人事評価では、売上や目標達成率のように数字で示せる成果ばかりを見ればよいわけではありません。周囲への手厚いサポート、難題への粘り強い対応、ルールを守って業務を安定して続ける姿勢。こうした日々の誠実な取り組みも、組織を強固に支える欠かせない要素です。そこで使われるのが「情意評価」です。本記事では、代表的な評価項目から、評価基準の作り方、評価者によるばらつきを抑える方法まで解説します。
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本資料では、評価に対する従業員の納得感を高め、日々の成長につなげるための人事評価制度のノウハウを凝縮して解説します。 「主体性」の評価基準の設計例や、自社の現状がわかるチェックリスト付きで、今の制度状況をすぐに確認できます。
▼本資料でわかること
・評価制度が機能不全に陥る「4つの構造的原因」
・経営戦略を評価基準に落とし込む方法
・評価基準の設計例:「主体性」をどう評価する?

情意評価で見るのは、成果そのものではなく、そこに至るまでの仕事への向き合い方です。まずは基本的な考え方を押さえ、業績評価・能力評価との違いを整理しましょう。
情意評価とは、社員が仕事にどのような姿勢で取り組んでいるか、その行動を評価する手法です。「態度評価」「姿勢評価」と呼ばれることもあります。
主な対象は、規律性や協調性、積極性、責任性などです。具体的には、期日遵守の姿勢、要所での周囲へのサポート、課題発見時の主体的なアプローチといった日常の行動をチェックします。
業績評価が成果を、能力評価が知識やスキルを見るのに対し、情意評価は「仕事にどう向き合ったか」に焦点を当てる点が特徴です。
人事評価では、業績・能力・情意という3つの観点を組み合わせる方法があります。
評価の種類 | 評価する対象 | 評価の例 | 特徴 |
業績評価 | 一定期間に出した成果 | 売上目標の達成率、コスト削減額 | 数値で確認しやすい |
能力評価 | 業務に必要な知識・スキル | 専門知識、企画力、判断力 | 業務遂行能力を見る |
情意評価 | 仕事への姿勢や行動 | 規律性・協調性・積極性・責任性 | 成果だけでは見えない行動を見る |
簡単に整理すると、業績評価は「何を成し遂げたか」、能力評価は「何ができるか」、情意評価は「どのように取り組んだか」を見る評価です。
同じ成果を出した社員でも、周囲と協力して達成した人と、自分の仕事だけを優先した人では、組織への貢献の仕方は異なります。
こうした違いまで含めて見るために、複数の評価軸を組み合わせます。
情意評価を設ける理由の一つは、業績や能力だけでは捉えにくい貢献を見るためです。
後輩からよく相談を受けている社員や、忙しいメンバーを自然にフォローしている社員がいても、その行動が個人の売上や目標達成率に表れるとは限りません。情意評価があれば、こうした働きも評価の対象にできます。
また、評価項目は会社が社員に求める行動を示す役割も持ちます。
協調性を重視する会社なら、「個人の成果だけでなく、周囲と協力することも評価する」と伝えられます。人材育成や組織風土づくりという意味でも、情意評価には役割があります。
情意評価では、仕事への姿勢をいくつかの項目に分けて見ていきます。代表的なのが、規律性・協調性・積極性・責任性です。

規律性では、会社や職場のルールに沿って行動できているかを見ます。
主な対象は次のような行動です。
規律性は基本的な行動だからこそ、「できていて当然」と考えられがちです。
ただし、何をもって標準とするのかが曖昧だと、評価者によって判断が分かれます。評価対象となる行動は、あらかじめ具体的にしておくことが大切です。
協調性では、周囲と連携しながら仕事を進められているかを見ます。忙しい同僚を手伝う、他部署と必要な情報を共有する、会議で相手の意見を聞きながら議論を進めるといった行動が対象です。
ここで混同したくないのが、「周囲に合わせること」と「協調すること」です。
異なる意見を持つこと自体は問題ではありません。必要な意見を伝えながら、チームとしてより良い結論を目指せているかを見ることが重要です。
積極性では、指示を待つだけでなく、自分から仕事を前に進めようとしているかを見ます。業務の無駄に気づいて改善案を出した、新しい業務に手を挙げた、必要な知識を自ら学んだといった行動が該当します。
ただし、発言や提案の数だけを見ればよいわけではありません。
頻繁に意見を出していても仕事の改善につながっていなければ、必ずしも高く評価する必要はありません。重要なのは、どのような行動を取り、その結果として仕事にどのような変化をもたらしたかです。
責任性では、与えられた役割を自覚し、必要な対応を最後まで行っているかを見ます。
期限に間に合うよう計画を立てる、トラブルを放置せず対処する、ミスが発生したら速やかに報告し再発防止を考えるといった行動が対象です。
見るべきなのは、失敗をしたかどうかだけではありません。
仕事ではミスや想定外の問題が起こることもあります。その際にどう向き合い、どのように対応したかまで含めて評価します。
情意評価を取り入れると、成果だけでは見えにくかった働き方まで評価できるようになります。また、何を評価するかを明確にすることで、社員の行動にも影響を与えられます。
全ての仕事が売上や件数で測れるわけではありません。総務や経理、人事などのバックオフィス業務では、「問題なく業務を回し続けること」自体が大きな役割です。
営業職であっても、新人をフォローしたり、ノウハウをチームに共有したりする行動が、本人の売上に直接表れるとは限りません。
情意評価を設けることで、こうした仕事も評価の対象にできます。成果だけでは捉えにくい働きを拾える点は、情意評価の大きな特徴です。
業績だけを強く評価すると、社員が自分の数字を優先するようになることがあります。同僚を手伝うより、自分の売上を上げた方が高く評価されるのであれば、協力する動機は生まれにくくなります。
協調性や周囲への支援も評価対象に含めれば、個人の成果だけでなく、チームへの貢献も評価できます。
「何をすれば評価されるのか」は、社員の行動にも影響します。評価制度を通じて、組織として望む働き方を示すことができます。
情意評価の項目は、自社が求める人物像に反映できます。挑戦を重視する企業なら積極性を、品質や安全を重視する企業なら規律性や責任性を厚く見るといった設計が可能です。
ただし、「挑戦する人」「顧客第一」といった抽象的な言葉をそのまま評価項目にしても、判断しにくくなります。
「新しい仕事に手を挙げる」「顧客から得た意見を社内へ共有する」といった行動まで落とし込むことで、会社が求める姿勢を社員にも伝えやすくなります。
業績だけでは、その成果に至るまでの過程は見えません。市場環境が悪く目標には届かなかったものの、既存顧客との関係維持や改善提案に取り組んだ社員もいるでしょう。
情意評価を取り入れれば、結果だけではなく、その期間にどのように仕事へ向き合ったのかも評価できます。
ただし、「頑張ったから高評価」といった曖昧な運用では、かえって不公平感が強まります。
納得感を高めるには、評価対象となる行動と、その判断基準を明確にしておくことが前提です。
情意評価でつまずきやすいのは、「責任感」「協調性」といった言葉を、そのまま評価しようとすることです。評価者によって言葉の捉え方が違えば、同じ行動を見ても評価が変わります。そこで、抽象的な項目を具体的な行動まで落とし込みます。

「明るい」「真面目」「人当たりが良い」といった性格は、評価基準には向きません。見る人によって印象が変わる上、本人も何を改善すればよいのか分からないからです。
「責任感がある」と評価するのではなく、「担当案件で遅れが出る可能性を早めに報告し、納期調整まで行った」といった行動で捉えます。誰が見ても確認できる事実に置き換えるほど、評価の根拠も説明しやすくなります。
評価項目を決めたら、どの水準なら何点になるのかまで設定します。責任性を5段階で評価する場合なら、次のような基準が考えられます。
評価段階 | 判断基準の例 |
|---|---|
S(5点) | 自分の担当に加え、チームの課題にも責任を持って対応した |
A(4点) | 担当業務を期限内に終え、問題発生時も自ら対応した |
B(3点) | 担当業務を期限内にやり遂げた |
C(2点) | 期限遅れや対応漏れがあり、上司のフォローが必要だった |
D(1点) | 担当業務を放置する、または問題を報告しないことがあった |
重要なのは、SやAといった名称ではなく、それぞれの違いを行動で説明できることです。基準が明確であれば、評価者も判断しやすく、社員も何を期待されているのか理解しやすくなります。
同じ積極性でも、一般社員、リーダー、管理職に求める行動は異なります。
役職 | 積極性で求める行動の例 |
|---|---|
一般社員 | 自分の担当業務で改善点を見つけ、提案する |
リーダー | チームの課題を見つけ、解決に向けて動く |
管理職 | 部門全体の課題を捉え、周囲を巻き込みながら改善する |
職種によっても違いがあります。
営業なら顧客への新しい提案、製造なら安全性や作業効率の改善、管理部門なら業務フローの見直しなど、実際の仕事に沿って基準を設定します。
等級制度と連動させれば、「次の等級ではどのような行動が求められるのか」を示すこともできます。
半年や1年間の行動を、評価時期になってから正確に思い出すのは難しいものです。記憶だけに頼ると、どうしても直近の出来事が強く残ります。
そのため、評価期間中から行動を簡単に記録しておきます。「10月の繁忙期に問い合わせが集中した際、ほかのメンバーの対応を引き受け、チーム全体の遅延を防いだ」といった形です。
日時、状況、本人が取った行動、その結果まで残しておけば、評価時にも根拠として使えます。1on1や日報など、すでに使っている仕組みの中で記録できるようにすると、評価のためだけに新しい作業を増やさずに済みます。
基準を作っただけで、評価が自動的に公平になるわけではありません。同じ基準を見ても、評価者によって解釈や厳しさが違うためです。情意評価では、評価する側の目線をそろえる仕組みも必要です。

人が人を評価する以上、完全に主観をなくすことはできません。そのため、評価者自身が「どのような偏りが起こりやすいか」を理解しておく必要があります。
代表的なものには次があります。
評価時に「最近の出来事だけで判断していないか」「自分ならどうするかを基準にしていないか」と振り返るだけでも、偏りに気づきやすくなります。
評価基準を文書で共有しても、評価者全員が同じように解釈するとは限りません。その差を縮めるために、評価者研修を行います。
実際の業務を想定したケースを用意し、複数の評価者に採点してもらう方法が有効です。同じ行動に対してAを付ける人とBを付ける人がいれば、「どこを見て判断したのか」を話し合えます。
評価後に結果を持ち寄り、部署ごとの評価の甘辛を確認する評価調整会議を設ける方法もあります。
「協調性が足りない」「責任感が強い」と伝えるだけでは、本人には評価の理由が分かりません。評価コメントには、その判断につながった行動を添えます。
例えば、「チーム会議でほかのメンバーの提案を最後まで聞かず、否定する発言が複数回あった」という形です。
何が評価されたのか、あるいは何が問題だったのかが分かれば、本人も次に変えるべき行動を考えやすくなります。また、評価を確認する人事側にとっても、判断が妥当だったかを確認しやすくなります。
評価結果は、本人に伝えただけでは十分ではありません。重要なのは、「次に何を変えるか」まで話すことです。
積極性が低かった社員に「もっと積極的に」と伝えても、本人は何をすればよいか分かりません。「月に1回は業務改善案を上司へ出す」「新しい案件に一度は手を挙げる」といった行動まで具体化します。
また、期末に初めて伝えるのではなく、1on1などを通じて評価期間中からフィードバックしておくことも大切です。本人にとっても、突然低い評価を告げられるより、途中で修正する機会がある方が納得しやすくなります。
情意評価では、成果やスキルだけでは見えない、日々の仕事への向き合い方を評価できます。
一方で、「協調性」「積極性」「責任性」といった言葉だけで評価しようとすると、上司の印象に左右されやすくなります。
大切なのは、評価項目を具体的な行動まで落とし込み、その事実を評価期間中から残しておくことです。さらに、評価者研修や評価調整、本人へのフィードバックまで含めて運用することで、評価のばらつきを抑えやすくなります。
ただ、上司が部下の日々の行動を全て把握するのは簡単ではありません。
誰がどのように周囲をフォローしたのか、あるいはどんな業務改善を行ったのかといった情報を日常的に蓄積できる仕組みを整えることで、評価時の客観的な判断材料を格段に集めやすくなります。
「TUNAG(ツナグ)」では、サンクスカードや日報など、組織課題に合わせた社内制度を一つのプラットフォームで運用できます。
サンクスカードのやりとりから、上司には見えにくい社員同士の支援や貢献を確認できます。日報を使えば、本人がどのような仕事や改善に取り組んできたのかも振り返りやすくなります。
評価時期になってから記憶をたどるのではなく、日々の行動を残しておく。そうした仕組みづくりが、情意評価の公平性や納得感を高める上でも役立ちます。