せっかく採用した新卒社員がわずか2〜3年で退職してしまい、採用費や育成コストを回収できないまま現場の人手不足が慢性化している。若手社員の離職防止は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。退職面談を行っても本音を捉えるのは難しく、推測や思い込みで対策を打ってしまうケースも少なくありません。本記事では、データに基づく若手社員の離職原因を整理した上で、自社に最適な施策の選定方法や、現場で効果を発揮させる定着化のプロセスについて分かりやすく解説します。
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若手社員の離職を防ぐには、まず原因を正しくつかむことが出発点になります。原因は一つではありません。労働条件、人間関係、成長実感といった複数の要素が重なって離職につながります。ここでは公的なデータを基に、代表的な原因を整理していきましょう。

まず押さえたいのは、早期離職が特別な出来事ではないという事実です。厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職後3年以内の離職率は新規大学卒就職者が33.8%、新規高卒就職者が37.9%でした。前年より低下したとはいえ、大卒の3人に1人が3年以内に職場を離れている計算になります。
注目すべきは、事業所規模による差の大きさです。事業所規模別に見ると、1,000人以上の企業では大卒27.0%、高卒26.3%にとどまる一方、5〜29人規模では大卒52.0%、高卒54.6%、5人未満では大卒57.5%、高卒63.2%と、規模が小さいほど離職率は高くなっています。
事業所規模 | 大学卒 | 高校卒 |
1,000人以上 | 27.0% | 26.3% |
5〜29人 | 52.0% | 54.6% |
5人未満 | 57.5% | 63.2% |
出典:厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」
自社の離職率が高いと感じたら、この規模別の数値と比較してみましょう。全体平均ではなく、同じ規模の水準と比較することが実態把握の第一歩になります。
離職理由として最も多く挙がるのが、働く時間と休みに関する不満です。厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査」では、初めて勤務した会社を辞めた理由として「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」が28.5%で最も高く、次いで「人間関係がよくなかった」が26.4%、「賃金の条件がよくなかった」が21.8%、「仕事が自分に合わない」が21.7%と続きます。
ここで見落としやすい点があります。不満は一度の残業で生まれるわけではありません。繁忙期の連続、有給が取りにくい空気、休日の連絡対応などの小さな負担が積み重なって、限界を超えたときに退職の意思になります。
つまり、労働条件の問題は突発的ではないのです。日々の運用が原因をつくっています。
人間関係は、離職理由の中でも入社直後に強く作用する要素です。勤続期間別に見ると、勤務が3カ月未満だった人では「人間関係がよくなかった」が52.3%に上り、全体の26.4%を大きく上回っています。
入社してすぐの若手は、相談相手が限られています。配属先の上司や先輩とうまくいかないと、逃げ場がありません。テレワークやシフト勤務が多い職場では、雑談の機会そのものが少なくなります。
例えば、店舗や工場、物流の現場では、勤務時間帯が違えば顔を合わせない同僚もいます。孤立は本人の性格の問題ではなく、職場の設計の問題として捉えるべきでしょう。
労働条件も人間関係も問題ないのに辞めるといったケースの背景にあるのが、成長実感の欠如です。
若手社員は、今の仕事が将来どうつながるかを知りたがっています。単純作業が続き、任される範囲が変わらないと、この会社にいても伸びないと感じてしまいます。上の世代のキャリアが見えない職場では、5年後の自分を想像できません。
成長実感は、業務の難易度だけで生まれるものではありません。何ができるようになったかを言葉で返してもらえるかどうかが大きく影響します。
離職の原因を特定した後は、具体的な施策の選定へと進みます。重要なのは、他社での成功例を無条件に取り入れるのではなく、自社における主要な要因を見極めた上で適切な選択を行うことです。以下に、導入しやすい4つの取り組みを紹介します。

最初に取り組むべきは、原因の特定です。退職者面談だけでは本音が出にくく、情報も断片的になります。在籍している社員への調査を組み合わせましょう。
エンゲージメント調査とは、社員が仕事や組織にどれだけ前向きに関わっているかを測る調査のことです。匿名で回答できる形式にすると、率直な声が集まりやすくなります。原因を四つに分けて確認すると、打ち手につながりやすくなります。
原因の分類 | 確認する内容 |
労働条件 | 残業時間、有給取得率、休日の連絡頻度 |
人間関係 | 相談相手の有無、部署内の対話量 |
成長実感 | 任される業務の変化、フィードバックの頻度 |
評価 | 基準の明確さ、結果への納得度 |
調査結果は部署別、入社年次別に分けて見ることで、全社平均では見えない偏りが浮かび上がります。
成長実感が課題だと分かったら、キャリアパスの提示が有効です。キャリアパスとは、どの経験を積めばどの役割に進めるかを示した道筋を指します。
まずは等級ごとに求める行動を言語化しましょう。次に、その等級に上がった社員が実際に何をしてきたかを社内で共有します。3年目でこの範囲、5年目でこの役割、といった具体像があると、若手は自分の位置を確認できます。
年に1回はキャリア面談の場を設けましょう。本人の希望と会社が用意できる道を突き合わせる機会になります。
評価への不満は、静かに蓄積します。基準が曖昧なまま結果だけ伝えられると、努力が見られていないと感じるためです。
見直しの際は、次の点を確認してみましょう。
制度そのものより、伝え方で納得感は大きく変わります。まずは説明の場を整えるところから始めるとよいでしょう。
退職の意思は、伝えられた時点ですでに固まっているケースが少なくありません。だからこそ、その前の変化に気づくことが重要です。
現場で観察しやすい兆候には、次のようなものがあります。
これらは単独では判断できません。複数が重なったときに、上司が声をかける仕組みをつくっておきましょう。
施策は実施した時点では効果が分かりません。続けて、測って、初めて定着します。ここでは一過性で終わらせないための運用の進め方を紹介します。現場の負担を増やさない設計がポイントになります。

1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に行う1対1の対話のことです。業務報告の場ではなく、本人の状態を知る場として設計します。
続けるコツは、頻度と長さを無理のない水準にすることです。月1回30分から始めれば、現場も回せます。話す内容は、業務の進捗、困っていること、今後やりたいことの3点に絞りましょう。
記録を残すことも忘れないでください。前回の話を踏まえた対話になれば、聞くだけで終わらない実感が生まれます。
1on1を導入しても、上司の関わり方が変わらなければ効果は限られます。多くの管理職は、部下との対話を体系的に学ぶ機会がないまま役職に就いています。
研修では、聞く技術とフィードバックの伝え方を扱いましょう。例えば、部下の発言を遮らない、評価と改善点を分けて伝える、といった具体的な行動に落とし込みます。
併せて、部下からの声を管理職本人に返す仕組みも有効です。自分の関わり方がどう受け取られているかを知ることが、行動を変える出発点になります。
成長実感を高めるには、学ぶ機会と、学んだ結果への反応の両方が必要です。研修を用意するだけでは足りません。
まずは業務に直結する学習コンテンツを、いつでも見られる形で用意しましょう。シフト勤務や店舗勤務の社員には、スマートフォンから閲覧できる形が現実的です。
その上で、学習の状況を上司が把握し、声をかけられるようにします。「資格を取った」「新しい手順を覚えた」といった変化を職場で認めることが、次の学習につながります。
他社の事例は、そのまままねするものではありません。どの課題に、どの打ち手が効いたのかという対応関係を読み取って使います。
例えば、ブライダル事業を展開する株式会社BPでは、アルバイトの定着率が30%改善し、3カ月で300名の採用につながったという成果が報告されています。物流業界の株式会社ダイセーセントレックスでも、業界特有のコミュニケーション課題と離職率の改善に取り組んだ事例が公開されています。
事例を見るときは、自社と規模や業種が近いものを選んでください。その上で、前提条件と実施期間を確認します。条件が違えば、同じ施策でも結果は変わるからです。
若手社員の定着率を向上させるには、まず離職原因の正確な把握が欠かせません。労働環境、人間関係、成長機会、評価制度といった要素のうち、自社で課題となっている点をアンケート等で特定し、最適な対策を打ち出すことが重要です。
また、施策の導入だけで満足せず、継続的に運用・定着させる取り組みが求められます。1on1ミーティングの継続や管理職へのサポート、学びやすい環境の整備などを実行することで、初めて具体的な成果として現れます。
しかしながら、現場では「制度が浸透しない」「進捗の管理が困難」といった問題が起こりやすく、複数の施策を並行して推進していくのは容易ではありません。
こうした課題の解決を支えるのが、TUNAG(ツナグ)です。社内の情報共有、1on1やサンクスカードなどの取り組み、学習コンテンツの配信を一つのアプリにまとめられます。パソコンを持たない現場社員もスマートフォンから利用できる点が特徴です。
さらに、各取り組みの実施状況や社員の反応をデータで確認できます。エンゲージメント調査の結果と組み合わせれば、原因の把握から施策の運用、効果測定までを一貫して進められるでしょう。まずは自社の離職原因を確かめるところから、着手してみてはいかがでしょうか。