを選定する

メンターとメンティーの関係性や相性に問題があると、リバースメンタリングの効果を期待できません。同じ部署内だと評価する側とされる側になってしまい、利害関係が生じる恐れがあります。また、相談された内容についても他部署であれば客観的に把握し、アドバイスをすることが可能です。

本来、メンター制度はメンターとメンティーが直接業務で関わらない立場であるのが良いとされています。可能な限り他部署間で選定するのがよいでしょう。

関係者の研修後に実施する

メンターとメンティーが決まったら、リバースメンタリング実施の前に、メンター・メンティーを含む関係者全員への教育が必要です。

リバースメンタリングとは何なのかはもちろん、目的・運用方法・ルールなど必要項目を盛り込んだ研修を実施しましょう。研修が終わったら実際にリバースメンタリングを実施し、定期的に効果測定と改善を続けます。

リバースメンタリングでイノベーションを

リバースメンタリングは、通常のメンタリングとは逆に、若手が先輩やベテラン・時には経営陣など上の立場の人に対して助言・指導する教育手法です。若手が持つデジタルリテラシーや価値観などをベテランが吸収することで、イノベーションの促進や全社的な生産性の向上が期待できます。

立場が上の人の成長に自分が貢献することで、若手のモチベーションが上がるのもリバースメンタリングのメリットです。立場を超えたコミュニケーションが生まれ、若手が働きやすくなる効果もあります。ただ、メンターとなる若手の負担やメンティーとの相性には注意が必要です。

紹介した前提やステップを参考に、自社で導入できるかどうかとともに、実施の仕方を考えましょう。

著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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