サクセッションプランとは?後継者不在を防ぐ経営人材育成のポイントを解説
将来の経営を任せられる人材が、自社に育っていますか?多くの企業で、後継者不在は深刻な経営リスクになっています。「サクセッションプラン」という言葉を耳にしたことはあるものの、何から手をつければよいか迷っている方も多いのではないでしょうか。この記事では、サクセッションプランの意味から作り方までを整理します。自社で取り組むべき項目が、きっと明確になるはずです。次世代リーダーを計画的に育てる仕組みづくりに役立ててください。
サクセッションプランとは何か
まずは言葉の意味を整理しましょう。人材育成や後任登用と混同されがちですが、考え方は異なります。ここでは定義と違い、具体例を順に見ていきます。
サクセッションプランの意味
サクセッションプランとは、経営の後継者を計画的に育てる仕組みです。後継者の対象は、社長や役員だけではありません。事業部長など、空席になると事業に大きな影響が出るポストも含みます。
重要なのは、こうしたポストの後継者を、空席になる前から計画的に確保しておくことです。
人材育成や後任登用と何が違う?
サクセッションプランは、一般的な人材育成とは目的が異なります。後任登用との違いも、表で整理してみましょう。
一般的な人材育成・後任登用 | サクセッションプラン | |
対象 | 全社員や特定の役職 | 経営に関わる重要ポスト |
目的 | 業務スキルの向上 | 次世代経営人材の確保 |
期間 | 短期〜中期が中心 | 数年単位の長期 |
起点 | 現場の業務ニーズ | 経営戦略 |
このように、サクセッションプランは経営戦略を起点とします。「誰を後任にするか」ではなく「経営をどう承継するか」を考える点が特徴です。
サクセッションプランの具体例
イメージをつかむために、具体的な進め方を見てみましょう。代表的な手法に、後任候補を準備度合いで三段階に分ける方法があります。
それぞれの段階は、次のように整理できます。
- すぐに後任可能:役割と責任を担える人材
- 一〜三年で後任可能:育成で要件を満たす人材
- 三〜五年で後任可能:異動経験を重ねる人材
このように段階を分けると、育成の優先順位が明確になります。すぐに後任が必要なポストには、即戦力の候補を当てます。中長期の候補には、計画的に経験を積ませていきましょう。
さらに、候補者ごとに不足するスキルを洗い出します。一人一人に合った育成プランを用意すれば、計画は具体的に動き出すでしょう。
サクセッションプランが必要な背景
なぜ今、サクセッションプランが注目されるのでしょうか。背景には、後継者不足やガバナンス強化の流れがあります。四つの観点から整理してみましょう。
後継者不在による経営リスク
後継者が決まっていないと、経営は不安定になります。社長や役員が突然退いた場合、事業が止まる恐れがあるからです。
特に重要ポストの空席は、現場の混乱を招きます。意思決定が遅れ、取引先や従業員の信頼も揺らぎかねません。ゼロからの後継者育成には、長い準備期間が必要とされます。早めの着手が、リスクを減らすことにつながるでしょう。
後継者不在は依然として高水準にある
後継者不足は、データにも表れています。帝国データバンクの調査では、後継者不在率は50.1%に達しています。前年の52.1%からは改善しました。それでも、二社に一社は後継者が未定です。
ただしTDBは、今後も急激な低下は見込めず、当面は50%前後で推移するとみています。
団塊世代が75歳以上となる『2025年問題』を経て、経営人材の育成は待ったなしの課題といえるでしょう。
出典:全国「後継者不在率」動向調査(2025年)|株式会社 帝国データバンク[TDB]
ガバナンス対応が求められている
上場企業では、コーポレートガバナンス(企業統治)の観点からも対応が求められます。その根拠が「コーポレートガバナンス・コード」です。
これは、上場企業が守るべき企業統治の指針です。東京証券取引所などが定めています。法律ではありませんが、従わない場合はその理由を説明する必要があります。
このコードの中で、後継者計画への対応が示されています。取締役会が、CEOなどの後継者選びに主体的に関わるべきという内容です。後継者の育成を計画的に進めるよう、監督する責任もあるのです。
人的資本開示の観点でも重要になる
人的資本の情報開示も、近年の大きな流れです。2023年3月期から有価証券報告書での開示が義務化され、さらに2026年3月期からは、経営戦略と関連づけた人材戦略の開示も求められるようになりました。
対象は、上場企業など約4,000社に上ります。
経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」も参考になります。このレポートは、サクセッションプランの具体的なプログラム化を求めています。後継者育成は、投資家への説明責任の面でも重要になっているのです。
出典:人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書 ~ 人材版伊藤レポート2.0~
サクセッションプランで決める内容
サクセッションプランでは、何を決めればよいのでしょうか。大きく分けて、四つの項目を設計します。全体像を表で確認してから、個別に見ていきましょう。
決める項目 | 内容 |
対象ポスト | 後継者を準備する重要ポストの範囲 |
人材要件 | 各ポストに求める能力や経験 |
人材プール | 候補者を可視化し管理する仕組み |
育成・評価 | 育成内容と進捗の評価方法 |
これら四つは、セットで決めることが大切です。一つでも欠けると、計画が形だけになりやすいでしょう。
対象となる重要ポストの範囲
最初に、対象とする重要ポストを決めます。全ての役職を対象にする必要はありません。
基準は、空席になると事業に大きな影響が出るかどうかです。社長や役員に加え、主力事業の責任者などが該当します。対象を絞ることで、限られた資源に集中できるでしょう。
経営人材に求める人材要件
次に、各ポストに求める人材要件を明確にします。要件があいまいだと、候補者を公平に選べないからです。
要件には、スキルや経験だけでなく価値観も含めます。例えば、経営理念への共感やリーダーシップなどです。要件を言語化すると、選抜や育成の基準が定まります。
候補者を管理する人材プール
要件が決まったら、候補者を人材プールにまとめます。人材プールとは、後継者候補をリスト化し可視化する仕組みです。
候補者のスキルや経験、育成状況を一元的に把握します。誰が、どのポストに、どれくらいで就けるのか。これが見えると、登用の判断がしやすくなるでしょう。
育成内容と評価方法の設計
最後に、育成内容と評価方法を設計します。研修だけでなく、実務経験を通じた育成が効果的です。
具体的には、次のような手段を組み合わせます。
- 上位ポスト経験:子会社や新規事業を任せる
- 研修プログラム:経営知識を体系的に学ぶ
- 上司の指導:日常業務でフィードバックする
評価方法も、併せて決めておきましょう。育成の成果を測れないと、計画の改善ができないためです。
サクセッションプランの作り方
先ほど挙げた4つの設計要素を、実際にどの順番で動かせば良いのでしょうか。ここからは具体的な五つのステップで見ていきます。
明日からの検討に使える、具体的な流れです。順番に進めることで、抜け漏れを防げるでしょう。
経営戦略から重要ポストを決める
出発点は、経営戦略の確認です。将来どんな事業を伸ばすかで、必要な人材は変わります。
例えば、海外展開を進めるなら現地経営の人材が要ります。経営戦略を踏まえ、鍵となるポストを洗い出しましょう。ここがずれると、後の育成もずれてしまいます。
人材要件に合う候補者を選抜する
次に、要件に合う候補者を選抜します。現職の評価だけで選ばないことが大切です。
将来の経営を担える「伸びしろ」も見ます。社内の人材だけでなく、必要に応じて社外も検討します。複数の視点で選ぶと、選抜の精度が高まるでしょう。
個別の育成計画を作成する
候補者ごとに、個別の育成計画を作ります。一律の研修では、個人の課題に対応できないからです。
まず、候補者の強みと弱みを整理します。その上で、必要な経験や学びを計画に落とし込みます。育成環境を整え、計画を実行に移しましょう。
進捗評価で計画を見直す
育成は、作って終わりではありません。定期的に進捗を評価し、計画を見直します。
評価では、当初の目標に対する達成度を確認します。候補者の成長度合いや、ポストへの適性も見極めます。状況に応じて、育成内容を柔軟に修正しましょう。
登用後の定着まで支援する
登用は、サクセッションプランのゴールではありません。新しいポストへの定着まで支援することが重要です。
慣れない役割では、つまずくこともあります。上司や周囲が支え、早期に成果を出せるよう助けます。例えば、定期的な面談で悩みを聞き取ります。必要な権限を渡し、活躍できる環境も整えましょう。定着まで見届けて、初めて計画は完了するのです。
サクセッションプランを機能させるポイント
計画を作っても、運用でつまずく企業は少なくありません。ここでは、機能させるための五つのポイントを紹介します。自社の運用を見直す視点として、活用してください。
経営層と部門責任者を巻き込む
まず、経営層と部門責任者を巻き込みます。人事部だけで進めると、現場の協力が得られにくいからです。
経営トップが旗振り役になることが理想です。部門責任者も、候補者の選抜や育成に関わります。全社の取り組みにすることで、実効性が高まるでしょう。
選抜プロセスの透明性を高める
選抜プロセスは、透明性を高めることが大切です。基準が不透明だと、社内に不公平感が生まれます。
なぜその人が選ばれたのか。選抜基準を明確にし、納得感のある運用を心がけます。透明性は、候補者本人のモチベーションにもつながります。
評価・等級制度と育成を連動させる
人事制度との連動も欠かせません。評価や等級の制度に、経営視点を組み込みます。
例えば、経営人材に必要な行動を評価項目に加えます。日常の評価と育成がつながると、候補者は成長しやすくなります。制度がばらばらだと、育成効果は半減してしまうでしょう。
外部コンサルで客観性を補う
社内だけでは、選抜が主観に偏ることがあります。そこで、外部コンサルの活用も選択肢になります。
第三者の視点で、候補者を客観的に評価できます。自社にノウハウがない場合は、設計支援も期待できるでしょう。客観性を補うことで、選抜の納得感が高まります。
対象外社員の意欲低下を防ぐ
見落としがちなのが、対象外となる社員への配慮です。選抜から外れた社員が、意欲を失う恐れがあるためです。
意欲低下を防ぐには、次のような工夫が有効です。
- キャリア複線化:専門職など多様な道を用意する
- 公正な評価:全員に成長機会があると示す
- 丁寧な対話:選抜の意図を社員に説明する
サクセッションプランは、一部の社員だけのものではありません。組織全体のエンゲージメントへの配慮が、成功の鍵になります。
経営人材育成の仕組み化が持続的な組織成長につながる
サクセッションプランは、単なる後任探しではありません。経営戦略と連動した、次世代リーダー育成の仕組みです。重要ポストの洗い出しから要件定義、育成、登用後の定着まで。一連の流れを仕組み化することが、持続的な組織成長につながります。
ここまで見てきたように、計画の成否は運用にかかっています。人事制度や育成、組織文化まで、幅広い要素が関わるからです。自社だけで設計や運用を進めるのは、簡単ではないでしょう。
そこで頼りになるのが、専門家による支援です。TUNAGコンサルティングは、組織・人事の課題をまるごと解決するサービスです。人事制度や育成、文化、労務など、幅広い領域に対応します。
150万人分のデータと知見に基づき、自社に合った最適な組織変革プランを、客観的な視点で描けます。サクセッションプランの設計から運用まで、伴走することも可能です。
後継者育成の仕組みづくりに課題を感じている方は、ぜひ一度ご相談ください。













