プレゼンティーズムとは?意味・原因・企業への損失と対策を分かりやすく解説

健康経営や従業員エンゲージメントへの関心が高まる一方で、「従業員は毎日出勤しているのに、チームの生産性が上がらない」という現場の声も増えています。その背景にあるのが、近年注目されている「プレゼンティーズム」という概念です。本記事では、プレゼンティーズムの正しい理解から、具体的な対策・測定ツールの活用・企業事例まで、すぐに実務で活用できる情報をまとめました。

プレゼンティーズムとは何か

「従業員は毎日出勤しているのに、なぜ組織の生産性が上がらないのか」といった疑問を感じたことはないでしょうか。その背景に潜んでいる可能性があるのが「プレゼンティーズム」です。この概念を正しく理解することが、組織改善への第一歩となります。

プレゼンティーズムの意味

プレゼンティーズム(Presenteeism)とは、心身に何らかの不調を抱えながらも出勤・就業している状態を指します。欠勤には至っていないものの、健康上の問題により業務パフォーマンスが低下している状況のことです。

語源は英語の「present(その場にいる)」に由来し、外見上は「出勤している」状態であるにもかかわらず、本来の力が発揮できていないことを端的に表しています。

企業の勤怠管理には「出勤」と記録されます。しかし実態としては、業務効率が著しく下がっていることがあります。この「見えない損失」こそが、プレゼンティーズムの本質です。

アブセンティーズムとの違い

プレゼンティーズムと対になる概念として「アブセンティーズム(Absenteeism)」があります。アブセンティーズムとは、健康上の問題を理由に職場を欠勤している状態を指します。

二つの違いを整理すると、以下のようになります。

プレゼンティーズム

アブセンティーズム

出勤状況

出勤している

欠勤している

企業への可視性

把握しにくい

勤怠記録で把握できる

主な影響

パフォーマンスの低下

人員不足・代替コストの発生

見落とされがちなのが、プレゼンティーズムの方が企業への損失が大きいとされている点です。欠勤は数字として把握できますが、出勤した上での生産性低下は数値化が難しいのが実情です。

また、プレゼンティーズムを放置すると、やがてアブセンティーズムへと移行するリスクもあります。早期対処が重要なのはこのためです。

プレゼンティーズムが企業にもたらす損失

「体調が悪くても出勤していれば問題ない」という考え方は、大きな誤解を生みます。プレゼンティーズムは、企業に対して想像以上のコストを発生させています。その実態を数字で確認しておきましょう。

プレゼンティーズムによる損失額の試算

横浜市立大学大学院と産業医科大学の共同研究によれば、「気分が沈む」「眠れない」といったメンタル不調を抱えながら働くことで生じる経済的損失は、日本全体で年間約7.6兆円に上ることが明らかになっています。

その内訳を見ると、欠勤(アブセンティーズム)による損失が約0.3兆円にとどまる一方、出勤しながらパフォーマンスが低下するプレゼンティーズムによる損失が約7.3兆円と、全体の96%を占めています。

この損失額は日本のGDPの約1.1%に相当し、精神疾患の医療費の7倍以上にのぼります。

多くの経営者にとって、この数字は衝撃的なものではないでしょうか。欠勤による損失よりも、「出勤しながらパフォーマンスが低下している」状態のほうが、はるかに大きなコストを生んでいます。

出典:厚生労働省「メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に —GDPの1.1%に相当と試算 | 横浜市立大学 YOKOHAMA CITY UNIVERSITY

個人のパフォーマンス低下が組織全体へ連鎖する

プレゼンティーズムの影響は、当該個人にとどまりません。チームや組織全体へと連鎖していきます。

例えば、体調不良でミスが増えると、周囲の同僚がその後処理に時間を取られます。業務のスピードが落ちれば、チーム全体の生産性に直接影響します。

不調を抱えた状態での意思決定は、判断ミスのリスクも高まります。特に管理職や意思決定層がプレゼンティーズムに陥ると、その影響は一気に拡大します。一人の不調が、チーム全体の成果を下げてしまうのです。

プレゼンティーズムの放置が離職・メンタルヘルス悪化を招くリスク

プレゼンティーズムを放置すると、より深刻な問題につながりかねません。

慢性的な体調不良を抱えたまま無理に働き続けることで、心身の消耗が進みます。その結果、メンタルヘルスの悪化や燃え尽き症候群を引き起こすことがあります。さらに「不調を相談しにくい職場環境」が続くと、従業員は「この職場では自分の健康が守られない」と感じます。これが離職意向の高まりにつながることも少なくありません。

プレゼンティーズムは放置するほど、より深刻なアブセンティーズムや人材流出へと発展するリスクをはらんでいます。

プレゼンティーズムを引き起こす個人の要因

プレゼンティーズムは、どのような健康上の問題から生じるのでしょうか。大きく分けると、身体的な要因とメンタルヘルス上の要因の2種類があります。それぞれの特徴を理解することが、適切な対策につながります。

腰痛・頭痛・肩こりなど運動器の不調

日本人が抱える健康問題の中で特に多いのが、運動器(筋肉・骨格・関節)にまつわる不調です。腰痛・頭痛・肩こり・目の疲れなどが代表例として挙げられます。

こうした症状は「大したことはない」と感じがちです。しかし、慢性的な不調が業務効率に与える影響は、決して小さくありません。

例えば、慢性的な腰痛を抱えながらデスクワークを続けている場合、集中力が散漫になりやすくなります。長時間の会議や資料作成にも支障をきたし、仕事への意欲も次第に低下していきます。デスクワーク中心の職場では、こうした運動器の不調が特に発生しやすく、適切な環境整備が求められます。

ストレス・抑うつ・燃え尽き症候群などメンタルヘルスの不調

近年、プレゼンティーズムの原因として急増しているのが、メンタルヘルスの不調です。

ストレスや不安、抑うつ状態、燃え尽き症候群(バーンアウト)などは、業務への集中力・創造性・判断力を著しく低下させます。身体的な症状と違い、外見から不調が判断しにくいため、周囲も気付きにくいのが特徴です。

本人も「甘えではないか」「会社に迷惑をかけたくない」という思いから、不調をなかなか打ち明けられないことがよくあります。その結果、不調を抱えたまま無理に出勤し、パフォーマンスが低下し続けるという悪循環に陥ります。職場環境や人間関係、長時間労働が背景にある場合も多く、組織全体での取り組みが欠かせません。

プレゼンティーズムへの対処法

プレゼンティーズムは「個人の問題」として片付けられるものではありません。組織として仕組みを整えることが必要です。ここでは、実践的な三つの対処法を紹介します。

従業員の健康状態を定期的に把握する

プレゼンティーズム対策の第一歩は、従業員の健康状態を継続的に把握することです。年1回の健康診断だけでは、日常的な不調を捉えることは難しいでしょう。

具体的な測定指標として、以下のようなツールが活用されています。

  • WHO-HPQ:世界保健機関が開発した生産性測定ツール
  • SPS-6:6つの質問で就業制限と生産性低下を評価する指標
  • 東大1項目版:「本来の業務パフォーマンスを100%とすると、直近4週間の実際のパフォーマンスは何%か」を問う簡便な指標

これらの指標を定期的なサーベイに組み込むことで、組織全体のプレゼンティーズムの状況を可視化できます。施策を立案したら、定期的に効果を検証し、必要に応じて内容を見直すことが不可欠です。単発の取り組みで終わらせず、PDCAを回し続ける姿勢が、プレゼンティーズム対策を組織に根付かせる鍵となります。

従業員同士でサポートできる環境を整える

プレゼンティーズムへの対処には、個人任せにしない職場づくりが欠かせません。

日常的なコミュニケーションの機会を増やすことで、不調の早期発見につながります。1on1ミーティングの定期実施や、チーム内での体調確認の習慣化などが効果的です。

「体調が悪いときに正直に伝えられる職場」をつくることが大切です。そのためには、不調を相談しても不利益が生じないという心理的安全性が必要です。上司や同僚が無理な出勤をさせず、体調に応じた配慮をする文化を育てることが、プレゼンティーズムの抑制につながります。

産業医・保健師・人事が連携し相談窓口を設置する

不調を抱えた従業員が安心して相談できる窓口を整備することも重要です。

産業医や保健師などの専門職と人事部門が連携することで、個別の状況に応じた支援が可能になります。相談窓口を設けるだけでなく、利用しやすい体制を整えることが大切です。

例えば、相談内容が第三者に漏れない守秘義務の徹底や、メール・チャットを活用した非対面での相談手段の用意などが有効です。「相談してよかった」と感じられる窓口があることで、従業員は早期に問題を解決しやすくなります。

健康経営に取り組む企業事例

プレゼンティーズム対策を含む健康経営に積極的に取り組む企業の事例を見ていきましょう。先進企業の取り組みを参考にすることで、自社への導入イメージが具体化するはずです。

味の素株式会社

味の素グループは「味の素グループで働いていると、自然に健康になる」というスローガンを掲げ、セルフケアを起点とした健康経営を推進しています。

特徴的な取り組みが、全従業員を対象とした「全員面談」です。年1回の健康診断後に、産業医や保健師が全社員と1対1で30分かけて面談を実施し、健康診断やストレスチェックのデータを基に、一人一人の価値観や生活スタイルに合わせた指導を行っており、実施率は100%となっています。

こうした継続的な取り組みが評価され、「健康経営優良法人2025(大規模法人部門(ホワイト500))」に9年連続で認定されています。

味の素グループ健康白書

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングスは、2017年3月に経営トップのメッセージとして「キリン健康宣言」を全従業員に向けて発信し、健康経営を本格化させました。

特に「メンタルヘルス」「生活習慣病」「お酒との付き合い方」を重点課題と位置づけ、専門医との連携による啓発・指導のほか、eラーニングや健康セミナーを通じた従業員の健康リテラシー向上に取り組んでいます。

また2023年には、上述の味の素とともに業界を超えた「健康経営アライアンス」を設立し、社員の健康を通じた日本企業の競争力向上と企業健保の持続可能性の実現を目指す取り組みを推進しています。

キリングループの「健康経営」に向けた取り組みについて | 2018年 | KIRIN - キリンホールディングス株式会社

プレゼンティーズム対策で従業員エンゲージメントを高めるために

プレゼンティーズムへの対策は、単なる生産性向上施策ではありません。従業員が「この職場は自分の健康を大切にしてくれる」と感じることで、組織へのエンゲージメントが高まります。その結果、離職率の低下や採用力の向上にもつながっていきます。

取り組みの第一歩は、現状を把握することです。定期的なサーベイで従業員の健康状態やパフォーマンスを可視化し、データに基づいて施策を立案・改善するサイクルを構築しましょう。

施策を継続的に機能させるには、従業員が「この会社は自分の健康や生活を大切にしてくれている」と実感できる環境づくりも重要です。健康経営の土台には、日常的に使える福利厚生の充実が深く関わっています。

TUNAGは、従業員エンゲージメントの向上を支援する福利厚生ツールとしても活用されています。コンビニや映画館など日常的に使えるベネフィットをスマホから簡単に利用できる仕組みを提供しており、正社員からアルバイトまで全従業員が使いやすい設計が特徴です。

1,300社以上・150万ユーザー以上の導入実績(2025年12月時点)を持ち、継続率99%以上を誇ります。プレゼンティーズム対策として従業員の健康・満足度の底上げを図りたい企業は、ぜひ一度ご確認ください。

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著者情報

人と組織に働きがいを高めるためのコンテンツを発信。
TUNAG(ツナグ)では、離職率や定着率、情報共有、生産性などの様々な組織課題の解決に向けて、最適な取り組みをご提供します。東京証券取引所グロース市場上場。

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