QCサークル活動は時代遅れ?4つの問題点と、現代に合う対処法を解説

QC活動は、品質の向上を目指す組織内の取り組みの一つです。この活動は、特に日本の企業文化に深く根付いており、小グループでの品質管理活動を自発的に行うことを特徴としています。QCサークルとも呼ばれるこの活動は、職場の問題解決や改善を目的としており、QC手法を活用して日々の業務をより良くするための取り組みを行います。

しかし現代のビジネス環境において、QC活動は時代に即していないという声もあります。

この記事では、QC活動の基本的な概念から、その問題点とそれに対する対処法を詳しく解説します。

QCサークル活動(小集団改善活動)とは

QCサークル活動(小集団改善活動)は、品質管理(Quality Control)の手法の一つであり、企業内で品質向上と問題解決を行うための取り組みです。小さなチームが定期的に集まり、業務プロセスの問題を特定し、改善策を見つけ出す活動です。この活動は、品質管理を向上させるため企業が行う改善活動の一環であり、さまざまな組織や業界で実施されています。例えば、製造業では製品の品質向上や不良品の削減、サービス業では顧客満足度の向上などの目標を達成するために活用されています。

このように、QCサークル活動はさまざまな組織や業界で実施され、品質管理と問題解決の重要な手段となっています。組織内のメンバーが協力し、定期的に集まり活動を行うことで、より良い品質や効率性を実現することができるでしょう。             

QCサークル活動の目的

QCサークル活動の主な目的は、品質向上や生産性の向上を通じて、組織全体の競争力を高めることです。また、職場環境の改善や業務改善を図るためにも活動が重要です。特に、カンコツに頼った暗黙知で仕事をしているような部署やチームにとって、QCサークル活動は良いきっかけとなるでしょう。チームメンバーが協力し、問題を共有し、解決策を見つけ出すことで、より効率的な業務プロセスを構築し、品質を向上させることが期待されています。             

QCサークル活動はなぜ生まれたのか 

QCサークル活動は、日本の製造業において、品質管理の一環として生まれました。QCサークル活動の発祥は1950年代であり、アメリカの統計学者W・エドワーズ・デミングが提唱しました。デミングは「PDCA」という概念を提唱し、品質に対するコミットメントを高め、組織全体で品質向上を実現するためにQCサークル活動が生まれたのです。日本でQCサークル活動が普及し始めた背景には、製造業界の競争力向上と品質管理の重要性がありました。

QCサークルの基本理念と要素

QCサークルは3つの基本理念と4つの要素によって構成されています。

日科技連(日本科学技術連盟)によると、QCサークルの基本理念は以下とされています。

3つの基本理念

  1. 人間の能力を引き出し、無限の可能性を引き出す
  2. 人間性を尊重して、生きがいのある明るい職場をつくる
  3. 企業の体質改善・発展に寄与する

また、QCサークルは次の4つの要素で構成され、QC活動の効果を上げるには4つの構成要素の相乗効果を高めることが重要です。

◾️人

人は、QCサークル活動において最も重要な要素です。サークルのメンバー全員が積極的に取り組むことで、活動の質が大きく上昇します。

また、QC活動は各メンバーの知識や経験を結集し、協力して問題解決にあたるためモチベーチョンが欠かせません。メンバーが高い意欲を持ち自発的に活動することで、持続的な改善と効果が得られ、QCサークル全体の成功につながるでしょう。

◾️グループ力

グループ力とは、メンバー全員がQC活動に取り組むことにより生じる相乗効果のことです。各メンバーの知識や能力がサークル内で交わり、互いに研磨し合うことで、相乗効果が生まれ、より大きな成果が期待できます。

◾️改善力

改善力とは、職場での問題や課題を効果的に解決・改善することを指します。この能力を向上させるには、具体的なテーマ選定をする必要があります。例えば、「生産ラインAの稼働率を5%向上させる」のように具体的で測定可能なテーマを設定すると改善力を高められるでしょう。

◾️管理者の支援

QC活動において、管理者は企業目標の達成の責任を負っています。しかし、管理者がQCサークルに直接参加することでメンバーに過度なプレッシャーを与える可能性があります。そのため、管理者は支援者としての役割に徹し、メンバーの自主性を尊重しながら適切な指導やサポートを行うことが重要です。

QCサークル活動は時代遅れ?

QCサークル活動は長い間、品質向上のための効果的な手法とされてきましたが、現代のビジネス環境においては、いくつかの問題点が浮き彫りになっています。具体的には、活動時間の調整と労働環境のリスク、成果より発表を重視する傾向、メンバー間の知識やモチベーションの格差が挙げられます。

一方で、高度経済成長期にはQCサークル活動が活躍しましたが、現在では時代遅れとされています。これは、QCサークル活動は組織全体の品質向上のためには有効であるものの、個別の業務プロセスやチームの問題解決には適さないとされています。現代のビジネス環境では、より迅速で効果的な手法やアプローチが求められるため、QCサークル活動は時代遅れとされているのです。             

QCサークル活動に潜む4つの問題点

ここからは、QCサークル活動に潜む3つの問題点について説明します。             

①活動時間の調整と労働環境のリスク

QCサークル活動は、業務時間外に行われることが多く、「サービス残業では?」「業務時間内に終わらないの?」といった声が上がってしまうケースも少なくありません。また、長時間の会議や活動に参加することで、メンバーの労働環境への負担が増える可能性があります。

また、QCサークル活動は、多くの場合、勤務時間外に行われるボランティア活動として位置づけられています。このため、活動時間の調整や労働環境のリスクが問題となることがあります。トヨタ自動車が残業代未払い&過労死させた事件で悪い意味で注目されたこともあります。             

②成果より発表を重視する傾向

 QCサークル活動では、発表会に向けての準備に多くの時間と労力を費やしてしまうケースも見られます。「発表のための活動になってしまっている」「本来の目的を見失っている」といった声も少なくありません。これにより、成果そのものよりも発表の準備や演出に時間が費やされ、本来の目的である問題解決が二の次になることがあります。さらに、発表のやりやすさを重視してしまう傾向もあります。             

③メンバー間の知識やモチベーションの格差

QCサークル活動に参加するメンバーの中には、知識やモチベーションに格差があることがあります。一部のメンバーが積極的に活動に取り組む一方で、他のメンバーは参加意欲が低い場合があります。また、上司にやれと言われたから嫌々やっているケースも多いです。

④活動に対する消極的姿勢

業務上の指示などにより、QC活動が強制的に行われることがあります。これにより参加者の自主性が失われ、ただの義務感で取り組むことになり、活動への意欲が減少します。これは、社員の成長の機会を奪ってしまうことになります。

QCサークル活動のあり方を見直しが必要

QCサークル活動を効果的に活用するためには、活動のあり方を見直す必要があります。これにより、品質向上と問題解決の効果が最大限に発揮され、組織全体の競争力向上に貢献できるでしょう。

QCサークル活動を活性化させるためには、情報共有やコミュニケーションを円滑にするためのツール導入も有効です。例えば、「TUNAG(ツナグ)」のようなエンゲージメント経営プラットフォームサービスを活用すれば、気軽に改善アイデアを共有できる環境を構築できます。TUNAGは、株式会社スタメンが提供するエンゲージメント経営プラットフォームサービスであり、このツールは職場内で日常的な改善アイデアについて気軽に話し合える環境を作ることを目的としています。メンバー同士がコミュニケーションを取りながら課題や改善策を共有し、職場内での改善活動を促進します。             

QCサークル活動のメリット

QCサークル活動は問題点があるとは言え、多くのメリットを持っています。             

会社や顧客への貢献 

QCサークル活動を通じて、製品やサービスの品質向上が実現され、顧客満足度が向上します。これにより、企業は市場競争において優位性を獲得できます。

新しいアイデアや革新的な方法を取り入れることで、QCサークル活動はますます効果的になります。さらに、顧客とのコミュニケーションを強化し、彼らのニーズにより適応することも重要です。また、市場調査や競合分析を行い、競争力を維持するための戦略を策定する必要があります。             

チームの団結力と業務意欲の向上

チームメンバーが協力して問題を解決し、成果を上げることで、チームの団結力がますます高まります。また、活動への積極的な参加意欲が向上し、業務に対するモチベーションも一層高まります。さらに、メンバー同士の信頼関係が築かれ、チームの結束力が強化されます。これにより、チーム全体がより効果的に業務を遂行し、目標の達成に向けて一丸となることが可能です。             

問題解決能力の習得

QCサークル活動は、問題を分析し、解決策を見つけ出す能力を養う場でもあります。メンバーは実務経験を通じて、問題解決のスキルを向上させることができます。また、QCの7つ道具などの手法を学ぶことで、日常業務でも問題解決のスキルを活かすことが可能です。 

QCサークル活動のデメリット

QCサークル活動が「時代遅れではないか」という意見がある理由として、以下の点が挙げられます。

QC活動が単なるルーチン化し、実質的な改善が達成されない

QCサークル活動が形式的になり、単なる習慣として続けられることがあります。メンバーが活動の目的を忘れたり、改善に向けた意欲が薄れると、実質的な改善が行われず成果が上がらないことがあります。

多忙な業務により、QC活動に必要な時間が確保できない

現場の業務が忙しくなると、QC活動に必要な準備や実施の時間が確保できなくなります。結果として、QC活動が後回しにされ、十分な取り組みができない場合があります。

期待通りの成果が上がらず、モチベーチョンが維持できない

QC活動の成果が期待通りに上がらない場合、メンバーのモチベーチョンが低下することがあります。改善が見られないと、活動への参加意欲や熱意が薄れ、QC活動の効果がさらに減少する可能性があります。

QC活動の効果が実感しにくく、有効性が伝わりづらい

QC活動の成果が具体的に見えない場合、メンバーや管理者がその効果を実感しづらくなります。成果が不明瞭であったり、改善の結果が業務全体にどう影響したかが伝わりにくいと、活動の意義が疑問視される可能性があります。

QCサークル活動の効果的な進め方

QCサークル活動を効果的に進めるためには、以下のポイントに注意する必要があります。             

QCサークル活動を進める基本ステップ

QCサークル活動は一連のステップに従って進める必要があります。以下が、QCサークル活動の基本ステップです。

  1. テーマの選定 | 改善の対象テーマを特定する。
  2. 現状把握 | データ収集とプロセスの観察による問題の評価。
  3. 目標設定 | 具体的で測定可能な改善の目標を設定。
  4. 原因分析 | ルートコーズ分析や魚の骨図を使用して原因を特定。
  5. 改善策の検討 | 効果的で実現可能な改善策を検討・提案。
  6. 改善案の実施 | 選択した改善策を計画的に実施。
  7. 効果の確認 | 改善策の実施後、変化や効果をモニタリング。
  8. 効果の評価 | 目標達成度を評価し、追加の調整が必要か確認。
  9. 標準化 | 効果のあった改善策を標準化し、継続的実施。
  10. 振り返り | 活動全体を振り返り、次回の教訓を得る。

これらのステップを順に進め、品質管理サークルが効果的な品質改善活動を実施できるようになります。

特に最初のステップである「テーマの選定」は、QCサークル全体の活動の方針を決めるステップとなるため、慎重かつ具体的に行うことが求められます。

テーマを選定するフローの中でも、アイデアを出す場面ではメンバーの悩みや他社事例を起点として自由なアイデアを尊重しつつ、出したアイデアからテーマを選定する場面ではQCサークルの目的の一つである会社や顧客への貢献度から逆算することが重要です。例えば、生産性の向上やコストカットの量、事故発生率の減少などの要素が挙げられます。

議論の末に選定したテーマに基づきQC活動を実施し、組織全体の品質を向上させることができれば、参加メンバーのモチベーション向上にもつながるでしょう。

「QCの7つ道具」を活用する 

QCの7つ道具(ヒストグラム、散布図、チェックシートなど)は、データ分析や問題解決に役立つツールです。これらの道具を活用して、問題の本質を把握しましょう。

以下は、「QCの7つ道具」に関する情報を表形式にまとめたものです。

  • パレート図:問題の優先順位を決定する
  • 特性要因図:問題の原因を特定する
  • グラフ:データの可視化とプロセスの監視
  • チェックシート:データの集計と問題の視覚化
  • ヒストグラム:データ分布の可視化とパターンの発見
  • 散布図:2つの変数間の関係を可視化
  • 層別:データを異なるグループに分類

これらの7つの道具は、品質管理や問題解決プロセスにおいて非常に役立ちます。適切な道具を選択し、適切に活用することで、問題の特定、分析、対策立案が効果的に行えます。             

QCサークル活動を円滑に進めるためのポイント

QCサークル活動の円滑な進行のためには、以下のポイントに注意しましょう。

  • 日々の報告と伝達
    • 進捗報告: メンバーは定期的に活動進捗を報告しましょう。これにより、課題の早期発見と対策が可能です。
    • 課題の共有: 問題が発生したら、共有しましょう。同じ問題の再発を防ぎ、効果的な解決策を見つけることができます。
    • 情報伝達の効率化: 共通のプラットフォームやツールを使ってコミュニケーションをスムーズにしましょう。
  • 定期的なフィードバック
    • フィードバックセッション: 定期的なフィードバックの場を設けましょう。建設的なフィードバックは品質向上に貢献します。
    • 改善の提案を奨励: メンバーに改善の提案を促しましょう。QCサークルの目標は品質向上です。
    • フィードバックの文化を根付かせる: ポジティブで建設的なフィードバックの文化を醸成しましょう。

以上のポイントを実践すれば、QCサークル活動は円滑に進み、品質向上に寄与します。

QCサークル活動の事例

QCサークル活動は、製造業をはじめとする様々な業界の企業で実施されています。ここでは弁理士法人オンダ国際特許事務所の事例を交えて、QCサークルの実態を紐解いていきいます。

1968年の設立以来、知的財産権のプロフェッショナルとして企業経営のサポートを続けるオンダ国際特許事務所では、35年以上にわたり全社としてQCサークル活動に取り組んでいます。QCサークル活動は年に2回実施され、所内にシステム開発部門の従業員が在籍している強みを活かして、QCサークル活動で上がった改善案を組織全体に取り入れています。ここでは、第65回活動テーマの一つである総務部の活動を取り上げます。

  • 担当部署:総務部
  • 選定テーマ:内定者フォロー体制の確立
  • 目標設定:内定辞退者0人
  • 具体的な改善案:内定者フォローの活動として、オフィス見学・所員との面談・内定通知ルール・提供資料・情報発信などの施策を内定承諾前と承諾後に分けて見直し、面接官向けの指導も強化しました。
  • 改善の効果:目標としていた活動終了時の辞退者0人を達成

その他にも、オンダ国際特許事務所のホームページでは各部からの活動テーマの発表内容が掲載されています。QCサークルの中身も重要ですが、継続的に実施することで従業員の業務改善や品質改善への意識を高めることにつながります。そのような観点でも、当社は積極的にQCサークル活動に取り組み、顧客満足度の向上に努めている企業と言えるでしょう。

まとめ 

QCサークル活動は企業にとって非常に重要であり、持続的な成長と競争力の確保に不可欠です。しかしながら、QCサークル活動の効果的な進め方を見直し、改革する必要があります。日々の報告と伝達、定期的なフィードバックの重要性を認識し、QCの7つ道具を適切に活用することが求められます。また、品質向上だけでなく、組織の効率性向上や自己成長の機会を見つけることも重要です。このような抜本的な見直しや改革が、QCサークル活動の効果を最大限に引き出すことにつながります。

そこで株式会社スタメンが提供するエンゲージメント経営プラットフォームサービスである「TUNAG(ツナグ)」を活用することでQCサークル活動の普及につなげることが可能です。TUNAGは、企業の成長・成功を支援するために、エンゲージメント経営の実践を通じて、企業内のエンゲージメントを高めることを目指しています。

TUNAGは、オリジナルスタンプ、各種ファイル共有、社内ポイントなどさまざまな機能を備えており、自社に合わせてカスタマイズすることも可能です。運用企業の都合に合わせた社内制度の実現をサポートし、エンゲージメント経営を促進することができます。現在、300社以上の企業で導入されており、100万回を超える社内制度が利用されています。          

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著者情報

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