夜勤16時間は労働基準法違反?休憩の与え方や賃金についても解説
自社のシフトを2交替制で進めようと思っている場合、夜勤16時間は労働基準法違反ではないのか気になっている人もいるのではないでしょうか。法律上のさまざまなルールを理解し、適切な労務管理を行いましょう。
夜勤16時間で休憩がない場合は違法?
長時間労働を行う従業員には休憩を与えなければなりませんが、例外もあります。まずは、夜勤16時間における休憩のルールを理解しましょう。
8時間以上の勤務で最低1時間の休憩が必要
労働基準法第34条では、労働時間と休憩について次のように規定されています。
- 6時間以内の労働:休憩付与の義務なし
- 6時間超8時間以内の労働:45分以上の休憩時間が必要
- 8時間超の労働:60分以上の休憩時間が必要
夜勤16時間は8時間超の労働に該当するため、最低1時間の休憩が必要です。
なお、休憩時間には以下に挙げる「休憩の3原則」が定められてます。
- 一斉付与の原則:休憩時間は一斉に付与する
- 自由利用の原則:休憩中は自由に過ごさせる
- 途中付与の原則:就業前や就業後に休憩を与えない
一部例外もありますが、休憩を設定する場合は上記の3原則を守る必要があります。
宿直は休憩なしでもOK
24時間体制が求められる職場では、夜勤以外に宿直と呼ばれる勤務形態もあります。宿直とは、電話や緊急時に対応するために泊まり込みで職場に待機する働き方のことです。
継続して宿直を配置する場合は、労働基準法第41条に基づき、労働基準監督署の許可を得る必要があります。断続的な宿直については、労働基準法の休憩の規定が適用されないため、勤務時間にかかわらず休憩を与える必要はありません。
ただし、断続的な宿直に適用されないのは、労働基準法で定められた労働時間・休憩・休日の規定です。深夜労働に関する規定は適用されるため、午後10時から午前5時までの時間は25%以上の割増賃金の支払いが発生します。
なお、宿直と同じような働き方で日中に職場待機することを日直といいます。日直も宿直と同様、労働基準監督署の許可を得て断続的な勤務が認められれば、労働基準法における休憩の規定の適用は不要です。
出典:断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外申請許可について | 厚生労働省
夜勤16時間は労働基準法違反?
夜勤を含む労働が16時間にも及ぶことは、労働基準法に違反していないのでしょうか。夜勤が16時間になる勤務形態と併せて解説します。
夜勤16時間は2交代制
夜勤を含むシフトパターンは、24時間を2つの時間帯に分ける2交替制と、24時間を3つの時間帯に分ける3交代制に大きく分けられます。
2交替制の一般的な分け方は、12時間+12時間や8時間+16時間です。日勤8時間+夜勤8時間とし、日勤と夜勤の間は数時間働かないパターンもあります。
3交代制は24時間フル稼働する職場でよく採用されるシフトパターンです。8時間ずつ3つの時間帯に分けることもあれば、職場の状況に応じてそれぞれの時間が違う変則パターンもあります。
夜勤16時間は2交替制での働き方です。この場合、日勤は8時間となります。
2交代制のメリット・デメリット
2交替制の企業側のメリットは、人員を抑えてシフトを組めることです。人材が不足している企業でも導入しやすいでしょう。時間帯が2つしかないためシフトを作成しやすいこともメリットです。
従業員側の2交替制のメリットとしては、十分な休息を取りやすいことが挙げられます。16時間夜勤は実質的に2日分の労働になるため、夜勤明けの次の日が休日になりやすく、夜勤明けから次の勤務の日までゆっくりと体を休められるでしょう。
一方、8時間の2交替制でシフトを回している場合、繁忙期には変則的なシフト作成を求められるケースがあります。従業員と相談しながら変則的なシフトを組まなければならないことがデメリットです。
2交替制の従業員側のデメリットは、夜勤が長時間に及ぶ場合に体調管理が難しいことが挙げられるでしょう。16時間夜勤と日勤を繰り返すケースでは、不規則な生活で体調を崩さないようにしなければなりません。
夜勤16時間自体は違法ではない
労働基準法第32条では、労働時間の上限を原則「1日8時間・1週40時間」と定めています。法定労働時間のルールによれば、夜勤16時間は労働時間が過剰です。
ただし、1カ月単位の変形労働時間制を採用することで、夜勤16時間は違法ではなくなります。変形労働時間制とは、一定要件のもと一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間を超えなければ、1日8時間や1週40時間を超えてもよいとする制度です。労働基準法第32条の2で規定されています。
なお、変形労働時間制を導入しても、長時間労働を自由に設定できるわけではありません。法律上の労働時間の上限や時間外労働・休日に関する規定を守る必要があります。
夜勤16時間の賃金の考え方
1カ月単位の変形労働時間制を採用すれば、夜勤を含む労働時間が16時間になっても違法ではありません。夜勤16時間の賃金については、どのように考えればよいのでしょうか。
残業が発生すれば割増賃金の支払いが必要
法定労働時間を超えて労働者に残業してもらうためには、労働基準法第36条に基づく「36協定」を締結する必要があります。残業は時間外労働となり、時間外手当として割増率25%以上の賃金を支払わなければなりません。
1カ月単位の変形労働時間制を導入していても、次のケースに該当する時間外労働には原則として割増賃金の支払いが必要です。
- 8時間超の労働時間を定めた日はその時間を超えた労働時間、それ以外の日は8時間を超えた労働時間
- 40時間超の労働時間を定めた週はその時間を超えた労働時間、それ以外の週は40時間を超えた労働時間
変形労働時間制を採用して夜勤16時間の日を設定した場合、その日の労働が16時間を超えれば割増賃金の支払い義務が発生します。
夜勤手当を出すかどうかは企業が決められる
労働基準法第37条に基づき、午後10時から午前5時までの深夜労働には深夜手当が発生します。深夜手当の割増率は25%以上です。
夜勤16時間には深夜労働が含まれるため、深夜労働を行った時間は割増賃金を支払わなければなりません。
ただし、夜勤手当も付与するかどうかは企業次第です。法律で定められている深夜手当には支払い義務がありますが、深夜手当とは別に支払う夜勤手当の付与は企業が自由に決められます。
休憩時間に対する賃金の支払い義務は?
従業員が労働から完全に離れた休憩の時間には、賃金の支払い義務はありません。一方、手待時間は基本的に労働時間として扱われるため、賃金が発生します。
前述の通り、労働基準法第34条では自由利用の原則が定められています。労働者が完全に労働から解放されていなければ、法律上は休憩していることにはならないのです。
「休憩中も電話や来客には対応するように」と指示を出した場合、休憩扱いにはならないことに注意しましょう。
夜勤に関するその他のルール
夜勤を含むシフトを組む場合は、法令に違反していないかを意識することが大切です。夜勤に関する知っておきたいルールを見ていきましょう。
ワンオペ夜勤は違法ではない
従業員が1人で夜勤に従事するワンオペ夜勤は違法ではありません。厚生労働省が定める夜勤職員基準によると、介護や看護の現場での夜勤は、要件を満たせば1人での勤務も認められています。
ただし、ワンオペ夜勤は心身のストレスがたまりやすいため、シフトを組む際は以下の点に留意しましょう。
- 確実に休憩できる体制を整える
- 業務で困った際の相談先を定めておく
- 緊急時の対応マニュアルを作成する
出典:厚生労働大臣が定める夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準 | 厚生労働省
夜勤明けから日勤の連続勤務は可能
夜勤から日勤の連続勤務を制限する法令は存在しないため、夜勤明けの日に日勤を設定しても問題ありません。
夜勤明けから日勤の連続勤務では、それぞれを「始業時間が属している日の労働」として扱います。夜勤は日をまたぐケースが多くなりますが、日付が変わった後の労働も日付が変わる前の労働としてカウントしなければなりません。
また、夜勤明けの連続勤務では、健康上の問題が生じたり疲労による労働災害につながったりする恐れがあります。労働契約法第5条で規定されている安全配慮義務に違反しないよう、労働時間や休憩時間に配慮することが重要です。
夜勤明けの日は法定休日ではない
法律では午前0時から午後12時まで継続して働かない日を休日としています。日をまたぐ夜勤に従事した場合、夜勤明けの日は午前0時以降も仕事をしているため、法定休日に設定できません。
労働基準法第35条では、少なくとも毎週1日の休日または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならないとしています。夜勤者の法定休日を考える際は、夜勤明けの日が法定休日にならないことに注意しましょう。
ただし、3交代制でシフトを回している場合、以下の要件を満たせば夜勤明けの日も法定休日にできるとされています。
- 3交代制を就業規則で規定し、制度として運用している
- シフトを都度設定するのではなく、規則的に運用している
出典:労働条件 : 休憩・休日(休憩・休日) | 徳島労働局
夜勤従事者には健康診断を年2回受けさせる
労働安全衛生規則第45条では、特定業務従事者に年2回の定期的な健康診断の実施を義務付けています。特定業務従事者とは、有害物質を扱う業務や極端な温度の中で行う業務など、一般的な業務とは異なる環境での業務を行う労働者のことです。
深夜労働を行う夜勤従事者も特定業務従事者に該当するため、夜勤従事者に対して半年に1回、年2回の健康診断を受けさせる必要があります。
出典:労働安全衛生規則 第四十五条 | e-Gov 法令検索
労働基準法に従い適切な労務管理を
1カ月単位の変形労働時間制を採用すれば、夜勤16時間の設定が可能です。ただし、その日の労働が16時間を超えた場合は、割増率25%以上の賃金を支払う必要があります。
また、8時間超の労働には60分以上の休憩時間を与えなければならないため、夜勤16時間では最低1時間の休憩の設定が必須です。
労働基準法では、夜勤に関するさまざまなルールが規定されています。法令に則った適切な労務管理を心がけましょう。